【連載】インカレ直前特集『絆』 第2回 伊藤和輝主将×後藤悠×佐藤啓斗

自転車

 ロード班に続き、今回紹介するのはバンクを主戦場とするトラック班の面々だ。中距離を得意とする伊藤和輝主将(スポ3=東京・昭和一学園)に、短距離では無類の強さを誇る後藤悠(スポ2=岩手・紫波総合)、さらには、入部して数か月にも関わらずケイリンですでに結果を残している佐藤啓斗(スポ1=青森・八戸工)。トラック班の主力であるこの3名は大舞台を前にいったい何を思うのか。今季の振り返りと合わせて意気込みを語っていただいた。

※この取材は8月7日に行われたものです。

「イメージを実現できるような実力をつけていきたい」(佐藤)

1年生ながらインカレでも活躍が期待される佐藤

――まずは今季についてうかがいたいと思います。振り返ってみていかがですか

伊藤 個人的にはロードを頑張るときょねんから宣言していたので、ロードをメインにやってきました。ロードに関しては予想よりは成績が低かったですね。トラックの方はもう少しいけるかなと思ったんですけど、周りの選手が強くて思ったような成績が残せていないです。あまり満足のいくシーズンではなかったですね。

後藤 今年の初めのほうは、基礎体力をつけることを目標にして、朝練とか午後練とかで本数も多めにやってきたんですけど、大会での結果はきょねんとあまり変わらなくて。若干力はついたかなと思ったんですけど、あまりそれが成果に出ていなかったかなと思います。

佐藤 今季は個人種目のケイリンを重視して練習してきました。大会では自分の予想以上の結果を出すことができましたが、団体種目のチームスプリントでは、スタートを失敗してしまったりしてチームに迷惑を掛けてしまったので、今後は団体種目をメインに頑張っていきたいです。

――今季の中で印象に残った試合などはありますか

伊藤 個人的には滋賀の全日本クリテ(全日本学生RCS第2戦)で、1年半振りくらいに落車したことですかね(笑)。久々の落車だったので。それくらいしか印象に残っていないです。

後藤 東日本(東日本学生選手権トラック)とか全日本学生選手権トラックで、どっちも3位だったんですけど、明大の橋本(瑠偉)さんとか、日大の坂井(洋)とか坂本(佳哉)さんという選手に勝てそうだったのに、技術でも脚でも劣っていて。それが印象深かったですかね。

佐藤 全日本学生TRS第3戦のケイリンの決勝で昨年度のインカレ優勝者など、私よりもはるかに実力のある方々と一緒にレースをすることができました。結果は4位と奮いませんでしたが、目標となる存在ができたので、今後に生かしていきたいです。

――今季を通じて、何か成長を感じた点などはありますか

伊藤 ないですね(笑)。ないです。

後藤 自分はきょねんに比べて、大会で本数をもがけるようになったかなと思います。きょねんは数本もがいただけでもその日のうちはあまりもがき切れないというか、実力を出し切れない場面が多かったので。ことしは5本くらい走ってもまだ大丈夫なので、そこは成長できたかなと思います。

――なにか体力をつけるように練習したのでしょうか

後藤 そうですね。大会を想定して練習しました。インカレはだいたい多くて6本とかだろうなと思っていたので、1日に8本くらいをインターバルを大きく空けて出し切れるような練習をしてました。

――佐藤選手は自身の成長した点についてはいかがですか

佐藤 大会で対戦する方々の特性や実力などを考えて、それを踏まえたイメージを今まで考えていたので、それを実際に試合で生かせるようになってきました。しかし、まだそれに実力が追いついていないので、そのイメージを実現できるような実力をつけていきたいです。

――この後予定されている合宿ではどのようなことをしていきたいですか

伊藤 ゴールデンウイークからまったく団体の練習をしていないので、中距離とロードの選手だけなんですけど、チーム・パシュート(団抜き)の練習はしたいと思っています。事前に団抜きのメンバーからどういう練習をしたいかを聞いているので、それに沿ってやっていきたいです。久々なので、まず初めはバンクになじむところから練習していきたいという案があるので、そこから徐々にレベルを上げていって、大会に向けて結果を残せるような練習をして仕上げていきたいです。

――合宿では個人練習などはされるのでしょうか

後藤 スプリントの練習はできないかもしれないですけど、チームスプリントや、自分の実力、スピードを上げる練習がメインになると思います。

――佐藤選手は合宿についていかがですか

佐藤 ケイリンでは瞬発力や持久力など、様々な力が求められるので、合宿ではそれらをイメージしてケイリンの展開で実際に使えるような練習をしていきたいです。

――合宿はどこで行うのでしょうか

伊藤 宮城県の大和町です。

――よく使ってるところなのでしょうか

伊藤 いや、早稲田大学としては初めてだと思います。少なくとも今の現役メンバーで行ったことはないんですけど、中井(琢、スポ2=宮城・仙台二)は地元なので。あいつを頼りに(笑)。

――昨年は岩手県だったと思いますが、合宿の場所はよく変えているのですか

伊藤 いや、今年は大学のほうの夏期集中の自転車の授業で使えない部分と、他の占有がかかってて使えない部分がうまく自分たちの日程に合わなかったので、今回は岩手での合宿ではなくて、他の場所でやることにしました。

――伊藤選手はロードの合宿にも参加されたのでしょうか

伊藤 いや、ぼくは行っていないです。

――ロードの合宿期間中はトラックの皆さんはどう過ごされていたのでしょうか

伊藤 前半の3日間はトラック練習とロード練習をしていたんですけど、その後は練習がなかったですね。みんな自由に過ごしていたと思います。

――佐藤選手は入学してから4ヶ月ほど経ちましたが、大学には慣れましたか

佐藤 まだ少し慣れていない部分もあります。

――どのような面で慣れていないと感じるのでしょうか

佐藤 人見知りな性格なのと、道に迷いやすいので、いまだに所沢キャンパスで迷うことがよくあります。

――部には慣れましたか

佐藤 先輩方が優しいので、わからないことがあってもよく質問できる環境だと思います。

――佐藤選手のお話を聞いて、お二人は先輩としていかがですか

伊藤 その通りだと思います。

一同 (笑)。

――トラック班で一緒にいることは多いのですか

伊藤 7月がテスト期間だったので練習があまりなくて。最近はあまり全体でやるっていう数が減っていますね。

――佐藤選手にお聞きします。なぜ早大を選ばれたのでしょうか

佐藤 高校の地方大会で後藤先輩と対戦をする機会がありました。その時は圧倒的な実力差で勝つことができませんでしたが、それ以降は後藤先輩を目標にして練習していました。一度しか対戦できませんでしたが、とても良い目標が身近にいるというのは練習にも生かせていると思います。

――ということですが、いまの話を聞いて後藤選手いかがですか

後藤 多分嘘ついてます(笑)。

一同 (笑)。

――高校のときに対戦されたのは後藤選手は憶えていますか

後藤 東北大会らしいんですけど、あまり憶えていないです。あまり人の名前とか覚えるのは苦手なほうですし、人見知りで対戦相手ともあまり喋らないので。なんかすみません(笑)。

――1年生が入ってきて、部としてはなにか変わりましたか

伊藤 (後藤選手に対して)なんか変わった?

後藤 東日本ですかね。

伊藤 ああそれだね。東日本で1年生の2人がトラックで優勝したので、1年生がいなかったらと思いますし、実力のある2人が入ってきてくれて部も少なからず確実に活気づいていると思うので、良い流れに変わったと思います。

――佐藤選手や孫﨑大樹選手(スポ1=京都・北桑田)といった実力のある1年生の存在は刺激になるのでしょうか

後藤 そうですね。

――後藤選手としては大学に入って初めての後輩だと思いますが、後輩ができたことに伴って気持ちの変化などはありましたか

後藤 いや、あんまりないですね。あまり気にならないというか。たしかに後輩が強いのでそれに負けないように頑張ろうというのはありますけど、普段の練習とか生活ではあまり変わらないです。

――伊藤選手は主将として1年生の加入に対してはいかがですか

伊藤 一応主将という立場ながら、まだ部には上級生がいるので。2年生から3年生になったときに後輩が1学年増えたからなにか特別に変わったということはないです。

――主将という話が出ましたが、チームを引っ張る立場としては今季をどう評価されていますか

伊藤 主将になる前なら、具体的に言えば2年生のときのインカレ前から、自分が主将になるんじゃないかと思っていたんですけど、そこで想像していたよりも人を引っ張る、というか人をまとめたり、一つの方向に向けたりするのは大変なことだな、と実感しています。

――後藤選手、佐藤選手のお二人から見て、伊藤主将の主将ぶりはいかがですか

伊藤 なんもしてねえよ(笑)。

後藤 伊藤さんが昭和一学園出身ということで、昭和一学園の選手たちと一緒に練習する機会を作ってくれてて、トラック班もあまりバンクに入ることができていないので質の高い練習ができて助かっているというか、ありがたいというか、いい練習ができています。

佐藤 私自身の性格として、自分に甘くて怠けたりだらけたりすることもあるのですが、伊藤キャプテンは厳しくも部の規律を守ってくださるキャプテンでもあり先輩でもあるので、私にとって非常に大切な存在です。

「自転車に乗ることを職業にできるのは楽しそう」(後藤)

自転車競技を始めたきっかけを語る後藤

――次に、お互いの印象について伺いたいのですが、まずはお二人から見た後藤選手の印象はどのようなものなのでしょうか

伊藤 最近はワットバイクを壊してばっかりです(笑)。自分はいま一階に部屋があって、一階にあるトレーニング機器で練習するとすごい音がするんですよ。なので、うるさいなと思うこともあるんですけど、そういうときはだいたい後藤が練習しているんです。そのうるさいなと思う機会が結構あるので、その分しっかり下で練習していますし、大会ごとにしっかり自分の目標を持ってやっているし、ぼくが見る限りでは怠けずしっかり練習しているように見えるので、部の雰囲気も良くなりますし、部にとっても重要な存在だと思います。

佐藤 私も後藤先輩と同じく短距離種目をメインにレースをしていますが、私はあまりスタートダッシュが得意ではありません。しかし、後藤先輩はスタートダッシュを得意とする方で、また練習内容においても、私があまり得意としていないウェイトトレーニングや無酸素の瞬発系の練習など様々な練習をされているので、練習メニューにおいても参考にさせていただいております。

――お二人から見た佐藤選手の印象はいかがですか

伊藤 4月に入部した時に、寮にご両親もご一緒にいらしたんですけど、とりあえずお父様の印象がすごく怖くて。喋った感じは全然そんなことなかったんですけど。お父さんがすごい怖そうな方でビクビクしていたんですけど、一言二言言葉を交わしたら大丈夫でした。佐藤くんに関しては最初は推薦入試のときだから9月かな、10月くらいに来たときは全然喋んない子なのかなと思ってたんですけど、部に入って、喋らなければならない場面に絶対遭遇するので、そういうときには普通に喋るので。どちらかと言えば内向的かな、と思うんですけど、一選手としては良い選手だと思います。

後藤 自分も佐藤もあまり喋るタイプではないので、普段どんなことを考えているのか謎というイメージがありますね。自転車に乗るときでも、ケイリン選手が使っているギアよりも全然重いギア使ってて、変な奴だなと最初は思ってました。でも、ケイリンを走るとなると走り方も駆け引きも上手いですし、競り合いとかでも人に当たっていくというか、狭いところを通ったりもしていくので、そういうところはすごいなと思います。

――休日はどのように過ごされていますか

伊藤 バイクに乗って遊んでいます。

後藤 自分はひたすら寝ていますね。基本的に動きたくないんで。ベッドで横になって寝てるか、スマホをいじったり。最近は同級生の八田(衛、スポ2=鳥取・倉吉東)がアニメとかを勧めてくるので、それを観てたりしてました。まあ、基本寝てます。

佐藤 私も同じような感じで、最近は非常に暑いので、できる限り動かないで体力を消費しないようにしています。

――休日に自転車に乗ることはないのですか

後藤 外には出ないですけど、室内でやったりはしますね。

――どこか自転車で遠くに行ったりすることはないのでしょうか

一同 ないです。

伊藤 でも、個人戦ロード(全日本学生選手権個人ロードレース)前は、レースで200km乗るために、個人TT(全日本学生選手権個人タイムトライアル)の会場まで自転車で下見に行ったりしてます。200kmはないんですけど、ただ走るだけではモチベーションが持たないのでそれはやってます。それでも往復で120kmくらいなのでそうでもないですね。ロード班は200kmとかいってるんで。

――120kmってそうでもない距離なんでしょうか

伊藤 (後藤選手に対して)そうでもないよね?

後藤 自分からしたらかなりきついですよ。

一同 (笑)

――登校も自転車でしたりしているのでしょうか

伊藤 いや、自分はバイクなので。でも数人はマウンテンバイクみたいなのに乗って学校に行ったりしていますね。

――自転車を始めたきっかけはありますか

伊藤 高校入学するときに勉強したくなかったので、部活しに行こうと思っていて。それで、小さい頃から親と(自転車を)乗りに行ったりしていたので、これを機に自転車競技を始めてみようかなと思って、自転車競技部のある学校を選んで、自転車部に入ったのがきっかけですね。

後藤 地元の競技場の中で自転車に乗ってみるっていう体験会みたいなものがあって、それで自転車競技を初めて知りました。その後中学2年生の時に、ケイリングランプリを初めて見て、自転車に乗ることを職業にできるのは楽しそうだなと思って。とりあえずやってみようと思ったのがきっかけです。

佐藤 私は父親がケイリン選手で、小さい頃からその活躍を見るとともに、夏休みや冬休みに実際に競輪場でレースをできたりもして憧れでした。家のすぐ近くに自転車競技場がありましたし、高校も家の近くに自転車競技部のある高校がありましたので、私も父のような素晴らしい存在になりたいと思ったので迷わず自転車部に入部しました。

「一つでもいい順位を狙う」(伊藤)

主将として部をけん引する伊藤

――ここからはインカレについて伺っていきたいと思います。みなさんにとって、インカレとはどのような大会なのでしょうか

伊藤 大学生のレースの中では最高峰のレースだと思いますし、全ての大学生かは分からないですけど、ほとんどの大学生は1年間の照準をインカレに合わせてやっているとは思います。

後藤 インカレをメインに今まで練習していたので、自分の中では一番大きいし、メインにしている大会です。

佐藤 今までの大会で、インカレで対戦するような方々ともレースをしてきました。まだ私は実力の面では弱いですが、対戦の技や展開次第では、そのような相手にでも勝てるということが分かったので、インカレでは優勝する気でとにかく一生懸命頑張りたいです。

――どの種目に出場される予定なのでしょうか

伊藤 4kmインディヴィデュアル・パーシュート(個抜き)と、4km団抜きと、あとはロードに出ます。

後藤 自分はスプリントとチームスプリントです。

佐藤 ケイリンと1kmタイムトライアルと、チームスプリントです。

――伊藤選手はトラックとロードのどちらにも出場されますが、そこで大変なことなどはありますか

伊藤 とりあえず個抜きで一つでもいい順位を狙うことが一番の目的というか、やらなければならないことですね。ロードはさすがにあの160kmの上りのきついコースを完走して、さらにポイント圏内に順位が食い込むということは無理なので、どちらかと言えば他のメンバーのアシストという立場でやろうと思っています。それでもあまり距離が乗れないほうなので、100km以内で他のチームに動きがあったときにそれに対応するアシストなり行動なりをするということをメインに考えています。特に大変なことはないですね。

――インカレに向けた仕上がりはそれぞれいかがですか

伊藤 自分はあまり良くないです。今度の合宿で勢いづけたいですね。今まであまりトラックに乗れていないので、合宿でトラック乗る時間をしっかり稼いで、そこからモチベーションの面でもしっかりインカレまで繋げたいです。

後藤 2、3週間くらい前まではいい感じに調子上がってきたのかなと思ってたんですけど、最近暑くなってきて、暑さに弱いのであまり練習できなくてここのところ落ち気味ですね。でも、長野はそんなに暑くならないと思いますし、合宿でまた調子を上げていければなと思います。

佐藤 最近あまり調子が良くないので、自転車の練習よりも、対戦を意識したイメージトレーニングや実際のレースでの作戦などを重視しています。なので、インカレではトライアル競技よりもケイリンを重視していきたいです。

――みなさん複数の種目に出場されますが、特に力を入れている種目はありますか

伊藤 個抜きです。いや、でも団体も同じくらい力を入れていますね。トラック競技が中心です。

後藤 自分は2種目しか出ないので、どっちもメインです。

――インカレに向けて目標をお願いします。

伊藤 個人種目は表彰台、3位以内に入れたらいいなと思います。入ります(笑)。

後藤 自分はことしがメインというよりも、来年がメインだと思っているので、楽しめればいいかなと思っています。でも、3位以内、できれば優勝したいなとも思います。頑張ってきたので。

佐藤 今の実力ではタイムトライアル競技で良い結果を残せそうにないのですが、悔いの残らないようにとにかく上を目指していきたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 佐藤諒、進藤翔太)

◆伊藤和輝(いとう・かずき)(※写真右)

1994年7月24日生まれのA型。174センチ、70キロ。東京・昭和一学園高出身。スポーツ科学部3年。専門はトラック中距離。3年生ながら主将として部を率いている伊藤選手。インタビュー中に見せたお茶目な姿とは裏腹に競技時は凛々しい姿を見せます。豊富な経験を生かした巧みなレース運びに必見です!

◆後藤悠(ごとう・ゆう)(※写真中央)

1995年4月8日生まれのB型。172センチ、75キロ。岩手・紫波総合高出身。スポーツ科学部2年。専門はトラック短距離。最近トレーニング器具を壊してばかりだという後藤選手。しかし、それは自主練を欠かしていないことの証とも言えるでしょう。強化したスタミナと持ち前の瞬発力を武器に大舞台に挑みます。

◆佐藤啓斗(さとう・ひろと)(※写真左)

1996年10月18日生まれのO型。172センチ、66キロ。青森・八戸工高出身。スポーツ科学部1年。専門はトラック短距離。ケイリン選手である父に憧れて自転車に乗り始めたという佐藤選手。謙虚なコメントが目立ちましたが東日本のケイリンで優勝するなどその実力は折り紙付き。インカレでも一花咲かせてくれることでしょう!