青森・八戸で行われた69回目の全国大学対抗選手権(インカレ)。初日、2日目と予選で苦しんだ早大は3日目。伊藤和輝(スポ1=東京・昭和一学園)が4kmインディヴィデュアル・パーシュートで2位となり、早大勢では唯一の表彰台に輝いた。また男子ポイントレースでは三浦康嵩主将(スポ4=青森・八戸工)が6位に入賞するなど、個人種目での健闘が光った。
最後のインカレで入賞した三浦主将
主将が故郷に戻ってきた。大会2日目、男子ポイントレースに出場した三浦主将は地元八戸市の出身。「結果を出さなければいけない」(三浦主将)。一周333、3mのトラックを120周する過酷な種目。地元の期待を背負い、気合いを入れて臨んだ。レースは序盤から集団が分裂。30周しないうちに先頭集団が数人に絞られる波乱の展開を迎えたが、三浦は冷静だった。自分の走りをすることのみを意識し、ただひたすら前を目指す。中盤以降も集団から遅れることはなく、着実にポイントを稼いだ。終わってみれば結果は6位。完走したのはわずかに7人という厳しいレースで、主将が意地の走りを見せた。
雨の中決勝に挑んだ伊藤
トラック競技3日目。最終日を迎え、未だ表彰台に手が届かない早大。中々結果が出ずもどかしい展開が続く中、輝きを放ったのは一年生の伊藤だった。4kmインディヴィデュアル・パーシュートに出場した伊藤は、初舞台にも動じることなく予選を全体2位で突破。一気に決勝進出を決めた。決勝の相手は鹿屋体大の橋本英也。昨年のインカレでは同種目で優勝。今大会でも予選では王者の貫録を見せつけての1位通過だった。迎えた決勝。降りしきる雨の中、伊藤は号砲とともに力強くペダルを踏んだ。「序盤から優位に立って、相手に動揺を与えたかった」(伊藤)。開始とともに勢いよく飛び出した伊藤は加速を続け、一気に差を広げる。その後もリードを保ち、レースは伊藤の優勢かに思えた。しかし、レース中盤。相手が一気にペースアップすると、開いたはずの差が徐々に縮まり出す。必死にペダルを踏む伊藤。迫る王者の足音。「最後はやはり実力の差だった」(伊藤)。中盤以降の相手の猛チャージに対し、立ち向かうことができなかった。
入賞、表彰を果たした個人種目に対し、今大会は団体種目での課題が露呈した。今後チームとして強くなるには、団体種目の強化が不可欠となる。一方で、個人種目にはより一層の期待がかかる。一年生の伊藤にとっては、今回が初のインカレ。「この経験を活かして来年のインカレでは優勝を狙いたい」(伊藤)。確かに見えた王座への道筋。遥かな頂を目指し、新たな挑戦が始まる。
(記事 鈴木皓、写真 植田涼介、目良夕貴)
チームスプリントに出場した合田(左)と中嶋
★2種目で入賞!
女子陣の活躍も見逃せない。トラックで3種目に出場した合田祐美子(スポ3=岡山・朝日塾)と中嶋綺砂(スポ1=三重・暁)。3kmインディヴィデュアル・パ-シュートで合田が11人中4位につけ順位決定戦へ駒を進める。また、チームスプリントでも息の合った走行で合田・中嶋組は予選を突破。両種目とも3~4位決定戦で敗れ表彰台は逃したが、2種目で入賞を果たし、ワセ女の底力を見せつけた。
結果
▽男子
1kmタイムトライアル 谷口 9位、手嶋 12位
4km個人追抜 伊藤 2位
ポイントレース 三浦主将 6位
団体追抜 早大(三浦主将、大中、谷口、伊藤)14位
チームスプリント 早大(佐々木勇、谷口、手嶋)失格により最下位降格
タンデムスプリント 手嶋・森組 13位
▽女子
3km個人追抜 合田 4位、中嶋 6位
ポイントレース 合田、中嶋 DNF
チームスプリント 早大(合田、中嶋)4位
コメント
三浦康嵩主将(スポ4=青森・八戸工)
――地元・八戸でのレースでしたが、雰囲気はいかがでしたか
結果を出していかなくてはいけないなという思いがすごくあったので、かなり緊張しましたね。
――調子の方はいかがでしたか
8月中はずっと良くて、落とさないように練習を続けていたので八戸に入ってからも良かったですね。
――バンクの方はいかがでしたか
高校のとき、八戸で風が結構強い試合があったので慣れているっちゃ慣れているんですけど、なるべく吹いて欲しくないなというのはありましたね。
――団体追抜きを振り返って
個々の思うところが違ったのかなっていう。キャプテンとして上手くまとめられなかったなという思いがあります。
――ペースとしてはいかがでしたか
ペースは21秒台でまとめていきたかったんですけど、最初0秒台と早めに入りました。伊藤が戻してくれてそこから良いペースだったんですけど、きつくなってきてペースも遅くなって、ラスト4周でああいうかんじになってしまって…。ペースは練習の設定タイムより遅かったです。
――ポイントレースを振り返って、マークしていた選手はいましたか
マークはしていなかったですね。自分の走りをしようと思っていて、60周くらいまでは結構良いかんじの展開でいけましたね。
――序盤は様子を見ていたというかんじですか
そうですね。あと、できれば逃げ集団には付いていきたいと思っていたので、決まりそうな集団に付いて行き、それが予想通りに展開してラップできたのは良かったです。
――8人になってからはいかがでしたか
みんな一気に降ろされて残り8人になったときにポイント周回毎にペースが上がって、上がったり下がったりの繰り返しで本当にきつくなりました。ペースが下がったときに逃げられる力があれば良かったんですけど、そうもいかず1、2点しか取れなくて、自分の弱さが際立ったところでした。
――6位という結果について
4月に立てた目標が表彰台で、また地元開催だったので表彰台に上りたかったです。ただ、メンバーは強豪ばかり、そしてあのレース展開の中完走できて、入賞で自分自身ポイントが取れたのでそこは良かったかなと思います。
――トラック全体を振り返って
団体種目で点数が取れないというのがすごく大きかったなと思います。メンバー的にもしょうがないなという部分はあったんですけど、少しそこが残念だったなと。チームをキャプテンとして上手くまとめられなかったなと思います。
谷口雄太郎(スポ3=東京・昭和一学園)
――青森に入ってからの調子はいかがでしたか
入る前に風邪を引いてしまって調子は正直最悪でした。入る前日に病院に行って一生懸命治そうとはしたんですけど、入ってからも咳が出て鼻水も出る状態だったのであんまり良くなかったですね。
――このバンクはいかがでしたか
結構タイムの出る走りやすいバンクだなと思っていたんですけど、2日目の団抜きの時は風が強くて少し牙をむかれたというか、大変な思いをしましたね。
――改めて団抜きを振り返って
結果として分解になってしまったんですけど、最初に僕がちぎれてしまったので脚を引っ張ったのは僕なのかなっていう。責任の重さを感じますし、後悔がありますね。あそこで付いていればまだタイムが良かったんじゃないかなと。
――全体的なペースとしては
走る前の設定タイムよりも全然低かったので焦ってしまったというのはありましたね。どんどんペースも落ちていってしまったので。
――チームスプリントはいかがでしたか
走りだしは2番手の手嶋くんに合わせるようにスローペースで入って、かえしは上げきるっていうのを目標で走っていました。走り的には良かったんですけど、僕のちょっとしたミスのせいで失格になってしまいました。頑張ってくれた後ろの2人には申し訳ないかたちになってしまいました。
――1kmタイムトライアルを振り返って
タイムはベストでした。感触もびっくりするくらい良かったです。走っていて初めてたれないなと思いましたね。最後の周も、踏んでないんじゃないかと自分でも思ってしまったくらいなんですけど、出るときはこういう感覚なのかなと思いましたね。
――結果は9位となりました。周りのレベルが上がっているというのもありましたか
昨年から7秒だと厳しい状態になりました。6秒台が欲しかったんですけど、8位がコンマ1秒差ということですごく悔しいなという思いがあります。
伊藤和輝(スポ1=東京・昭和一学園)
――今回のレースを終えて今どんな気持ちですか
初めてのインカレということで、場の雰囲気が中々掴めなかったのですが、その中では良い成績が残せたかなと思います。
――予選の走りを振り返ってみていかがですか
日頃の練習では特に意識したことはないのですが、これまで大会では回転を上げた方が良い成績が出ていたので、今回も回転を意識して臨みました。
――決勝の相手が橋本英也選手に決まった時はどのように思いましたか
自分が決勝に上がったら相手は橋本選手だろうと思っていたので、相手は予想通りでした。決勝のレースに関しては気楽に臨もうと思っていました。
――決勝のレースでは序盤からかなりスピードを上げていましたが、何か狙いがあったのですか
相手が橋本選手ということで、序盤から少しでも優位に立って動揺を与えたいというのがあったのですが、最後はやはり実力の差だったと思います。
――雨の中でのレースについてはいかがですか
雨が降っても風が吹いても相手との条件は変わらないので、特に意識していませんでした。
――ゴールの瞬間はどう感じましたか
2位という結果は良いと思いますが、やはり出場する以上は優勝を狙っていたので、満足感はなかったですね。
――大会に向けてコンディションは万全でしたか
8月の頭に岩手で合宿を行ってからはかなりのハードスケジュールだったので、疲労は少しだけありました。
――今後の目標を聞かせてください
今までの大会ではペース配分を試すような走りをしたことがなかったのですが、今回は相手が橋本選手ということもあり、リラックスしてペース配分を考えた走りができたと思います。その意味で今後につながる走りができたと思うので、この経験を活かして来年のインカレでは優勝を狙いたいと思います。
手嶋将大(スポ1=千葉・国分)
――インカレトラックを振り返って
今回、自分は得点をとるいうのが目標でしたが、タンデムでも1kmでもとれなかったのでかなり残念だと思っています。
――1kmでは自己新でした
はい。ここまでずっとタイムが出ていなかったので、インカレという場所で7秒を出したのは良かったです。それでもインカレで12位なのでまた精進してタイムを上げないと勝てないんだなと実感しました。
――周囲のレベルについてどう思いましたか
ことし個人戦とかを見たり、昔から大学の情報とかも聞いていたのですが、かなり上がっているなと感じます。
――2日目は強風でしたがいかがでしたか
そこはうまく利用しようと思って1kmは挑みました。向かい風の方は回して追い風のときに踏んでスピード乗せようかなという感じで走っていました。
――タンデムはいかがでしたか
練習不足なのか息が合わなかったのか分からないんですけど、思ったよりタイムが出なくて残念な結果になってしまいました。
――次に向けて
ことし前期まだ結果を残せていないので、これから力をつけて勝負できるようになりたいです。
森浩輔(スポ1=神奈川・横浜)
――初のインカレはいかがでしたか
手嶋と話し合って、最低でも入賞8位以内に入ってポイントを1点でも獲得してチームに貢献したいという気持ちがあったのですが、それがかなわず悔しいです。
――いつ頃タンデムに出場すると決まったのですか
1か月半前くらいですかね。
――練習し始めたのはいつですか
練習し始めたのは湾岸クリテリウムの後の紫波合宿です。
――どのくらい練習したのですか
手嶋のチームスプリントの2走とか1kmの練習もありましたので、手嶋との練習の兼ね合いもあったのですが、とりあえず合宿ではメインでやりました。
――手嶋選手とのペアはどうでしたか
今回のインカレでどういうところがいけなかったとか、他のチームの走りを見て自分たちの改善すべきところを見つけることができました。また来年以降機会があるのであれば頑張りたいと思います。
――次に向けて
次は六大戦、早慶戦、新人戦とまだ大会が少し残っていると思います。来年は短距離で強い高校生が入ってくると聞いていますし、来年入学してくる後輩に負けないように短距離の種目でチームに貢献できるように、練習を重ねて頑張っていきたいと思います。
合田祐美子(スポ3=岡山・朝日塾)
――インディヴィデュアル・パーシュートのレースを振り返って
雨というのもあったんですけれど、自分の感覚で出たら、ラップタイムと感覚に差があって、設定タイムよりだいぶ遅めになってしまって…周りからあげろと言われて、焦ってあげた感じになってしまって、結果的に結構タイム差がついてしまいました。
――4位という結果に対しては
一応目標が表彰台だったので、そこはやはり悔しいのひとことになってしまいますね。
――後輩と出場したチーム・スプリントはどうでしたか
正式なチーム競技というのは初めてだったので、自分としてもすごい楽しみでした。出るからにはやはり表彰台にのぼりたいねという話はしていたので、それも4位だったのは悔しいんですけれども、初めてできたので来年につなげられたらと思います。
――やはり雨や風の影響は大きかったですか
強い選手を見ているとそういうのは関係ないんだなと思ったんですけれど、その中でも自分の力を出し切れればよかったかなとは思います。
――あすのロードにむけて意気込みを
トラックが終わって、結果はいまいちだったので、気持ちとして今はまだ悔しい思いでいっぱいなんですが、あしたまだロードが残っているので、気持ちを切り替えて、優勝を目指したいです。
中嶋綺砂(スポ1=三重・暁)
――はじめてのインカレ、ここまで雰囲気はいかがですか
選手みんながこの大会を目指してきていますし、カノヤなど強豪校の方もいらっしゃいますし、良い緊張感が保てています。緊張しすぎることもなく、前向きな緊張感で試合を迎えられたと思います。
――周りのレベルの高さに刺激されている
自分はまだまだなので、少しでも追いつけるように、合田さんにも迷惑をかけないように、早く走れるように頑張ろうという感じです。
――ワセダの女子選手はいま合田選手とお二人です。ワセダに入ったきっかけは
高校2年のときの最後の大会で、ワセダの監督に声を掛けていただいたのが始まりです。大学は行く予定でしたが、自転車は趣味の程度と思っていたんです。でも声を掛けていただいたことで自分でも続けようかなと思って、大学はワセダに来ようと思いました。
――インカレの目標は
3キロに力を入れているので、3キロで自己新を出したかったのですが、出なかったですね。あとはチームスプリントで3位以上を狙いたいというのが目標でした。
――今回の結果を受けて、力を発揮できたところ、逆に発揮できなかったところは
ダメなところばかりなのですが…。3キロで、最初の1周は目標タイムに近いタイムで入れたのですが、2、3周目は意気込みすぎてかなり早いペースで入ってしまって、それで後半持たなくなってしまったというのが今回のダメなところです。チームスプリントも、後半上げるつもりだったのですが、後半も上がらず、合田さんにパスする感じになってしまったことが悔やまれます。
――今後強化していきたいところとしてはスタミナになりますか
スタミナと、あとスピード練習ですね。
――バンクの傾斜がかなりあると聞いたのですが、いかがでしたか
普段は400バンクが多いのですが、今回は333で、傾斜は上の方だとかなりきついですね。でもGWや夏に合宿できついバンクに慣れるようには走れていたのでそんなに気にならなかったです。
――どちらかというとロードよりトラック派でしょうか
そうですね、トラックが好きです。
――あすのロードに向けて目標をお願いします
完走です。かなり登りと下りがあるコースで、自分はロード全然強くないので、完走できるようにということが一番の目標です。