【連載】インカレ直前特集 『頂へ』 第1回 小泉夢菜×池田ゆめこ

自転車

 ことしも全日本大学対抗選手権(インカレ)がやって来る。2017年インカレ直前特集第1回は、池田ゆめこ(スポ3=北海道・札幌旭丘)、小泉夢菜(スポ1=埼玉・浦和工)による『夢』のガールズ対談。5月の東日本学生選手権で準優勝している女子チームスプリントで、二人はインカレ優勝を狙っている。しかし、小泉にとって今季は個人としてかつてないほど苦しいシーズンだ。池田も更新し続けていた自己記録が7月の全日本学生選手権でストップ。試練の時を乗り越えることはできるのかーー。競技を語る真剣なまなざしと、飾らない素顔。裏腹な魅力を併せ持つ二人の魅力に迫る。

※この取材は7月30日に行われたものです。

1000Wまであと少し

池田

――自転車部特集ではおそらく初めての女子だけの対談です。お二人は名前も似ていますね

池田 私たちは部の雰囲気を良くするように行動していますけど、ちょっと抜けているところがあって、そこは似てるかなと思います。

小泉 いやいやいや(笑)。そこまで私は抜けていないです。

――小泉選手はテレビ局が取材に来るなど注目されていますが、慣れましたか

小泉 取り上げてくれるのはすごくありがたいと思っていて。それによってスポンサーも増えてくださるので、自分にとってはすごくありがたいですね。慣れてはいないですけど、インタビューではましな言葉をしゃべれるようになりましたね。最初の方は緊張していて何言いたいかも分からないみたいな感じだったんですけど(笑)。ちょっとずつはしゃべれるようになりました。

――左手で食事することが習慣だとテレビ番組で紹介されていました

池田 今もやってるの?

小泉 今もやっているんですけど、急がないといけないときは右手で食べちゃいますね(笑)。

――夏休み中の練習はどうしていますか

池田 夏は暑いですから朝早くにスタートしたほうが涼しい中で効率よく練習できるので、朝練という名の午前練習をしています。

小泉 私はインカレまでは別練習でやっています。もともと実家が埼玉にあるので、親にサポートしてもらって練習は高校の時見てもらっていた監督にお願いしています。マンツーマンで見てもらって、バイク引きで自分に足りないことを強化してもらっています。

――小泉選手も朝早くからやっていますか

小泉 朝は4時にスタートして、帰ってくるのも夜の6時とかです。1日200kmくらい乗ってます。周回コース、平坦コース、登りのコース、もがき、スプリント練習をするコース・・・という風に全部分けていて。周回コースだったらそこで意識することを意識して、もがきの時は自転車をロードからピストンに変えて練習しています。

――ウエイトトレーニングはどうしていますか

池田 私はもともと1年生の冬からウエイト指導の先生が出してくれたメニューでやっています。今はシーズン中なので量は少なめにしてやっているんですけど、時期に合わせてメニューを変えてやっています。

小泉 高校生の時からウエイト指導してくれている先生がいて、ゴールドジムのパーソナルトレーナーの方です。競輪選手に伏見さん(俊昭、日本競輪選手会福島支部)という方がいて、アテネ五輪のチームスプリントで銀メダルとった選手です。そのコーチに教わって、全体的にパワーアップするための自転車に生かせるようなトレーニングをしています。

――頻度はどのくらいですか

小泉 高校の時は週に2回くらいやっていたんですけど、大学に入ってからは予定がなかなか立たないので、今は月に2回いければいいかなと。でも、夏場はシーズン中なのでそこまでウエイトは重視しなくていいと思っているので、8月は自転車に乗り込んで、試合前に1回か2回くらいやれたらいいなと思っています。

――池田選手は以前ウエイトリフティング部の練習を取り入れていると言っていました

池田 冬場練習場を借りていましたね。ウエイトリフティング部の選手と同じ場所です。ことしの冬もやりたいと個人的に思ってます。そこは岡田先生(岡田純一監督、平2スポ卒=北海道士別)に直談判して(笑)。

――どんなメニューでトレーニングしますか

池田 上半身と下半身を両方鍛えています。スクワット、ベンチプレス、デットリフトは自転車乗る時に直結するのでそれは絶対取り入れて、基礎体力を強化しています。

――時間はどれくらいかけていますか

池田 集中してやるので1時間半くらいですね。すごくきついですけど(笑)。インターバルが短いので。平山先生(邦明、スポーツ科学部准教授)のメニューでやっているのが克尚(田中、スポ2=岡山工)ですね。あとはみんな自分たちでやっています。

――岡島伸平コーチ(昭48卒=熊本・済々黌)からはどのような指導をされていますか

池田 岡島コーチに週に1度一週間の練習のデータを出しています。短距離のワットを徐々に伸ばしていけるように、短い時間での高出力パワーでの練習をしなさいと言われています。あと、3時間以上乗る練習を週2回ぐらい入れてと言われていて。そうすることで、有酸素能力も向上させながら回復する能力を上げていけます。

――具体的な目標数値は何ですか

池田 今は今月中に1000Wは越そうといわれていたんですけど・・・もうちょっとのところをなかなか超えられなくて。いま970Wくらいですね。

――3月には目標900Wと言っていました

池田 徐々に上がってます。疲れているときにやってもそれくらい出るので、調子は上がってきているかなと思います。

「卒論は夢菜にも協力してもらう」(池田)

質問に丁寧に答える小泉、池田

――仲の良い選手はいますか

小泉 競走部の女の子や剣道部の女の子と仲良くなりました。野乃ちゃん(高橋、スポ1=滋賀・日吉ケ丘)って言って。あと、誕生日が同じでクラスも一緒のスピードスケートをやっている小竹琉湖ちゃん(スポ1=北海道・山形中央)と仲いいです。運命を感じました(笑)。

池田 ウエイト部の安嶋ちゃん(千晶、スポ3=茨城・大子清流)とは授業もけっこう一緒で教職も一緒に取っているので、色々話し合ったりしてます。オフが違うので普段はなかなか遊びには行けないんですけど。他はホッケー部の瀧澤璃菜(スポ3=岩手・沼宮内)と仲良くしています。

小泉 琉湖ちゃんとは一緒にジェルネイルも行きました。ファストネイルっていうチェーン店なんですけど、高田馬場にあって。

――池田選手は栄養系ゼミに所属しているそうですね

池田 高校にもゼミがあって、いのちゼミに入ってたんです。いのちゼミの中でも医療系とか栄養系とかに分かれていて、私はその時から自転車をやっていたので自然と栄養系をやりたいと思って。大学で合田さん(祐美子、平29スポーツ科学学術院卒=岡山・朝日塾中教校)から田口ゼミ(田口素子研究室)がいいという話を聞いていたので入りました。

――ゼミでは最近何をしましたか

池田 この間は調理実習をしました。私は3000メートル障害をやっている女の子を対象に疲労回復のメニューを作りました。柔道グループ、ウエイト部グループ、私たちは持久系グループで、あと一般生のグループもあって。競技別で分かれた感じで面白かったですね。実生活に生きますし。

小泉 私もそのゼミに入りたいです(笑)。

――卒論はどのようなテーマを考えていますか

池田 自転車競技の競技者を対象とした実験をしようと思っていて、夢菜にも協力してもらおうかなと(笑)。クレアチンやBCAAを摂取することで(パフォーマンスが)変わるのかとか。サプリメントを摂取した時のトレーニングした結果と普段の食事のトレーニング結果との違いを調べてみたいなと。それがどういう影響を及ぼすかという研究です。まだざっくりしてますけど。

――小泉選手には山本綾香マネージャー(スポ3=東京・普連土学園)がご飯を作る日もあると聞きました

小泉 はい。きょうもこの後いらして、たぶん一緒にごはん作ろうって話になると思いますね。本当にお世話になってます(笑)。

池田 彼女はすごく献身的ですね・・・。

小泉 本当に私の親がすごく感動していて。祖父母は特に。今まで知らなかったパソコンの使い方とか、料理だけじゃなく色々なことを教わっています。綾香さんは仕事も手際がすごく良くて。エントリー、宿も取ってくれます。神様のような方です(笑)。綾香さんがいることで試合に集中して臨めてます。

池田 私もです。

試練の時、再び自信を

小泉

――全日本学生選手権トラックで中井琢(スポ4=宮城・仙台二)・安倍大成(スポ1=岩手・紫波総合)組のタンデムスプリント優勝を見て何を感じましたか

池田 本当に息が合っていると思いました(笑)。対戦競技ですがスプリントとは違って、一人が後ろを見て様子うかがいながら前の人は後ろの調子に合わせながら行くので、その意味でもコミュニケーションが大事ですし、二人の息が合っているなと。

小泉 自分のことのようにドキドキして、自分がもしインカレでこうなったらと、中井さんと安倍くんが優勝したことでいいイメージができるきっかけになりました。

――その後のインタビューでは二人共とても謙虚でした

池田 安倍君は普段から本当に謙虚だから・・・(笑)。見習いますね(笑)。中井さんも安倍くんも自主練をかなり室内でやっているので、それを見ながらこういう練習をしたらもっと伸ばせるのかな、と勉強になっています。

――アドバイスはもらいますか

池田 中井さんに「お前はここが弱い」と言われますね。だいたい当たっているなと(笑)。

――今季の調子についてはどう感じていますか

池田 個人トラックでは、その前の修善寺カップ(修善寺カップ女子オープン)で自己ベストが出ましたが、タイムが伸びていなかったので、ちょっと調子が落ちているのかなと思ったんですけど、インカレ前の今の自分の実力と分かりました。その後の国体予選も連続で試合があって調子を合わせることができませんでしたが、7月の間に練習メニューを変えていったことで今は徐々に上がってきています。合宿で調子を上げてインカレに行こうと思っています。

小泉 4月、5月、6月とこの環境でやってきたんですけど、今このまま同じことをやっていてもタイムは伸びないし、そもそもベストまでたどり着けていないです。まず、ベストに持っていける練習、高校の時の練習をしたら少しは調子が上がるんじゃないかなと思って。また冬場になってこの生活にしっかり慣れて、基礎トレーニングとか部の練習に参加していけたらと思っています。

――自己ベストはいつの記録ですか

小泉 きょねんの7月のジュニア世界選手権で、500メートルが36秒8。そこから今2秒落ちています。500メートルの2秒って相当大きくて。スタートダッシュもですけど持久力も全体的に落ちていて、筋力不足で体重もただ増えているだけなので。自炊ということもあったんですけど、自分で何も作らなかったのがいけなかったと思います。今自分でやっていこうと思っても少ししか改善できないと思うので、とりあえず今はいったん家に戻っています。

――今季の内容には納得がいっていないですか

小泉 全然です。タイムも出したかったですし、ことしの全日本選手権はすごく狙っていたんですが、今はただただ実力不足だと分かったし・・・。きょねんの自分のパフォーマンスができていたら絶対勝てたと思うので、それが余計悔しいです。

――高校の同期が他大で活躍するのを見て、悔しい気持ちはありますか

小泉 そうですね。高校の時は言うほどライバルという人がいなくて、いても先輩にしかいませんでした。ずっと勝っていた人たちに大学に入って負けているということは、自分の練習不足で何もしていないのが原因なのかなと思っています。早く改善したいと思っています。

――先日のジャパントラックカップでケイリン3位になったことは評価していますか

小泉 それも本当はベストに近ければ2日間とも優勝できたと思います。自分の足に今は自信を持てなくて、また負けるんじゃないかと思ってしまう部分もあって。今はただひたすら練習して、インカレまでに自信をつけて臨みたいって気持ちが大きいです。

――インカレの出場種目を教えてください。

池田 私はスプリントと500メートルタイムトライアルとチームスプリントとポイントレースです。

小泉 同じで、加えてロード(ロードレース)です。

――目標タイムや順位を教えてください

池田 スプリントは予選を突破して、500(500メートルタイムトライアル)は39秒台を出したいです。私自身一番狙っているのはチームスプリントなので、それは表彰台の真ん中を狙ってます。

小泉 私はスプリントのタイムトライアル計測でジュニアの記録を更新することと、500でもジュニア記録を更新したいです。ポイント(ポイントレース)やロードは専門種目が短距離なのでどうなるか分からないですが、展開見てスプリントするところで自分の力を出したいですし、ロードは最後ゴール勝負になったときにスプリント力を生かしたいと思います。

――最後に意気込みをお願いします

池田 調子が上がらない時もあったんですけど、いまパフォーマンスが全体的に上がってきているので、インカレでは全ての種目でポイントを獲得して総合得点に貢献できるように全力を出したいと思っています。

小泉 優勝を狙っていきたいと思います。それだけです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 曽祢真衣)

色紙にインカレへの意気込みを書いていただきました!

◆池田ゆめこ(いけだ・ゆめこ)(※写真下)

1996(平8)年5月1日生まれ。161センチ。北海道・札幌旭丘高出身。スポーツ科学部3年。どりこの愛称をもつ池田選手。TAを務めた昨夏の自転車競技の授業では、最終日に皆で屋根に寝そべって花火を見たそうで「青春でした」と思い出を語ってくれました

◆小泉夢菜(こいずみ・ゆめな)(※写真上)

1999(平11)年3月23日生まれ。150センチ。埼玉・浦和工業高出身。スポーツ科学部1年。日本テレビ系『上田晋也の日本メダル話』に出演し、今最も注目されている若手選手と言っても過言ではない小泉選手。春学期の授業ではチュートリアルイングリッシュが楽しかったそうです