止まらぬ連勝記録は13へと届く

自転車

 まるで春の日のようなぽかぽかとした昼下がり、野球部が春秋連覇を成し遂げる東京六大学野球・華の早慶戦と日を同じくして、西武園競輪場ではサイクリストたちによる早慶定期戦(早慶戦)の火蓋が切られた。落車のような大きなアクシデントも起きず、両校の選手は存分に力を発揮する。ワセダは全ての種目においてケイオーの得点を上回り、13連覇が懸かった早慶戦を66-30で制した。

 最初の種目・アンノウンディスタンスレース(アンノウン)は、あらかじめ競技者に周回数が知らされることはなく、残り1周となったときに鳴らされるピストルによって初めて距離が分かる特殊なレースだ。距離が分からないためペース配分をどうするかが重要になる。中盤、塩田航平(スポ2=埼玉・栄北)と中井琢(スポ2=宮城・仙台二)が前に出て先頭を交互に回していくも、孫﨑大樹(スポ1=京都・北桑田)が率いる第2集団が先頭二人を飲み込み、池邉(慶大)も追いつく。ピストルが会場に鳴り響き皆が一斉にペースを上げる中、独り前に飛び出したのは孫﨑だ。後続に圧倒的なリードを見せつけてフィニッシュした。「最後自分のタイミングで狙って一人独走に持ち込もうと思っていた」と語る孫﨑にとって、理想のレース展開だったといえる。首位から5位までをワセダが独占し、力の差を見せつけた。

アンノウンではワセダの独壇場となった

 エリミネイションレースには13名のワセダ勢が出場。周回ごとに最後尾の選手1名が脱落していき、残り選手が2名となった時点でファイナルラップとなる競技だ。一度先頭集団の後ろに身を潜めた孫﨑、伊藤和輝(スポ3=東京・昭和一学園)は再び浮上すると、二人で先頭を回しながらどんどんと後続に差をつけていく。1名、また1名とトラックから選手が減っていく中、ついに先頭の孫﨑、伊藤が後続の塩田、池邉を前方にとらえた。塩田は池邉との争いを制したが、次の周回で脱落。残り1周の合図が出され、互いに様子を探り合う走りを見せた孫﨑と伊藤、残り約250m地点で前に出たのは伊藤だった。最後まで孫﨑に前を譲ることなく伊藤が1位をつかんだ。

ワンツーフィニッシュを決めて喜びを分かち合う伊藤(左)と孫﨑(右)

 ケイリンと1kmタイムトライアルは佐藤啓斗(スポ1=青森・八戸工)が、アンノウンは孫﨑が優勝するなど、1年生の健闘が目を引く結果となった今回の早慶戦。一方、上級生の伊藤もエリミネイションレースで勢いのあるペダリングを見せ、ワセダの勝利に大きく貢献した。エンジに身を包んだサイクリストたちは快勝にブレーキをかけることなく、来る東京六大学対抗競技会でも多いに活躍してくれるはずだ。

(記事 滝沢凛、写真 曽祢真衣、佐藤諒)

結果

オープン・アンノウンディスタンスレース 孫﨑 1位、塩田 2位、中井 3位、手嶋 4位、森 5位

ケイリン 佐藤 1位、手嶋 2位、後藤 3位

チームスプリント 手嶋、森、後藤 1位

1kmタイムトライアル 佐藤 1位、岩田 4位、手嶋 5位

オープン・1kmタイムトライアル 塩田 1位、中井 2位、後藤 3位

エリミネイションレース 伊藤 1位、孫﨑 2位、塩田 3位、手嶋 5位

4kmチームパーシュート 伊藤、塩田、八田、孫﨑 1位

※上位のみ掲載

総合成績

◯早大 66―30 慶大

コメント

伊藤和輝(スポ3=東京・昭和一学園)

――きょうは早慶定期戦(早慶戦)ということでしたが

早慶戦はいつも時程がカツカツで、そこも早慶戦の1つの楽しみだなと思います。楽しむレースなのでケガのないようにしました。

――エリミネイションレースでは強気な走りを見せました

短距離の選手が結果を残していたので、後半はエリミと、中距離なのでその中でもただ勝つだけではなくてしっかり脚があるところを見せて勝たないとメンツが立たないので、そういうところを含めて強気のレースをしました。

――孫﨑大樹(スポ1=京都・北桑田)との一騎打ちを振り返って

前の集団に負いつくというエリミではあまりない展開で、本当は3人になってからあと2周回ということなんですけど、2人逃げていたので前に追いつきそうで、前の選手がエリミネートされてからすぐ1周回が回ってきてしまって、どうやら孫﨑はあそこから2周だと勘違いしていたようでしたが、今季入ってから小さいレース含めて初めての1勝だったのでとてもうれしかったです。

――二人で逃げることは事前に決めていたのですが

はい。1回目の逃げも本当は集団のペースアップが目的だったんですけど、誰もついてこなくて逃げになってしまったので、そこで自分が抜け出すつもりだったんですけど、追いつかれてしまってもう一回仕切り直して2回目です。

――4kmチームパシュート(団抜き)を振り返って

1周27秒5というプランで40秒を切っていこうというプランでしたが、走り始めたらみんなコンディションが良くて、1回設定ラップより落ちてしまったんですけど、順調にそれ以外はかなり早いペースで回ることができて一定のペースでいけたので、良い結果が出たと思います。

――かなり練習されたのですか

インカレ(全日本大学対抗選手権)が終わってから初めて4人で走りました。

――早慶戦連勝を12から13に伸ばしました

止めてはいけないので、止められないので(笑)、伸ばせて良かったです。

――次戦へ向けて

来週末に六大学トラック(東京六大学対抗競技会)があるのですが、自分はスクラッチと団抜きに出るので、しっかり仕事が果たせるように頑張ります。

佐藤啓斗(スポ1=青森・八戸工)

――きょうは早慶定期戦ということで、いつもとは違った雰囲気のレースでしたが

ワセダとケイオーの二大学という、インカレ(全日本大学対抗選手権)などに比べたら非常に小さい大会でしたが、気を抜くとかはせず、あくまでもいつも通りの走りをしたつもりです。

――4つのレースに出走しましたが、その中でも印象に残ったレースは

ケイリンはいつもと違い、1回だけということで非常に緊張しました。最初から最後まで先行逃げ切りと、慣れない走りでしたがどうにか逃げ切りました。

――1kmタイムトライアル(TT)を振り返って

疲労も溜まっていたので自分としては納得のいくタイムではなかったんですけど、1km走るだけで意味があるので、それを六大学(東京六大学対抗競技会)などの大会につなげていきたいです。

――この大会で得たものは

今回は普段の大会比べて、レースごとの間隔が非常に短かったんですけど、なかなか体力が回復できなかったので、今後の大会ではすぐ回復できるよう工夫していく必要があると思いました。

――次戦の東京六大学対抗競技会へ向けて

重視しているケイリンではとにかく負けないことを意識して、TTではまだ全然弱いですが、らいねんのインカレでは優勝できるように練習していきます。

孫﨑大樹(スポ1=京都・北桑田)

――まず、早慶定期戦(早慶戦)にどのような意気込みで臨んだのか教えてください

早慶戦はワセダとケイオーだけの戦いなので、ケイオーには絶対負けないようにってことと、こういう小さい大会でも圧倒的に勝てる力じゃないと全国では戦えないんで、そこも意識して、圧倒的な力を見せつけて勝つという目標で挑みました。

――今回普段やらないようなアンノウンディスタンスレース、エリミネイションレースのような種目がありましたが、いかがでしたか

アンノウンディスタンスについては僕も初めてで。大体どういう競技かっていうのは知ってることは知っていたんですけど、やったことがなかったので不安もあったんですけど楽しみもあったので。初めてでも関係なしに積極的に勝てるよう頑張ろうと思っていて。エリミネイションは何回か走ってるんで、しっかりと自分の得意な展開に持ち込んで勝つっていうことで挑みましたね。

――アンノウンのレース展開について。序盤躍り出て、途中第2集団につくも第1集団を飲み込み、ピストル後、前に出ていきました。これは何か作戦があったのでしょうか

そうですね。最初から積極的に行って、圧倒的な力の差を見せつけるために、ピストルが鳴る前から集団から差をつけて、ピストルが鳴る前にラップするくらいの勢いで独走に持ち込んで勝とうとしていました。でも1回目のアタックについては完全にフェイクで、ちょっと集団を動かせればいいかなと思っていました。それが作戦通りに動いて、やっぱ強い人とかはついてきたんですけど、そこで一気に集団が分断して落ち着いたところにもう1回行くっていう作戦通りに行けたんで、本当に自分が思った展開を自分で作ることができました。最後は逃げ集団ができたので、そこで少しペースを上げてみたらみんなちぎれそうだったので、最後自分のタイミングで狙って一人独走に持ち込もうって思っていました。そしたらたまたまアタックがピストルとうまいこと被って。ある意味理想的に、独走で勝ったんで良かったです。

――周回数がわならないレースということですがその点不安などはありましたか

自分はロード選手なんで、長距離になればなるほど有利だと思うので、そこは全然怖いことなかったです。最初からガンガン攻めていけると思ってたんで。ロード選手なんでそこは怖くなかったです。

――最後後続に圧倒的な差をつけて独走している中、舌を出されていました。それはなぜでしょうか

マネージャーも中で観ていてくれたんで。ピストルが良いタイミングで聞けて独走に持ち込めたんで、安堵というか、理想と同じ展開になってちょっとテンション上がりました。

――エリミネイションレースについて、伊藤和輝選手(スポ3=東京・昭和一学園)と共に後ろに集団に差をつけてリードされていました。振り返っていかがでしょうか

1回目も伊藤さんと2人でアタックかけて集団から抜け出そうとしたんですけど、1回目はなかなか差が空かなくて、集団をちぎることができなかったんですけど、もう1回集団戻って、もう一度いったときに伊藤さんと2人で抜け出すことができて。伊藤さんは個抜きとかですごく速くて、独走力がある選手なんで、強い、良い選手と二人で逃げられたんで、ずっと綺麗に回そうってことで回して。我慢した結果、集団が緩んだ隙に一気に差が開いてっていう理想の展開になったので。非常に良かったです。

――最後伊藤選手との一騎討ちになりました。接戦でしたが伊藤選手が勝利するかたちとなりました。この点どう思われますか

そうですね、やっぱり伊藤さんはスピードがある選手なので。最後自分も行けるかなーと思ったんですけど、やっぱり流石は中長距離のエースである伊藤さんなんで。最後は流石にちぎれそうだったし、なんとかついたんですけどまくることは出来ないスピードだったんで、自分はまだまだ最後のスピードってものがないなと感じました

――最後に来週の東京六大学対抗競技会に向けて一言お願いします

来週はもっと全国レベルの選手が沢山いるんで、そこでも今回みたいに力の差を見せつけて勝つことができれば来年のインカレ(全日本大学対抗選手権)とかにつながっていくと思うので、そこでもしっかり自分の力を100パーセント出していきたいと思います。