ルーキー木下、男子ダブルスカルが決勝へと駒を進める

漕艇

 台風一過で広く晴れ渡る空の下、東日本選手権が戸田のボートコースで行われた。台風接近が心配されていた午前中のレースは大会前に中止が決定された。男子シングルスカルには、自身初レースの高山順(スポ1=秋田)が出場。男子ダブルスカルには、川田悠太郎(国教2=東京・早大学院)、菅原拓磨(国教2=東京・早大学院)が息の合った漕ぎで決勝進出を決める。女子シングルスカルにはルーキー木下美奈(スポ1=山梨・富士河口湖)が余裕のある漕ぎであすの決勝戦へ。波多野響子(教2=福岡・東筑)は、惜しくも予選敗退となってしまった。

 男子シングルスカルで初陣を飾った高山。他艇に差をつけられるも、自身の力を最後まで振り絞り完漕を果たす。今後の成長に期待がかかる結果となった。一方、男子ダブルスカルには、共に早大学院出身の菅原・川田ペアが出場。スタートの失敗を悔やむも、その後落ち着きを取り戻し、ラストは社会人のトヨタ自動車との接戦にまでもつれ込む。冷静にレース展開を見極め、最後まで丁寧な漕ぎを意識し続けた二人は、見事この戦いを制した。ゴール直後菅原は、大学公式戦初の組1位という結果と格上相手に競り勝った喜びを全身で表した。「気持ちの面では負けていませんでした」(菅原)と、あすの決勝戦に向け、熱い闘志を燃やす。

接戦を制し、雄たけびを上げる菅原(左)、川田ペア

 女子シングルスカルには、木下と波多野が出艇した。ルーキーながらも抜群の存在感を見せる木下は今大会でも大活躍。序盤から自らの漕ぎに集中し、他艇を寄せ付けることなく危なげないレースを見せる。東日本大学選手権での課題も修正し、納得のいくレース展開を繰り広げることができたようだ。予選、準決勝と順調に勝ち上がり、決勝進出を果たした。波多野はケガの影響で、約3カ月ぶりのレース参戦。順調なスタートで艇を進めるも練習不足がたたり、ラストの競り合いに敗れ、惜しくも準決勝進出を逃した。

復帰戦を飾った波多野

 灼熱(しゃくねつ)の太陽に照らされ行われたきょうの試合。あすの決勝戦では予選、準決勝以上に白熱したレースが展開されることが予想される。そうした試合の中で、いかに冷静にレースを分析できるかが、重要になってくるだろう。夏に行われる全日本大学選手権に向け、チーム全体に活力を与える結果をもたらしてほしい。

(記事 須藤絵莉、写真 細矢大帆)

結果

▽男子シングルスカル

【予選】

高山 4分28秒05【4位、敗退】

▽女子シングルスカル

【予選】

木下 3分52秒11【1位、準決勝へ】

波多野 4分08秒85【2位、敗退】

【準決勝】

木下 3分58秒06【1位、決勝へ】

▽男子ダブルスカル

【予選】

早大(S:菅原、B:川田) 3分23秒45【1位、決勝へ】

コメント

木下美奈(スポ1=山梨・富士河口湖)

――きょうのレースを振り返っていかがでしたか

きょうは、出るのも急きょ決まったことでした。来週にまた国体予選というのがあって、またインカレ(全日本大学選手権)もあるので、それに向けて良いイメージをつけられたらいいなという思いで出走しました。

――今大会で意識したことはありますか

最近は私の漕ぎの中で、ファイナルが取れていなかったので、そこを常に意識するようにしました。あとは前回の課題だったスタートから出るというのも意識しました。結果的に今回は、そのスタートも前回に比べて改善出来ていて良い感じになったので、そこは良かったかなと思います。

――前回のレースよりも今回の方が良く漕げたということですね

そうですね。その二点が課題として残ったので、そこを意識して今回は修正するようにしました。

――あすの決勝に向けて意気込みをお願いします

最終的には夏にインカレがあります。今大会は1000メートルで、インカレは2000メートルになるのですが、今大会でも優勝して自信をつけてインカレの方に臨めるようにしたいなと思います。

波多野響子(教2=福岡・東筑)

――きょうのレースを振り返って

スタートはすごく良く出られて、艇を進めることができました。でも練習があまり積めていなくて、練習でできていない高レートを序盤に出しすぎてしまいどんどん疲れてしまいました。

――レースプランは

スタートで出し切って逃げ切る展開にもっていきたいと考えていました。

――今大会の位置づけは

実は中日本レガッタが終わってからあばら骨をケガしてしまって、ずっと漕げていませんでしたが、ここ3週間くらいで急ピッチで仕上げてきました。とりあえず今大会で結果を残すことを目標に取り組んできました。(ケガの影響で)インカレの選考に参加することができなかったので、ここからしばらく試合がありませんが、全日本(全日本選手権)に向けてまずは1000メートル漕げるようになったことを確かめるという意味で今大会は重要な大会でした。

――スタートの500メートルで飛び出したのは想定通りでしたか

いや、東京外語大の権藤(加奈)さんがもっと飛び出してくると思いました。予想外に出ることができてしまったのですが、相手はスパートが速くてそれについていくことができませんでした。いつもなら最後に上げられるのですが、いまはその体力がないのかなと感じました。

――本当に驚異的な追い上げを仕掛けられましたね

正直スタートが終わった時に権藤さんには1艇身以上勝っていて、それよりも奥の埼玉選抜の高校生をマークしていました。その選手には逃げ切れると思ったらまさか権藤さんが上がってくるとは…という感じでした。エルゴの持ちタイムがすごくいい選手なので、私もそれくらいスパートを出せるようになりたいなと思いました。

――結果的には予選のコンマ差が準決勝進出と敗退の分かれ目となってしまいました

結果的にあのレースではコンマ差でしたが、予選全体1位で上がった木下(美奈、スポ1=山梨・富士河口湖)とは16秒くらいタイム差をつけられて、上がっても準決勝で敗退していたかなと思います。でもやはり準決勝に出たかったなとは思いますが、コンマ差で落ちたから悔しいというのはあまりないです。

――今ある力は出せた感じはありますか

そうですね、400メートルまでは(笑)。

――今後へ向けて抱負をお願いします

全日本では先輩にメダルをかけられるように、新人(全日本新人選手権)では先輩になるので、強い後輩たちに負けずにクォドルプルに乗ることができるように頑張りたいと思います。

S:菅原拓磨(国教2=東京・早大学院)

――きょうのレースを振り返って

スタートで失敗をしてしまって最初の500メートルで出られてしまって、個人的には焦ってしまいました。でもコンスタントで出遅れた分取り返すのをがむしゃらに漕ぐのではなく丁寧に長さを求めて漕いでいった結果、差し返して1艇身差で勝てたのかなと思います。

――レースプランは

スタートに自信があったので、コンスタントで崩さず漕いで、その後スパートで突き放すというのがプランでした。レースプラン通りにはなりませんでしたね。

――クルーの調子は

ここ半年くらい一緒に乗っていてお互いに一番いいように感じますね。

――社会人のトヨタ自動車と一騎打ちになりましたが

社会人は速いというイメージが僕の中にはあって、予選でトヨタ自動車と当たると決まった時はやや動揺しましたが、あまり恐れずにレースをすることができました。気持ちの面では負けていませんでした。

――気温が高い中での3分23秒という結果について

レースコンディションが良かったので、3分20秒を切ろうという目標を立てていました。なのでそのタイムに関してはもう少し出てもいいのかなと思います。

――勝った瞬間、雄たけびを上げていましたが、その時の心境は

大学漕艇部に入って公式戦で1位になったことがなかったんです。6艇レースで1位になるというのは、5年間のボート人生の中でも数えられるくらいしかありませんでした。予選といえど格上だと思われる相手に勝てたので、素直にうれしかったです。

――あすの決勝に向けて

(全体1位の)筑波大は自分たちより予選タイムが3秒速く、新日鉄がコンマ差で自分たちを追ってきているという状況です。優勝を目標にやっていて、まずはあしたに残るという最低目標はクリアしたので、あすは優勝のみを狙います。きょねんのインカレで筑波大には2000メートルで20秒近くつけられて負けましたが、それを3秒まで詰めたので最後で差し切っていい結果を残して留学に行きたいと思います。

B:川田悠太郎(国教2=東京・早大学院)

――きょうのレースを振り返っていかがでしたか

もうちょっといけるかなというのはありました。最初のところで二人ともミスオールをしてしまったので、そこがなければもう少し序盤からタイムを伸ばせたのではないかと思います。コンスタントにリズムも刻めて、途中逆風が吹いたんですけど、そこでも崩すことなくいけたので、そこは良かったです。ラストスパートも一応入れたんですけど、そこでは競っていなかったというのもあって、ちょっと回転とかが上がり切らなかったかなと思いました。

――今回意識していたことはありますか

スムーズに、ということですかね。オールを入れたら無駄なく横に動かすという感じです。とにかく無駄をなく、という感じを意識しました。

――何か課題はありますか

課題は基本的にレース前につぶしていたので、今回は課題をつぶせていけました。やることをやるだけという感じでしたね。

――あすの決勝に向けて意気込みをお願いします

僕らは二人とも夏に留学行くので、あしたが最後のレースになります。勝って留学先行って、「俺は東日本のゴールドメダリストだ」と言えるように頑張ります。