全日本選手権(全日本)もいよいよ3日目を迎えた。表彰台を狙い白熱したレースが行われる中、準決勝に進出した男子舵手なしペアと男子舵手なしフォアは惜しくもあすの順位決定戦へ回ることに。敗者復活戦に臨んだ女子舵手なしペアは順位決定戦へ、女子エイトは他艇の猛追をかわし決勝へと駒を進めた。男子エイトと女子舵手なしクォドルプルは準決勝を見事に突破。男子エイトは20年ぶりとなる決勝進出を決めた。
予選では思うような漕ぎができず敗者復活戦に臨んだ女子舵手なしペア。序盤は先頭集団に食らいつくも、中盤から切り替えがうまくいかず少しずつ離されてしまう。その後も差を詰められないまま3位でゴール。それでも「課題を改善できた」(渡邊楓、文1=新潟南)と予選からタイムを約10秒縮めてのレース展開となり、あすの順位決定戦では上位入賞を狙う。続いて行われた女子舵手なしクォドルプル準決勝ではスタートから頭一つ飛び出すと中盤以降、一度も先頭を渡すことはない。終盤、明大の猛追に遭うも振り切ってフィニッシュ。安定した漕ぎを披露し、決勝へと駒を進めた。きのうの敗者復活戦で息の合った漕ぎにより準決勝進出を決めた男子舵手なしペア。プラン通りスタートでは積極的に攻めるも第3クオーターから艇の伸びが落ちてしまう。一時は最下位となるも、ゴール間際でのスパートが光り順位を一つ上げてゴール。順位決定戦に回ることになったものの「良いコンディションになってきている」(有田雄太郎、法2=東京・早大学院)とあすに向けて意気込みは十分だ。
意地を見せつけた女子エイト
準決勝に挑んだ男子舵手なしフォアはスタートで頭を取ることができず、その後も前艇を追う苦しいレースを展開。ラストスパートを仕掛け順位を上げたものの決勝進出とはならず、順位決定戦へと回ることに。表彰台を狙っていただけにレース後は悔しさをにじませた。続いて登場したのは、敗者復活戦に回った女子エイト。決勝進出のためには1位通過が求められた。「絶対あしたにつなげる」(佐藤紫生乃、スポ3=宮城・塩釜)と強い思いで臨んだレースはスタートからトップに躍り出るも、その後は横並びとなり接戦に。最後まで法大と競り合うも粘りの漕ぎで先頭を守り切った早大が決勝への切符を勝ち取った。最後に出漕したのは全日本大学選手権(インカレ)を制した花形種目・男子エイト。インカレ王者は全日本の舞台でも勢いを落とすことはなかった。スタートから接戦となるも、リズムをつかみ自分たちのレースに持ち込んでいく。ラストは社会人クルー相手にも堂々のトップフィニッシュを果たし、20年ぶりに決勝進出を決めた。
20年ぶりの決勝進出を決めた男子エイト
早大の勢いは止まらない。あすは3艇が順位決定戦で上位入賞を目指し、4艇が表彰台の頂点を確実に狙いにいく。大学漕艇界を制した女子部は2艇が決勝進出。フレッシュな顔ぶれで臨む男子舵手付きペアは全日本という最高峰の舞台でどこまで躍動できるか注目だ。そして男子エイトは49年ぶりとなる優勝が懸かっている。最終日、4年生にとっては泣いても笑っても最後のレース。「最高の結果をつかんで終わりたい」(中村拓、法4=東京・早大学院)。インカレ覇者による真の『日本一』への戦いが、ついに幕を開ける。
(記事 黒田菜々子、写真 久野映、須藤絵莉)
結果
▽男子部(準決勝)
【舵手なしペア】
S:有田雄太郎(法2=東京・早大学院)
B:得居亮太(法2=東京・早大学院)
7分16秒54【3位、順位決定戦へ】
【舵手なしフォア】
S:東駿佑(政経2=東京・早大学院)
3:石橋広陸(スポ2=愛知・豊田北)
2:木金孝仁(社3=東京・早実)
B:石阪友貴(政経3=東京・早実)
6分50秒23【3位、順位決定戦へ】
【エイト】
C:中村拓(法4=東京・早大学院)
S:長田敦(スポ4=石川・小松明峰)
7:角南友基(スポ4=岡山・関西)
6:石田良知(スポ2=滋賀・彦根東)
5:是澤祐輔(スポ3=愛媛・宇和島東)
4:藤井英貴(スポ4=東京・本郷)
3:内田達大(スポ2=山梨・吉田)
2:竹内友哉(スポ3=愛媛・今治西)
B:和田優希(教4=滋賀・膳所)
5分58秒05【1位、決勝進出】
▽女子部(準決勝)
【舵手なしクォドルプル】
S:土屋愛(スポ4=新潟・阿賀黎明)
3:榊原春奈(スポ4=愛知・旭丘)
2:米川志保(スポ1=愛知・旭丘)
B:木野田沙帆子(スポ2=青森)
6分52秒24【1位、決勝進出】
▽女子部(敗者復活戦)
【舵手なしペア】
S:渡邊楓(文1=新潟南)
B:工藤かれん(スポ1=愛媛・松山東)
8分20秒40【3位、順位決定戦へ】
【エイト】
C:亀本咲季子(人3=埼玉・浦和一女)
S:佐藤紫生乃(スポ3=宮城・塩釜)
7:石上璃奈(スポ2=長野・下諏訪向陽)
6:木下美奈(スポ2=山梨・富士河口湖)
5:波多野響子(教3=福岡・東筑)
4:土井鈴奈(教3=埼玉・浦和一女)
3:青木華弥(教1=東京・本所)
2:田口えり花(商2=埼玉・浦和一女)
B:北村綾香(スポ1=滋賀・膳所)
7分07秒08【1位、決勝進出】
コメント
C:中村拓(法4=東京・早大学院)
――きょうのレースを振り返っていかがでしたか
予選で勢いがあって、自分たちの普段通りのローイングというか、ちょっと漕ぎが短くなってしまう部分があったので、そこを修正していこうというところでしっかりスタートからコンスタントで良いリズムをつかめて、良いドライブで自分たちのローイングができたと思います。その点がしっかり結果に出たかなと思います。
――レースプランはどのようなものでしたか
スタートには結構自信を持っていたので、あまり力んで勢いでいき過ぎないようにしっかりと淡々と進めていく中で、良いコンスタントにつなげました。あとはしっかりと自分たちの勝負どころやポイントで決めていって。コンスタントでしっかり良い長さで、コンスタントで勝負していくというイメージでやっていました。
――今回は前半から横並びでしたが、他大学の印象はいかがでしたか
あまり意識していなかったのですが、中部電力が予想以上にスタートで来て、ちょっと苦しいレースになるかなと思っていたのですが、中盤のコンスタントで自分たちの方が進んでいたので、怖さはなかったですね。あまり周りを気にするというよりかは、自分たちの漕ぎに集中していました。
――タイムをご覧になってみていかがですか
悪くはないと思うのですが、ちょっとブレードがばらついたりとか、相手より出た後にゆるんだりという反省もあったので、まだまだ伸ばせるのではないかなと感じました。
――今回のタイムは1位日大、2位早大と大学生の勢いがありますが、社会人クルーの印象はいかがですか
本番というか一番プレッシャーのかかるところですごく良い漕ぎをしてくるので、まだまだ油断できないという感じがしますが、やはり日大が出ているなという印象を受けるので、インカレ(全日本大学選手権)決勝のような苦しい展開にはなると思うのですが、自分たちの漕ぎができれば勝てると思うので、そこにフォーカスできればと思います。
――インカレから全日本選手権(全日本)までの間はどのような練習をされていましたか
もう一回しっかり体力的に上げていこうというところが一つと、あとは日大に比べてブレードワークとか動きのまとまりというところが劣っていたので、そこをもう一回フェザーターンとかエントリーに向けての軌道というのをしっかりと全員で合わせていくというところですね。
――20年ぶりの決勝進出ということですが、率直なお気落ちは
まあ嬉しいですね(笑)。嬉しいですけど、これで終わったら情けないので、さっきもみんなと話したのですが、もう一回しっかり良い準備をして、最高の漕ぎをして最高の結果をつかんで終わりたいと思います。
B:石阪友貴(政経3=東京・早実)
――順位決定戦に回った率直なお気持ちは
残念ですね。インカレで順位決定戦に回って全日本は絶対に表彰台を狙おうと言っていたのでただただ悔しいですね。
――スタートのタイムが予選よりも落ちてしまいましたがいかがですか
風です。スタートはそこまで悪くはないとは思っています。ただ逆風だったのでそこは関係ないかなと思います。
――レースプランはどういったものでしょうか
立大が相手になるだろうという話はしていて。500(メートル)で立大の頭を取れればいいかなと思ったので、まず頭を取ってそこから500(メートル)で全員で足蹴りをしっかり、切り替えをしっかり決めて持っていこうという話でした。
――レースを振り返っていかがですか
いろいろありますけど、いま振り返ると500(メートル)で頭を取れなかったのは大きかったかなと思います。向こうに先に仕掛けられてしまったのもあるのですが、頭を取れずに自分たちの漕ぎができずにっていうそこで悪い循環にはまっていく感じがあったかなと思います。
――あすのレースに向けてカギとなる部分はどこにあるとお考えですか
自分たちの漕ぎが出せるか出せないかだと思います。逆風に弱いので、それにどう対処していくかだと思います。
――クルーの強みはどこにあるとお考えでしょうか
まとまるところはまとまれるっていうのを強みにしていて、きょうはその強みを出していこうと話し合ったのですが、少し及ばずにっていう感じでした。
――あすに向けて意気込みをお願いします
5位から8位を決める戦いですけどしっかり1位で、今シーズン僕は最後なので来年もあるので次につながるようなレースができたらと思います。
S:佐藤紫生乃(スポ3=宮城・塩釜)
――本日のレースを振り返っていかがですか
きのうは端のレーンだったので反対側の状況が分からず、自分たちの順位も確認できない状況で焦りがあったのですが、今日は競る相手が隣に見えていたので長く強くということを一番に考えて漕ぐことができました。それと、きょうは本当に落とせないレースだったので、9人を信じ、500メートル地点で頭を取ることを意識して、もし取れなくても落ち着いていけば大丈夫だと思っていました。そこはぶれることはなくできたので良かったと思います。
――本日のレースプランはどのように考えていましたか
長く強く漕ぐこと、きのうは逆風で(レートを)34のリズムに落としていたのですが、きょうは36のリズムを水中でつくること、そして切り替えの後にそのままのリズムで漕ぎ通すことの3つを意識していました。
――クルーの調子はいかがでしたか
朝の練習ではみんなで声を出して盛り上げていこうということで、みんなが後ろからとても盛り上げてくれました。良い意味で調子に乗るとそのままぐんぐん伸びていけるクルーですごく楽しく漕ぐことができたので良かったです。
――きのうから大幅にタイムを上げていましたが、その要因は
水中のリズムでレートを上げるというところがきのうとは大きく変わりました。あとはリズムを36に上げたのですが、それを高いとか思わずに「やるぞ」という気持ちで、この一本に懸ける、絶対あしたにつなげるという気持ちを持っていたことです。技術的に良くなったところもあるのかもしれませんが、みんなで声で盛り上げて明日につなげようという気持ちの面で変わったところが大きいです。
――法大と競る展開になりましたが
予選のタイムは少しだけ負けていたのですが、きのうの私たちの漕ぎはこれ以上ないくらいに良くないものだったので、あまりネガティブにならず攻める気持ちを持って楽しんで漕ぐことができました。
――最後にあしたへの意気込みをお願いします
私たちのクルーは(インカレが終わってからの)2週間で仕上げるという難しいものでした。その中で予選では負けてしまって敗者決定戦に回ることになってしまったのですが、経験を積むという面では他の相手より多く漕ぐことができて良かったと思っています。1本多くレースを経験して、数を追うごとに伸びていくことができると思っていますし、やるべきことはやってきたので、9人を信じてそれを明日さらに良くして、敗者復活からの優勝を狙いたいと思います。他のクルーも私たちエイトも優勝して、これがゴールではなく新人戦(全日本新人選手権)や次のシーズンにつながるような良いスタートにしたいと思います。
S:有田雄太郎(法2=東京・早大学院)
――きょうのレースを振り返っていかがですか
きょうのレースは全員格上で、社会人だったりインカレで負けていたりする相手だったので前半で出すしかないということで、先行逃げ切りのかたちを取ろうとしたんですけど、1000(メートル)はうまくいったんですけど後半落ちてしまって、最後も置いていかれてしまったというかたちでした。でもきょうこの1000(メートル)ができて負けてしまったということは実力が足りなかったと認めざるを得なかったという反省はあったんですけど、またあしたに向けてしっかり良いコンディションにはなってきているので、あしたまた頑張りたいと思っています。
――強豪のそろう組でのレースとなりましたね
良い意味でも悪い意味でもようやく全日本っぽい戦いになったなと感じました。社会人にも1艇勝てたことは嬉しかったですし、一橋大には負けていたので勝ちたいなという気持ちで臨めたので、楽しかったですね。
――中盤からの追い上げを見せましたが、何か意識されたことは
第3クオーターで落ちてしまったので終盤ここで全力出さないと後悔するなと思いながら2人で息そろえてやったのが、後半のラストスパートだったかなと思います。
――きのうよりタイム自体は上がりました
きのうは自分たちが出ていたクルーだったのでそんな最後まで攻めることはなかったんですけど、きょうはずっと追うかたちだったので、必然的に上がったのかなと思います。でも、コンディション的にはきょうの方が悪かったのでその分きのうよりは自分たちの実力が出せたのかなとは思います。
――あすの順位決定戦へ向けて意気込みをお願いします
あしたの順位決定戦は、とりあえずいまタイム1位なので3レーンでしっかりと1位を決めて最後は1位で終わりたいなと思います。
S:渡邊楓(文1=新潟南)
――きょうのレースを振り返っていかがでしたか
きのうのレースで課題がいっぱいあったのですが、その課題を改善できたと思うレースでした。
――レースプランはどのようなものでしたか
まず私たちはスタートはわりと得意な方だったので、スタートから中盤へのつなぎが課題だと思っていました。そこで落とさずに良いリズムをキープしていって、最後にスパートで出し切るだけ出し切ろうというプランでした。
――今回はそのレースプラン通りにいったということでしょうか
はい、わりとうまくいったと思います。
――工藤かれん選手(スポ1=愛媛・松山東)とのペアはいかがでしたか
最初工藤は足を折っていたので、組んだ当初は「どうなるんだろう。」と思うことが多かったのですが、やはり工藤とは相性が良かったのかなと思っていて、わりとペアはスムーズに漕げたかなと思います。
――具体的に何か見つかった課題や今後伸ばしていきたいところはありますか
1日目からタイムがきょうで10秒縮まり、まだそれだけ直せるところがあったのだなと。きょうのレースも、スタートはわりと良かったのですが、コースで走行中に曲がったりして、レーンに侵害しそうになったり、ブイに当たったりしたので、真っすぐ進めたらもっとタイムを縮めることができたのかなと思いました。あと、500~1000メートル地点で、うまく切り替えなければいけないところで、切り替えがうまくいかなかったところが課題かなと思いました。
――今大会での目標はどのようなものでしたか
とりあえず最終日まで漕ぐということがずっと目標であったので、A決勝にいけなかったことはすごく悔しいのですが、B決勝でまだ越せる相手がいるかなと思っているので、少しでも上位入賞できるように頑張ります。