2年生にとって入部後初めての公式戦となる、第21回全日本学生新人競技大会(新人戦)が岐阜県の木曽川滑空場で行われた。早大からは伊藤万貴(教2=東京・早実)と木下啓(基理2=東京・早大学院)の2名が出場した。事前に部内で本番と同じ形式の選考会が行われ、上位となったため選出されたという経緯もあることから、「来られなかった同期の分も背負って」(木下)優勝を狙っていた2年生コンビ。個人では伊藤が優勝、木下が6位入賞と躍動し、さらに団体でも見事優勝。新人戦では早大航空部初となる個人、団体ともに優勝という快挙を成し遂げた。
通常のグライダー競技とは異なり、新人戦では基本的な技術を競う。教官が後ろに同乗し、発航準備から着陸までの流れや、急旋回などの基本操作を採点することによって順位が決まる。そのため、技術の精度以外にも受け答えや態度など教官に与える印象も大事なポイントとなる。落ち着いて飛行していることをアピールするため、「台本を作るなどの工夫を重ねてきた」(木下)というように事前の準備にも力を入れてきた。しかし本番の1週間は天気に苦しむ。雨の予報が続き、滑空場に行くことすらできず合宿所で待機する日も多かった。
全国の航空部員が集まり交流も深まった
「寝る前に明日のことを考えていつも気持ち引き締めていた」という伊藤の言葉にも表れているように、そのような状況でも気持ちは切れなかった。本来の新人戦では3機体を使い、全員が3回ずつ飛ぶことで順位が決まるが、条件が揃う日にちが限られ1発勝負となった今大会。着陸に不安を抱えていたという伊藤も本番ではしっかりと決めきり、慶大選手と同点となる個人優勝を収めた。一方の木下も「ワンツーフィニッシュできなかったのは悔しい」と振り返りながらも、6位入賞で充実感をにじませる。2人の合計得点は、新人戦で絶対王者となっていた慶大を上回り、見事団体優勝を果たした。
多くのトロフィーが授与された木下(左)と伊藤
今大会では、埼玉・妻沼滑空場での合宿練習だけでなく数々のミーティングや座学など、1年半ひたむきに取り組んできた訓練の成果が発揮されたと言えるだろう。しかし、快挙を成し遂げても今回の結果に甘んずる姿はなかった。「あいつ新人戦だけだったなとは言われたくない」と口を揃えて語り、再び全国の頂点に君臨する日を見据える。静かなる闘志が燃えたぎる下級生の活躍にチーム全体が奮起され、今シーズンを覇者として締めくくることができるか。これからも早大航空部から目が離せない。
(記事 村上萌々子、写真 山田流之介)
結果
▽団体
早大151点 1位
▽個人
伊藤 78点 1位
木下 73点 6位
コメント
伊藤万貴(教2=東京・早実)
――今大会に臨むにあたっての意気込みを教えてください
意気込みとしては、ワセダの航空部が訓練を再開してから僕たちが1番初めの代となるので、そういう意味でも1年半近く訓練してきた成果を他大学にも見せつけられるようにと思って、優勝というものに執着してやろうと決めてきました。
――お2人が選出された経緯を教えてください
新人戦にでる学年が2年生以下ということだったので、2年生の中から大会と同じよう採点を行なってその上位2名を選出するという形で行いました。
――どのような点に力を入れて訓練されてきましたか
科目の精度もそうですが、口頭的な言葉を沢山発するので、いかに自分が落ち着いてフライトしているのかをアピールし、後ろに乗っている教官が安心して乗っている気持ちになれるかということを意識していました。自分としては着陸部分のところがいつも行かなくて悩んでいたので、そこを意識してやっていて、結局1発しか飛ばないフライトでしたがそれでしっかり決められたので良かったと思います。
――大会を通した天候面はいかがでしたか
大会通して、予報でもずっとあったように雨や曇りの日が続いて、曇っていても雨が降る予報があるからとランウェイに出ることもできなかったので、気持ちが切れそうになる場面も多かったのですが、限られた発数しかないという気持ちをいつも持って、寝る前に明日のことを考えていつも気持ち引き締めて寝て準備しました。
――結果についてはどのようにお考えですか
今までもワセダとして個人団体両方を1度も優勝したことはなかったので、そういう意味でも取れたことはすごく嬉しいです。競技が不成立になりそうな中、関西地区の方が動いてくれたことで競技が成立し、結果的に自分が1位になったということを感謝しています。
――ご自身のフライトで感じたことは
小野教官からモデルとなるフライト動画をいただいて、それをいつも見ていたのですが、落ち着いて手順通りに行うことと、何かイレギュラーなことが起きても落ち着いて、「自分ならできるんだぞ」と意識させるというのを心掛けていたので、飛んでいる時も基本的に落ち着いて喋りつづけることが出来ました。降りた後に教官から「落ち着いていてよかった」という言葉をいただいて、自分として思っていた通りのフライトができたと思います。
――今大会で得た課題や収穫は
今大会ではグライダーの本質というよりもグライダーの基礎という面の競技会であって、基本操作や着陸の手順だとか、そういうところを競うものであったのですが、これからはいかに滞空できるか、いかに速く周回できるかという部分が中心となってくるので、そこで結果を出せるようにソアリングなどを意識して、今後の課題としてやっていきたいと思います。
――次のステージへの意気込みを教えてください
今年度だけでも、これからまだ関東大会や全国大会、早慶戦とあって、部員総力戦という中で、自分も早稲田の一員として先輩達に貢献できるように頑張っていきたいっていうのと、自分が選手として出るようになったときに、「新人戦だけだったな」と言われないように、「あいつグライダー自体うまいな」と言われるようなパイロットになれるように同期と切磋琢磨して頑張っていきたいです。
木下啓(基理2=東京・早大学院)
――今大会に臨むにあたっての意気込みを教えてください<
伊藤が言ったのもそうなのですが、来られなかった同期もいますのでその分も背負って、優勝を狙っていました。過去に個人と団体両方をとったことはないので、特にそこは2人で狙っていこうと決めて挑みました。
――どのような点に力を入れて訓練されてきましたか
フライトの技量だけではなくて、いかに落ち着いて飛んでいるかをアピールするための会話や言葉を意識していて、例えば台本を作るなどの工夫を重ねてきました。技量に関しては伊藤と同じで、特に着陸は点数配分も多いので意識しました。
――大会を通した天候面はいかがでしたか
多分1発しかないということは1週間の天気を見て分かっていたので、その1発に全てかけられるように夜からしっかりイメージして就寝していました。
――結果についてはどのようにお考えですか
ワンツーフィニッシュできなかったということが1番悔しいのですが、動機や先輩、後輩も応援しにきてくれてこのような結果が出せたのは自分としても良かったなと思っています。
――ご自身のフライトで感じたことは
自分の中でミスはあったのですが、しっかり会話で落ち着いていることをアピールして、なんとか個人でぎりぎり6位に収めることができました。しかし、課題が見つかったフライトでもあったので、今後も油断せず訓練に励んでいきたいと思います。
――今大会で得た課題や収穫は
新人戦の競技自体が自家用の操縦士のライセンスを取るために必要な知識や技量を試される大会だったので、今回上空で見つかった課題をしっかり潰して、まずはライセンスをとれるように頑張りたいです。
――次のステージへの意気込みを教えてください
今回は自分が選手として出たのですが、直近の試合ではサポートする側に回るので、早稲田としてチーム全体が全国や早慶で勝てるようにサポートしていきたいと感じました。自分が選手となってからは、やはり伊藤が言ったように、「新人戦だけだったな」と言われないように、後輩に胸張って飛べるように頑張っていきたいです。