全国の大学から2年生以下のパイロット各2名が岐阜県・木曽川滑空場に集結し、覇を競う大会。それが全日本学生新人競技大会だ。他の大会では上級生がエントリーするのが通例なため、普段は試合に出ない下級生にとってはまたとないチャンスである。その出場権を勝ち取り早大から出場したのは、白土和希(基理2=神奈川・サレジオ学院)と山本拓磨(法2=東京・早大学院)の二名。今大会ではどの大学も実力伯仲し、個人では白土は211.0点、山本は224.0点をマークし、合計435.0点で全体5位という結果に。団体ではなんとか表彰圏内に入ったものの、個人では表彰圏を逃すもの足りない結果となった。
「もちろん満足はしてない」。白土は自身の14位という順位に対してこうコメントした。スコアが落ち込んだのは競技初日。天候の変化による後ろからの強風と、普段乗り慣れていない機体でのフライトで、速度の調整に乱れが出てしまう。「技量を発揮するための判断力とか修正力が足りなかった」(白土)と悔しさをにじませた。悪い雰囲気を引きずらないように気持ちを切り替えた2日目、および3日目はその遅れを取り戻すために奮闘する。機体ごとの最適な着陸の角度を把握し、綺麗な着地に成功。しかし初日の遅れを取り戻すには至らなかった。3回しか飛ぶチャンスがない今大会では一度のミスが命取りとなる。それをひしひしと体感した、白土にとっては悔いの残る結果となった。
賞状を受け取る山本(左)、白土
一方の山本は、個人としては全体で7位。去年起きた事故の影響で、半年間活動を停止していた割には高い順位に食い込むことに成功した。今大会の採点対象の中で大きく差がつくポイントであるグライダーの離着陸がうまくいったことが、その要因となっている。山本はこの大会の直前までこの離着陸が安定せずに、課題として取り組んでいたという。それが本番ではうまくまとまったことに対して、「何か不思議な力が働いたんですかね」(山本)とおどけた様子で喜んだ。また、今大会で多くの他大の学生と交流を深めたことにより、受けた刺激は大きかったようだ。「成長の糧にできた」(山本)と振り返ったように、結果以上のものを得て岐阜の地を去ることとなった。
団体5位入賞に輝いた
上級生が出場する大会とは一風変わった新鮮さがあった今大会。今回活躍した他大の選手たちは、今後白土、山本両名が上級生となった時にも好敵手として立ちふさがるだろう。「この経験を生かして精進していきたい」と白土が意気込んだように、今回の団体5位という結果に満足せず、来年以降彼らに雪辱を果たすべく修練を積むことが今後の課題になりそうだ。早大の若い力の更なる『飛躍』に期待がかかる。
(記事 坂巻晃乃介、写真 冨田千瑛、下長根沙羅)
コメント
白土和希(基理2=神奈川・サレジオ学院)
――今大会のフライトを振り返っていかがですか
関宿フライトがあって、初日は晴れてたから一日中飛ばしていました。午後から競技フライトが始まって、選手それぞれが3機に1発ずつ乗るんですけど、1発目が競技フライトが行われた初日に回ってきて、番手的にグループの中で最後でした。進めていく中で風が強くなって撤収になったんですけど、(自分は)風が強くなるギリギリで飛んで、今振り返ってみるとそれが悪かったなと思います。
――悪かった点を具体的に教えてください
まずいつも乗り慣れている機体じゃないものが1発目で、気象条件がいつもは前からくる風で飛ぶんですけど、この日は後ろからの風が強くなってる状況で飛んで、いつもと違うフライトになってしまった。フライトは、機体に慣れてなかったことで速度が合わなくなって、慌てて色々後手に回ったかなと思います。その日は悪いフライトをしてしまったので精神的に苦しくて、でも切り替えるしかなかったので。ベストを尽くそうと思って次の日に挑んで、回ってきた2発目はいつも乗ってる機体だったので落ち着いてできたかな。最後3発目は、今までのフライトでの反省点を生かしてまとめられたと思います。
――反省点というのは具体的にはなんですか
着陸の時はどの角度で入るかっていうのがあるんですけど、機体によって違うんですけど、適切な角度が自分の中で分かってきて、それが一番綺麗な着陸につながったかな。あとは、飛ぶにつれて慣れてきて、上空で落ち着いてコントロールできました。
――今の順位には満足されていますか
もちろん満足はしてないね。正直、1年前から準備してたし、意識して取り組んでました。1年前がすごく成績悪くて。2年前は成績が良くて、ワセダとして色々結果を残してるから、それを絶対取り返してやるぞという気持ちと、あとワセダの航空部が少し止まっていた時期があって、全国大会に出られなくて結果を残していないし、ワセダの航空部が復活したぞというのを結果で表すことができたらなと思ってました。その大会をきっかけに部員全員のモチベーションが上がればなと思って取り組んできたんですけど、それを体現できなくてすごく申し訳ないというか満足していないです。
――振るわなかった要因はなんでしょうか
技量的にはそれぞれそんなに変わらなかったと思うんですよね。でも上空での技量を発揮するための判断力とか修正力が足りなかったのかな。それはここにくる前までに気づけていなかったところで、劣っていたことに気づけなかったから練習しておけば良かったなと思います。
――今回のフライトで一番良かったところはどこですか
悪かった1発目を少しずつ改善して、最後点数を上げてこられたのは良かったと思います。引きずらず切り替えられたのは良かったなと思います。
――今後に向けて一言お願いします
航空部に入って最初の大会が新人戦だったからそれに向かって走ってきたけど、4年間の中では一部分の内容になると思うので、これから全国に出る中で、早慶戦に出る4年生になったら、この経験を生かして、大会に出た人しか分からないこともあると思うので、精進していきたいです。ワセダとして結果を残すためにも、この経験を後世に伝えていく義務があるかなと思います。
山本拓磨(法2=東京・早大学院)
――大会全体を振り返っていかがでしたか
自分としては結果には満足しています。というのも、他の選手に比べて半年間ブランクがあった中でここまでこれたのはよかったなと思います。
――自分のフライトでここは上手くいったな、と思うところはありましたか
新人戦では、離着陸をメインに見られるのですが、これまで着陸があまり上手くいっていなくて。ですが、大会では全て上手くいったので、そこはよかった点だと思います。直前の強化合宿でも全然上手くいかなくて、現地入りしてから急に上手くできるようになって、何か不思議な力が働いたんですかね。
――今回の目標にしていたことはありますか
目標は、6位までが入賞なので目指していたのですが、個人はギリギリ7位ということで、それはクリアできなくて。結果自体には満足しているのですが、もうちょっと上を目指せたかなという思いがあります。
――今回の大会は離着陸のみ見られているのでしょうか
いえ、離着陸と上空で2つ課目をやるのですが。課目に関してはあまり差がつかないと言われているので、だいたい離着陸で差が出るのかなと思います。
――ここはもう少しできたのでは、と思ったところはありましたか
いつもと使用している機体が違っていて、操縦の特性も違うので、それに上手く対応できたのはまず1つよかった点としてあって。もう少し伸ばせるなと思ったのは、機体での離着陸が普段の機体なら上手くできていたところが、やっぱり特性も違うのでできなかったりして。そこはもう少し伸ばせたのではないかなと思っています。
――会場がいつも練習されている場所とは違いましたがいかがでしたか
乗っている感覚もけっこう違いましたね。見える景色が違うので。僕はまだグライダー乗りはじめて一年半くらいなので、まだ下の景色に頼って操縦しているところもあるので。違うところに来て、景色も違うところなので、はじめは戸惑いもありました。その対策は1ヶ月程前からしていて、地図を見たりして自分なりにイメージはしていたので。なので、新鮮さはあったのですが、イメージ通りで対応はできていたと思います。
――今大会ではいつもの大会以上にたくさんの、色々な地域の学生と交流が多かったと思うのですが
そうですね。大学ごとに全然違うなと思いました。普段やってる練習の仕方とか。いい面も悪い面もうちにはあるので、それを実感できましたね。あと、他の選手は半年進んでいるので、はっきり言って自分より上手い選手が多いので、その人達から色々と話も聞けたので成長の糧にはできたかなと思います。
――最後に、今後の目標をお聞かせください
来年の9月から六大戦が妻沼ではじまって、そこから関東、全国とあるので。なんとしてもそこまでにはライセンスをとって、選手登録されて。今大会では自分より上の順位だった選手を、今度妻沼に帰って一緒に戦って勝てたらいいなと思います。そこを目標に一年、頑張っていけたらいいなと思います。