【連載】第83回早慶レガッタ事後特集 第4回 4:長田敦

漕艇

 早慶レガッタから約1カ月が経過した。2年連続で対校クルーとして出場し、エースとしての役割を担った長田敦(スポ3=石川・小松明峰)。誰よりも負けず嫌いな一面を持ち、誰よりもひた向きに漕艇に取り組む早大の大黒柱だ。そんな長田に、昨季に続き悔しい敗戦に終わった早慶レガッタの振り返りから、今後について語っていただいた。

※この取材は5月2日に行われたものです。

「反省には時間がかかる」

真剣なまなざしで取材に応じる長田

――早慶レガッタを振り返って

僕が1年の時も2年の時も天気が悪くて、(ことしは)対校エイトはですけれども無事にレースができて良かったと思います。結果として負けてしまって、早慶レガッタからしばらく時間はたちますがなんで負けたのかまだ説明できないので、反省するにはまだ時間がかかると思います。

――調整の部分については

観漕会(早慶対校競漕大会観漕会)の時点ではまだ疲労を落とす段階ではなかったので、疲労が溜まっている状態でもあれだけの動きができたので自信はつけることができました。本番もそんなに悪い流れではなかったので、観漕会からの流れは良かったと思います。

――レース前に緊張はしましたか

ことしはすごくしましたね。漕ぎ始めたら緊張しないんですけど、スタートして気が付いたら漕いでいたという感じです。ことしは晴れていてお客さんがすごくいて、艇を出した時からすごく応援してくださったのでそこから緊張していました。

――早慶レガッタに臨むにあたり昨年と比べて気持ちに変化はありましたか

昨年も負けて、慶大に負けるとこんなに悔しいんだと実感したので、絶対に負けないようにしようと思い、昨年よりは油断せずに勝負できたと思います。

――位置が4番に変わりましたがその点に関しては

(ストロークとして)一番前で漕ぐのは3750メートル通してペース配分などいろいろ考えなければならないのですが、ことしは4番という真ん中で漕いで後ろから盛り上げるのと、隅田川はコースのようにまっすぐではなく、曲げる時とかは自分が中心で曲げていかないと曲がらないので、冷静になってちゃんとコックスの中村(拓、法3=東京・早大学院)のコールにも反応しなければならなかったので、そういうところを意識して練習して本番に臨みました。

――どのようなレースプランでしたか

最初に大曲がりがあってそこで曲がり切るとおととしまでの3000メートルが始まるというかたちで、3000メートルだった時は横並びだったので、ことしはそれまでに出られた部分を取り戻すという感じでした。そこでもう一度スタートするという気持ちで、最初の750メートルが勝負だと思ってレース展開をつくっていきたいと思っていました。

――実際にはレースプランを実行できたのでしょうか

実際にスタートは良かったのですが、向こうがまとまって漕いでいで慶大はそういうところがうまいなと思いました。レースプラン的にはそんなに大きく狂うことはなかったですけれど向こうも追い付かれること前提で漕いでいて、750メートル漕いでから慶大が予想より速かったので、そういうところで慌てた感じはありました。

――現時点で敗因は何だと考えていますか

何回か僕たちも隅田川で練習していたのですけれど、すごくきれいでコースみたいでした。本番みたいにすごく荒れた中で漕いだことがなかったので、慶大の作戦どうこうというよりは、自分たちの力をトータルで出し切れなかったのかなとは思います。

――見つかった課題は

今後に向けてというよりは来季の早慶レガッタに向けて、もっとコンディションの悪い波風のある場所でも、8人でまとまる力がワセダには足りないのかなと。一人一人を比べるとことしも負けなかったと思いますが、8人全員で漕がないと進まないので、そういうところが慶大に劣っていて1艇身ちょっと及ばなかったのだと思います。次の早慶戦は崩したところでまとまる力がいるのかなと思いました。

夏を見据えて

――早慶レガッタ後のオフはどのように過ごされましたか

悔しくて練習するというよりは放心状態という感じで、とりあえずみんなで集まっていました。艇庫にいる人たちで。

――外に出かけたりは

ふらっと上野に行きましたね。映画見に行ったんですけど入れなくて(笑)。後輩と一緒でした。

――アウトドアですか

オフの始めの方は寝てしまいますね。寝ないと次に持たないので。今回は4日ほどオフをもらったので、外に出ないと損だと思って出ました。

――全日本軽量級選手権(軽量級)にシングルスカルで出るとお聞きしましたがその経緯は

少しケガをしていまして、シングルだと最悪ケガが悪化した場合に出なくても周りに迷惑がかからずに融通がきくので。あとは、ことしの日本代表選考に落ちたのですが、悔しかったので、日本代表になれなかった奴が日本代表を倒すじゃないですけど。やってみようかなと思いました。一番はケガとの付き合いですけれど。良くはなってないですが、シングルで結構楽に練習できているので、夏までに良くしていきたいなという感じです。そういう経緯で軽量級はシングルで出ます。

――調整の方はいかがですか

早慶戦終わってからずっとシングルなので、もう2週間くらいは漕いでいますね。あと一週間くらい漕いで疲労を落としていきます。練習こなせないほどケガが悪化しているわけではないので、割とうまくいっています。

――苦労している点はありますか

日本代表を倒すという目標でやっていたのですが、別の大会に日本代表が出るみたいで。複雑な心境ですね(笑)。僕みたいに日本代表を目指してこぼれた選手もたくさんいるので、もちろんレベルの低い大会ではないですけど。

プロを参考に

日本のエースへの成長にも期待がかかる

――軽量級後はエイトに戻られるのですか

監督が変わって、夏にエイトで出るのか僕たちもわからない状態で。もしかしたらメンバー次第で勝てるクルーというか、他のものに変えるかもしれないです。エイトで出るかもしれないですが、監督次第ですね。

――高校時代はシングルで名をはせていましたが、今後どういう方向でやりたいとかはありますか

シングルの方が楽しいです。僕、自分勝手なので(笑)。シングルの方が遅いですけど、練習は早く終わるんです。8人だと一人一人アップしていかなくてはいけなくて、一番温まるのに遅い人に合わせたりして。そういう面ではシングルの方が良いです。ですが、新人戦(全日本新人選手権)とかエイトでみんなで勝って、そういう面ではエイトも好きです。オール2本あるのが難しくて、本当はできればスイープを漕ぎたいんですけど。ことしはシングル漕ぐのはいまが最後かなという感じです。

――個人的に強化したい部分は

僕はボートやって9年目になって結構レース数もこなしてきましたが、やはり社会人はそれ以上にレースプランつくるのがうまくて、そういうところを見習わないとなと思いますね。ここでちょっと頑張って差を広げたら精神的にすごく有利というのも全部知っているようなので、体力とかもそうですが、楽をして勝つというのが社会人はうまいのでプロを参考にしていきたいです。

――チームとして勝つためにチームに足りないと感じるものはありますか

まず人です。一橋大や日大を見ていても、エイトを何艇も組んでいてそれで選考とかしているので。僕たちは対校に絡める選手が10人ちょっとだと思うので、対校エイトの場合の競争率が他大に比べて低いのでそういう部分ですね。あとは艇とかオールとかをできれば変えていきたいなと。わがままですがもっと新しい物に。いま満足して漕げているのが対校エイトぐらいで、もっとセカンドクルーとかにも良い艇やオールがあれば、もっとワセダは勝てるようになると感じます。

――最後に改めて今後の目標をお願いします

とりあえず軽量級が控えているのであと2週間くらいしっかり頑張って、少し調子が悪いのでしっかり調子を戻していって、良い結果を残せるように頑張ります。

――ありがとうございました!

(取材・編集 加藤千暁、写真 渡部歩美)

◆長田敦(ながた・あつし)

1993(平5)年5月9日生まれのO型。182センチ、69キロ。石川・小松明峰高出身。スポーツ科学部3年。2013年度成績:第40回全日本大学選手権M8+3位、第54回全日本新人選手権M8+優勝