全艇惜しくも目標に届かず

漕艇

 大会最終日は3艇が決勝の舞台に挑んだ。先陣を切ったのは、女子シングルスカルの木下美奈(スポ1=山梨・富士河口湖)。だが前日とは打って変わり、スタートで先行を許す苦しい展開に。最後まで頭を奪うことができず、無念の2位に終わった。女子ダブルスカルはタイム順で予選を勝ち上がるも、迎えた決勝では接戦の末に6位。男子ダブルスカルは留学前ラストレースを勝利で飾りたいところであったが、スパート勝負に敗れ表彰台を逃す。全艇それぞれの目標まであと一歩及ばず、悔しさの残る大会となった。

(記事 細矢大帆)

★ワセダの新鋭、惜しくも優勝を逃す

惜しくも優勝を逃した木下

 前日の予選、準決勝で圧巻の走りを見せ、後続に大きく差をつけるかたちで決勝に駒を進めた木下美奈(スポ1=山梨・富士河口湖)。優勝が期待される中でのスタートとなったが、トラブルが発生し、序盤から東北大の細田夏光に先行を許してしまう。しかし、中盤を過ぎるとラストスパートを早めにかけ、猛攻を仕掛ける。着実に差を縮め、準決勝1位通過の実力を見せつけた。しかし序盤から勝負を仕掛けざるを得ない状況を強いられたためか、再び徐々に引き離され、力及ばず2位でのフィニッシュ。「力が発揮できず悔しい」と苦い表情をのぞかせた。しかし、安定したスタート、持久力といった課題も見つかり、実りの多い大会となったのもまた事実。「目標としているのはインカレ(全日本大学選手権)」と語る木下の瞳には、悔しさとともに次戦への静かな闘志が垣間見えた。敗北を乗り越え、一回り大きくなったルーキーの姿に期待したい。

(記事 三佐川唯、写真 笹澤桜)

★4年生と1年生のペアで全体6位

先行する艇に必死に食らいつく女子ダブルスカルクルー

 女子ダブルスカルには最上級生の坂内千紘(商4=東京・日比谷)とルーキーの田口えり花(商1=埼玉・浦和一女)のペアが挑んだ。「ワセダの漕ぎを伝えていこう」(坂内)と、田口の成長を促す目的の下、結成されたクルーであった。予選のレースでは田口のデビュー戦による緊張感も見られた中、なんとか決勝進出を果たす。そして迎えた決勝、リラックスしたスタートを決め予選の反省を生かしたレースを展開。しかし実力に定評のある東北大のクルーらに徐々に遅れを取り始めると、「スパートにつなげられるほどの切り替えができなかった」と坂内が振り返るように、中盤以降メダル争いから後退していく。その後はし烈な5位争いを演じるも一歩及ばず6位という結果に終わった。最強軍団・ワセ女がつくり上げられるためには、スポーツ推薦組以外の力も不可欠となる。現に、ワセダの女子部をけん引している辛島瑞加女子主将(スポ4=東京・富士見)は一般入試組の一人だ。「いろいろ伝えて何か残せればいい」(坂内)。先輩から後輩へ、女王のDNAは脈々と受け継がれていく。

(記事 細矢大帆、写真 笹澤桜)

★最後まで粘るも悔しい結果に

留学前ラストレースに全力で挑む男子ダブルスカルクルー

 予選を1位通過で決勝に挑んだ男子ダブルスカルは惜しくも表彰台を逃した。「きのうのスタートでのミスは克服できた」という菅原拓磨(国教2=東京・早大学院)の言葉通り、前半は安定した積極的な漕ぎで、続くトヨタ自動車に3秒の差をつけた。しかし、「気持ちのズレがうまらなかった」(川田悠太郎、国教2=東京・早大学院)と振り返るように後半に差し切られ、最後まで健闘するも及ばず。3位とわずか0.2秒差の4位に終わり、全力を出し切ったものの悔しさの残るレースとなった。早大学院出身選手のペアで挑んだ今大会。結果は満足のいくものではなかったが「相性が良く、楽しいレースができた」と菅原は晴れやかに語った。1年間の留学前最後のレースとなった両者は留学先でもトレーニングをこなし体力や技術をしっかり高めるという。「強くなって帰ってきます」(川田)。異国の地でさらなる成長を遂げ、再びワセダで活躍する日が待ち遠しい。

(記事 黒田菜々子、写真 細矢大帆)

結果

▽女子シングルスカル

【決勝】

木下 4分03秒90【2位】

▽女子ダブルスカル

【予選】

早大(S:田口、B:坂内)3分46秒58【2位、決勝進出】

【決勝】

早大 3分54秒20【6位】

▽男子ダブルスカル

【決勝】

早大(S:菅原、B:川田)3分26秒08【4位】

コメント
木下美奈(スポ1=山梨・富士河口湖)

——きょうのレースを振り返って一言お願いします

きのうまでが調子良かった分、きょうは力が発揮できず悔しいです。

——きのうはスタートが好調でしたがきょうはいかがでしたか

そうですね、きょうはレース前にスタートでトラブルがあって、それが大きく響いてしまいました。

——トラブルとは

スタートのときに2レーンに入ってしまって、曲がったかたちでのスタートになり、片方のストロークサイドを強調して進んでいくかたちになってしまいました。そこで、今回1位だった4レーンの東北大に1艇身差ほどつけられてしまい、そこが敗因かなと思っています。

——横風が吹いていましたが、レースコンディションはいかがでしたか

きのうは本当に順風だったんですが、きょうは逆風と500メートルすぎたあたりから横風が吹いていたんですが、その中でも安定した漕ぎができるようになることがこの夏の課題ですね。

——今回のレースで見つかった課題のためにどのような練習を考えていらっしゃいますか

まずはやはりスタートですね。順(風)でも逆(風)でも安定したスタートができなければ、いま目標にしているのはインカレ(全日本大学選手権)なんですけど、インカレ当日でもどちらの風になるか分からないし横風とかもあるので、そのことに対応できるようにいろんなコンディションのところで練習していくのと、コンスタントの伸びについては私が1番安定してやってきたことではあるので、ラストですね。今回のレースでは負けていたので早めに勝負をかけようとおもって、500メートル地点で少し詰めたのですが、最後体力の差で突き放されてしまいました。私が失速してしまったのもあるので、最後の最後で粘れるようにこの夏は(インカレまで)あと一ヶ月しかないのですが、体力トレーニングをしたいです。乳酸トレーニングとかもやっていきたいと思います

——最後にインカレへの意気込みをお願いします

今回負けてしまった東北大の人もシングルでインカレにでてくると思うので、今回は負けてしまったんですが、シングルスカルの順位によってワセダの総合順位も変わってくるので、東日本よりもレベルは上がりますが、総合順位をいい結果にできるよう、私自身も優勝目指して頑張ります

B:坂内千紘(商4=東京・日比谷)

——きょうの予選と決勝、それぞれのレースを振り返って

予選はストロークが少し緊張していて、アップからリラックスさせるようにしたら落ち着きを取り戻してくれました。予選は少しかたい漕ぎになってしまって、スタートで出しすぎてしまいました。その分後半のタイムの落ち度が大きくなってしまったので、後半に続けられる漕ぎを決勝ではするようにと決めました。決勝の前のアップはすごく落ち着いていました。スタートもいままでで一番いいくらいに入れましたが、ちょっと決勝も後半ばたばたしてしまって、私が合わせていこうという内容のコールを入れられれば良かったのかなと。6レーンと競っていたのでそれで焦ってしまって、最後までいってしまったという感じですね。

——今大会の位置づけは

4年生として1年生に漕ぎを伝えるといいますか、ワセダの漕ぎを伝えていこうと考えていました。2人で力を試していくという位置づけでした。あまり気負った試合にはしたくないなと考えていて、彼女(田口えり花、商1=埼玉・浦和一女)がこれからインカレ(全日本大学選手権)に出ていくような選手になってほしいと思って、私がいままでやってきたことを彼女になるべく多く伝えられればなと思って取り組みました。

——実際1年生とのペアはいかがでしたか

後輩といままでも乗ることが多かったのですが、毎回毎回やはり個性があって(笑)、同じように教えたり修正していったりするのは難しいなと考えていました。私もいろいろ先輩から教わってきた身だったので、先輩はこう思っていたんだなとか思いながら、うまく教えられるように努力してきました。でも自分がうまくいかなかったときとかは雰囲気も悪くしてしまって申し訳なかったなと。もう少し上級生としてうまく教えられれば良かったかなというのがいまの反省点です。

——もともとのレースプランは

田口がやはり勢いがあって、序盤からガツガツいくところが強みだったので、スタートから出ていこうと決めていました。中盤は落ちてきてしまうので、500メートル地点で二人で前から切り替えていこうということでした。そしてそのリズムでスパートにつなげられればいいなと考えていましたが、そこまでの切り替えができなかったというのが最終的な反省点ですね。

——課題はどのような点にありましたか

二人で1000メートル(リズム良く)漕ぎ切ることにまずは不安がありました。最初は私がストロークで漕いでいましたが、シートチェンジして私が後ろから支えていくことで漕ぎ切れるようになればなという意図で1週間前くらいから変更しました。課題としてはやはり一定の漕ぎを続けるということでしたが、最後の方はぶれてしまって決まらなかったという感じですね。

——今後のレース予定は

故障者が復帰して人がそろえば全日本選手権(全日本)に出場があるかもしれませんが、まだ分かりません。後輩と乗っていろいろ伝えて何か残せればいいなと考えています。

S:田口えり花(商1=埼玉・浦和一女)

――きょうの予選と決勝を振り返っていかがでしたか

私は前半スタートと共にリズム良く漕げるというのが強みなんですが、後半がかなり落ちてきてしまうのが課題で、バウの坂内さん(千紘、商4=東京・日比谷)に後ろから支えてもらうというかたちで押してもらって、なんとか漕ぎ切ったという感じです。

――風の影響などはありましたか

1レーンでかなり岸側の部位が近いという状態だったんですけど、ストロークサイド側に風で流されてしまうというのが多かったです。もともと二人で漕いでいてストロークサイドに曲がってしまうことが多かったので、二人でストロークサイドを大きく伸ばして漕ぐというのを意識しました。

――きょうのレースプランはどのようなものでしたか

先程も申し上げたように前半で出せるというのが強みなので、それを後半までつなげてイーブンに同じ漕ぎをして、ラストもしっかり焦らず上げられるように、というのを意識して漕ぐように先輩と話し合いました。

――きょう見つかった課題はありますか

リズム良く漕げているときはやはり、前半に見られたようにかなり引き過ぎないで漕ぐというのができていました。自分の癖として、引き過ぎてしまって、そこからリズムが崩れてしまうということが多かったので、後半にリズムの良い漕ぎが続けられるように引き過ぎず、押せるところまで、というのをこれからどの艇に乗っても意識していきたいと思います。

――今後のレースのご予定は

インカレの仮クルーはすでに決まってしまっていて、私は出ないんです。これからどうなるかはわからないんですけど、しっかり1年かけて、らいねんの夏には漕げるようにしたいと思います。

S:菅原拓磨(国教2=東京・早大学院)

——きょうの試合を振り返っての感想は

率直に悔しいかなと。0.2秒で表彰台を逃してしまったので。表彰台は上れるだろうなと思ってたんですけど、それが多分慢心になっちゃったのかなと思います。

——留学前の最後のレースでどんな意気込みで臨みましたか

しばらくワセダのオールで試合に出ることはないので最後すごく相性のいい川田さん(悠太郎、国教2=東京・早大学院)と漕いで、すごい楽しいレースができたんじゃないかなと思います。楽しかったです。

——きのうと比べてきょうのレースの感じはどうでしたか

昨日はスタートをちょっとミスをしてしまって、きょうはそれをなくしていこうという課題は克服できたんですけど、ラストの200メートルくらいでトヨタ自動車とすごい競っていたところで負けちゃったのは粘り強さの問題かなと。体力的な問題とあとは、気持ち的なところがあるのかなと思いました。

——敗因は気持ち的なところということですか

優勝できなかったことを敗因だとすると、スタートで筑波大についていこうと決めていたんですけど、最初から出られてしまったということは、単純に完全なる実力差で、体力的な問題と技術的な問題の二つをしっかりこの一年でヨーロッパで高めていって日本に帰ってこようかなと思います。

——今日のレースコンディションはどうでしたか

きのうは順風が吹いていて比較的タイムも出やすい環境だったと思うんですけど、きょうはその逆で後ろから風が吹いていました。その中で3分26秒というのはそんなに悪くないタイムなんですけど、優勝タイムは3分10秒台なので、どんなコンディションでも3分20秒を切れるぐらいの実力じゃないとインカレとか全日本とかで表彰台に乗ったり順位をつけたりとかは難しいんじゃないかなって思いました。

——留学先でどのようにトレーニングしていきたいですか

留学先ではボートクラブがあって、スウェーデンに行くんですけど、スウェーデンの大学にもボート部があって、そこのボート部とはもうコンタクトをとっていて、僕が漕ぐことはもう向こうが知っているので、留学先ですぐにボートを漕げる環境は整っています。あとは大学のジムもあるみたいなので、そこでしっかり平日はトレーニングをします。この1カ月はまだ日本にいるんですけど、自分でメニューを作って、それで効果が出るのか確認する期間にしたいと思います。

——留学先からワセダに帰って来て、どういうふうに活躍していきたいですか

そうですね、1年生の時はインカレも一番下の種目で出て、全日本新人選手権でもセカンドのクルーで、早慶レガッタもセカンドのクルーで、ずっと下積みをしてきたんですよ。確実にそこでレベルはあがってきたと思います。あともう2ステップくらい対校に乗るには実力が必要なので、帰ってきてレギュラーメンバーの一番強い対校エイト乗れるように、最後1年間頑張っていきたいなと思います。

——ワセダの部員に何か一言お願いします

そうですね、部としてきょねんいまひとつ結果が出なかったので、常に結果にこだわってみんなにやってほしいかなと。あとは常にベストを更新できるように頑張ってほしいかなと思います。

B:川田悠太郎(国教2=東京・早大学院)

――きょうのレースを振り返っていかがでしたか

全力を出せたので良かったかなというのはあったんですけど、ちょっと菅原(拓磨、国教2=東京・早大学院)と気持ちのズレがあったので、そこがしっくりはまらなかったのが、最後抜かれちゃった理由かなと思いました。

――気持ちのズレとはどのようなものだったのですか

ちょっとトラブルもあったんですけど、そこでスタートのスパートでレートが少し高いままいってて、コンスタントに落とした時に、自分はその時レートを知らなかったので、いつもよりちょっと低いのかな、菅原が落としたのかな、というのを感じました。それで、後ろからバックアップするように回っちゃったので、そこをしっかり合わせにいって二人で艇を伸ばせたら良かったかなと思いました。

――きのう同じ組で勝っていたトヨタ自動車に惜しくも敗北してしまいましたが、後半の500メートルはどうでしたか

先程のズレによって後半落ちてしまったと思います。きのうトヨタ自動車は逆の展開だったと思います。(きのうは)ちょっとバタバタして、自分たちからしたら相手が勝手に落ちてきたなって感じで、自分たちはそのままリラックスして進めたという感じなんですけど。きょうはそんなには見てないんですけど、ちらっと見て感じたのは、向こうの方がのびのびと漕いでいる感じがありました。こっちはズレがあったので、お互い頑張ってはいるんですけど、楽には漕げなかったかなと思います。スパートを入れても向こうの方が入りが良かったので進んだのかなと。そこが出られちゃった理由かなと思います。

――風の影響などはありましたか

風は大丈夫でした。特に影響もなく、風があったからどうというのもありませんでした。

――きょうはどのような気持ちでレースに臨まれましたか

ちょっと恥ずかしいんですけど、臨む前はいつもなるべく物語の主人公になったつもりでいつもいます。あまり良くないことですけど、最近ずっとレースに出ているときは、格上の相手に挑みに行って、負けるというのが多かったです。しかし、今回は菅原とのダブルで結構艇が走っていたので、良い意味でチャレンジャー精神を持ってできたかなと思います。いままではちょっとかませ犬のような感じがあったので。そういう気持ちがあったんですけど、今回は頑張ればいけるという気持ちで臨めて、きのうとかはそれができたので良かったです。あと、出し切れたので良かったです。悔しいけどすがすがしい気持ちです。なのでらいねん頑張ろうかなという感じですね。

――今後、留学先でどのように漕艇と関わっていく予定ですか

現地(フランス)で、クラブチームに入ろうと思っています。大学が川の近くなので。全体での練習が週3回くらいらしいんですけど。あともうちょっと他のトレーニングもやってみたいなと思っています。水泳とかウエイトとか。そういう有酸素運動などもして、別のアプローチもしていきたいです。エンジョイローイングですね(笑)。

――以前、ワセダに戻ってきたら底上げできる選手になりたいとおっしゃっていましたが、それはいまでも変わりませんか

そうですね。今回、菅原と自分はあまりエルゴが回ってない方なんですけど、それでもこれくらいのタイムは出せるんだぞ、と周りに見せられたかなというのもあって。それをまた帰ってきてからもやりたいですね。今度はちゃんと二人でエルゴのタイムを上げて。らいねんどうなるかは分からないですけど、二人でまたダブルを組んでインカレに臨みたいねって感じなんですけど。そこでまたいい結果を出して、周りをもうちょっとたたき上げる雰囲気を出していきたいです。

――最後にいまいるワセダの選手の皆さんに一言お願いします

強くなって帰ってきます。なのでお互い頑張りましょうという感じです。