【連載】インカレ特集 『Road to Special Place』第2回 伊藤和輝

自転車

 第2回はスーパールーキー伊藤和輝(スポ1=東京・昭和一学園)をお届けする。高校時代から全国、世界の舞台で活躍。大学入学後も全日本学生トラック、4kmインディヴィジュアル・パーシュート(個人追抜)優勝など、期待通りの走りを見せている。そんな伊藤に今季の振り返り、そしてワセダに入学するまでの経緯を聞いた。

※この取材は8月19日に行われたものです。

想像していなかった世界の舞台

インカレで期待のかかる伊藤

――現在の調子はいかがですか

 合宿続きで少し疲労があったなりに、きのうのオムニアム選手権の結果をみる限りではまあまあいい走りができたと思います。調子は悪くないと思います。

――きのうまでのオムニアム選手権はいかがでしたか

 初めてのレースにしては、良かったと思います。

――オムニアム選手権は初めてですか

 はい、初めてです。トータルで言ったらまずまずの結果かなと思います。

――合宿では何を中心に練習したのですか

 基本的に団体追抜の練習です。個人的な練習はあまりしてないですね。

――半年を振り返っていただきます。そもそもワセダに入学しようと思った理由は

 他の大学からもお誘いの言葉を頂いていたのですが、自分にあった大学と雰囲気を見て、早稲田大学が合っているなと思ってワセダにしました。

――雰囲気が合っていた

 はい。雰囲気と、あと練習環境もそうですね。

――ワセダは練習環境が良いほうなのですか

 そうですね。定期的に競輪場が使えてバンクに入れることが決め手になりました。

――ワセダに入ってみていかがですか

 想像通り、というわけではなかったですけど。早稲田大学に入って良かったと思っています。

――想像通りではなかったというのは

 そんなに深い想像をしていたわけじゃないんですけど…。まあ寮の生活環境とか、夏場にこんなに暑いとか思っていなかったので(笑)。

――そもそも高校に入学して自転車部に入ろうと思った理由は

 高校進学するときに、特にやりたい勉強があるわけじゃなくて、とりあえず高校は進学しなきゃな、と思って。でも何か目標を決めてしっかり入らないと、なあなあになって辞めたり、帰宅部になっちゃったりと思って。小さい頃からわりと自転車に乗るのが好きだったのでじゃあ自転車部に入ろうと思って、自転車部に入りました。

――小さいころから乗っていたというのは

 ちょっと遊びに行くとか、そんな程度です。競技をやっているとかじゃなく、河川敷まで走りに行ったりとか。そのくらいですね。

――それで高校から始めて全国で活躍をするようになりましたが

 誰も想像してなかったと思います。自分も想像していなかったので(笑)。

ロードは「新しい種目をやる感じ(笑)」

――個人追抜を始めたのはいつからですか

 一番最初に計ったのは高校1年生の9月にある学年別大会という東京都だけの小さい大会でした。そこで勝ったのが最初ですね。その時は飛び抜けて速いってわけではなかったです。まあ1年生ならそのくらいじゃない、っていう程度の秒数でした。

――それでどうして個人追抜専門になったのですか

 その後、インターハイの予選の都大会で個抜きを計った時にインターハイで入賞、表彰を狙えるくらいの秒数が出ました。3年生の先輩が一人いたんですけど、抜いて、そこから個抜きの選手になりました。

――その前までは

 全く誰も予想してなかったですね。

――計ったらタイムが出たという感じですか

 はい。10月から3月は大会が無くて、選抜大会はあったんですけど、震災で中止になってしまって。でも、もともと自分は選ばれてなかったんで、その選抜大会は出る予定がなくて。ずっと計ってない中で計ったらポーンて出ちゃっておお、みたいな感じでした。

――個人追抜って傍から見たら一番苦しい感じがするんですけど、出たときどう思いました

 出たときは3分41秒だったんですけど、自分の聞き間違いで最初51秒って監督から聞いてて。なんだ51秒かと思ったのが最初でした。(1年生の)9月のあと2つ大会があって、3分56秒だったので、冬頑張ったのにそんなに伸びてないなあと思ったらその日の終わりのときに41秒って知って、聞き間違いだったってわかって「あれ?」って(笑)。それから3km個抜き専門になりました。でもタイムが出るときって、苦しくないんです。どんな時もそうなんですけど、タイムが出た時ってしんどいんじゃなくて「疲れたー!」みたいなやりきった感というか。感覚が違うんです。苦しい時ほどタイムが出てなくてつらい思いをするんですけど、タイムが出た時ってあんまり苦しくなくて。そうですね、そんな感じでした。

――その時もあまり苦しくなかった

 あまり苦しくなくて51秒か、って感じだったんで。まあまだ始めてあまり経ってないのでよくわかってなかったんですけど。そんな感じでしたね。

――ジュニアからエリートに変わって4kmに変わったと思うんですけど、違いというのは

 距離じゃないですか。1km増えるので。あとはペースコントロールがもうちょっとシビアにコンマ2とかそのくらいの単位までつめていかないと体力が持たなかったりペース維持ができないのでそこが難しいですね。

――4km個人追抜の公式戦はいつが初めてでしたか

 3月にアジア選手権で計ったのが最初です。その前にも非公式であれば1月くらいに高校3年生の時に計っていました。

――大学に入ってから全日本学生トラック(個人戦トラック)が公式戦では初ですか

 そうですね。公式戦は初ですね。

――それまで4kmに出場しなかった理由はあったのですか

 東日本学生トラックは4kmもあったんですけど、スクラッチ出たいなと思ってスクラッチに出ました。

――スクラッチにした理由は

 個抜きとかタイム競技を走るとスクラッチとかポイントレースとかの競走競技に出させてもらえないんです。対戦というかそういう形式の競争形式のものがあまり出れなくてタイム競技になっちゃうので、出れるときに出てやろうと思って(笑)。スクラッチにしました。そんなにいい結果じゃなかったんですけど。

――出てみていかがでしたか

 良かったです。楽しかったです。

――伊藤選手からよく楽しいという言葉をコメントでもらいますが、高校のときから楽しいと思ってやっていたのですか

 高校3年生の頃は楽しいっていうより、インターハイとかも自分が勝たなきゃ総合優勝にならなかったりっていうプレッシャーもあったので、楽しいっていうよりは責任感のほうが大きかったですね。

――部長を務めていたこともあり、プレッシャーは大きかった

 そうですね。インターハイは自分のときまで流れが悪くて、みんな予選落ちとかしてたので。プレッシャーが大きくて楽しくはなかったですね。

――大学入ってからは楽しんで乗っているということですか

 まあ楽しいところは楽しいですね。でも個人戦トラックは4kmだったのでかなり緊張しました。一応、大学1年生で大学チャンピオンが小さい目標だったので、橋本さん(鹿屋体大、英也)が中国のほうに行っていて、これしかなるチャンスがないなと思っていたので緊張しました。

――その個人戦トラックでは4km個人追抜予選で学連記録を樹立しました

 そうですね…。でも学連記録の存在を知らなくて(笑)。そんなものがあるんだと思いました。まあ確かにあると言われればあるんですけどね。きょねん橋本さんが全日本(全日本自転車競技選手権)で30秒を出してらっしゃったんでそれが記録だと思っていたら、学連が主催した記録しかならないってことなので、36秒を自分が出してそれが記録になったみたいです。まあ、びっくりしたと言えばびっくりしました。でも、「あ、そうなんですか」みたいな感じです。そんなに自慢していいというか、胸張って言える記録ではないと思ってます。

――決勝でも記録は狙っていたのですか

 最初は記録を狙っていたんですけど、途中トラブルがあって勝つことに専念しました。まあやけになるよりは確実に、タイムは遅いけれどとりあえず優勝は狙いに行こうと走りながら切り替えました。

――RCS第2戦の修善寺ロードは優勝しました

 調子が良かったんですかね。あとクラス3だったので。あのコースはジュニアの頃にチャレンジロード(チャレンジサイクルロードレース大会)でもまあまあいい成績だったので。いい感じの、自分に合ったコースなのかなとは思いますね。

――個人ロードは完走しました

 個人ロードは最初11周くらい逃げてて、ほとんど脚を使わないことができました。それから集団で残り7周くらいどうにか耐えきったので奇跡的に完走できたって感じですね。

――逃げているほうが脚を使うイメージがあるのですが

 自分もそう思ってたんですけど。逃げてるとそんなに(ペースの)アップダウンがなくて、3人で均等に回していこうって感じで協調体勢とれてたので脚は使わなかったです。

――それで完走できたと

 いい経験になりました(笑)。

――お台場サイクルフェスティバルでは三浦康嵩主将(スポ4=青森・八戸工)とワンツーフィニッシュをしました

 ワンツーフィニッシュは嬉しかったですね。個人的な感想としては個人戦の優勝よりもワンツーのが嬉しかったです。

――個人戦の優勝より嬉しかった

 タイム競技って、その場で決まらないじゃないですか。最終組か決勝戦じゃない限り。あまりそういう経験ができないので、接戦で勝ったのは嬉しかったですね。

――高校のときロードはあまり走らなかったのですか

 西村(シマノレーシング、大輝)と馬渡(鹿屋体大、伸弥)がいて、3年生からは橋詰(昭和一学園高、丈)が入ってきたので、インターハイも選抜も全国大会のロードレースにあまり出たことがないです。高校の頃はほんとロード乗ってなかったですね。

――それで大学でロードやるのはどのような感じですか

 新しい種目をやるみたいな感じですね(笑)。

――練習もしてなかった

 いや、練習は基本的に班分けなく全員一緒なので。バンク得意な人もロード行きますし、ロード得意な人もバンク練ありました。

「出る以上は優勝を狙う」

集大成P

――インカレは個人追抜に出場すると思います

 出る以上は優勝を狙っていきますが、現実的なところは橋本さんとまだだいぶ力量も技量も違いますし、ギアも踏める量が違います。実際問題、表彰台に上れたら、と思っています。

――やはり橋本英也選手は強い

 強いですね。でも学生チャンピオンの名を汚さないように頑張ります。一応まだ学生チャンピオンなので。

――1年生ながら団体追抜にも選ばれましたが

 スポーツ推薦で入った以上、即戦力にならなきゃいけないと思っています。その面では、力になれてるのかなとは思いますし、しっかり成績を残さなきゃいけないっていうプレッシャーはあります。

――プレッシャーには強いほうですか

 どうですかねえ…。意外といけるほうだと思います!

――最後にインカレに向けて

 オムニアム選手権が終わって一段落して、あとはインカレというところなので、とりあえずオムニアム選手権の疲労をしっかり抜きたいと思います。競技開始まであと10日あるので、現地入ってから1日2日は追い込みの範囲かなと思うので、とりあえず現地入って33バンクの走り方とか特性を考えて、しっかり追い込みたいです。あと疲労を残さないようにコンディションを良くして当日を迎えられるよう、29日に向けて調整をしていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 目良夕貴)

◆伊藤和輝(いとう・かずき)

1994年(平6)7月24日生まれのA型。174センチ、69キロ。東京・昭和一学園高出身。スポーツ科学部1年。専門はトラック中距離。学生生活について尋ねると学校に行くのは楽しいと答えた伊藤選手。しかしテストの出来は首を傾げ「やばいです」と一言。学生チャンピオンもテストにはお手上げのようです。