【連載】『奪還』への船路 【第1回】3:谷川早紀

漕艇

 宿敵との決戦・早慶レガッタにおいて圧巻の強さを誇り、毎年勝利を重ねていく女子クォドルプル(クォド)。ことしは25連勝が懸かっているこの隅田川上の戦いに、ラストイヤーとなる谷川早紀(スポ4=愛媛・今治西)がクルーキャップとして乗り込む。自身初となる伝統の一戦への出場に、懸ける思いとは――。

強度を高めて

明るく真剣に取材に臨む谷川

――ことしの早慶戦では女子クォドの25連勝が懸かっていますが、それに対してプレッシャーはありますか

重みがありますね。年々積み重ねていく感じですね。でもまだ決まったばかりなので、これからという感じですね

――メンバーが発表された時のお気持ちは

ほっとしました。あとは絶対に勝たなきゃなと。

――オフシーズンの間は何をされていたのですか

私は漕ぎ込みと体づくりをしていました。ウエイトとか。オフシーズンにも練習していました。きょねんよりも練習量がすごく多くなりましたね。朝、昼、夜の3部練習をしています。

――練習量がきょねんより増えたというのは選手が増やしたという感じですか

幹部が中心になって考えてくれて。早慶戦にも勝つことは重視しているんですが、その先の夏に向けて自分たちが勝つには何が必要かを考えてくれた結果、おそらく3部練習になって強度が高くなってきている感じかなと思います。

――オフのときに何か趣味などはされたのですか

やりましたね。全日本新人(全日本新人選手権)の後、まとまった3週間の部活も何もない休みをもらって。私はボルダリングや卓球をしに遊びに行ったりしました。あとは自転車で所沢キャンパスにも行きましたね。いい感じのスピードで行ったら1時間半くらいで、ちょっと遅めに行くと1時間50分くらい。平均1時間40分くらいかな。電車で行くのとあまり変わらないですね(笑)。

戦いに懸ける思い

――今回、初の早慶戦ということですが、それに対しての思いは

私は最初で最後なので。4年間のうちに出場することができて良かったという思いです。隅田練の時は行くまでが長くて。試合はあっという間なんですけどね(笑)。

――「隅田川には魔物が住んでいる」というような言い方をされることがありますが、何か感じることはありますか

どうでしょうね、私も魔物に会ったことはないので(笑)。でもやることは案外普段と変わらなかったりすると思います。男子の場合は距離も長くてコース取りとかもあると思いますけど、女子の場合は距離が短く、やることは変わらないですね。

――早慶戦の理想の展開は思い描いていますか

やっぱりスタートからですね。最初から前に出て相手を見ながら、というかたちにしたいです。「よし、このまま腹を切らずにいけば勝てる」、「もっと離せるぞ」みたいな感じです。

――勝負どころはスタートになるということですか

そうですね、スタートですね。一気に突き放していきたいです。

それぞれの力を生かして

谷川は今季クルーキャップを務める

――ことしのクルーの強みは

キャッチのポジションからの艇の立ち上げ方がみんなうまいかなと、後ろに乗っていて思います。あとはみんな明るいです。常に笑っている子たちです。あとは度胸がある。腹をくくるのがうまいです。とにかく負けず嫌いなメンバーがそろいました。それは女子全体にいえることですけどね(笑)。

――ご自身のプレーの強みは何ですか

私はあまりパワーがないので、リズムで漕いでいますね。あと、昔は全くできなかったのですが、最近は感覚を言葉にするのがうまいと榊原(春奈、スポ2=愛知・旭丘)などから言われました。いつからかパッと分かるようになりましたね。

――早慶戦には大勢の観客が訪れますが、注目してほしい点はありますか

やっぱり強さですかね。漕いでいる慶大との差を見てほしいです。まだどうなるか分からないですけど、それができるようにこれから練習します。『これぞワセ女だ!!』みたいな感じで(笑)

――これから早慶戦に向けた課題は何かありますか

本当に波が高いので、それとけんかせずに、どううまく付き合っていくか。無理にやってしまうと自然には勝てないと思うので。波などが来た時にでもうまく対応できるような漕ぎ方をやりたいと思います。

――早慶戦の魅力とは何でしょうか

やっぱり人が多いですね。早慶を見に来てくれる人があれだけいるということに感動しました。あとは会場の整備などを全部OBの方々がやってくださっていて、そういったところまでしっかりとしてくださるOB・OGの方々がいることも魅力だなと思います。なかなか他の大学でできないことだと思います。そして本当に応援がすごい。やっぱりあの隅田川で勝ちたいですね。

――レース中に応援は聞こえるものですか

すごく聞こえますよ。単語は聞こえないですけど「わー」っていうのは聞こえます。自分の頭の中で「これは全部自分への応援だ」と思いたいです。たとえケイオーの音が流れていても自分たちが漕いでいればワセダを応援しているものだと思って漕ぎます(笑)。

――最後に、早慶戦への意気込みをお願いします

勝ちます!応援よろしくお願いします!

――ありがとうございました!

(取材・編集 伊能由佳、井上雄太、写真 末永響子)

◆谷川早紀(たにがわ・さき)

1992年(平4)12月31日生まれのA型。167センチ、58キロ。スポーツ科学部4年。愛媛・今治西高出身。ポジションは対校女子クォドルプルの3番。最近のマイブームは、という質問に「後輩いじりかな。みんな反応が面白い」と茶目っ気のある一面をのぞかせた谷川選手。常に笑顔を絶やさない明るい雰囲気と、後輩との和気あいあいとしたやり取りが印象的でした。