【連載】早慶レガッタ直前特集『4月17日』 第2回 3:川田悠太郎×2:菅原拓磨×B:石阪友貴

漕艇

 ことし第二エイトを引っ張るのは、クルーキャップの石阪友貴(政経4=東京・早実)、川田悠太郎(国教4=東京・早大学院)、菅原拓磨(国教4=東京・早大学院)の4年生。実力に「ロジカルさ」を兼ね備えた、異色のクルーだ。だからこそより進化した強さがある。ラストイヤー、ことしこそは隅田で勝利を。覚悟を胸に勝負を懸ける、その心意気を伺った。 

※この取材は3月8日に行われたものです。

「ワセダの中でかなり強い第二」(石阪)

クルーキャップを務める石阪

――昨シーズンを振り返っていかがですか

菅原 僕と川田さんはきょねんの早慶戦は留学中でいなかったから比べられないんですけど、夏も種目が違うので。年末年始の練習はまだ組むメンバーが決まっていなくて、メンバーをローテーションして回していました。そこで思ったのは、セカンド(第二エイト)に乗る中堅層が厚くなっていることです。乗れない人の中でも過去2年だったら絶対乗れていた人がたくさんいるだろうし、非常にミドルのレベルアップを感じます。それは体力であったり、テクニカルであったり。そこは夏のシーズンでも、対校エイトだけが優勝したのではなくて、いろんなクルーも結果を残したので、そういうのが反映された結果、早慶戦セカンドはかなりメンバー選考がし烈だったのではないかなと思います。

川田 僕は、早慶戦はいなかったので夏と比べると、クルーが僕と菅原と寺田(圭希、人4=滋賀・膳所)と杉田(陸弥、人4=栃木)と全員同期だったのですごいやりやすく、何言っても別に同期だしという面もありました。いま、最上級生なので後輩を引っ張んないといけないというのも考えもしながらやらないといけないですね。それは大変だなと思いつつも、それはそれで楽しんでいけたらなと。個人的に今回、早大学院生がすごく多くて、メンバー6人乗っています。さっきのミドルアップという話もあったのですが、最近学院生が多く入ってくるようになってきて、それもあって部も強くなってきていたのかなと。未経験と、内部と、他のスポーツ推薦とかの強い選手の三本柱でワセダは成り立っているので、インカレ(全日本大学選手権)のエイトはその漢字だったので、また継続できたらと。また新歓で学院生も引っ張ってきて、頑張っていきたいと思います。

石阪 僕も菅原が言っていましたけど、セカンドに乗る中堅層の厚さ、全体的な話しで言うときょねんのシーズン通してミドルがどんどん強くなってきています。僕は第二エイトの選考されている当事者だったので感じたのですが、ことしはすごく厳しい選考だったなと思っています。それは、夏みんな結構結果を出しているんですよ。すごい下からの追い上げもありますし、そういう意味で、まだ発揮できていないかもしれないけどポテンシャルとしては、第二(エイト)としてはワセダの中でかなり強い第二なんじゃないかと思います。個人的な話としては、きょねんの第二エイト、早慶戦で負けてから、着実に経験を積めて、ちょっとずつレースとボートを理解してきた感じはあります。それを早慶戦、コースではなくて川で難しいと思いますが、自分の経験をフルに発揮できたらいいなと思います。

――さきほどお話しにもありましたが、最上級生となり以前と比較して意識の変化などはありましたか

川田 僕は留学していたので、一歩部から離れたというのもあって、自分の立場をどうしたらいいかなと考えたときに、幹部にもつかないですし、ちょっと離れたところにもいたということで、責任感は持ちますけど、フランクな方向にいこうかなと思っています。責任感、責任感とか俺が部を引っ張るんだというよりも、どちらかというよりも後輩たちに寄せていきたいです。そこでメンタル的なケアなどもできたらと思っていて、それを目指しています。なるべく話を聞くとか。向こうでも苦労はあったのでそれを生かしていきたいと思います。

――下級生によく声をかけられるのですか

川田 ごはん行くとかそういう感じですね。そこで最近どうなのとか聞くとか。そこで別に『ああ余裕ですよ』とかだったら別に大丈夫だねとなります。ちょっと話聞くだけでも、自分もそういう経験があったので。先輩に最近こうなんですよ、とか辛い、とか話すと少し気が楽になると思います。風通しよくしたいなと。

菅原 ことしの後輩はきょねんとは違うんです。水上のタイムは不透明なところもあるんですけど、エルゴのタイムが実力の指標になって、0.1秒でも負けたらその人より下の順位で表記がでるんですよ。ことしの1、2年生は非常にスコアが良くて、僕たちかなりボトムスリーでトップの学年をやっているという状況です。そこでどうやって自分たちの価値を出していくかを考えたときに、後輩は引っ張られる先輩をエルゴのタイムで見るというのは、僕の経験上そういうことはなかったなと思って。その引っ張られていた先輩を見ていたのは(タイムが)遅い人間とか、自分とあまりタイムが変わらない人間とかではなかったので、どうやったら後輩を引っ張れる先輩になるのかなというのはすごい考えています。かなりクルーキャップの石阪がよくやってくれているのは、非常にPDCAをうまく回して、何でできていないのかを考えて、問題点考えだして、課題点見つけて、それをみんなで意識して、無意識にできるようということです。そうするとおのずと課題がつぶれるので。そしたら現状と目標へのギャップが埋まりやすい。明確に構造化されていない?

石阪 うん。

菅原 最初はかなり意識されていて、それは今までのクルーにはない感じだなと。それは、上がしっかりこういう風に意識してやっているからじゃないかなと思います。俺たちは、タイムとかは後輩のほうが強いし、速いし、全日本(選手権)優勝していた人もいるんで、俺たちも負けられないなという気持ちはある面で、そういう人をどうやってうまく漕がしてあげるかが俺たちの役目だと思っています。

石阪 そうですね。エルゴは後輩のほうが回すし、体力もあるので、きょねんのクルーキャップがやってくれたようなワンマンで何もかも教えてというのは僕にはできない。僕はその面でコンプレックスがあるといったらあれですが、まだちょっと吹っ切れてない部分があって、吹っ切っていかなくちゃいけないんですけど。だから、後輩を漕がせる。クルーとしては、あいつらが集まっているならもっとできなくちゃいけないので、個々人をどう上げていくかというよりは、何ができていないのかなというのを考えています。大学で漕いだという経験は間違いなく僕ら3人が一番あるので、そういう経験をフル活用して、上手いサイクルで課題を見つけてクリアしてというのを回そうと意識はしていますね。でもやっぱりがつがつ引っ張っていかなきゃいけないと思います。川田が言ったみたいに、こういうケアしてくれる人もいるので、もうちょっと引っ張っていけたら個人的にはいいなと思います。

――オフシーズンで個人的に強化したところは何ですか

菅原 僕はベースのアスリートとしての身体づくりをかなり意識しました。最後のシーズン、オフシーズン、身体を増やすのにいいので。体重は変わらないように、脂肪は増やさないけど筋肉は増やすというかなりベーシックなところに立ち返ってやりました。テクニックのほうもかなりベースをしっかり、感覚にいかないで監督(内田大介監督、昭54教卒=長野・岡谷南)に言われたように丁寧に、身体の動きからはいるように。上手な人を見て、その人と同じ動きができるように意識しました。

石阪 僕も体重はとにかく増やしました。ウエイトトレーニングのスコアも上がったので、そういう面ではいいオフ期間だったなと思います。あとは水上に関しては、バウサイ(バウサイド)で絶対誰か前にいるんですよ。その前にいる人に合わせたもん勝ちというか、合わせた方が早いので、とにかく誰と乗っても、その動きに合わせられるように、自分の漕ぎを確定しないというか、柔軟に、前に乗った人にはかちっと合わせるっていうのは常に意識してやっていました。

川田 僕も体重増やすのは意識して、少し増えました。また冬の練習は、僕バウサイなんですけど、ストサイ(ストロークサイド)の人たちがちょっとケガして、ストサイに駆り出されて、1か月半くらいストサイで漕いでいました。急に変わるので漕ぎづらいんですけど、ストサイの中のほうがバウサイの漕ぎよりできているところも見つけられて、自分の中なのですが、ストサイから盗んでバウサイに還元できるように意識していました。なので、バウサイに生かせるように、ストサイのなかでの強みを伸ばしたという感じですね。

「なぜかやっぱり戸田に来ていていました」(川田)

後輩と積極的な会話を心がける川田

――初めてあったときとお互いの印象に変化はありますか

菅原 僕もう川田さん7年目なんです。もうこの部全体だと、2番目か3番目に長い付き合いです。中学から一緒の人もいるので。印象(笑)。変わらないよね。

石阪 菅原は終始一貫してロジカルにやっていますね。後輩に話すときも説得力がありますし、食い違いがないというか、変なこと言わないので、同期もそうですけど、菅原の話は腑に落ちて聞いています。川田はさっき言ってましたけど、後輩に寄っていく感じ。優しい先輩という感じですね(笑)。

――お二人からみて石阪さんの印象はいかがですか

川田 ロジカルだよね(笑)。

菅原 同期でたぶん一番、頭がキレるやつなので。結構そういう感じです。あまり、いままでってそういうやつがクルーキャップになるってあんまりなくて、一番速い人か、一番ついてこいみたいな人でした。そういうのではないので、かなり新しい側面をもった人間がクルーキャップになったなというのが率直な感想です。かなり、うちの部には、根性論ばかりなやつがいないので、適材適所的なところがあります。彼がロジカルに考えてみんながやるじゃないですか。僕がそれをサポートして、後輩のメンタルのほうのケアを川田さんがするっていうのが役割として一番価値が出ると思います。

――クルーキャップはどのような経緯で選出されましたか

菅原 人事権を持った監督のトップダウンなので。

石阪 僕はなると思ってなかったです、クルーキャップ。就活帰り、スーツのポッケから携帯出したら、連絡がきていました。

――理由などは聞かれましたか

川田 僕が聞いたのは、最近(石阪が)リーダーシップを発揮してきていてという話でした。

菅原 でもこいつが一番結果出しているので、軽量級(全日本軽量級選手権)で3位に入ったし、夏も両方(全日本大学選手権、全日本選手権)で順位とっていますし。実力裏付けなんですよね。やっぱり、言うときに説得力はありますよねっていうのもあると思います。

――以前は自炊や自転車とおっしゃっていましたが、いまオフにしている息抜きや趣味はありますか。

菅原 結構それ深刻な問題で(笑)。最近オフって就活で消えない?

石阪 そう、最近はね。

菅原 月曜日は1日オフで、金曜日は午後からオフなんですけど、なるべくクルーに迷惑かけたくないので、そこは基本的に就活入れます。その反動で、俺は、日曜日は絶対外に飲みに行くようになったかな。それが週一の楽しみです。

川田 それは元からだよね。だいたい日曜日飲んで、就活始まる前は、月曜日の午前中つぶれちゃって、午後からちょっと動き出してという感じでした。金曜日の午後のほうがアクティブだったかも月曜日よりも。そんな回数行ってないんですけど、ボルダリングやりたくて。高田馬場の駅のすぐ近くにあって、老後の趣味にクライミングをやりたいので、じゃあボルダリングでもやろうかなと思いました。あとぶら下がったり、つかまったりするので、ちょっと活きるかなって。不安定な場所でちゃんと体支えないといけないので。

――漕艇部の方と一緒には行かれるのですか

川田 1回、4年生の人と一緒に行きました。あとは友達とですね。

――菅原さん、石阪さんはいかがですか

菅原 僕と石阪はギター弾くんですけど、最近は弾かないですね。

石阪 最近弾かないですね。僕は本当に趣味が音楽しかなくて。ライブも最近行ってないです。あったかくなってくると、ひとりで公園で、ピクニックするんですけど、そろそろその時期に(笑)。春来ましたね。

菅原 僕も阿二コーチ(阿二真樹テクニカルコーチ、平4理工卒)とよくサイクリング行くんで。そろそろそういうシーズンですね。

――どこへサイクリングに行くのですか

菅原 コーチとサイクリング行く時はいつもカレーを食べに行くんですけど、秩父のほうに。片道45分かけて。100キロ弱、コーチのうしろついてずっと走るというのは2回くらいしました。

――これから桜とかもきれいそうですね

石阪 お花見したいね。

――川田さんと菅原さんは早大学院のときから一緒ですが、何かエピソードなどはありますか

川田 僕、3年生を2回やってるんです。そのとき、大学でボート部はいるきっかけにもなったんですけど、留年決まって一週間後には東京都の強化合宿があって。へこんでいたのですが、なぜかやっぱり戸田に来ていました。そこに強化合宿のコーチがいるので、電話して、そこから学院(早大学院)の方のを手伝うようになって、そのとき菅原は全国選抜が決まっていました。あんまり回数は行けなかったんですけど、全国選抜も見に行って、それを見て自分もボート漕ぎたくなっちゃいました。その話を学院のときの人にしました。そしたら大学の監督から、僕がいることを知っていて留年だって知っていたので、じゃあうちで漕がしてやるよという言葉をいただいて、そのへんから大学のほうで練習させてもらえるようになりました。本当は大学所属じゃないのでだめだったと思うのですが、オックスフォード盾レガッタというレースに出させていただいて。夏、入寮して1か月2か月練習していたので、これはもうボート部、大学で入るしかないなと。それがやっぱり学院時代ではある意味印象に残っていますよね。

菅原 僕6位になったやつだ。言っていましたね、終わった後に「ボート漕ぎたい」って。確かに見ていたら漕ぎたくなるよね。

川田 自分がつけた順位より全然上の順位つけられたので。悔しい、うれしいけど悔しい(笑)。

――それでボートを続けようと

川田 試合に出られなくてもいいから学院で練習しようと思いました。そしたら大学から声がかかったのでちょうど。

――お三方で遊びには行かれますか

菅原 遊びには行かないけど比較的飲みに行く。過去にそういうことはあったかな。

石阪 日曜日の夜とかね。

菅原 日曜の夜とかは比較的飲む、というか飲める同期(笑)。行こうっていったら行く。好意的に、前向きに返答がきます。

「レースに対する覚悟と、レースに臨む覚悟をしたい」(菅原)

最後の早慶戦への思いを熱く語る菅原

――これからは早慶戦のお話をお伺いします。早慶戦まであと残り約1か月の段階ですが、現在の調子はいかがでしょうか

石阪 ポテンシャルはもっとあると思っています。スピードでは誰も満足していないし、前日まで満足しないメンバーだと思いますね。自分もそうですが、残りの8人の能力をどこまで引っ張っていけるかですよね。クルーキャプテンの責任感とか、ラストイヤーだからというのはなくて、単純に負けたくないです。というのも、クルー写真を撮ったときに結構良い写真が撮れて、これで勝てたらめちゃくちゃかっこいいだろうなと思いました(笑)。

川田 今は追い込み期間なのでみんな疲れているなと感じるんですけど、その中でもコントロールしなければいけないので。疲れていても身体は動きますし、気持ちが落ちてしまったら悪い循環になってしまうので、気持ちは上げていこうとしています。熱くなりすぎたら追い込むことはできても、速くなるという意味ではちょっと違うかなと思います。なので、熱くなりすぎずに、まだまだ速くなるように分析して、冷静さを持ってロジカルに考えていって、それをみんなで共有すればまだまだ速くなると思います。

菅原 2年前の早慶戦は結構不透明で、威勢だけいい感じがありました。何でバランスが悪いんだろう、キャッチがそろわないんだろうというのをしっかり洗い出さないまま本番に臨んでしまいました。パドルでごまかして、結局ベーシックがあまりできていないのにそれで試合に臨んでしまったのが、かなり大きな反省点だと思っています。今回は、石阪くんがどういうふうにしていきたいかという目標を立てて、現状との差を埋めるために課題点と問題点を出してステップアップして、BGCAを回していこうと話し合っています。なので過去よりはいまの方がいいという現状があるので、それは悪くないと思っていますね。このサイクルを繰り返して、あとどれくらいうまくなるのかなというのが問題で、僕は個人的にもうちょっと速くこのPGCAサイクルを回したいと思っていて、先週の課題がまだくすぶっていて、100パーセント改善されてないところもあるので、そういうのを徹底したいなと思っています。結構個人課題とかも残っていたりしていて、そこは自己責任で直してもらわないといけないですよね。そうじゃないと、これで勝てると思える自信満々のクルーに仕上げるのは難しいんじゃないかなと思っています。俺たちは求めているものが非常に高いというのがあって、それ相応に質を高めないといけません。いま練習をたたき込まれているのですが、個人的にはもっと漕いでもいいと思っています。いまは週に150キロ漕いでいるんですけど、200キロくらい乗ってもいいかなと思っています。個人的に正直ウエイトはやらなくても、午後はイージーに全員で合わせるだけとかでもいいかなと。

――現時点で挙げられるいまの課題は何でしょうか

菅原 僕たちが2週間前からずっとやっていたのは、隅田川は波がうねっているので、オールを低くすると当たってしまうんですよ。当たってしまうと、ローリング的に艇が揺れてしまって漕ぎにくくて。隅田(川)で艇が進みやすくするために、オールを水に当てないようにしようというもので、いまはみんなでオールを高く上げています。それはできるようになってきたのですが、次はみんなでオールを返すタイミングがあってないという問題があって。ストロークが非常に不安定なリズムで上がるので、そこは問題視されています。前ができていなくて、後ろで勝手に合わせてしまっているのが課題点ですね。課題点を挙げたらきりがないのですが、あとはボディスウィングかな。8人の体重は600キロくらいあるんですけど、600キロが一気に後ろに倒れるタイミングが合うと、後ろに艇が沈むんですよね。沈むタイミングが合うと、艇がピッチングして進みます。そこからドライブで漕いで、オールを入れて出して艇が進んでいるときに、フォワード中に止まらないようになるべくロスを少なくしたくて。そのために必要な課題として、ボディスウィングをみんなで合わせていかなければいけないですね。

石阪 俺はもう常にスピードが課題だと思っています。単純にスピードが課題ですね。遅いなと感じることは最近なかったんですけど、いまは良く言えば貪欲にスピードが課題だとすごい思いますね。

菅原 根幹がそこだもんね。いままでは前にかけようというように、かなり抽象論だったんですよ。前にかけても遅いクルーは遅いので、どうすれば速くなるかこのクルーは考えられていると思います。

――隅田川での理想的なレースプランは話し合われているのでしょうか

菅原 かなり触りの段階ですね。

石阪 考え中です。僕らは後ろからスタートして、最初はインコースなんですよ。インコース出たところで理論上、数字の上では並ぶんですけど、最初の時点では出られているじゃないですか。相手はその差をしっかり守ってくるわけですよ。それをできるだけ早い段階でつかまえてしまおう、くらいですかね。全然決まっていないです。

菅原 インコース、アウトコースで差がついている時点で何でこんなレースをするんだろうと僕はいつも思いますね(笑)。15メートルも差がついているのは非常にアンフェアだとかなり思います。ボートはインコースでもアウトコースでも先に出られていると、パドルが並び合っていて、パドルが入る前にちょっとでも出てて、そこから2人が同時に出るときは精神的優位が全然違うんですよ。今回は15メートルビハインドなので、かなり精神的には負けている状況なので、その差はかなり大きいと思います。

石阪 余裕が欲しいですね。遅いクルーって相手に精神的余裕を与えないために、最初は何が何でも出ようとするんですけど、でも遅いクルーなので負けるんですよ。なので、僕らはコンスタントが速いクルーになろうと。先に行って出ようと微妙なズレはあるんですけど、でも結局は変わらないので。

――セカンド勝利のために、ご自身のシートで求められてると考えている役割はありますか

石阪 もちろんありますよ。とりあえず声を出し続けます。前の人たちはバウが見えないし、漕いでいるかどうかも分からないと思うので、存在をアピールします。俺はいるし、俺はお前らを見ているし、艇の進行方向の前にいて、相手のこともずっと見てる。だから、安心してお前ら漕げよというのを常に自分が発信していかないといけないなというのは感じています。声出し続けていると酸素が減るので、漕ぐのに使う酸素も減ってしまってもしかしたら遅くなってしまうかもしれないけど、俺のパワーが20下がっても、他の7人の奴らが3ずつ上がっていって、1多く上がればそれでいいんですよ。そのプラス1が欲しいがために、声を出し続けています。それは昨シーズンから徹底していることなんですけど、レースでも僕は声を出し続けようと僕は思っていますね。みんなと艇が速くなればそれだけでいいと思っているので。/p>

川田 僕は、最初のシートは7番だったんですけど後ろに移動になって役割が変わったなと思っていました。いまは3番になっていて、ミドルフォア、バウフォアの両方のくくりに入っていて、4年生が後ろのシートに固まっています。石阪の言った通り、後ろから声を出して後ろから引っ張るという感じがあるので、そこで頑張らなきゃと思うのと、ミドルフォアはそこまでエルゴが回らないんですよ。そこでもかつ、また出さなきゃと思うので意外と3番はつらいと思っていたんですけど、でも両方被っているので、声とかで刺激を与えられるポジションですね。きつい分、逆にどれだけ自分が疲れていても、技術だけは落とさずになるべく同じ漕ぎをできるように意識しています。後ろの方は崩れてくると艇のバランスも悪くなってくるので、どちらにしろ後ろにリズムを伝えないと、2人もよく分からなくなってしまうと思います。漕ぎをなるべく変えないというのと、できるならミドルフォアも、バウフォアも盛り上げられるように意識しています。

菅原 石阪は後ろで声を出してくれているので、みんなが声を出してもコックスが言うタイミングもなくなってきてしまうので、どっちかっていうと2番である僕は石阪を励ますことの方が多いですね。石阪が頑張っている分、彼が20も下がらないように、15しか下がらないようにして、みんなが3ずつ増えれば、プラス1以上になるじゃないですか。そういうのはすごい意識しています。僕は2番なので、彼みたいな役割はなくて、バウペアでしっかりリズムを刻んで、バウペアが頑張ったら、前が「サンキュー」と言ってくれるのにすごい価値があると思っています。後ろが頑張って前が良くなると、艇全体が良くなるので、そこは結構責任があるなと思っています。レースで苦しい展開になったときに、後ろは例えば、15メートル出られているときに、僕らは相手のキャンバスが見えるんですよ。でもストフォアは後ろを見ないと見れないじゃないですか。俺たちがダメだと思い始めるとストフォアもそうなってしまうので、4年生が後ろ3人として乗っているのはかなり戒めだなと思っています。勝てるまで漕げよという感じがありますね。学年がまとまってしまったので、ここが核となって艇を進めないといけないかなとすごく思いますね。

――早慶戦は数ある大会の中でもご自身にとってどのような位置づけにありますか

川田 僕にとって、早慶戦は高校も含めて3回目になるんですけど、隅田川でまだレースをやったことがなくて。高校で出たときは震災があった年だったので戸田開催になって、おととしに大学生として出たときも戸田開催だったので。今回は自分がワセダで漕ぐのも最後ですし、隅田で漕げるのも最後ですし。僕は隅田で勝ったことも負けたこともないんですよ。勝ったときの喜びとかもまだ知らないので、それをどうしても味わいたいので選考は負けられないなと思っていました。あと、高校のときは早慶戦が一番楽しかったレースだったし、インカレ(全日本大学選手権)やインハイ(全日本選手権)とは違って、ワセダ全体がより応援してくれているのを感じています。学院が6人も乗っているので、学院のOBの方とかもすごい注目してくれるんですよ。なので、一番楽しいレースですし、僕は隅田で漕いだことがないので、勝てば全勝ということになりますね(笑)。とにかく楽しく漕いで勝ちたいです。

石阪 自分の中で一発勝負感がすごいんですよね、去年一回しか出ていないし、ことし漕いだらもう二度と隅田で漕ぐことはなくて。レースだったら予選があって、敗者復活戦があって、準決勝も決勝もあって、1つの大会で4回もがちなレースができるんですけど、隅田はできないじゃないですか。一発勝負感が本当にすごくて、経験ではどうにもならないところがあります。だから何十年分のデータを掘り返すんですけど。その中でも一番大事だと思っているのが覚悟だと思います。僕は去年覚悟が決まらなくてそれで悔しい思いをしたんですけど、レースは1回しかできなくて、でもそのレースのためにプランを組んで、ここでこうしようと正解がどうか分からないものを正解としてもっていく覚悟です。これはすごい勇気がいることなんですけど、自分たちのやってきたことは絶対正しいんだと思わないとやっていけないんですよ。きょねん僕は長さにビビッて水中で出さなかったんですけど、そこで抜かれちゃったというのがあって。ことしはもう本番までに全員に覚悟をさせようと思っています。覚悟させなきゃいけないし、自分でも表さなきゃいけないし、やってるなというのを見せないといけないレースだと思っています。

菅原 僕も高校で出たときに隅田川で負けて、おととしは川田さんと乗って沈没して、隅田でレースができなくて戸田で負けて。1年のときはセカンドは勝って対校は負けて、そのときは大差で負けていたので個人的に隅田川はトラウマなんですよ。高校で負けたときに、OBの方からめちゃくちゃバッシングをくらってしまって、かなり精神的にぼこぼこにされました。それでボートが嫌になったんですけど、大学で続けようと思った理由が、早慶戦で勝っておきたいというのがあって。早慶戦は絶対出ようと思っていたんですけど、留学に行くと、2回しかチャンスがないと。入学したときは隅田で漕げなくて戸田で負けてしまって、今回はシートを確保できたのですが、このクルーには早慶戦で負けている人間が多いんですよ。僕の1個下の学年の人たちも負けていて、いまの1年生は高校のときに勝っているのですけど。早慶戦で勝った代、負けた代っていうのは色濃く残りますね。やっぱりああやって歴史に名を刻めるレースもないですし、僕たちにもインカレの対校エイトとは違ってチャンスが回ってくるので、すごい僕は楽しみにしているのですが、石阪の言っていたように覚悟を決めて乗るということは、簡単なことではなくて、めちゃくちゃ怖いんですよ。これだけ気持ちが入って色んなことをやって、いままでやってきたことを振り返って、いまの現状のクルーに対してこれで臨まなければいけないという覚悟を決めるというのはすごい怖くて、これからどんどん良くなるだろうという楽観視できないのが現状にあります。僕にとって早慶戦と言うと一言でトラウマ(笑)。

石阪 初めてじゃない?ネガティブ系な言葉が出るの(笑)。

菅原 本当に嫌いで、隅田川に行くと、あのうねりを見るだけで帰りたくなります。懇親会でもケイオーが意気揚々と校歌を歌っているところを見て、なんでこんなに頑張ったのに負けるんだろうと思いました。向こうもかなり頑張っているんだろうけど、かなり力も入れていて。あっちは僕たちよりもエルゴの平均も速いので、向こうの方が速いのに、僕たちよりも先に出てスタートするというのはかなり不安な状況なんですよ。これはかなり恐ろしい状況だと思っていて、それに打ち勝つ努力をしなければいけないと思っていて、覚悟は早く決めないといけないなと思っていますね。レースに対する覚悟と、僕はレースに臨む覚悟をしたいなと思っています。いま覚悟を決めればうまくなってより勝ちに近づくと思うので、明日のきつい練習も頑張らないとね。

石阪その通りだね。

――では最後に早慶戦に向けての熱い意気込みをお聞かせください

川田 僕はことしこそ隅田で漕ぎます。ちゃんとことしこそ、ですね。

石阪 僕は1本目から漕ぎきるまでに、「これは勝つな」と思えるようなレースがしたいです。

菅原 勝ったらこのメンバーはじいさんになっても一生この話ができると思います。いつもそういうOBをみていていいなと思うので、そういうクルーが欲しいですね。

――ありがとうございました!

(取材・編集 新庄佳恵、加藤佑紀乃)

◆菅原拓磨(すがわら・たくま)(※写真左)

1994年(平6)10月7日生まれ。東京・早大学院高出身。国際教養学部4年。ポジションは第二エイトの2番。大学時代、いまだ隅田川で勝てたことがないと語る菅原選手。ラストイヤー、早慶レガッタ懸ける熱い思いをたくさん話してくださいました!

◆石阪友貴(いしざか・ともき)(※写真中央)

1994年(平6)9月8日生まれ。東京・早実高出身。政治経済学部4年。ポジションは第二エイトのバウ。実力とロジカルさを兼ね備えている石阪選手。課題を冷静に分析し、勝利を確実に引き寄せていくクルーキャップの手腕に注目です。

◆川田悠太郎(かわだ・ゆうたろう)(※写真右)

1993年(平5)7月16日生まれ。東京・早大学院高出身。国際教養学部4年。ポジションは第二エイトの3番。温厚な表情で、先輩と後輩の風通しをよくしたいと語る川田選手。後輩を連れてご飯に行き話を聞くこともあるのだとか。この3人のバランスがとれているからこその強みもあるのでしょう!