【特集】2018年度インカレ直前特集『結実』 第3回 池田ゆめこ×小泉夢菜×山本綾香

自転車

 女子の競技人口が少ない学生自転車競技。その中でも早大は女子選手が例年少ない大学だ。しかし、過去には全日本大学対抗選手権女子ロードレースで連覇を達成した合田祐美子(現BH BIORACER)を輩出し、橋本聖子東京五輪・パラリンピック大会組織委員会理事も早大自転車部寮・稲輪館を拠点に練習をしていた。数は少なくとも、目標に向かってひたむきに努力する女子選手が絶えない早大自転車部。現在、2年連続女子トップアスリートを迎え3人の女子選手が在籍し、サポート陣を含めると女子部員は8人。女子部員の存在感が増した今年は池田ゆめこ(スポ4=北海道・札幌旭丘)、山本綾香主務(スポ4=東京・普連土学園)、小泉夢菜(スポ2=埼玉・浦和工)の3人に素のままの「ガールズトーク」を聞かせてもらった。

※この取材は8月3日に行われたものです。

「悩みも話題も共有できる」

他愛ないことでも会話が弾む

――早大は女子部員の割合が少ないですが、ここ最近でサポート陣に女子が増えました。変わった点はありましたか

小泉 自転車部にいると女子がいるので、やはり話しやすいです。男子だけだと少し行きづらい部分もありますが、女子が何人かいると同じ悩みを抱えてることもあり、共有できる点が良かったです。

池田 SNSなどの話題も共有しやすいですし、まとめると女子トークができるということですね(笑)。

――今年は下山美寿々選手(スポ1=大阪・大阪教育大付属四天王寺)も入り、小泉選手から2年連続でトップアスリートが入学しました。

山本 私は始めて知った時、すごく嬉しかったです。会ったことはありませんでしたが、合格者リストを見てトップアスリートの中に自転車という競技があるという点に感動して、会うのが楽しみでした。

――3人は普段からどういう関わり方をしていますか

池田 夢菜(小泉)は西武園などの競輪場の練習では一緒にメニューを行ったりして、その後私が勝手に部屋に行ったりしています。(笑)。

小泉 ゆめこさんは練習の後毎回部屋にいます(笑)。インターホンが鳴ったらゆめこさんがいることが多いです(笑)。

山本 ここ最近はずっとそうだね。終わったら夢菜の家に行って、2人がシャワー浴びてる間に中に入って、3人でご飯食べてワイワイ騒いで夜遅くまでいることが多いです(笑)。

池田 綾香が作ったこの間のカレー、すごく美味しかった。

山本 なるべく栄養のあるものを作っています。

――かなり仲良しですね。料理の研究はされているのですか

山本 研究はしてないですけど、元々料理が好きだからです。あと、アスリート用の勉強はしました。

――具体的にいつ頃から始めたのですか

山本 夢菜が料理できない頃に「一緒に勉強して頑張ろう」ということで勉強しました。

小泉 去年の夏、秋ぐらいですね。入学してきて色々悩んでいた時に一時期何もしたくない時がありました。その時に綾香さんが色々なことを教えてくださって、徐々にできるようになったという感じです。

山本 本当に何も分からなくて。ひき肉が分からないぐらいだったよね(笑)

小泉 高校生の頃は一回もご飯作ったことないし、ただ練習だけすれば良くて。練習環境にはいつもコーチがいたので、行ったら皆で一緒にやるという毎日でした。帰ったらご飯があって、寝て、朝練習に行くというサイクルでした。大学に入って「こんなに一人でいろんなことをやらなきゃいけないのか」とやることが多すぎて最初はついていけなかったですね。

――それをサポートしたのが山本主務や池田選手だったのですか

山本 そうですね。女子選手は男子と違って一緒に住んではいないので、面倒見てくれる人もいません。男子と違って輪に入りづらいこともあるので、そこは私が面倒をみなくちゃいけないと考えていて、通いつめたりしました。

「綾香は何も言わなくても見通している」

――選手二人から見た山本主務はどうですか

池田 本当に何も言わなくても綾香は試合でも練習でもやって欲しいことを見通してる感じがあります。

小泉 すごい思います。それは他の人も思っていることだと思います。綾香さんは「これをやってください」と言う前に動いてくれているから、自分が何かしなきゃと考えています。そういう部分が真のマネージャーのあり方なのかと思います。私の同級生も綾香さんのことをすごく尊敬しています。

山本 両脇から褒められてすごくムズムズします(笑)。

池田 この間の白馬でのレース(全日本RCS第4戦・第13回白馬クリテリウムラウンド)が終わった後、綾香にマッサージをしてもらいました。表情などで察してくれますね。

山本 夢菜とテレビ電話しながら、3人でしました(笑)。

小泉 ゆめこさんが私を呼んでたんですよ(笑)。

山本 3人のグループラインがあるのですがそれが日常的に動いていますね。いつも変な動画が上がっていたり(笑)。

小泉 私はゆめこさんと過ごす時決めてることがあって、必ず一回はゆめこさんと動画を撮るということです(笑)。

山本 白馬でも動画を撮って送ったりしていましたね。車で寝てる写真とかです(笑)。でも、一時期ご飯を作って載せていた時期があって、もっとこうした方が良いよとか有効活用できていますね。

小泉 「何と何が足りなくて、こうしたら完璧だよ」ということをお二人はアドバイスしてくれるから参考になっています。

池田 綾香は、マネージャーだからというわけではなく、すごく自然と仕事をしているから、居心地がいいというかマネージャー以上の仕事をしてくれます。

山本 マネージャーに、と誘われた時は、試合や合宿に日程が合ったときに来ればいい、という感じで、普段の練習は来なくていいみたいな感じでした。でも、それは違うなと考えていて。普段一緒にいないのに試合だけ来て一緒に結果を喜んでも、どうして喜べるかと。選手も私も違和感があったので、普段も一緒にいて、練習も見て、それ以外もフォローしたいと思いました。私も女子と一緒にいやすいし、男子には入り込めない。そういう点で女子選手に貢献できているのは、私もマネージャーとしてすごくうれしいです。

――試合だけに行くことに対する違和感はいつからあったのですか

山本 最初から疑問に思っていました。試合、合宿は休まず行くのに、練習に行かないのは違和感でした。他の部活でもそんなことはないですし。

――家からは相当遠いと思いますが

山本 そうですね。始発電車に乗ったり、夢菜の家や、ゆめこの家に泊まったりもします。「あまり夜遅く行くのはどうかな」と考えてファミレスでオールしたこともあります(笑)

「どっちでもいいじゃなくて、来てほしいと言われたい」(山本)

山本主務が発案から発行まで手掛けた『稲輪誌』

――山本主務は2年時のインカレ後からマネージャーから主務に役職が変わりました。変化はありましたか

山本 大変でしたね。私が入部した時は「マネージャーはいればいい、試合の時に来てくれたらありがたいな」ぐらいの感じでしたが、私はそれがすごく嫌でした。どっちでもいいじゃなくて、来て欲しいと言われたくて。私の都合で行く行かないを決めたくなかったんです。主務になってより一層責任感が増したので、必ず部を第一優先に考えるようになりました。運営する視点も持つようになって、生活も全て部活中心に変わりました。

――運営の視点とは具体的にどのようなものでしょうか

山本 資金面ですね。『稲輪誌』というOB向けのリーフレットを作りました。コーチが変わって、部にお金がなかった時に資金集めをしようとなりました。大学からの給付金は変わらないから、OBから集めて増やすしかないんです。他大学の人と話してワセダはOBと希薄な関係なんだと気づきました。『稲輪誌』で今の自転車部をもっと身近に感じてもらい、寄付を募りました。私が作成してて、今は後輩が作っています。今後は後輩が作って続いていければなと思っています。隔月で発行していて、寄付が集まっています。試合日程を載せているので、OBが会場に持ってきてくれたり、振り込んだよという連絡を直接私にしてくれたりとか、泣きそうなぐらい感動しました。コーチたちと考えながら発案して、基本私が作成しています。名前も私がつけました。今は8号まで出しています。こういうのにも自分が撮った写真も使えますし、今回は私が作るのは最後なので編集後記を書いています。最初の頃は1週間ぐらい寝ずに考えたりもしていました。表からは見えない作業ですが、ホームページもこういうお金で成り立っている部分はあります。

――普段から一緒にいることを大切にされていますが、役割を果たせたという実感はのはいつからありましたか

山本 入部当初からです。自転車部に入部した当時からサポート陣が不足していて、来て欲しいと言われて入りました。必要とされているんだなと思って入りましたし、実際にすぐに先輩が引退されて全て仕事は私に引き継がれました。マネージャーは私しかいないという責任感がずっとあって、それが続けて来た理由かもしれないです。私がいなくなったらやる人がいなくなるというのと、2年の夏から主務の話も来たので、より一層その責任感が増しました。低学年ながらこんな仕事していいんだ、任せてもらって改善すると嬉しい気持ちもありました。

――そもそも入部したのはなぜだったのですか

山本 孫崎(大樹主将、スポ4=京都・北桑田)と同じクラスでした。仲良いグループがあって遊んだ時に部の事情などを聞いて、色々写真をやる動画を見せてもらって。広いカラオケの部屋に入った時に、いきなりスマホでレースの写真を見せてきました(笑)。熱に押されて最初は試合とか合宿に少し来てくれるだけでいいし、サークルもやっていいよという甘い言葉に誘われて見学に行きました。だから孫崎には感謝しています。その時ゆめこに初めて会いました。今でも覚えています(笑)。男子の練習に女子が1人だけいて、この集団で競技をするのは強い自分の意志がある女子というイメージかありました。第一印象はそうでしたが、ギャップもありました(笑)

小泉 確かにゆめこさんは話してみるとおっとりした方でした。だんだん考えていることも分かるようになりました。

山本 私たちはゆめこのことは全部わかります(笑)

――以心伝心ですね

山本 同期に女子がいて本当に良かったなと思います。本当にやめたいと思ったことが何度もありました。だけど、私がもし辞めたらどうなるかと考えて、きっとこの2人だったら悲しんでくれるだろうなと確信みたいな絆がありました。ゆめこは放っておけないですし、それは夢菜もです。何かあったらすぐ言っちゃいます。2人がいなかったら続けていないし、自転車部にいないと思います。

「ゆめこは積極的」

――話は変わるのですが、先日カメラマンの深井文浩さんがTwitterで「どりこさん毎度の声掛けありがとうございました」とおっしゃっていましたが、普段どんな声かけをされているのですか

池田 深井さんはいつもフェイスブックやツイッターに写真をあげてくださって、4年間お世話になっていたので、会うたびに挨拶をしていつもありがとうございますとは言わせていただいてます。

――トラック対談でも田中克尚選手(スポ3=岡山工)から池田選手がメニューの指示出しを手伝ってくれているという話も出ました

池田 ウォーミングアップの周回では特に声を出しています。声を出せば今自分が何周してるかも分かりますし、それで集団のペースも自分たちで考えて調整できるので、そういうことも考えて積極的に声を出すようにしています。

一同 拍手

山本 ゆめこは積極的だよね。

池田 男子と女子のメニューは変わってきますが、それでも似たようなメニューをするときは男子の練習に入れたら入りたいし、夢菜もそうだと思います。ただ、聞き辛いというのもあるので、上の立場として自分からコミュニケーションをとるようにしています。夢菜も最近は何も言わなくても結構声を出すようになってきていますし、これからが楽しみですね(笑)。

小泉 私が1番上になるのは不安ですね(笑)。心配なことは今まで分からないことがあったら、グループで聞けば二人のどちらかが教えてくれたのでどうにかなりましたが、一人になればどうなってしまうのかなと考えます。

――小泉選手は池田選手と山本主務の引退後どうしていきたいと考えていますか

小泉 ゆめこさんみたいに元気に頑張って、綾香さんみたいにしっかりしたいです。二人のいいところを受け継ぎたいです。

山本 私達泣いちゃうよ(笑)。三人はお互いに必要不可欠な存在です。

池田 私もそう思います。

「色んな人のメニューを取り入れる」(池田)

トレーニングについて語る池田と山本(左)

――池田選手は今季を振り返っていまどう感じていますか

池田 バンク練習でもタイムも上がってきて、フライングラップとタイムスプリントに力を入れてきました。今までは本当に夢菜からすぐちぎれたりして話にならなかったのですが、最近では一緒に練習できるようになりました。練習のやり方などもあると思いますが、いろんな人がやってるメニューなどを見て、それを取り入れたらうまくいくということもあります。また、今までやってきたことも続けなからやっているからパフォーマンスが上がってきたのかなとも思います。ただ、東日本(東日本学生選手権トラック)でチームスプリントを2連覇できなかったのが悔しいです。決勝であまり力を伝えられなくて、2走の夢菜にうまくスピードを繋げることができませんでした。そこを伸ばしていくつもりで練習を行っています。

――他の人がやっていることを取り入れているとは、具体的には何を参考にしているのですか

池田 岡島コーチの練習メニューはずっと取り入れていますが、安倍くん(大成、スポ2=岩手・紫波総合)のウエイトも取り入れたりしています。やってみたら体幹を意識しやすくなりしました。

――そのメニューを取り入れたのはいつぐらいですか

池田 最近ですね。7月の中旬、下旬にかけてです。

――試合で成果は表れましたか

池田 白馬のレースがありましたが、クリテリウムだったので話は変わります。ただ練習でバンクでの走りは意識しやすくなりました。ペダリングの動作分析も矢内先生(利政、スポーツ科学学術院教授)という自転車部の部長さんにやっていただいてます。動画をサポート陣に撮ってもらって先生に送るのですが、それで指摘された課題を改善しています。様々な角度から教えていただいてます。

――その解析は全ての選手がやっているのですか

池田 個人的にやっていただいています。前に取り入れたウエイトのメニューでも精神的に鍛えられました。短時間でやるメニューなので集中的にやる力が身につきます。そのためバンク練習などでも力を出し切ることができるようになります。

小泉 実は、ゆめこさんが追い込んでるつもりでもまわりからみたら追い込んでないと監督やコーチからも言われ続けていて、どうやったらゆめこさんを追い込めるかと一緒に考えました。それでワットバイクで一キロ運転した時に倒れていて、初めてゆめこさんが真に追い込んでる姿を見ました。「ゆめこさんも追い込むことができるじゃん!」と思いました。

池田 よく言われます。すごい過酷なメニューでしたが、そういうのも周りが応援してくれるから最後までできるし、一人では追い込めなかったと思います。

――今の200メートルの自己ベストはどのくらいですか

池田 12.9秒です。この間夢菜と一緒にやったレースで12.6秒を出せました。練習の方が出せることもあります。

――インカレのスプリントはどのようなプランを描いていますか

池田 自己ベストはもちろんですが、やはり予選を勝ち上がるにはそれこそ12秒前半のタイムが女子の全体のレベルを考えたら必要です。狙っていきたいです。

小泉 ゆめこさんが練習で出せる力を本番で出せたら全然問題なく走れると思っているので、何が良くないかいつも考えています。

――お互いアドバイスし合っているのですね

池田 そうですね。確かに、夢菜が男子の後ろについてフライングするところを見る時には、その後でスピードや走り方、フォームのことも聞かれます。私よりも実力があるので言えることはないですが。男子にもしっかりついていけるし、ただ距離が長くなるとギアの比もあるので離れることもあるけど、耐える力と元々の実力が高いです。夢菜はまだまだ伸びると思います。

「勝ちを狙う気持ちが戻ってきた」(小泉)

――小泉選手は今季を振り返っていかがですか

小泉 2018年になってからそれまでできなかったことができるようになって来て、ある程度落ち着いて来て、成績も出はじめて、だいぶ高校時代に戻ってきた感覚はあります。

――全日本学生選手権トラックでは500メートルTTを37秒で優勝されていましたが、戻ってきた感覚はありましたか

小泉 いや、感覚としては本当に良くなくて、たまたま運が良かったという感じでした。ただ高校の頃よりはパワーもすごく上がっているはずなので、普通に走ったら高校生の時の自己ベストである36秒台を出したいです。あとは調子と気持ちの問題と思っていますが、インカレはタイムも期待していいかなと思っています。

――気持ちの問題とは具体的にどういうことですか

小泉 何ですかね。高校時代は自転車に対してストイックで、会場に入った瞬間から音楽を聞いて、誰も入れない、自分の世界に入って周りからの話も無視するくらいでした。試合終わってからようやくリラックスして落ち着く、というのをずっと繰り返していました。大学に入って去年まではスイッチが入らなくて、試合会場に行ってもやる気が出ませんでした。全てに対して、嫌だという気持ちが大きかったです。ただ今年はそんなことはなくて、勝ちを狙いたいという気持ちでいます。

――今年はスイッチが入ってきているのですね

小泉 そうですね。勝てると思いながらアップしスタート台に入れば問題ないと思っています。実力的にもパワーは1番あると思っていて、普通に走ったら問題ないという自信はあるので、大丈夫だと思います。

――昨年はテレビ局の取材も時々来ていたと思いますが、集中力が途切れたことはありましたか

小泉 いや、あまり関係しなかったですね。結局自分の実力なので、取材が高校生の時に来ていても勝ってましたし、結局実力次第だと思います。

――今年に入ってできなかったことができるようになったとは、生活の面もですか

小泉 そうですね。生活の面とか学校に対して、今はGPAを上げることを頑張っていて、しっかり卒業したいと考えています。

山本 すごく変わったと思います。ちゃんとパソコンを開くようになったし、ちゃんと「あれやりました、これやりました」と言えるようになりました。前までは課題やりなさいと言っていましたが、今はやりましたと自分から連絡してきてくれて、お母さんのように嬉しかったです(笑)。成長したと思います。

――高校の時と違ってやるべきことが増えたのですね

小泉 増えました。いきなり全部自分でやりなさいという環境になって、本当に何もわからないし、どうしたらいいんだろうというのがずっと続いていました。一個一個丁寧に教えていただいたので、徐々にできるようになったという感じで、最初に全部やれと言われても無理でした。でも、できるようになってきたから、やっと少しずつ色々なことに手を出せるようになったという感じです。

――1年生は整える時間で、今年は本来の実力を発揮する年になりそうですね

小泉 ここからはそうですね。せっかくトップアスリートで入学してきていますし、成績を出してから卒業したいと思っています。私、頑張って卒業するまでにタイムの基準をクリアするとか、これをできるようになってから卒業すると自分の中で目標を立てたので、それを達成できるようにしたいと思います。

――ここからは山本主務に質問したいのですがどこのマネージャーさんもすごく給水の写真などを大事にしてるなと印象があって、何かマネージャーと選手の関係を象徴している瞬間だなと思うのですがいかがですか

山本 私も実際そうですが、見えない仕事が多いです。特に自転車は遠方での試合が多いので、その手配や選手が知らない仕事がいっぱいあります。試合会場に行ってもいなくてもできる仕事もありますが、いないと成立しないこともあるので、今までずっとやってきたことが現れているのがその一瞬なのかなと思います。こちらからパワーをあげたいっていう写真です。宝物ですね(笑)。補給の写真も記事にあげていただいて嬉しかったです。あの一枚でロードのレース展開や、その時の気持ちとか全て分かります。

――補給は選手ごとに味を変えたりしているのですか

山本 そうですね。スーパーに買い出しに行ったり、選手に聞いてそれを用意して、要望通りに渡すことは仕事です。

――準備の中で1番大変なこと、時期などはありますか

山本 常に忙しいですね(笑)。シーズンは遠征に行くことで忙しいですし、シーズンが終わってからも早慶戦や六大学(六大学対抗競技会)などの学生主体のイベントもあります。インカレが終わったとしても実はその後が忙しいことが多いです。ほとんど1年間大変です。本当に冬の一部に少し試合がない時期があるくらいですね。

「チームスプリントは追い込まれた方がいい」(池田)

――チームスプリントやスプリントでの具体的なタイム設定はありますか

小泉 私、個人的にはチームスプリントの目標として、ゆめこさんの500メートルの測定時のタイムよりは1秒以上速く回ってきたいというのはあります。それだと現時点で表彰台上がれるかと言われると少し厳しいので、実際36秒台で走れれば確実というのはあります。現状に照らして37秒台で走れたらいいなという状態です。

池田 本当に自分次第と思っているので、プレッシャーがあった方がいいと思っています。昨年の東日本(女子チームスプリントで優勝)でもそうでした。

――東日本でのプレッシャーとは

池田 夢菜の3キロ(個人追い抜き)のレースが終わってすぐチームスプリントでしたし、自分がしっかりやらなきゃという気持ちが強くかったです。

小泉 あの時は疲労が本当にすごくて、気持ち悪さも残っていました。スタート台に立った時も息を切らしているくらいでした。ゆめこさんが私を心配して棄権すると言っていたくらいです。ただ、その時のゆめこさんは速かったです。

池田 やっぱり追い込まれた方がいいと感じています。

――総合優勝に向けてはいかがですか

小泉 そうですね。総合に関してはどうかなという感じです。全体的に日体大などの人数が多い大学の方が点数が入りやすくて、誰かしらその種目に出れば点数が入るので、女子の人数が少ないので厳しいように思います。

「メダルをかけさせてあげたい」(小泉)

――インカレでの目標や意気込みを3人にお聞きしたいです

池田 この4年間は毎年毎年やはりインカレのために練習をやってきました。目標の表彰台を逃すことが毎年続いていますが、インカレでメダルを取りたいという強い気持ちでここまでやってきました。今までずっとケガとか病気などがありましたが、ことしはそういうことがなくやれてきています。特にチームスプリントでは先輩や夢菜と組んでやってきて、今はお互いにレベルが上がってきています。インカレでは表彰台に立ちたいと思っています。スプリントに関しても、予選で勝ち上がれないというのがずっとでした。練習でできても本番で発揮できないのはどこかメンタルの問題もあると思いますが、今はしっかりやれているので自信を持って臨んで上を目指していきたいと思っています。

―― 小泉選手はいかがですか

小泉 去年は全体的に色々な種目に出ようと思っていましたが、ことしは短距離に絞りました。500メートルは高校生の時の記録を超えるように36秒5ぐらいで走れたらいいと思います。スプリントは11秒5くらいで走り、対戦にそのまま入れたらと思います。チームスプリントに関してはゆめこさんがことしで最後だし、メダルをかけさせてあげたいという気持ちも強いので頑張りたいです。

――山本主務はいかがですか

山本 毎年インカレは1番大きい試合ですし、みんなが1番力を入れて取り組んでいることなので私もその分気持ちも入るし、緊張もするので特別感はあります。ただ私のやることは変わらないので毎年インカレでもRCSやTRSでも、そんなにテンションは変わりません。それで差をつけるのも違うなと考えているので、全て全力で取り組んでいます。インカレは人も雰囲気も違いますし、少しやることも変わるのですが、私自身の選手に頑張って欲しいという気持ちやサポートする内容などは変わらないです。インカレだからどうこうというのは選手ほど感じてはいないです。

――注目の選手はいますか

山本 中川くん(拳、スポ3=北海道・帯広三条)です。彼は今シーズン一番レースに出ていて、ナショナルチームとして出場したTOJ(ツアーオブジャパン)以外は全部一緒に遠征に行きました。毎週の遠征も、10日間くらい連続で行った遠征も一緒にいて、レース続きだったし全日本は特に移動が長くてすごい大変で、頑張ってる姿を近くで見てきたし、彼の思いとか考えとか分かるので、思い入れが強い選手です。元々10日間の遠征にサポートは行かない予定だったんですけど、最後まで一緒にいてサポートしてあげたいと思って、急遽予定を全部キャンセルして行くことにしたんです(笑)。そこまでしてあげたいと思う選手です。実際に私自身、支えになることができたかなと思っていて、選手たちも「来てくれたのが綾香さんでよかったです」って言ってくれて、泣きそうなくらい嬉しかったです。毎週続いたレースの最後に体調を崩しちゃって、すごい心配しましたけど(笑)。

――献身的なサポートですね

山本 あと短距離だと慎ちゃん(中野慎詞、スポ1=岩手・紫波総合)です。彼は入部してからずっと好成績を出しているのもありますけど、彼が真剣に取り組んでる姿が印象的です。ナショナルチームの測定テストに一緒に二人で伊豆まで行ったことがあるんですけど。オリンピックに出たいていう思いがあるし、他の意見に流されずに、いい意味で自分の考えとかやり方を貫いていて、それで結果を出してるからすごいなと思います。少しの間しか部で関われないのが残念ですけど、ずっと応援しています。

小泉 インカレが終わっても練習は来て欲しいです。

池田 特に綾香は4年間ずっとインカレだけじゃなく、いろんな試合でサポートしてもらっていました。部活だけじゃなく、プライベートでも支えてもらっていたのでメダルをかけさせてあげたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 喜柳純平)

インカレへの抱負を色紙に書いていただきました!

◆池田ゆめこ(いけだ・ゆめこ)(※写真左)

1995(平7)年5月1日生まれ。161センチ。北海道・札幌旭丘高出身。スポーツ科学部4年。岩手県で挑戦したわんこそばでは主将超えの105杯を記録。趣味は和声を奏でることと、多才。

◆山本綾香(やまもと・あやか)(※写真中央)

1996(平8)年4月25日生まれ。160センチ。東京・普連土学園高出身。スポーツ科学部4年。主務・マネージャーを務めアスリートフードマイスターの資格を持つなど、早大自転車部の支え。

◆小泉夢菜(こいずみ・ゆめな)(※写真右)

1999(平11)年3月23日生まれ。150センチ。埼玉・浦和工業高出身。スポーツ科学部2年。好きな歌手は今大人気のwanima。気分を上げるのにぴったり。