【連載】インカレ直前特集『One for All』 第1回 後藤悠×伊藤和輝

自転車

 ことしの自転車部はトラック競技が熱い。部員が増えたことでトラック班とロード班を置き、それぞれの競技にさらに磨きをかけている。今回はそのトラック班の中から、昨年の全日本大学対抗選手権(インカレ)で4Kmインディヴィデュアル・パーシュート(個抜き)2位に輝いた伊藤和輝(スポ2=東京・昭和一学園)と、ルーキーながら今季ここまで好成績を残している後藤悠(スポ1=岩手・紫波総合)の二人が登場。今季の振り返りから自身のことに至るまで、ざっくばらんに話していただいた。

※この取材は8月14日に行われたものです。

「力は着実につけた」(後藤)

照れながらも質問に答える後藤

——まず最初に、先日岩手で行われた合宿はいかがでしたか

後藤 自分は練習し慣れた環境でできたので充実していたのですが、雨が多くて練習量があまり増やせなかったかなと思います。ずっと雨でしたね。

伊藤 昨年も利用させていただいて、かなり静かな環境でした。他の学校と被らずに長い時間使用させていただいて、練習環境は整っていたのですが、やはりきょねんと同様に雨が多く、合宿前半は降られずに済んだのですが、中日を過ぎてから後半は午前中の練習が雨で流れてしまうことがありました。総合的に見たら合宿としては満足いく練習ができなかったかなと思います。

——チーム・パーシュート(団抜き)の練習も行ったと伺いましたが

伊藤 この間行われた全日本TRS第3戦(TRS)では28秒と、TRSを終えた感触としてはかなり好調で東日本学生選手権トラック(東日本トラック)よりも成長が見えていると思います。また合宿でも前半に雨が降らず、そこに団抜き練習を取り入れていたので、そこでさらなるレベルアップができたと思います。

——後藤選手は自身の種目(スプリント)の練習についてはいかがでしたか

後藤 地元の競輪選手の方にどういった練習をすればいいか教わってそれを続けていたのですが、その課題をクリアすることはできませんでした。ですが力は着実につけたと思います。

——具体的にどのような練習をしていたのですか

後藤 スタンディングからの500mで、長い距離でトップスピードを維持できるような練習をして、なおかつインターバルを短くしてスタミナをつけられるようにしていました。

——次にシーズンこれまでを振り返っていただきたいのですが、ここまでのシーズンは率直にいかがでしたか

伊藤 今シーズン始まる前の1月頃から少し腰の調子が悪くて練習を思うようにできていませんでした。東日本トラックでは個抜きを走るも悲惨なタイムだったので、前半はそれほど良くなかったです。全日本学生トラック(個人戦トラック)は、一応二連覇が懸かっているということもあり優勝を狙いにいったのですが、4位という結果に終わってしまって。冬の乗り込みからシーズン始めの練習の少なさ、また気持ちの面でも足りていない部分が多かったかなと思います。

後藤 自分は大学生で最初の年だったので、環境に慣れることがまず第一だったのですが、その中でタイムはきょねんより出せるようになってきたので少しは成長できたかなと思います。

——きょねんから変わったところは

後藤 きょねんまでは短い距離ばかり乗っていたのですが、最近は心拍計なども使って中距離というか、もう少し長い距離を自主練に取り入れています。

伊藤 (僕は)特に変わっていないと思います(笑)。

——伊藤選手は後輩が入ってきたことで気持ちに変化はありましたか

伊藤 大学1年生があまりにもあっと言う間で、後輩が入ってくるという実感は無く2年生になりましたね。環境がちょっと変わったのかなと思います。

——そんなに早く感じたのですか

伊藤 入学当初は食事当番など、慣れない数々のことがありましたし、その時は長かったなと思いましたが、いま振り返ったらやはり大学1年生の期間とはいえすごく早かった1年間でした。

——やはり食事当番は大変ですか

伊藤 もういま1年半やって、だいぶ慣れたのでこなせる内容だと思います。

後藤 まだ慣れていないですし、自分が得意な料理を作ればずっと楽になると思うんですが、まだ決まってないです。

——ちなみに伊藤選手の得意料理は何ですか

伊藤 自分は麻婆豆腐かハヤシライスのローテーションです。自分たちが入学した時は3人だったので、そんなことしていたら大変だったんですが、いまは8、9人いるので2種類持っておけば大体被らずに回せるんです。

——料理を作るのが上手い人はいますか

伊藤 先輩方はみんなどっこいどっこいかなと言っていましたが、みんなあまり失敗はしないです。大はずれがくることもありますけど(笑)。みんな食べられるものを作っているので気にならないです。

——ことしの大きな変化の一つにトラックとロードで明確に班分けをした点がありますが、この点についてはどうでしょうか

伊藤 練習している時は、だいたいトラック班はトラック班でまとまって走っていたので、練習の内容にそこまでの変化は無いんですが、トラック競技の団体練習があると、練習メニューがかみ合わないときが多かったので、その面では来年以降の改善の余地はあるかなと思います。

——前期最も印象に残っているレースはありますか

伊藤 あまり大会としては大きくないのですが、全日本学生RCS第4戦・大町美麻ロードレース(大町美麻)に参加させていただいて、それまでに全日本RCSは1戦も出ていなくて、とりあえず個人戦トラックだと思っていて次の週に大町美麻に出たのですが、やはり長距離ロードレースは練習量が結果につながるかなと思いました。コースも初めてで雨も降っておりコンディションが悪かったこともあったのですが、途中でちぎれてしまい、コンディションうんぬんの問題ではなくやはり練習量が足りていないなと痛感させられたレースでしたね。

——人数が多くなった事でロードの走りでも『チーム』を意識するようになったのでは

伊藤 自分はロード班ではないですし、ロードの練習に口を挟めるようなレベルではないので何とも言いがたいですが、負担の面ではやはりロードとトラックの班が分かれることによってロード班の負担も軽減されますし、ロード班はロード班のレースができると思います。ただそれが直接レースにつながってくるかは分からないと思います。

——後藤選手がこれまでのシーズンで印象に残ったレースはありますか

後藤 個人戦トラックが一番大きかったです。いままでタイムは出していたので、弱い人と当たったときはそれなりに勝ち上がっていけたんですが、1/2決勝で当たった松本(貴治、朝日大)選手や、決勝で橋本(瑠偉、明大)さんと松本さんの対戦を見ていると、やはりスタミナとかが今のままではこれ以上勝ち上がれないなと実感したので、そこが一番大きかったですね。

——高校から大学に上がり、レベルの差は感じましたか

後藤 脚の面ではあまりないのかもしれませんが、やはり経験などの差が少しあると思います。

「嫌がられてそうですね(笑)」(伊藤)

——ここからは少しお二人について聞いていきたいと思いますが、まず今回の組み合わせについてはどうでしょうか

二人 …(笑)。

伊藤 そうですね(笑)。トラック班の一年生が後藤しかいないので、他の一年生よりは多くしゃべっていると思います。

——普段の後藤選手はどのような感じですか

伊藤 どんな感じ…、普通です(笑)。しゃべりかければ返してくれるタイプだと思います。あまり積極的にコミュニケーションする方ではないのかなと思いますけど。まぁ、自分に話しかけてないだけかなとも(笑)。それは分からないですね。

——1年生同士は仲がいいと聞きますが

伊藤 自分もそうだと思います。

後藤 そうみたいです。

伊藤 学校でも1年生同士で集まって授業しているのとかをよく見ます。

——逆に後藤選手から見て普段の伊藤選手はどのような感じでしょうか

後藤 普通に真面目な先輩です(笑)。

伊藤 けっこう1年生に厳しいことを言っているので、一番目立っていると思います。嫌がられてそうですね(笑)。

——後輩を指導する立場になって、後輩との接し方を意識するようになりましたか

伊藤 自分が完璧だとは思いませんが、自分が指導されるときに、この指導のされ方は嫌だなと思ったことはやっていないです。指導するにも時間を使うわけで、なのにそれが無駄な指導になってはいけないので、できるだけ伝わるように、分かっていなかったらできれば分かっていないと言って欲しいですし、別にその事に関しては聞き直してくれれば一生懸命説明します。後輩が求めていたらちゃんと答えようとは思っています。

——では、お二人から見た佐々木主将の印象はどうでしょうか

伊藤 どちらかと言えば、自分たちで考えろといった感じで、あまり口に出してあれこれ言う人ではないです。

後藤 確かにあまり口出しはしないタイプだなと思います。

——近年は自転車部の人数も増えてきましたが、その点はどうでしょうか

伊藤 やはりまとめるのが難しくはなっていると思いますね。細かいところまでいくと自分はやっていませんが、宿舎の手配やレンタカーの予約を主務や主将が苦労されてやっているのですが、やはりその部分での負担がどんどん大きくなっていくので、競技面での負担よりも私生活の面で負担が多くなっていると思います。

——私生活などで昨年から伸びたな、と思う点はありますか

後藤 伸びた点ですか(笑)。新しい環境に入って練習のバリエーションとかは増えたと思います。器具も置いてありますし、大学のトレーニング室に行って練習したり、知識を得られる環境が増えたなとは思いますね。

——やはり競技に関連する授業を取られるのですか

後藤 そういう授業が取りたいなとは思うんですけど、ちょっと単位が(笑)。

——伊藤選手は前期の授業はいかがでしたか

伊藤 きょねんに比べて単位の取り方が成長したと思います(笑)。とりあえず取りたい授業を取るのではなく、テストの内容を見極めたり、その取り方が成長したと思います。

——授業で他の部の選手と交流を持つことはあるんでしょうか

伊藤 授業によって、グループワークがある授業だったら友達になったりするとは思うんですが、大きな教室でやる授業で「あっ」とはならないと思います。

後藤 自分は人見知りなんで、自分から話しかけたりはしないです(笑)。何人かと親しくはなったりしますけどそんなたくさん友達を作ったりはしないです。

伊藤 自分は最初の頃、クラスに自転車部がいなくてよかったと思っています。最初自転車部の人がいたら絶対その人としゃべってしまうので。でもいなかったので、どうしようもないので他の人に話しかけて友達が増えました。

「みんながみんな本気を出してくる」(伊藤)

インカレへ向け現状を分析する伊藤

——改めて本題に戻ると、いよいよインカレが迫ってきました

伊藤 合宿も終わり、あと20日を切ってきて、ここから何をしようと思ってももう20日では何もできないかなと思いますし、そこまで大きな変化は遂げられないと思います。なので地道にこつこつ、いま(の状態)から落とさずレベルアップしていくだけかなと思います。

——伊藤選手は昨年表彰台に上っており、やはり今回も表彰台は狙っていきたいのでは

伊藤 優勝がある限りは狙っていきたいのですが、7月の始めにあった個人戦トラックでは優勝タイムまでは6秒近くあり、決勝タイムでは8秒近く差がありました。タイム競技で8秒といったら天と地の差なので、その部分がいま埋められているかと言えば埋められていないと思います。インカレではあのタイムでは勝てないと思っています。優勝は目指したいのですが、現状で優勝はまだできないと思っています。

——後藤選手はどうでしょうか

後藤 自分は、もうインカレなんだとあっという間過ぎて準備があまりできていない状態なので、やはり調整に気を使って何とかインカレまでに戦える体にしたいなと思っています。

——お二人のここまでの仕上がり具合はどうでしょうか

伊藤 練習量が落ちているので、パワーや力量面ではだいぶきょねんより劣っていると思うのですが、大会会場が伊豆ベロドロームなので技量面が反映されてくると思います。自分で言うのもあれなのですが、技量面では優れているほうだと思うので、その分でカバーできたらいいかなと思っています。

後藤 この間の岩手の合宿で走った感じだと、まだまだ仕上がってはいないと思います。ダッシュ力はまだまだですけど、少しはスタミナはついたんじゃないかなと思います。

——コースの伊豆ベロドロームについてはいかがですか

伊藤 昔は嫌いだったんですけど、いまはもう普通のバンクとして走れます。

後藤 走りづらいのであまり好きではないですけど、天候とか風に影響されず、そういった部分では平等なので好きな方です。

伊藤 自分は泉崎国際サイクルスタジアムの方が走りにくいと思います。スプリントや上から駆け下りる競技の人は(泉崎国際サイクルスタジアムの方が)けっこう向いているという話を聞きますが、団抜きとか個抜きを走るときは、自分は好きではないですね。

——インカレは他の大会とは違った位置付けをされますが、やはり違いますか

伊藤 大学としてはインカレを最終目標としているので、その点ではやはりみんながみんな本気を出してくる大会じゃないですか。個人個人では世界選手権や海外遠征がある選手もいますが、学校としてはインカレでの優勝、または上位入賞を求めていると思うので、どの学校も頂点を目指していますよね。

——伊藤選手は昨年走ってみていかがでしたか

伊藤 総体もそういう位置付けではあると思うんですけど、高校と大学では何か違う感じがありました。何が違うかは分からないんですけど、何ですかね。

——後藤選手はどうでしょうか

後藤 どういう大会かも分からないですし、規模が一番大きいというのは分かるので、あまり緊張せずに走れたらいいなと思います。

——お二人は走る際に緊張はされるのですか

伊藤 一番緊張したのは高校3年生の時の総体個抜きの予選だったんですけど、それ以来は大きな緊張はないです。そこの1回はすごく緊張しましたけれど、あとは気が引き締まる程度だと思います。

後藤 自分は普段あまりしないんですが、(スプリントの)1/8決勝や1/4決勝とかのあまり上ではないところだと緊張します。決勝とかは楽しいのでいいんですが、速い方のタイムを出して自分より遅い人に負けるのが不安で、そこで緊張します。

——では改めてインカレの目標は何でしょうか

伊藤 個人では優勝を狙っていきたいと思います。団体種目も参加させていただくので、強豪校の鹿屋体育大や中大の中でも5位以内に入れる実力はあると思うのでその実力が出せるように頑張っていきたいと思います。

後藤 自分は(寮に張ってある)色紙の通り、優勝を目標にやっていきたいです。あと団体ではチームスプリントに出させていただくのですが、うまくかみ合えばかなり上位の方に入っていけると思うのでそれが目標です。

——いま少し話にも出ましたが、他大学の選手を意識することはありますか

伊藤 自分の競技の個抜きの場合、直接対戦といってもバンクの反対側で戦う訳ですし、直接戦うためには上位4名に入らなければいけませんが、やはりタイムを出している選手は気になりますね。

後藤 気にはなりますし、自分より強い選手もたくさんいますけれど、対戦で当たるかも分からないのでいまはそんなに考えていないです。自分の調整しか考えていないですね。

——最後にインカレへの意気込みをお願いします

後藤 楽しめればいいなとしか思ってないですね。いまは結果より楽しむ事を重要視していきたいなと思います。

伊藤 後輩たちは高校からの勢いもあり脅威ですが、きょねん経験していてやはり2年目なので1年生に無いところで差をつけていかないと勢いには勝てないです。また1年生も自分たちが入ってきてレースしやすい環境の方が勝ちやすいですし、そういった環境も考えていきつつ自分の成績も残しつつ戦っていきたいと思います。

——ありがとうございました!

(取材・編集 高柳龍太郎)

◆後藤悠(ごとう・ゆう)(※写真左)

1995(平7)年4月8日生まれのB型。171センチ、75キロ。岩手・紫波総合高出身。スポーツ科学部1年。専門はトラック短距離。人見知りの後藤選手は、先輩との対談ということも合わさってか終止はにかみながらのインタビュー。それでもレースになると表情は一変、力強い走りを見せてくれます。インカレでも好成績に期待です!

◆伊藤和輝(いとう・かずき)(※写真右)

1994(平6)年7月24日生まれのA型。174センチ、67キロ。東京・昭和一学園高出身。スポーツ科学部2年。専門はトラック中距離。きょねんと比べて変わった点を聞いたら「変わっていません」と答えた伊藤選手。ですが、後輩の練習環境や接し方を話す姿は頼りがいのある先輩そのもの。しっかりと成長を見せてくれました!