【連載】自転車インカレ直前特集『風』 第2回大仲凛功×神村泰輝

自転車

 第2回は、早大自転車部1年生の大仲凛功(スポ1=愛媛・松山学院)、神村泰輝(スポ1=東京・豊多摩)の2選手による対談。1年生ながら多くの大会で結果を残す両選手に、早大自転車部に入ってからの生活環境の変化から、競技面での変化など様々なことを伺いました。
※この取材は8月23日に行われたものです。

(早大では)刺激を受けてお互いに高められる

早大での1年目を過ごす大仲

――ここまでの早大での生活を振り返っていかがですか

大仲 やはり最初の方は生活に慣れず苦戦した部分はありました。しかし、慣れてきてからは生活リズムが掴めてきてそれに応じて練習も上手くやっていけているかなと思います。

神村 自分も生活面で言うと、初めての一人暮らしで洗濯や洗い物というのが大変でした。今では慣れて自分のペースで練習に行ったり、安定して生活を送れていて、自転車を行う上でかなりいい環境にいるなと思います。

――慣れるという話がありましたが、現在の生活に慣れたのはいつ頃ですか

大仲 自分の中でちゃんと慣れだしたのは6月くらいかなと思います。

神村 自分は早めに入寮していたので、授業が始まって1週間くらいに慣れたという感じです

――早稲田大学を選んだ理由を教えてください

大仲 元々早稲田大学に憧れがあったのと、早大自転車部の環境が自由で、逆に言えば自己責任というところで、自分が強い意識を持たないと強くなれないという環境に身を置きたくて早稲田大学に入りました

神村 凛功とほとんど同じなのですが、早稲田のスポ科(スポーツ科学部)で学びたいというのと、自転車部が自由な感じで、自分は自分のペースで練習したいので、自分に合ってるかなと思って早稲田に決めました。

――早大に来て良かったと思うところはありますか

大仲 授業の多彩な体系であったり、自分の知らないことを学べたりだとか、自転車部の活動でも他では見れない光景が見れたり、自分の人格形成につながっているなと思います

神村 授業のレベルも高いですし、学生も優秀な人が多いので、刺激を受けてお互いに高められるというところが良いなと思います。また、練習も自由にできるので、その点は良かったと思います

――授業の話がありましたが、面白かった授業や興味深い授業はありましたか

大仲 僕は合気道とカバディです。カバディは競技を知る良い機会になりました。けがをしやすい競技特性ではあったのですが、取ってよかったなと思えた授業でした。合気道は道着を着たことがあまりなかったので、着てみたいなという気持ちで取りました(笑)。そうしたら授業の内容も結構面白かったという感じです。

神村 自分も同じくスポーツ方法実習で、サッカーと陸上のフィールドが面白かったです。陸上は砲丸投げなど自分がやってこなかった競技に触れられたので、面白かったです。

――お二人は自転車以外にスポーツ経験はありますか

大仲 自分は水泳だけです

神村 自分は一通りやりましたね。サッカー、野球、テニス、陸上の長距離をやっていました。

――その中で自転車を選んだ理由はなんですか

神村 小さい頃から自転車に乗ることが好きで、高校に入学した際、良い自転車を買ってもらったことで競技としても始めました。

――高校までと大学との違いはどのようなものを感じていますか

大仲 僕は5年くらいこの競技を行っているのですが、高校までは指導者から与えられたメニューをこなすということを主にやっていました。自主練も週1、2回はあったのですが、大学に入ってからは毎日とは言いませんが、ほとんどが自主練習で、最初の方は組み立てにも苦戦しました。ただ、だんだん慣れてきて、この日はこうしようというプランニングはできるようになりました。このことは競技面でもそうですし、これから生きていく上でも役に立つ力だと思っています。

神村 自分は高校の時は部活として行っていたのではなく、個人で楽しんでやっていました。大学は部活なので、その分団体としての一体感を感じるというのが違いだと感じています。

――そんな中で今シーズンお二人は多くの大会に出場されていますが、ご自身のレースを振り返っていかがですか

大仲 前半は結構調子が良くできていたのですが、後半に入って色々なトラブルもあって良い結果が残せなかったかなというのが印象です。

神村 自分は今シーズンに入ってから、思うようには練習を積めていませんでした。でも去年に比べて何故か調子が上がっていて、満足しているとまでは言わないまでもある程度の結果は残せて良かったかなと思います。

――神村選手は主にロードの大会に出場されていますが、ロードの大会で心がけていることはありますか

神村 自分ははっきりと決められたメニューをこなしたりするのが苦手なので、自由に楽しみながらやっています。

――大仲選手はロード、トラック共に大会に出場されていると思いますが、同じく心がけていることはありますか

大仲 自分は短・中・長距離で分けへだてなく頑張る、という感じです。

――連戦になることもあったと思いますが、コンディション維持で気をつけたことはありますか

大仲 連戦になることは仕方がないことですし、その中で重要な大会に向けてコンディションを整えるためのレースにしたりとか、自分の中で決めてやっていました。

――お2人が自分の中で足りていないと感じる部分はありますか

大仲 自分はレースの中で焦ることが多いので、冷静に状況判断してレースできるようにしたいです。あとは終盤にしんどい場面が多いのでそこを修正したいですね。

神村 自分は長い距離の練習をすることが少ないので、終盤にかけて疲れて力が出せなくなっていってしまうので、そこを修正したいです。

――それらの課題を改善するためにやっていくべきことはありますか

大仲 僕はやはり持久系の練習、その中でも高強度なものに取り組んで目標である短・中・長距離分けへだてなく、という部分を強化していきたいです

神村 自分はもっと長い距離の練習で、練習の後半にも追い込むメニューに取り組んでいきたいなと思います。

切磋琢磨(せっさたくま)し合えるいい仲間

質問に答える神村

――続いてプライベートの質問に移りたいと思います。まずはお互いの他己紹介をお願いします

大仲 神村さんは接しやすくてとても優しい人です。実は同期でも年が一つ離れているので、「タメ口でいいよ」とは言われながらどうしても僕が敬語になってしまうんですけど(笑)。そこは申し訳ないですね。ただ僕が人見知りで、仲良くしてもらっているのでありがたいです。

神村 凛功が言っていた通り自分が浪人していて一個年上なので、自分は気にしないようにしているのですが逆に気にされちゃっている部分はあると思います(笑)。でも凛功とは自転車の話もしますし、お互い車が好きだったりするのでその話をするのが楽しいですね。自分から見た凛功の印象は「真面目」という感じです。自分はカフェとかに行ってのんびりするのが好きなんですけど、凛功は練習中も追い込んでいることが多いです。

――競技面で言うとどうでしょう

大仲 僕は今中・長(距離)を中心にやっていて、長距離になるとやはりかなりしんどいと感じるんですが、神村さんは僕が辛い時でもめちゃめちゃ元気で(笑)。それをみると「マジ尊敬だわ」ってなりますね。あとは大学主催ではない大会やツアーでは違うチームでレースをすることがあるのですが、そこで神村さんが活躍しているのを見て「同じ大学で同期なのにすげー」と思いながら見てました(笑)。

神村 まず4キロのトラック種目では自分より凛功の方が全然早くて勝てないんですよ。あと凛功はロードも強くて。お互い脚質があって自分の方が得意なコースも凛功の方が得意なコースもあるんです。凛功は自分に足りないものを持ってるんで、お互い様かもしれないですが羨ましいですね。

――お互いの紹介を聞いてみていかがでしたか

大仲 神村さんは僕の得意とする種目もそこそこできるので。そこそこできるというか、トラック種目も初めてなのに、なんなくこなすから僕にとっては結構焦るところではありますね(笑)。

神村 同じ種目やってると、力の差がタイムにばんって出るので、俺は正直凛功すごいなって思いつつ、やっぱり悔しいなとは感じます。

大仲 結局同じ大学で同期だけど、やっぱりライバルみたいなところもあるので、切磋琢磨(せっさたくま)し合えるいい仲間だなと思っています。

神村 それは俺も同じこと思いますね。

――オフの日は何をされていますか

大仲 僕はオフの日は友達と遊んだり、あとは車を持ってきているんですけど、洗車したりとか、自転車も整備したりだとか。それぐらいですね。

神村 僕もオフの日は先輩と出かけたりとか、あとは自分自転車いじるの大好きなんで、自転車やっぱりいじってたりだとか。あとはYou Tubeだとか、アニメだとかを見たりしています。

――自転車の整備は時間をかけてやるものなのでしょうか

大仲 僕は自転車整備を段取り良くするのが、ただ知らないってだけなんですけど、下手くそなんで結構時間かかっちゃいます。けど神村さんとかは割とすぐやってるイメージ…。

神村 いや、俺も時間かかるタイプです。俺はこだわりが強いから(笑)。

大仲 ああそっか、確かに。

――先ほど大仲選手は車が好きとおっしゃっていましたが、具体的に好きなところは

大仲 街中で、例えばランボルギーニとかがあったら「お~」って(笑)。「珍しい車走っとる」みたいな。そういうので車好きっていうのは分かりますし。2人では、例えばレースイベントとかはそもそもお互いレース日程が合わないので行ってないですね。

――早稲田の体育会所属選手で、仲の良い選手はいますか

神村 この寮に自転車部以外には水泳部とかいるんですけど、水泳部の1年生とか選手は、全員ではないですけどある程度は仲いいです。

大仲 僕は自転車部外だと、部活動生じゃない人たちと仲が良くて。もしそれ以外だと、仲がいいってほどじゃないですけど、同じ教養演習でここの寮に住んでる水球部の1年生のやつとはそこそこ喋ります。

――お2人は入部して4カ月になりますが、自転車部の日頃の雰囲気はいかがですか

神村 なんかもう楽しい雰囲気というか。怖くて話すのに緊張するような先輩はいなくて、どちらかというと和やかな感じかなって自分には映ってます。

――一番仲の良い先輩は誰ですか

神村 一人挙げるとしたら、自分は4年生の小野豪太さん(スポ4=岐阜・鶯谷)です。自分も小野先輩もキャンプが好きなんで、たまに一緒にキャンプ行って、仲良くさせてもらってます。

――キャンプはどこに行かれるのですか

神村 実は昨日も行ってたんですけど、埼玉県の飯能市にキャンプしに行ってました。

大仲 特にこの人がっていうのはないんですけど、長く良くしてもらっている先輩は山田拓海さん(スポ3=長野・飯田風越)で。僕は中学3年生の時に強化育成選手になってその時から知り合いで、ちょっと仲良くというか、良くしてもらって。早稲田大学に入った理由の一つにも山田拓海さんが部にいることを知っていたので、またお世話になりたいなと思って。入ってからもそこそこ良くしてもらっています。

――大仲選手は今お話にもあった通り強化指定選手に選ばれて、2月には欧州にも行かれたと思います。その経験というのは

大仲 ざっくり言ってしまうと、あまりいい成果は得られなかったんですけど、一つ経験として、日本のロードレースシーンと海外の本場と言われるところのロードレースは、やっぱり全然スピードも展開の仕方も違うなっていう印象でした。あと、やっぱり力の差が激しい。パワーがないと生きて…まあ生きてって言うのはあれなんですけど、集団に残ることすらできないなっていうのがありました。

――ここから早稲田大学で4年間を過ごされますが、なりたい選手像はありますか

神村 自分はそんな、大学卒業後もガチで自転車に取り組んで競技しようとは思ってないので、大学4年間では自転車に全振りしないように。他の勉強もそうですけど、もうちょっと将来役立つようなこともやって、もちろん競技の方も結果を残していこうと思うんですけど、競技に全振りしないようにっていうのを目標にやっていきたいと思います。

大仲 将来については半分社会人半分競輪選手で考えていて、今はどっちに傾くかは正直分からないし、そもそも気持ちが持つかっていうのは不透明で。ただ、自分の中で決めていることは4年間せっかく早稲田で、推薦取って入れさせてもらってるので、早稲田で自転車部に貢献できたらなとは思います。ただ神村さんと同じなんですけど、自転車に全振りせず、いろいろな知識を蓄えて社会に溶け込むというか、慣れるというか、そんな選手になりたいです。

「絶対こいつに勝ってやろう」っていう気持ちを持つことが重要

質問に答える大仲

――ここからはインカレについてのお話に入りたいと思います。この前の合宿はいかがでしたか

大仲 合宿は少しアクシデントもあって、最後の調整としては各自思うことはあると思うんですけど、僕は感覚としてはつかめたかなと思います。ただあともうちょっと修正しないといけないなというのをインカレまでの残り期間に突き詰めたいと思います。

神村 自分も感覚としては悪くなかったかなというふうに思います。

――重点的に行った練習はありますか

大仲 やはりチームパシュートの練習ですね。今年はメンバーがそろってるとは言われているので。確かに練習のタイムも良くて、表彰台を狙えるのではないかっていう、別に自負しているわけではないですが(そう)思うところはあるので。チーム一丸としてやっている重要な種目かなと思います。

神村 自分も同じですね。自分もそのチームパシュートのメンバーの4人で協力して、表彰台に乗りたいなと思っています。

――チームパシュートは他の選手にお話を聞いた際も「一番期待ができる」ということでした。手応えは感じていますか

大仲 そうですね。今まで僕が高校時代にやっていたトレーニングを取り入れたりして、いろいろバリエーション豊富なのかはあんまり分からないんですけど、違った練習も取り入れてやってみているので。あとは本番どううまくまとめあげられるかっていうのは自分の中で期待しています。

神村 自分も本番は正直緊張しているんですけど、緊張してもいいことないので、本番は落ち着いて臨みたいなと思っています。

――神村選手はインカレでトラックが初めてになるのでしょうか

神村 そうですね、団体の種目は初めてで。そもそもこのトラック種目っていうのは今年に入ってから初めてやったので、慣れない部分はあるんですけど、合宿とかでいろいろ教えてもらって、だんだんと慣れてきているので、この調子で頑張りたいと思います。

――これからインカレに向けてさらに取り組んでいきたいことは

大仲 僕は個人種目でオムニアムも出るんですけど、インターバル系が若干弱いので、そういう心拍(数)を上げる練習とかを割と重点的にしていって、なおかつ疲れはインカレに持ってこないように、調整かけていきたいなと思います。

神村 インカレまで1週間しかないので、今から劇的に伸びるということはないので、自分は疲労を抜く方面で、無理しすぎないように。回復して、一番いい状態でインカレに出られるように調整したいと思っています。

――早稲田が今回のインカレで勝ち抜くために必要なこととは何だと思いますか

大仲 他校に有力選手がいっぱいいて、優勝候補と言われる選手もちらほらいる中で、「優勝はできない」って思ってしまう部分もあると思うんですけど、ただ「絶対こいつに勝ってやろう」っていう気持ちを持つことが試合運びをする上では重要だと思っています。

神村 自分も凛功と同じように強い気持ちっていうのはもちろん必要だと思っていて、あとは冷静さですかね。ロードでもチームパシュートでも、冷静に、普段通りにって感じで。焦ると崩れちゃうんで、焦らないように冷静にってところが大事かなと思います。

――インカレでキーパーソンとなりそうな選手はいますか

大仲 僕は山田拓海選手だと思います。理由はやっぱり今一番仕上がっているはずだからです(笑)。最近一緒にあまり走れていないので、そこまでコンディションのことは分からないんですけど、一番気持ちを入れてやっていると思います。

神村 自分も同じですね。山田拓海さんで、やっぱり先輩で、大学のレースでの経験もあって、中長距離のリーダーで彼がまとめている感じなので、キーマンになってくるかなと思います。

――最後にインカレに向けての目標をお願いします

大仲 さっき言ったパシュートで優勝は目指すんですけど、表彰圏内は絶対に取りたいなって思います。あと、個人種目で個人パシュートは自分の得意とする種目なので、表彰台を狙っていきたいのと、オムニアムは前回やって、若干苦手ではあるのですが、苦手な中でどううまくまとめるのが目標です。ロードは多分前3日で結構疲労がたまってると思うんですけど、でも疲労がたまってるのは他の選手も一緒だと思うので。自分の中でどう疲労をうまく抜いて、ロードを冷静に乗り切るか。山田選手と神村選手をどううまくアシストできるかを考えて走りたいと思います。

神村 自分はチームパシュートでまずもちろん表彰台は狙っているのですが、ベストな走りがしたいというのが一つと、あとは自分はロードの方にも出るので、凛功がアシストって言ってたんですけど、でも別に凛功が勝つこともあり得るかなというか、レースの展開によっていろいろ変わってくるので、そこは臨機応変に対応して、チームの誰かが勝てればいいなというふうに思います。

大仲 チームで柔軟にね。

神村 うん。

――ありがとうございました!

(取材、写真 髙田凜太郎 編集 荒井結月、大幡拓登、星野有哉)

◆大仲凛功(おおなか・りく)(※写真左)

愛媛県・松山学院高出身。スポーツ科学部1年。映画をよく見るという大仲選手。最近はジュラシックワールドを見に行ったそうです!

◆神村泰輝(かみむら・たいき)

東京都・豊多摩高出身。スポーツ科学部1年。キャンプとアニメが好きな神村選手。そのため特に見ているアニメはゆるキャンだそうです!