1、2年生の力が試される大会、全日本新人選手権(新人戦)の2日目を迎えた。予選で敗者復活戦へと回ることになった選手たちにとっては準決勝に進むための大事な一戦。しかし、結果は明暗分かれるものとなった。女子シングルスカル、男子ダブルスカルは惜しくも敗者復活戦で敗退。女子ダブルスカル、男子舵手付きフォアは準決勝進出を決めた。
未経験クルーとして挑んだ男子ダブルスカル早大B
まず先陣を切ったのは女子シングルスカルの工藤かれん(スポ1=愛媛・松山東)。スタートから3位につけると、なかなか前の艇をとらえられず苦しい展開に。終盤に追い上げるも届かず、今レースで敗退となってしまう。続いて男子ダブルスカル早大Aと早大Bが出艇したが、両艇無念の結果となった。早大Aは500メートル地点では4位だったが、徐々に前艇との差を詰め3位に浮上する。終盤はラストスパートを仕掛け後続を突き放したものの、その後は順位を上げることはかなわずにフィニッシュ。未経験クルーの飯尾健太郎(教1=愛媛・今治西)、伊藤光(文構1=東京・神代)で組まれた早大Bはスタートから出遅れてしまうと、中盤、他艇との差は広がってしまう。そのまま追漕するも距離を詰めることができず、5位に終わった。惜しくも準決勝を前に去ることとなった3艇だが、「内容はとても良かった」(正木丈治、商1=米国・ウッドブリッジ高)と前向きな一面ものぞかせ、今大会での収穫もあったようだ。
劇的なラストスパートを見せた男子舵手付きフォア
きのうの予選では僅差で2位となり、敗者復活戦に回ることになった北村綾香(スポ1=滋賀・膳所)・渡邊楓(文1=新潟南)ペアの女子ダブルスカル早大B。序盤、若干他艇に先行を許すも、すぐに立て直す。「スタートで他艇に出られても、焦らずに自分たちの漕ぎをしっかりしよう」(渡邊)というレースプラン通り安定した漕ぎを見せ、大差をつけ首位でゴール。続いて男子舵手付きフォアが出艇。スタートで2位につくと3位との差を広げ、完全に前艇をとらえる。ラストでは驚異的なスパートで見事に逆転。1位でフィニッシュし、ワセダの底力を見せた。この2艇はあすの準決勝へと進む。
明暗分かれる結果となってしまった敗者復活戦。結果、きのう勝ち上がったクルーも含め、全5艇があすの準決勝へと進むこととなった。準決勝への切符を逃した仲間の思いも乗せて、若きクルーたちはあすの戦いに挑む。前回は成し得なかった新人戦男女アベック優勝を果たすことはできるのか。ワセダの新人の躍進に期待がかかる。
(記事 吉田安祐香、写真 寒竹咲月、黒田菜々子)
結果
▽男子部(敗者復活戦)
【ダブルスカル】
早大A
S:正木丈治(商1=米国・ウッドブリッジ高)
B:山口幹太(法1=青森)
7分26秒29【3位、敗退】
早大B
S:飯尾健太郎(教1=愛媛・今治西)
B:伊藤光(文構1=東京・神代)
7分46秒27【5位、敗退】
【舵手付きフォア】
C:片所宏介(社2=東京・早大学院)
S:尾崎光(スポ1=愛媛・今治西)
3:井踏直隆(文構1=東京・早大学院)
2:得居亮太(法2=東京・早大学院)
B:金子怜生(社1=東京・早大学院)
6分48秒78【1位、準決勝進出】
▽女子部(予選)
【シングルスカル】
工藤かれん(スポ1=愛媛・松山東)
9分02秒94【3位、敗退】
【ダブルスカル】
早大B
S:北村綾香(スポ1=滋賀・膳所)
B:渡邊楓(文1=新潟南)
7分49秒02【1位、準決勝進出】
コメント
S:飯尾健太郎(教1=愛媛・今治西)
――きょうのレースを振り返って
僕ら2人ともクルーが未経験なんですけど、僕の相方の伊藤光(文構1=東京・神代)が今大会が初レースでした。僕自身は初めてのレースの時は緊張していたんですけど、結構根性あって、あまり緊張することもなくレースに取り組んでくれたのですごく楽しく大会に臨めたかなと思います。
――どのようなレースプランで臨まれましたか
スタートで出てコンスタントで長いストロークで大きく長く漕いで、ラストスパートでまた上げていくという基本的なレースプランだったんですけど、初めてにしては普段通り漕げたのではないかと思いますね。
――今後へ向けて見えた課題は
ボートはつらい競技というのを味わうレースになったんですけど、未経験なのでまだハンデはあると思いますが先輩方は未経験でもはい上がって対校クルーに乗っている方もいますし、そういう人を見て基本的なことをもう一回詰めていければいいかなと思いました。
――ボートを大学から始められたきっかけは
僕自身、高校の時に硬式野球をやっていたんですが、力不足であまり活躍できませんでした。大学で野球続けるかを迷っていたんですけど、漕艇部には僕の高校から多くのOBが漕艇部に入っていて高校の同級生もいるし、硬式野球をやっていて大学からボートの世界に入ったという人もいるし、良い刺激をもらえるような気がしてまた大学で熱くなれるものが欲しかったので、漕艇部に入部しました。
――実際にボートを始めてみていかがですか
正直、野球の方が絶対つらいと思っていたんですけどボートの方が体力面ではきついな、というのはずっと感じています。
――2000メートルのレースはきついのでしょうか
高校生のレースは1000メートルと聞いていたんですけど、大学生から2000メートルになって、先輩方から聞いたようにきつかったですね。
――今後の個人的な目標を教えてください
僕自身、入部に大きな影響を与えたのが早慶戦(早慶レガッタ)で、大きく心を動かされたので、上級生になったときに早慶戦の対校クルーとして活躍できるような選手になるということが最終目標です。
S:尾崎光(スポ1=愛媛・今治西)
――きょうのレースを振り返っていかがですか
きのう予選では、自分たちがまとまれなくて焦ってしまったので、きょうは一体感を出そうということを目標に漕ぎました。今回も最初(他艇に)出られたんですけど、そこで焦らず、全員で追いついていこう、追いかけていこうという意識を共有できたので、最後、差せるというかたちにつながったのではないかなと思います。きのうより良いレースができてよかったです。
――きのうよりタイムが上がりましたが、きょうのタイムについてどう考えていますか
自分たちは、まだあと8秒ぐらい速く漕ぐということを目標にしていました。きのうより良いレースができたっていうことは、あしたの準決勝、決勝に向けての自信にはなると思いますが、まだまだ上げないと戦っていけないと思うので満足はしていないです。
――レースプランについて
プランとしては、みんなで最初の500メートルから1000メートルを全員で攻めて、一番を取りにいくつもりでした。しかし、立大がレースプランとしてワセダに水あけるまでコンスタントに入らないとしていたらしく、そのまま出られてしまったので、そこは少し想定外でした。ただ、ことしのワセダの象徴である後半の粘りで、攻め切れたかなと思います。
――ラストスパートについて
このクルーの良いところが、まとまりがあるということです。みんなが信頼し合っている部分があったので、全員でラスト400メートルから差しにいくんだという気持ちで、レートを上げて、立大を攻めることができたと思います。
――きのうの結果を受けて、きょうのクルーの調子はいかがでしたか
きのうそれぞれが自分の反省点を10回以上何回も何回もビデオを見て確認しました。やはり悪いレースこそ得られるものがあるので、そのレースからいろんなものをそれぞれが受けて、それらを改善して漕ぐことができました。きのうより精神的にも攻める意識があったので、良い調子につながってきているのではないかなと思います。
――あすに向けての意気込みをお願いします
あす、2レースあるんですが、僕たちの目標は優勝なので、準決勝で何が何でも1着を取らないと決勝には行けないです。これまでやってきたように、前半から勝負を仕掛けて、攻めて、最後まで諦めない漕ぎをすることが目標です。
工藤かれん(スポ1=愛媛・松山東)
――きょうのレースを振り返っていかがですか
自分の中できのうよりも、攻めるというか、粘り強いレースができたので良かったと思います。
――きのうからタイムを上げていましたが、何かきのうから変更した点はありますか
きのうは途中で疲れてしまってリズムが悪くなってしまうところがあったので、1000メートル、1500メートルのところでもう一度気持ちを入れ直すようにとコーチと話して、それを意識していました。
――きょうの具体的なレースプランを教えてください
最初の500メートルをとにかく頑張って漕いで、その後もとにかく頑張ってという感じでした(笑)。上の2人とはきのうのタイムで差がついていたので、そこにできるだけついていくつもりでした。4位の人にはきのうタイムで負けていたのですが、その選手と競ることができたらと思っていました。
――シングルに変わるにあたってどのような練習をしてこられましたか
もともと高校ではシングルで漕いでいたので、やりやすいというのはありました。私は夏に骨折でほとんど漕げていなかったので、体力を戻せたらいいなというのと、エントリーのキャッチの部分をいかにスムーズに水をつかむかというところです。
――今大会を振り返っていかがですか
一番は悔しいという気持ちです。同期も先輩もすごく速い中で、自分はまだまだだなと感じました。ただ、これから私たちは冬のシーズンに入りますし、冬の課題も見つかったので、頑張っていきたいと思います。
――今後の目標を教えてください
まず、私の課題としては筋力と体力だと思うので、冬のウエートトレーニングを頑張って良い体を手に入れたいと思います。来年の夏は私も勝てるように頑張ります。
S:正木丈治(商1=米国・ウッドブリッジ高)
――レースに臨むにあたって主にどの部分を意識して練習していましたか
新人クルーということで、インカレ(全日本大学選手権)ではオックスフォード盾レガッタに2人共乗っていてスイープ(オール)でずっと漕いでいました。久しぶりのスカル種目ということで慣れてないということもあり、組み始めた当初は漕ぎもバラバラで大会にも出られる状態ではなかったので、重要視したのは基礎の基礎から固めてやるということでした。コーチの方々から初歩的なことからアドバイスをいただいて、基礎から組み立てていきました。
――予選から修正した部分はありますか
予選ではレースのタイムを見た時に、500(メートル)から1500(メートル)の間の1000メートルの中間で大きくタイムが落ちたということが見られたので、きょうは序盤から中盤にかけてずっと粘っていこうというのを意識していました。レースを実際に漕いでみてそれが実現できて、きのうよりもタイムを14秒上げることができて良かったかなと思います。あと、ラストスパートに関してもきのうはどうしても疲れとか焦りがあって当初の予定ではレート38というのがあったのですが出すことができなくて、36くらいで終盤通すことになってしまってそこも大きな反省点でした。一方できょうのレースではきのうよりも疲れはあったものの気合いで何とか38で通すことができて、そこで3位になれて4位と大きく差を広げることができたんじゃないかなと思います。
――レースプランはどういったものでしたか
僕らはラストスパートで一気に離すというのを意識していました。スタートでできるだけ頭を取って出て、序盤から中盤にかけては大きく出ることはせず徐々に離していって、自分たちより早く出ている艇があれば付いていって、一緒だったらラスト500メートルあたりで一気に追い上げて離すというレースプランでした。
――きょうのレースを振り返っていかがですか
予選を終えた後のミーティングで見つけた反省点とかはきょうのレースできちんと修正できて、結果としては3位で終わってしまったのですが内容はとても良かったと思います。1日しかたってないですけど、大きく成長が見られたと思います。
――生かしていきたい点は見つかりましたか
良かった点がたくさん見つかったのもあるのですが、反省点もありまして、ことしの冬にまたスカル種目を漕ぐ機会が多いと思うのでそこで大きく技術的にもフィジカルメンタル的にも成長して、来年の新人戦やインカレにつなげていけたらと思います。
――来季に向けて意気込みをお願いします
来季からスカル種目だけでなく早慶戦に出られるような選手に育ちたいと思います。
B:渡邊楓(文1=新潟南)
――準決勝進出おめでとうございます。きょうのレースを振り返ってみていかがですか
きのうはすごく惜しいレースで、きょうは絶対に準決勝へ上がろうと2人で話していたので無事上がることができて良かったと思います。
――レース前に話し合われてしたことはありますか
私たちはスタートが弱かったので、スタートで他艇に出られても、焦らずに自分たちの漕ぎをしっかりしようという話をして、水中をコンスタントに粘り続けるというプランを話していました。
――レースプラン通りの展開をすることはできたのでしょうか
実際はスタートで出られてしまったのですが、そこから粘って1000メートル手前では1位になって、そこからはコンスタントにいけました。そのままスパートにも良いリズムで入れたかなと思っています。
――2位と10秒差をつけてのゴールでしたが、ご自身のタイムについてはいかがですか
高校生相手だったので、大学生の意地で勝たなきゃいけないなと思っていました。スタートは高校生に負けていましたが、自分たちの漕ぎをできたかなと思います。
――あしたに向けての修正点はありますか
展開としてはきのうの方が他艇と競っていたので、きょうはぶっちぎりで勝とうと思っていました。なので、心の余裕があればもう少し追い込むことができたと思うので、そこが課題ですね。
――あしたの戦いでカギとなってくるものは何でしょうか
2人の動きが、きのうの予選ときょうの敗者復活戦でまだ完全に合っているとは言えなかったです。ただ1日目より2日目の方が合ってきてはいると思うので、動きを合わせてエントリーから一気に水をつかんでいきたいです。あと、スタートで出てそこから粘り続けるのが目標ですね。
――ずばりあしたの目標は
最終日は2本漕ぎたいので、準決勝を勝ち進んで、決勝で入賞したいです。
――優勝は狙っていきたいですか
それはちょっとビックマウスになってしまうので、言わないでおきます(笑)。
――最後にあしたに向けての意気込みを一言お願いします
明日はワセダのAクルーとBクルーが同じ組となるのですが、同じ大学だからって気を抜かずに、最後まで漕ぎ抜いていきたいと思います。