エイト健闘も、男女で明暗くっきり

漕艇

 昨年圧巻の漕力で同種目を制覇した女王ワセダの姿はどこへ…。最終日は、予選を突破した女子舵手なしクォドルプルと前日の敗者復活戦を勝ち進んだ3クルーが出場した。優勝候補の呼び声が高かった女子舵手なしクォドルプルは、はたまた決勝で宿敵・明大と激突。因縁のライバルと王座を争ったが、終始明大に主導権を握られ敗戦。惜しくも同種目2連覇はならなかった。一方男子エイトは、主力メンバーを欠く中でも、昨年に続く5位入賞。男女の明暗がくっきりと分かれる結果となった。

★力およばず、悔しい3位

 準決勝を危なげなく勝ち進み、トップタイムで決勝に臨んだ女子ダブルスカル。だが予選で敗れた立命館大が大きく立ちはだかる。「余裕のない入り方をしてしまった」と坂内千紘(商3=東京・日比谷)が振り返るように、3位スタートで出鼻をくじかれると、またしても風が吹き荒れ思うように船が進まない。序盤の遅れを取り戻そうと1500メートル地点で立命館大をとらえるも、徐々に立命館大が勢いを盛り返し、差はなかなか縮まらない。ラストスパートではさらに差を広げられ、3位でフィニッシュ。「2人の集大成で一番いい漕ぎができなかったのは残念」と悔しさをにじませた。しかし、本番はこれからだ。レース後、坂内は「土屋(愛、スポ2=新潟・阿賀黎明)の後ろで漕げて、進める漕ぎっていうのはこういう漕ぎなんだなといろいろ吸収できた面もあった」と語る。夏のインカレでは、一回り大きくなった女子部の漕ぎに注目だ。

(記事 高橋真耶、写真 細矢大帆)

★持ち味発揮できず完敗

 前日のコメントで「順位をつけたい」と語っていた女子シングルスカルの佐藤紫生乃(スポ1=宮城・塩釜)。決勝進出をかけ、満を持して臨んだ準決勝。第1クオーターで頭をとりたかった佐藤だったが、他艇に先行を許した。「気持ちが折れた」と戦闘不能になり、みるみるうちに上位と差を広げられる。終盤も佐藤らしい粘りの漕ぎは発揮できず、3位でゴール。順位決定戦にも進めず、無念の準決勝敗退に終わった。「実力通りの結果」と語るように、経験豊富な社会人を前に全く歯が立たなかった。今大会でワセ女の仲間入りを果たした佐藤。「ワセ女の漕ぎを共有したい」と、伝統の対校クォドルプルへの思いをつづった。佐藤の次回レースは、ジュニアの世界大会につながるU-19日本代表の選考会。昨年、高校生として出場して代表権を勝ち取っているだけに、「恥ずかしいレースはできない」とプライドをのぞかせた。

(記事 新田祐介、写真 細矢大帆)

★明大の前に、女王敗れる

 最大のライバル・明大に、準決勝でまたしても対決した女子舵手なしクォドルプル。出遅れたスタートを挽回しようと食らいつくも、あと一歩で追いつかず、明大に次ぐ2着で決勝レースに臨むこととなった。明大と今大会3度目の戦いとなる一戦。弱点であるスタートで明大に遅れをとる苦しい展開に。「前半に勝負」(山根由絹、スポ4=岩手・宮古)という意気込みも、激しい風に打ち砕かれ、持ち味である伸びのある漕ぎをうまく出しきれない。山根は、「変えよう変えようとしていたところがうまく決まらなかった」と振り返る。ワセダが勝負をかけるところでは明大も負けじと応戦。ワセダに流れを作らせない、徹底したレースを展開された。スタートで生まれた差が最後まで縮まることはなく、2着でゴール。「いままで当たり前のように勝っていたのが勝てなくなったというのは危機的状況」と冷静に語る山根。敗北を知った女王は、さらに強くなって帰ってくる。チーム、個人で課題を克服し、いざ勝負の夏へ。1着でフィニッシュするワセ女の姿が待ち遠しい。

(記事 高橋真耶、写真 細矢大帆)

★納得の漕ぎで、5位入賞を果たす

 「何が何でも決勝にいく」(鈴木朋也、スポ3=東京・早大学院)。メダル獲得に向け闘士を燃やす男子エイトが、最終日の戦いに挑んだ。目標の決勝に駒を進めるためには、準決勝で上位2艇に食い込まなければならない。「玉砕覚悟で前半から飛ばしていく」と強く意気込んだクルーキャップ・白濱勇輝(政経4=東京・早大学院)だったが、中大と中部電力に先行を許す苦しいレース展開に。善戦を見せるも3着という結果に終わり、順位決定戦に回ることとなった。

 順位決定戦は、強風吹き荒れるラフコンディションの中でのレースとなった。しかし鈴木が「ラフコンこそ自分たちのチャンス」と自信を見せるように、当クルーには早慶レガッタで勝利を飾ったセカンドメンバーが7人乗艇している。自らを信じスタート位置に付け、運命の大一番が幕を開けた。「ほかのクルーをたたきつぶしてやろう」(白濱)。その言葉の勢いそのままに、順位決定戦でも序盤から積極果敢なレース展開を見せる。中盤になっても勢いは衰えず、他艇を全く寄せ付けない漕ぎを披露した。その後一度もトップを譲ることなくフィニッシュ。5位入賞を決めた選手たちはガッツポーズを見せ、喜びを爆発させた。

 目標には届かなかったものの、クルーとしての強さを見せつけた男子エイト。「やり切った気持ちと充実感でいっぱい」と鈴木が語るように、ガッツポーズは納得の証だ。次なる戦いは、全日本学生選手権。既に3か月後の大舞台へと選手たちの目線は向いている。躍進へ――。挑戦を忘れない9人の活躍から、目が離せない。

(記事、写真 細矢大帆)

★屈辱乗り越え、ペア頂点に立つ!

 頼れる主将と2年生エースが輝きを放った。伝統の一戦での歴史的大敗からちょうど1か月。男子部の最大目標である『インカレ優勝』に照準を切り替え、早慶戦対校メンバーを解体。二人乗りの舵手なしペアで再度自分たちの漕ぎを見直すため、全日本軽量級選手権と同時進行で行われた小艇タイムトライアルに出場した。新藤耕平(スポ4=山梨・富士河口湖)、長田敦(スポ2=石川・小松明峰)組は、予選でトップ通過すると、決勝もその勢いのまま漕ぎ抜き優勝。中大、日大や社会人などの強豪を抑えての勝利に、「力負けするかなと思ったが、そんなこともなくむしろ僕たちがねじ伏せた」(新藤)と堂々とした口調で答えた。

結果

【女子舵手なしクォドルプル】(S:山根、3:谷川、2:辛島、B:望月)

・準決勝 7分07秒92…2着

・決勝 7分32秒08…2着(準優勝)

【女子シングルスカル】(佐藤紫)

・準決勝 8分31秒16…3着(準決勝敗退)

【女子ダブルスカル】(S:土屋、B:坂内)

・準決勝 7分52秒50…2着

・決勝 8分秒14秒40…3着(3位)

【男子エイト】早大B(C:中村 S:竹内 7:白濱 6:長山 5:和田 4:森下 3:杉山 2:鈴木 B:武田)

・準決勝 6分19秒69…2着

・順位決定戦 6分19秒89…1着(5位)

コメント

S:山根由絹(スポ4=岩手・宮古)

――2位という結果について

やっぱりいままで当たり前のように勝っていたのが勝てなくなったというのは危機的状況だと思います。周りが強くなってきたとはいえ、自分たちが勝てなくなったというのは自分たちにもいろいろと責任があると思うので、そこを変えていかなきゃなというのをゴールした瞬間から思っておりました。

――今回のレースプランは

準決勝のレースで、スタートで出られてそのまま行かれたので、前半に勝負というか最初から出ていこうという気持ちではいたんですが、それがうまく表現できませんでした。その差が最後までいってしまったなという感じでした。

――スタートの出遅れの原因は

もともと少し弱かった部分もあったんですが、スタートしてからの何百メートルかで伸ばしていこうという気持ちではいたんですが、そこで風があったりいつもとは違う天候でそれに左右されてしまって、思い通りに漕げなく、タイムにつながらなかったなと思います。

――明大は意識していましたか

そうですね。まだ負ける相手ではないと思うのですが、今回は自分たちにできなかったことが多かったというか、クルーが完成しなかったというのと、気持ちのよい漕ぎが表現できなかったというのが原因ですね。相手が早くなったというよりはそちらのほうが大きいと思います。

――朝日レガッタでクルーの調整がうまくいかなかったということでしょうか

それも少しありますね。その朝日レガッタの前までは早慶戦クルーと朝日クルーで別々に練習していました。同じ練習でも違うクルーで違う漕ぎ方でやってきてしまって。冬で漕ぎの統一ができなかったというのもこれにつながっています。まだまだ全員で漕ぎが統一されていないので、急遽集まって乗ったときには合わせられないという状態が続いて、合わせるのに時間がかかるというもったいない現象が起きていたと思うので、もともとの自分の漕ぎ方を全員が目指している漕ぎ方に近づけていければ。それをやっていきたいと思います。

――タイムを見ると、準決勝のときとだいぶ差がありますが、風の影響が大きいですか

後半は相手に出られてしまって、自分たちが変えよう変えようとしていたところがうまく決まらなくて。相手もそれをさせまいと同じタイミングで仕掛けてきて、行っては行かれの繰り返しで、嫌なレースをされたなという感じです。

――次回までの課題や修正点を教えてください

個人の能力を少しあげて、チームを早めに組んでそこであわせて伸ばすということに時間をかけていきたいなと。即席クルーではいざというときの強みがないというか、今回も自分たちはここで変えられるから大丈夫という安心感がなかったので、そういうプラスアルファを作ってクルーの特色を出せる漕ぎにしたいなと思います。

佐藤紫生乃(スポ1=宮城・塩釜)

――惜しくも準決勝敗退という結果に終わりましたが

実力通りの結果だと思います。

――きのうのコメントでは順位をつけたいとおっしゃっていましたが

500メートルの入りで頭を取りたかった。でも取れずに気持ちが折れた。無理だと思ってどんどん落ちてしまい、離されて詰められてという感じだった。

――後半も佐藤選手らしい強い漕ぎがみられなかったが

後半は気持ちが切れてしまった。

――今大会の収穫点は

今の自分の実力が分かった。先輩方とレースをして、自分の漕ぎも出せずに全く勝負もできなかった。練習不足だと感じました。

――今後どのようなレースをしたいか

今回は3本漕いで、1本も自分が納得するレースがなかった。やはり最後まで気持ちがあるレースがしたいです。

――今回はシングルスカルでしたが、他に挑戦したい種目などは

やはりワセ女の漕ぎを共有したいと思うのでクォドルプルに乗りたいです。ダブルスカルでは土屋愛(スポ2=新潟・阿賀黎明)さんとは高校時代からずっと一緒に乗せていただいているので、体型や漕ぎのスタンスが似ていますし乗ってみたら面白いのかなと思います。

――今後に向けて抱負を

次のレースは、6月上旬のJOCが主催するU-19日本代表の選考会。やはり昨年そこで勝っているので恥ずかしいレースはできないですし、大学生として高校生と一緒に戦うので変な緊張感もある。入賞だけ狙うのではなく、枠になんとか入っていけたらいいなと思います。

B:坂内千紘(商3=東京・日比谷)

――3位という結果について

狙っていたのは優勝だったので、準決勝まで2人でいい感覚を出していただけあって、最後の決勝で2人の集大成というか一番いい漕ぎができなかったのは残念で悔しいなと思っています。

――決勝レースは予選のレースと同じような展開だと感じました

そうですね。立命館大に1500メートル地点付近で追いついて、さしきれずに最後3位のまま終わってしまったというのは、最後に抜ききるという課題ができていなかったのかなと思います。でも、最初の1000メートルまでで予選はもっと離されてしまっていたので、1000メートルまででも追いつこうというのは決勝の方ができていたので、ちょっとは進歩していたのかなという思いもあります。やはり最後差しきれなかったのは同じ失敗を繰り返してしまったというか、私がバウとして予選のときにもっとこういうコールができればよかったと言ったんですけど、それを決勝で生かせなかったのが私個人の反省です。

――スタートから3位でしたが、スタート直後はいかがでしたか

スタートの最初の5本の立ち上げでバタついてしまって、ちょっと余裕のない入り方をしてしまったことと、風も強くて、オールに風を受けて前にちゃんと出られなかったり、船のバランスを崩してしまったりしたことが多かったです。スタートで上がったままのレートで行ってしまったので、もっと風に対応して、落ち着いて一本一本伸ばしていけたらもう少し食ついて行けたのかなといまは思います。

――スタートでレースプランではなかったということですか

スタートで出れるクルーではないと思ったので、スタートで置いて行かれないように意識していました。第2クオーターで伸ばすことができるクルーだと思ったので、第2クオーターで出られた分を巻き返して、第3クオーターに入るまでには1位になって、そこから大きく長く強く漕ぐというのを目標に、そういうプランを立てていました。

――立命館大の漕ぎはいかがでしたか

立命館大の漕ぎも予選のビデオで見ていたのですが、やっぱり一本一本力強い漕ぎだなというのが印象的です。でもやっぱり長さとかリズムの面では自分たちの方ができている自信もあったので、最後には勝てるかなという思いがあったんですけど、ちょっともう少しの何かが足りなかったのかなと。立命館大は対校クルーで、前から組んでいたクルーだったので、そこの強みに対抗するにはやっぱりそういうハンデもある中で、ワセダとしてはそういうところで負けたとは思いたくなかったので、自分たち2人で漕ぐことをもう少し突き詰めて行けていたらよかったのかなと思います。

――次回に向けた課題や修正点

次はインカレを見据えた選考が始まるんですけど、インカレでまだ何に乗るかわからないのですが、私としてはやっぱり土屋の後ろに乗れたことで自分の中では安定してきましたし、彼女の後ろで漕げて、進める漕ぎっていうのはこういう漕ぎなんだなといういろいろ吸収できた面もありました。これを生かしてインカレ選考に臨んで、どの船に乗っても優勝できるようにやっていきたいなと思います。土屋にも対校クォドに乗って欲しいなと思います。

7:白濱勇輝(政経4=東京・早大学院)

――予選では大きなタイム差があった中部電力と、準決勝では競るレースになりましたが

昨年も軽量級は5位で、何としても決勝に進みたいという気持ちが強かったです。(決勝に進んだ)上位4クルーとは確かに差はありました。そこで他艇は若干温存してきていた中で、自分たちは玉砕覚悟で前半から飛ばしていって、それによってあそこまでいけたのかなとは思いますね。

――順位決定戦の前、クルーキャップとして何か声をかけましたか

決勝には進めませんでしたが、絶対にほかのクルーをたたきつぶしてやろうという気持ちは伝えました。あとは逆に、自分たちがやってきたことを信じて気負わずに、とも伝えました。準決勝では割と良い漕ぎができていたので、それをもう1回やろうと。結論としては当然の結果でしたね。

――早慶レガッタのセカンドのメンバーが主となるクルーでしたが

ストロークが変わってしまい、時間も少ない中で最初はやはり苦労しました。しかし、負けん気がすごく強いクルーでした。雰囲気づくりとしては早慶レガッタからずっとやってきたので、最後まで伸び伸びと漕ぐことができました。

――ストロークの竹内選手(友哉、スポ1=愛媛・今治西)について

竹内はやはり日本代表経験もあるので、スイープもまだ1ヶ月しか漕いでいないのにすごいな、とは感じます。リズムも良くて、自分は7番としてそのリズムを後ろに伝えていくというのが仕事でした。

――今大会見えた課題は

一橋大や中大など、学生でも速いクルーがあって、自分たちもインカレではそのようなチームと戦うことになります。選考はこれからですが、自分たちはセカンドを通じて成長できたので、頑張って少しでも上のクルーに乗れるようにしたいです。

――昨年のクルーとの違いは

昨年は早慶レガッタでは大敗して、そこからスポ推の人たちと乗って軽量級5位という結果でした。昨年と比べるとことしは皆格段に良い漕ぎをしていて、ことしも昨年のセカンドに乗っていたメンバーの半分くらいが乗っています。そこから一人一人が確実に成長できているので、良いと思います。

――今後への抱負を

自分は最後のシーズンとなるので、インカレでメダルを取りたいです!

――どのクルーに乗りたい、という希望はありますか

自分は現実主義者なので(笑)、対校は少し難しいとは思いますが、どのクルーでも自分は活躍できるくらいの力を持つくらいに成長できたと思うので、最後は今までで一番良い結果を残したいです。

2:鈴木朋也(スポ3=東京・早大学院)

――準決勝で中部電力に食らいつくレース展開となりましたが

タイム差がものすごいあるということはわかっていましたが、僕たちの目標である「何が何でも決勝にいく」ということを成し遂げるために、前半から皆で飛ばして行こうと決めていました。それが実行できて良かったと思います。

――きのうのミーティング内容は

レースは2000メートルですが、準決勝は1000メートルレースのつもりで戦う気持ちを持って、前半から果敢に攻めていこうというように皆で決めました。

――順位決定戦に臨むときのお気持ちは

風がとても強く、ラフコンディションの中でのレースでしたが、9人中ラフコンの隅田を制した7人が乗っていたので、ラフコンこそ自分たちのチャンスだと思って皆で力強く漕げました。

――順位決定戦のレースプランは

準決勝の前半1000メートルを攻めきる感じが非常に良かったので、順位決定戦も果敢に攻めていこうという同一のレースプランで臨みました。

――5位という結果について

決して満足はしていませんが、納得のいく結果だとは思います。

――実力を出し切った結果と見てよろしいでしょうか

そうですね。最初に決めたクルーの目標は達成できませんでしたが、4レース全てで自分たちのレースができました。なのでやりきった気持ちと充実感でいまはいっぱいです。

――これからの練習について

これからはインカレへの選考期間に入るので、まずは大きなケガや病気をせずに、きょう乗ったメンバー皆で夏の戦力になり、全日本級の大会で活躍できるよう、尽力していきたいと思います。

――今後の抱負を

今回は早慶戦セカンドエイトのメンバーを主としてクルーを組みましたが、夏の大会はオープン級の選手も含め、対校エイトを組む予定です。その中で自分は小柄な選手ですが、対校エイトの戦力として戦えるように、そして活躍できるように、小さな身体を大きく使い、繊細に、完璧な漕ぎをしていきたいと思います。