第3回は、チームを率いる森浩輔主将(スポ4=神奈川・横浜)、競技のかたわら主務としても働く中井琢(スポ3=宮城・仙台二)、そして昨年度全日本大学対抗選手権(インカレ)で1年生ながらケイリンで2位になった佐藤啓斗(スポ2=青森・八戸工)の3人だ。普段の練習や、寮での日常、目前に迫るインカレについてそれぞれの視点から語ってもらった。
※この取材は8月2日に行われたものです。
「この調子で」(佐藤)
4月からシーズンを振り返る佐藤
――まず今シーズンを振り返っていかがでしたか
森 今シーズンは優勝をしたいという目標を立ててここまで来たのですが、まだその目標は達成できていません。なので、残りインカレでその目標を達成したいという気持ちが今あります。でもタイムを見たところ昨年よりもレベルアップして充実したシーズンを送れているのではないかと思います。タンデムスプリントのフライングラップもそうですし、1キロメートルタイムトライアルでもベストタイムを出せたので、それは良かったと思います。
中井 基本的にタンデムを中心にやってきて、まず個人戦(全日本学生選手権トラック)では自分の出したいタイムは出せませんでしたが自分の力は出せたと思います。森さんの言っているようにタイムも上がりましたし。最低限の力は出せたと思うんですけど、もう少し対戦の力をつけて残り1カ月でレベルアップしていきたいです。
佐藤 個人戦、団体戦において今のところ納得のいく成績を出していない状況です。しかし特にケガや病気はほとんどなくこの調子であと1ヵ月間一生懸命練習してインカレに挑んでいきたいと思います。
――森主将は今シーズン就職活動もありましたが練習に影響はありましたか
森 就職活動に関しては時間を当てなければならないという、時間的な影響はありました。それでも1日は24時間あるわけで、自分で時間を作ることはもちろんできたのでそこまで影響はなかったと思います。
――二人でタンデムスプリントを組んでから約1年間、どのような道のりでしたか
中井 きょねんはまず私がケガ明けで何もできない状況から、じゃあとりあえずタンデムに乗ろうかというところから始まりました。昨年はケガをしないぎりぎり手前で止めながらやっていたので、正直完全燃焼はできなかったんです。それで森さんにはけっこう迷惑を掛けてしまいました。ことしに入ってからは、二人共調子を上げつつあるのできょねんよりは期待できるんじゃないかなと思います。
森 自分は今シーズンでタンデムスプリントに出場するのは4年目になるんですけど、1年目と2年目は今4年生の手嶋(将大、スポ4=千葉・国分)と組んでいて。3年生の7月の個人戦(全日本学生選手権トラック)から中井と組んでいるんですけど、昨年はやはりそれぞれの息を合わせるとかそういったことで精一杯で、実践的な練習ができていなかったんですけど、ことしは息があった上でより実践的な練習ができています。タンデムスプリントに必要な能力を伸ばすために二人で合わせてやってきたので、ことしは昨年に比べてもいい仕上がりですし、もっといい成績を期待できるのではないかと思います。
――タンデムスプリントに必要な能力とはどのようなものですか
森 中井はもともと長距離の選手だったんですけどその中でもスプリント能力は買われていて。そのスプリントの能力を伸ばすためにウエイトトレーニングをして体重を増やしたりだとか、瞬発力を高めるトレーニングですね。
――全日本学生選手権トラックでは持続力を課題に挙げていました
中井 個人戦の後、7月から8月に入るまでの1ヵ月間、けっこう自分ではやってきたつもりですが、タンデムをやっていると個の持続力が上がってもうまく合わなかったらどんどん止まっていきますし。そこは夏合宿でしっかり上げたいと思っています。
――それでは普段の練習について聞きます。一日の流れを教えてください
森 月曜日は一日何もなくてオフなんですけど、基本的な練習としては朝の5時から飯能方面に約50キロのロードの練習に行きます。帰ってきてみんな授業に行って、夕方からは近くにある西武園競輪場でトラックの練習をしています。西武園競輪場は選手のご厚意で使わせてもらっているんですけど、ケイリンの開催があったりとかその他さまざまな理由で使用できないときは、所沢キャンパスかもしくは東伏見のキャンパスのトレーニングルームでウエイトトレーニングをしています。
――法大自転車部の寮が東村山にあると聞きました。練習で会うこともありますか
森 練習を一緒にやることはないんですけど、ロード練習で走っている時にすれちがったりということはありますし、所沢キャンパスに授業を受けに行く時に、オレンジ色のユニホームが通って行ったりすることは普通にあります。
――西武園競輪場を使っているのはワセダだけですか
森 西武園競輪場で法大と一緒になることもよくあります。
――練習でワットを計測すると聞きました。何ワットを目安に練習していますか
森 まず室内練習でワットバイクというエアロバイクみたいなものを使用してワットを測るんですが、天候に左右されないので目標値を定めやすいというメリットがあります。無酸素パワーテストというものがパワーマックスというエアロバイクに搭載されていて、それは自分の全力のパワーがどれくらいかっていう指標が分かるテストなんですけど、それをだいたい1500ワットです。1500ワットって何の例を出せば分かりやすい?
中井 コンビニの電子レンジくらい・・・。
森 コンビニの電子レンジくらいの力を出すっていう指標でやっています(笑)。
――トラックの選手は皆さん同じくらいのワットを目安にするのですか
森 だいたい同じくらいなんじゃないですかね。どうですか。
中井 ワットは後藤君(悠、スポ3=岩手・紫波総合)とかはもっと高いですし私としては後藤君マイナス1割くらい、後藤を目標にしたいですけどちょっと遠いですね。
――後藤選手はどれくらいなのですか
森 1700ワットくらいですかね。
中井 あと、タンデムはもがく時間が長いので30秒のパワーとかも気にしてやっていて。僕は1000ワットを目標にやっているんですが、あと一歩のところですね。
――ケイリンにはワットの指標はありますか
佐藤 特に意識はしてこなかったです。ケイリンは走り方や展開で変わります。私の場合は30秒から20秒くらいを全力でペースを同じにして走るのを想定して練習しています。だいたい700ワットくらいでペースを維持するようにしてきました。
――自転車に乗らない時はウエイトトレーニングをするということですが、自転車競技の選手が鍛えるべき筋肉はあるのですか
森 自転車ってイコール太ももっていうイメージを強く持たれがちなんですけど、それ以外にも上体を安定させたり、遠心力に負けない力を養うためにも背筋であったり、体幹部の筋肉を鍛えることはやっています。
「僕は佐藤の味噌汁が純粋に好きです(笑)」(中井)
寮生活の様子を語る中井
――普段の寮での雰囲気はいかがですか
佐藤 稲輪館に住んでいるみんなで協力し合ったりしています。私はあまりうるさいのは得意ではないので基本的には静かにしています。
中井 みんなで仲良くスマブラ(大乱闘スマッシュブラザーズ)したり晩ご飯の時にみんなで会話したりけっこうコミュニケーションは取っています。
森 一緒にゲームしたりしゃべったりわいわいやっていますけど帰ってきて誰かがいる、一人じゃないっていうのは寂しさはないのでそれはいいと思います。ですけど、その反面たまにこいつうるさいなとか思ったりすることもあって(笑)。静かにしたい時や一人になりたい時、一人部屋なのでそれは大丈夫なんですけど、リビングがうるさいなと思う時はありますが、それも寮生活の一つの醍醐味かなと思っています。
――食事の当番があると聞きました。どのようなシステムなのですか
佐藤 1年生と2年生、今現在は5人体制で交互にしていますね。基本的には夜の9時頃からごはんとおかずとなるものを1品から2品作っています。
――それは朝の分ですか
佐藤 そうです。メニューは自由で予算はだいたいひとり200円で個人によってメニューに差があります。
――買い出しに行くのも1、2年生がやっているのですか
佐藤 そうですね。スーパーはすぐ近くに2、3軒あるので特に苦労はしないですね。
――よく作るメニューはありますか
佐藤 私は中華メニューですかね。
――料理上手な選手はいますか
森 1年生の中川(拳、スポ1=北海道・帯広三条)はよく凝った料理を作っているなという印象があります。
――例えばどんな料理ですか
森 いろいろあるよね。
中井 えーと、名前が分からないんですよ(笑)。
森 鶏の照り焼きだったり、ちゃんと昆布だしからとっている味噌汁だったり。
中井 ひとひねりある料理を作ってます。僕は佐藤の味噌汁が純粋に好きです(笑)。
森 佐藤は味噌汁をよく作ってくれます。
中井 最近はあんまり作ってくれなくなってきました(笑)。
――森主将はどのような主将ですか
佐藤 いつでも頼りなるすばらしい先輩であり、主将だと思います。よく相談にも乗っていただいて非常に感謝しています。
中井 私はタンデムを一緒にやったり主務としてサポートしたり、ある意味後輩の中では一番近くでコミュニケーションを取っているんですけど、日ごろ忘れていないかとか気を使ってくださったり助かっています。どの選手も森さんとしっかりコミュニケーションを取れていると思います。
――佐藤選手は後輩ができて変化したことはありますか
佐藤 実感することといえば、親しげに話してくれることと練習でもいいライバルができたことだと思います。
――西武園競輪場で田中選手(克尚、スポ1=岡山工)と一緒に練習することもありますか
佐藤 彼はどちらかと言うと持久系を得意としているのでタイプが違うのでメニューは合わないですね。ケイリンを走っているのは私一人だけなので、なかなか対戦をする機会はないですね。
――3年生が特に仲良しだと聞きました
中井 そうですね。選手5人と女子マネージャーが1人いるんですけど、マネージャーも含めみんな仲良くて6人で食事に行くこともありますし。基本的にみんな一緒に行動することが多いですね。たまにけんかもしますけど、次の日にはけろっとしていますし、仲は良いです。
「思い入れは相当強い」(森)
主将としてインカレに挑む森
――ここからはインカレの話題です。ことしのインカレはどのような大会ですか
森 自分は高校から自転車競技を始めてことしで7年目なんですけど、その集大成、本当に最後の最後という意味で思い入れは相当に強いです。今もあと20日ちょっとしかないのかと思うと寂しさもありますしモチベーションも上がってきていますし、最後一花咲かせたいと思っています。繰り返しになりますけど、思い入れは相当強いです。
中井 大学で自転車競技をやる上で一番成績を出さなければならない大会だし、特に今大会は森さんと出る最後の試合なので自分は後ろから全力で踏んでいけたらと思います。
佐藤 ことしのインカレは伊豆ベロドロームで行われますが私は伊豆ベロドロームは苦手意識があります。幸いにも今月は六大学トラックレースが伊豆ベロドロームで行われ合宿なども多く今月は非常にベロドロームで走る機会が多いので、練習期間は短いですが苦手意識を少しでもなくしていき、1キロ(1キロメートルタイムトライアル)、ケイリン共に入賞を目指していきたいと思います。
――インカレではどの種目にエントリーしましたか
森 タンデムです。
中井 タンデムとチースプ(チーム・スプリント)の可能性があります。
森 佐藤は1キロとケイリンと、もしかしたらチーム・スプリントも走るかもしれないです。
――注目している選手はいますか
森 自分は手嶋将大(スポ4=千葉・国分)に注目したいと思います(笑)。最後(1分)4秒出してくれることを期待しています。
中井 私は佐藤君のきょねんと同じような熱いケイリンを見たいと思っています。
佐藤 私は2年生の孫崎大樹君(スポ2=京都・北桑田)を推薦したいと思います。毎回長距離の対戦系を走るのですが、特に見せるレースを彼は得意としているのでインカレはベロドロームでなかなか難しい場所ではありますが見せるレースをしてくれると思います。
――森主将に聞きます。インカレが迫る中主将としてどのような声掛けをしていますか
森 ここまできたら実力うんぬんよりもいかに調子を整えて25日を迎えられるか、ロードは28日を迎えられるかが大事になってくるので、まずは体調管理をしっかりしていこうということです。あとはつまらないケガとかは防ぐべきだし、これからの数少ない練習の中でも一本一本集中してやっていこうという声掛けは特に短距離にはしていますし、部全体にもこれからしていこうと思います。
――インカレでの目標や意気込みを教えてください
森 個人としては目標は高く優勝、最低限表彰台に乗りたいという目標があります。チームの総合としてはこれまで1年間インカレの学校対抗順位で3位以内に入ろうという目標を立ててやってきたので、一種目一種目大事にしながらその目標に向かって頑張っていきたいと思います。
中井 最低限表彰台に立って、笑顔で終わりたいと思います。今まで森さんと出てなんだかんだで悔しさの残る試合だったので、最後くらいは笑顔で終わりたいです。チースプも走る可能性が出てきたので、後ろの後藤君と手嶋さんに迷惑を掛けない走りをして、いいかたちで後ろに渡していけたらと思います。
佐藤 個人2種目とも入賞を狙えるようにしていきたいと思います。1キロメートルタイムトライアルはスタートが非常に重要なのにもかかわらず、スタートでミスしてしまい納得のいく結果を出せないということがこれまで何度もあったので、とにかく納得のいく走りをしたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 曽祢真衣、久野映)
(左)から「情熱」(中井)、「不屈」(森)、「捲る」(佐藤)
◆森浩輔(もり・こうすけ)(※写真中央)
1994(平6)年3月5日生まれ。177センチ。神奈川・横浜高出身。スポーツ科学部4年。一問一問丁寧に答えてくれた森主将。対談の前、早大自転車部Tシャツに着替えるよう部員に促すところにも、主将っぷりが感じられました! インカレでは競技生活の集大成を見せてくれることでしょう。
◆中井琢(なかい・たく)(※写真左)
1995(平7)年10月10日生まれ。175センチ。宮城・仙台二高出身。スポーツ科学部4年。選手であり主務である中井選手。ケガを経て長距離から短距離に転向しましたが、今シーズン調子を上げてきています。早大自転車部の屋台骨を担う森・中井のタンデムスプリントに注目です!
◆佐藤啓斗(さとう・ひろと)(※写真右)
1996(平8)年10月18日生まれ。172センチ。青森・八戸工高出身。スポーツ科学部2年。食事当番ではやりくりしながら麻婆豆腐など中華料理をよく作るいう佐藤選手。謙虚で落ち着いた言葉が印象的ですが、言葉とは裏腹な熱いケイリンを早スポも期待しています!