【連載】第84回早慶レガッタ事後特集 第1回 石橋広陸

漕艇

 入学前から憧れの強かった早慶戦という大舞台。念願かなって対校エイトクルーに選ばれた石橋広陸(スポ2=愛知・豊田北)。レース展開は完璧だった。ストロークからつないだリズムも理想通り。しかし、はかなくも結果は失格となってしまった。行き場がなくやるせない気持ち。その思いを一つ一つの言葉をかみしめるように語ってくださった。

※この取材は5月2日に行われたものです。

「やりきった感」

初の早慶レガッタで7番を務めた石橋

――レースから2週間たちましたが、レースに対する率直な感想をお願いします

 一言で言うと悔しいというのが一番強い気持ちですね。しかし、僕たちの一番の目標はインカレ(全日本大学選手権)と全日本(選手権)での優勝なので、いまはしっかり切り替えようという気持ちです。ただやっぱりなかなか切り替えられないという部分はそれぞれ隠せないです。

――具体的にどのような練習をしましたか

 主に荒川での練習をしていました。ことしは特に距離を漕ぐということを目標にやっていて、だいたい一日20キロくらいは最低でも漕いでいました。

――当日の波の様子はいかがでしたか

 蔵前橋から両国橋付近が練習の時よりもすごく波が高くて、止まっていても自分たちの身長より高い波がかぶさってくる感じでした。レースの前にアップをしたのですが、波が強過ぎて思っていたようにアップできなかったくらいです。

――レースプランに変更はありましたか

 レースプランは特には変えず、自分たちのやってきたことを貫きました。

――レース前にはクルーの皆さんとどのように過ごされましたか

 レース前に第二エイトの試合を全員で桜橋まで見に行ったのですが、負けているシーンを見てしまって「俺たちは絶対に勝とう」という感じで、逆に一致団結できたかなと思います。

――本番の隅田川の雰囲気はいかがでしたか

 他の大会とは違うなと感じました。僕はずっとこの舞台に憧れがあったので、どちらかというと緊張よりかはここで漕げて楽しいというわくわくした気持ちが大きかったです。クルーも緊張でガチガチというよりかは、リラックスした感じでした。それぞれ自信があったと思うので、それがいい感じでクルーの雰囲気につながっていたかなと思います。

――ケイオーの印象はいかがでしたか

 ケイオーはとにかくすごく練習しているなという印象が強かったです。やはり3連覇しているので、もしかしたらことしもケイオーに勝てないのではないかという気持ちもあったのですが、ケイオーを見るというよりかはどちらかとういうと自分たちに集中しようという気持ちでやりました。

――レースではずっと1艇身差でリードしていました

 1艇身差は予定通りだったので、いつも通り練習のイメージで思い切ることができました。ゆとりはありましたね。

――7番としての役割について、ご自身の評価は

 ビデオを見る感じまだまだだなという感じはあるのですが、いままでの練習に比べれば良かったかなと思います。

――長田敦主将(スポ4=石川・小松明峰)のストロークをつなぐのはやはり苦労されたと思いますがどのように対応しましたか

 まず、長田さんにどういうふうに漕ぎをイメージしているのかを聞いて、あと自分でビデオを見ながらどう長田さんと違うのかを研究しました。夜に一人で自主練もしましたし、神経系を早く動かす練習というのを特訓していましたね。

――本番中のリズムは思い通りでしたか

 理想通りでしたね。とにかく長田さんのリズムをつなぐことだけを意識しました。

――レース展開についてはクルー全体でどのように評価していますか

 その結果が最後ゴールした時のガッツポーズだと思うので、内容は自分たちでは満足しています。

――レース直後の雰囲気はいかがでしたか

 レース直後は久しぶりにワセダが勝ったということでみんな本当にテンションが上がっていましたし、あと自分たちがやりきった感というのがすごく出ていたかなと思います。

「勝ちを信じていました」

――判定がどう出るか分からないあの時間というのはどのようなものでしたか

 長田さんは「とにかく俺たちは絶対に勝ったから」とおっしゃっていて、僕たちも絶対に勝ったという感じで勝ちを信じていました。

――結果が分かった瞬間のお気持ちは

 僕はちょっとあぜんとしてしまって、魂が抜けたではないですけど、そのような感じになってしまい、長田さんをはじめ4年生がすごく泣いている姿を見て、申し訳ないというかいたたまれない気持ちになりましたね。

――長田さんは何かおっしゃっていましたか

 長田さんは特には言っていないですけど、言葉にできないほど悔しい気持ちだったと思います。

――OBの方は何かおっしゃっていましたか

 OBの方々はどちらかというと僕たちのことを褒めてくださいましたね。レース後にダメ出しをいただくことが多いのですが、「ことしのワセダは良かった」と褒めていただいて、やっぱり本当に自分たちのやってきたことは間違いじゃなかったなという思いです。

――チームとして、そして個人としてのそれぞれの課題は

 チームとしては当初から申し上げている、インカレの優勝と全日本でエイトの表彰台を目指します。もうそこはチームとしてぶれずにやっていきます。僕個人としてはワンランク、ツーランクステップアップして、もう一回対校の7番に戻って長田さんのリズムをつなぎたいなと思います。他の人も成長して伸びてきているので、それを振り払えるように、もう一回7番に返り咲けるよう頑張りたいと思います。

――早慶戦で収穫できた点は

 荒れているところでも僕たちのリズムを貫き通せたというところは収穫だったなと思います。

――特に改善点や反省点はありますか

 なかなかあのレースで悪かったというところは正直あまり誰も思い浮かばない部分があり、改善点を見つけるのは難しいのですが、まだまだ僕たちはできるなというところがあるので、ステップアップできたらいいなと思います。

「隅田の借りは夏で返します!」

さまざまな収穫があったレース内容だった

――新入生はもう入部しましたか

 はい。

――新歓はいかがでしたか

 例年は1回である試乗会をことしは2回にしたり、食事会を設けたりもして未経験の人にも興味を持っていただけたかなと思います。

――新入生はもう練習に参加しているのですか

 いまはまだアパートを借りている状態の人が多く、こっち(合宿所)に住めてはいないので通いというかたちで練習を行っています。本格的な練習はまだ始まっていないです。

――新入生の印象は

 フレッシュできょねんの自分を思い出しました。

――今後のレースの予定を教えてください

 まず僕は全日本軽量級選手権(軽量級)で男子舵手なしフォアに出ます。1カ月後にあるのですが、いまはそれに向けてクルーを組んで練習しています。

――今後狙うポジションは

 インカレの前に選考すると思うので、それで勝ち上がることができればまた7番に戻ることができると思います。

――今後はどういった練習メニューでやっていくのですか

 メニューに関してはもう基礎からなので、ゆっくりした動きからクルーのユニホーミティーを高めていく練習に入っていきます。そこから軽量級、インカレ、全日本という順番で大会があるので、それに向けてスピードアップするように、短い時間で行うメニューをこなしていきます。まずはユニホーミティーを高めるところからです。

――今後の意気込みをお願いします

 隅田の借りは夏で返します!

――ありがとうございました!

(取材・編集 寺脇知佳、写真 渡部歩美)

◆石橋広陸(いしばし・ひろむ)

1995年4月25日生まれのA型。180センチ、72キロ。愛知・豊田北高出身。スポーツ科学部2年。2014年度成績:第41回全日本大学選手権M8+3位、第92回全日本選手権M8+7位、第55回全日本新人選手権M8+3位