悪条件の下、調子の良さを示す

自転車

 冷たい雨が降る中行われた東京六大学対抗競技会。各校の意地がぶつかり合う、ことし最後のトラックレースだ。5連覇から一転、昨年、一昨年は3位と悔し涙をのんだ早大。いずれの種目でも優勝はつかめなかったものの、16kmポイント・レースでは伊藤和輝(スポ3=東京・昭和一学園)、塩田航平(スポ2=埼玉・栄北)が健闘する。毎年振るわなかった中距離での好成績も後押しし、総合2位で大会を終えた。

 1周500mのコースで4周回ごとの着順によりポイントを加算し、その総合得点を競う16kmポイント・レース。16kmという距離の中でいかに緩急をつけ、効率良くポイントを重ねていくかが腕の見せ所だ。レース序盤、伊藤が積極的に集団をリードする位置につける。第3ポイント周回を1位で通過するなど、順調にポイントを獲得。終盤には、それまで後方で好機をうかがっていた塩田、孫﨑大樹(スポ1=京都・北桑田)が前に出た。最後は法大、明大、早大勢の5人の集団が抜け出し、伊藤が2番、塩田が3番手でフィニッシュ。最終結果でも、伊藤が2位、塩田が5位と、好位置を占めた。

雨の中、大量得点で2位につけた伊藤

 午前最後に行われた10kmスクラッチレース決勝では、開始早々、孫﨑が飛び出す。しばらく先頭を守っていたが、レース中盤から明大、法大の選手が勢いを上げた。そのまま孫﨑は後方のメイン集団に吸収され、前を走る2選手との差が広がっていく。最終周回ではそれぞれがスパートをかけて追い上げるも、あと一歩及ばず、伊藤は5位、孫﨑は7位に終わった。4名1チームで順番に先頭を交代しながら4000mを走り、ゴール時の3番目の選手のタイムで争う4kmチーム・パーシュートには、伊藤、塩田、八田衛(スポ2=鳥取・倉吉東)、孫﨑が出場。他の競技での疲れや天候の悪さを団結力でカバーし、4:41:69という納得のタイムをたたき出す。法大に次ぐ2位に輝き、伊藤も、「1周ごとに設定したタイムで概ね走ることができた」と満足げに振り返った。

チームワークが試されたチーム・パーシュート

 「きょうの結果はこのままモチベーションを高く維持できる材料になった」と伊藤が語ったように、チームは昨年よりも良い走りを見せた。冬場の練習でもこの調子を維持し、来季のトラックレースにつなげたいところだ。来週は東京六大学対抗ロードが開催される。ロードレースでも、5位に終わった昨年の雪辱を果たしたい。

(記事 橋本望、写真 大庭開)

結果

▽男子

スプリント 佐藤 5位、後藤 6位

チーム・スプリント 早大(森、手嶋、後藤) 2位

16kmポイント・レース 伊藤 2位、塩田 5位、孫﨑 9位

10kmスクラッチレース 伊藤 5位、孫﨑 8位

1kmタイムトライアル 佐藤 4位、手嶋 6位

オープン・1kmタイムトライアル 森 2位、金子 5位

オープン・エリミネイションレース 金子 8位

4kmチーム・パーシュート 早大(伊藤、塩田、八田、孫﨑) 2位

▽女子

200mフライング・タイムトライアル 池田 1位

チーム・スプリント 早大(中嶋、池田) 1位

500mタイムトライアル 中嶋 1位、池田 2位

総合成績

早大 2位 55点

コメント

伊藤和輝(スポ3=東京・昭和一学園)

――この悪天候で苦戦した部分はありましたか

走る前までは雨だけだったんですけど、走り終わった後は体が冷えてしまって次のレースがキツかったですね。

――この時期の練習メニューは

4月からインカレ(全日本大学対抗選手権)までがシーズンなので、この時期は今大会に照準を合わせるというよりも、次のシーズンに向けての基礎づくり、足りないところの重点づくりなので、この大会に照準を合わせてきたというわけではなく、ある程度視野に入れつつも来シーズンを見据えたウエイトトレーニングとかを取り入れてきました。

――ではまず、ポイント・レースで意識したことや作戦は

3人という人数で展開していかなければならないので、極力3人で戦うことを意識し、その利点を生かそうとしました。ですがそれを咄嗟に生かせたかどうかはわからないです。

――スクラッチレースを振り返って

スクラッチレースはポイント・レースの後だったのですが、想像以上に寒かったというのもあり、ケガせず落車しないで完走しきるのが目標だったので、最後2人に刺されてはしまいましたが、それはしょうがないかなと思いました。

――チーム・パーシュートを振り返って

概ね、1周ごとに設定したタイムで走ることができましたし、このコンディションなので大目に評価して、合格点だったとは思います。早慶定期戦、六大学(東京六大学対抗競技会)と続けてまとまってはいたので、来シーズン期待しても良いのかな、と思います。

――収穫は

来シーズンに向けてのトレーニング期にしては、ある程度コンディションは良かったので、きょうの結果はこのままモチベーションを高く維持できる材料になったと思います。

――印象に残った大学は

やはり法政大学の圧倒的な強さが光っていて、それはインカレでもそう思いましたし、団体追い抜き(4kmチーム・パーシュート)でも27秒を出してくるあたりは、やはりチーム力も個々の能力も高いからこそなのかな、と実感しました。

――最後に、ことしのトラックレースを総括してください

最初の大きな大会は東日本トラック(東日本学生選手権トラック)だったんですけど、まったく成績も良くなくて、伊豆で行われた個人トラック(全日本学生選手権トラック)もなかったことにしたいくらいの結果で。でもシーズン後半あたりから調子が上がってきて、インカレはまったく予想していなかったんですけども、なんとか4位になることができて。そのまま国体(国民体育大会競技会)も成績が良く、早慶戦、六大学ときて自分が想定している範囲内の成績が残せたので、ことしのシーズン後半は成績が良かったと思っています。

塩田航平(スポ2=埼玉・栄北)

この悪天候で苦戦した部分はありましたか

路面が滑るので、ポイント・レースで仕掛ける時に後輪が空転しそうになったり、チーム・パーシュートでも先頭交代の時にバランスを崩しそうになったりと少しひやひやしました。

個人もしくはチームとしてこの大会に目標はありましたか

チーム全体で目標を決めるということは特にありませんでしたが、個々のベストを尽くしてチームとしてできるだけ上にいけるようにという気持ちで臨みました。

ポイント・レースでは昨年の12位から5位へと大幅に順位をあげました

きょねんは調子が悪かったという覚えしかないのですが、それに比べるとことしは普通の調子で走れました。5位という順位に満足はしませんが、きょねんより感触は良かったと思います。

何か作戦は立てていましたか

3人で特に決めていることはなかったので、1人がアタックしたら他が手助けする、という普通のチーム戦と同じように走りました。伊藤さん(和輝、スポ3=東京・昭和一学園)がポイントレースで2位だったので、その得点を助けるような動きをしていました。

連携はいかがでしたか

インカレ(全日本大学対抗選手権)の時にはバラバラになったりもしましたが、今回はそういうこともなく、狙った通りのラップタイムで走ることができました。

今回のタイムについてはいかがですか

タイムはあまり速くないので満足はできませんが、悪天候ということと伊藤さんや孫﨑(大樹、スポ1=京都・北桑田)が他の種目で消耗している状態だったということを踏まえれば良かったと言えると思います。

きょうを振り返って何か手ごたえはありましたか

きょねんのこの時期と比べても全然調子が良く、これからの数レースできょねんよりも良い成績が望めるのではないかという気はしています。

では、逆に課題点は見つかりましたか

ポイント・レースでポイント周回の時にまくり切れないところがあったので、そこはもう少しスプリントを強化していきたいと思っています。

他大学への印象は何かありますか

やはり法政大学が六大学の中では一つ抜けて強いなという印象がありますね。

八田衛(スポ2=鳥取・倉吉東)

――悪天候の中の試合でしたが、いかがでしたか

腰が冷えないように気を遣っていました。いま腰を怪我しておりまして、腰を冷やしたらいけないなと。あと、雨だと士気が下がる雰囲気があるので、そういうのにも気をつけましたね。

――この大会に向けてどのような練習をされてきましたか

腰痛の関係で、練習はあまり出来ていませんでした。現状維持が精一杯という感じでした。

――チーム・パーシュートでは、チームとしてどのような目標を掲げていましたか

34秒台前半で一周するというのを目標にしていました。伊藤さん(和輝、スポ3=東京・昭和一学園)、孫﨑(大樹、スポ1=京都・北桑田)、塩田(航平、スポ2=埼玉・栄北)が疲労と寒さで体力を消耗していたのですが、それにしては良いタイムだったんじゃないかなと思います。本当は僕がフレッシュなので、もっと貢献しなければいけなかったんですけど、あまり引ききれなかったかなと思います。

――チームの中でのご自身の役割は

早慶定期戦では迷惑をかけてしまったんですけど、とにかく邪魔をしないように、と思っていました。1コマ走りきって、きれいなペースを作ることを目標にしていました。

――きょう全体を振り返っていかがでしたか

きょうのペースならまだ走りきれるんですけど、(4000メートルを)4分40秒を切るペースでいくと、ちょっと走りきれなくなることがあります。なので、これより速くなってきたときにちゃんとみんなを引いて走りきることが出来るような力を、これからつけないといけないと思います。

――他の大学の印象はいかがでしたか

法大が強いというのは分かっていたんですけど、やっぱりこうして見るとチームとしての動きが出来ているなと思います。法大の誰かが逃げて、残った(法大の)チームメイトが後ろの集団を抑えるとか。そういう、実力がみんなある程度揃っていて、しかもそういう動きが出来るっていうのは強さの1つだと思います。

――ことしのトラックレース全体を振り返っていかがでしたか

僕はポイント・レースとチーム・パーシュートに出ていたんですけど、いずれも冴えない結果でした。全日本大学対抗選手権のチーム・パーシュートでは、結果的に足を引っ張ることになってしまいましたし、あまり満足はしていないです。反省点は、練習方法ですかね。練習方法が間違っていたかもしれないです。

――冬はどのような練習をしていきたいですか

腰が治ったら、ウエイトと自転車をうまくつなげていこうと思っています。筋力を上げつつも、チーム・パーシュートのハイスピードのローテーションが出来るような練習を考えて、しっかりやっていきたいです。

――今後の目標を教えてください

きょうのチーム・パーシュートに出場した4人の中で一番に引ける人になりたいです。八田がいれば大丈夫、みたいな(笑)。

孫﨑大樹(スポ1=京都・北桑田)

――きょうは悪天候の中での試合でしたが、レースに影響はありましたか

すごく寒かったです。時間も慌ただしいレースだったので、言い訳になってしまいますが、足も回らず、苦しいレースになりました。

――雨の体への影響が少なからずあったのですね

そんなに雨は嫌いではありませんが、すごく寒かったので、そこの対応がうまくできませんでした。

――きょうの試合に向けてはどのように調整されましたか

六大学対抗ということで各校の名前や看板を背負っているので、大事な試合です。ですが、自転車部として一番に目指しているのは、夏のインカレ(全日本大学対抗選手権)や全日本学生選手権個人ロードです。いまはいわゆるオフシーズンで、来年に向けた基礎作り、土台作りをしている最中なので、この大会に合わせた調整などはせずに、しっかりと練習して臨みました。

――ポイント・レースは後半から先頭につき始めましたが、作戦はありましたか

今回は通過点という意味でも、自分の力を出し切った上で積極的に走っても上位入賞ができたので、優勝する力はあると思っています。むしろこの大会でそういう走りができないと、全国で上位を目指すことができません。積極的には挑めたのですが、ポイントに絡みにいって5着が3回くらいあって、そこでポイントを全然稼げませんでした。その結果が9位という入賞まであと一歩という結果になってしまったと思います。逃げられずに混戦になったときでも積極的に動いて、ポイントを稼ぐというのをことしの課題として、来年直していけたらなと思いました。

――スクラッチレースの方は振り返っていかがですか

序盤から積極的な走りを展開していきました。後半は抜け出して独走できればいいかなと思っていましたが、少し自分が下がってしまったときに、他校の法大と明大の2校が逃げてしまって、早大が追うという厳しい展開になってしまいました。そこで追い切れなかったというのが大きいので、しっかりとそういうところも詰められるようにしたいです。ポイント・レースもスクラッチレースもまだまだ最後の詰め、あと一歩というのが足りていません。この冬でしっかりと詰めてらいねんは勝っていきたいと思います。

――チーム・パーシュートを振り返って

前回の早慶戦(早慶定期戦)では想定のラップタイムを超える良い走りができていました。きょうは寒くてみんな調子が良くなかったので、それなりのラップできれいに刻んで、一定で走るという力を出せるようにと、練習ではないですが、そういう走りができるようにと、定めた設定ラップをきれいにできました。良かったと思います。

――レースのタイムの方は満足されていますか

正直ちょっと遅いですが、いまのチームの状態と練習の雰囲気からすると割と良かったです。

――他大の印象はいかがでしたか

法大も明大も非常に強くて来年のインカレでも良い争いをすると思うので、負けないようにと思っていました。自分たちよりも少し力は劣っていますが、慶大や東大も強い選手が出てきたりすると思うので、そのような選手にも負けないようにらいねんも頑張っていきたいです。

――ことしのトラックレースを振り返っていかがですか

自分の感触やイメージはそんなに悪くないですが、自分のイメージと力が伴っていないことがありました。らいねんはイメージ通りの走りができる力をつけて、頑張っていきたいと思います。