創部史上初となる3連覇をかけて挑んだ早慶対抗競技会(早慶戦)。開幕の2日前まで行われていた全日本学生選手権(全国大会)では優勝が慶大、2位が早大と両校が上位に入り、早慶戦は両校の威信をかけた熱戦となった。大会は序盤から慶大にリードを許す展開に。後半は天候不良にも阻まれ、苦しい戦いが続いた。挽回を期した最終日も浦西雄哉(政経3=東京・海城)があと一歩で周回達成というところまで迫ったが、及ばなかった。4年生にとっては引退試合となったこの大会。その花道を勝利で飾ることはできなかった。
得点が動き始めたのは3日目。浦西が周回を決めると、小長谷礼美(基理4=渋谷教育渋谷)も続く。長時間のフライトになったが、粘って周回を達成した。小長谷にとって早慶戦のコースになっている五角周回したのは、これが初めてのこと。「4年間やってきたことが出せた」(小長谷)と集大成となる大会で成果を発揮した。翌日には櫻井隼仁(法4=埼玉・西武台)がデイリートップとなる1000点を獲得。1番手を任された4年生が前日の判断ミスから切り替え、意地を見せる。この時点で慶大との差は600点あまりと、逆転可能な点差で4日目を終えた。
戦いに挑むWW
しかし大会後半は伸び悩む。5日目以降は天候不良により両校無得点が続き、最終日を迎えた。後がない早大はWPの二番手である浦西が旋回点を3つクリアする。得点の期待も高まったが、高度が足りずに周回を達成することができなかった。そして迎えた最終発航。「最後まで飛んで勝負をあきらめない」(田中努、先理4=広島・修道)と劣勢でも逆転だけを信じ、挑み続けた。その思いはクルーも同じだ。「俺たちがあきらめてどうする」、「絶対に周回してくれる」。地上からの声援が途切れることはなかった。逆転は叶わなかったが、最後まで気持ちを切らさずに戦い終えた。
紺碧の空を歌い、選手を空に送り出すクルー
今大会は例年に比べ条件が出ず、わずかなチャンスを得点につながられるかが勝敗を左右した。これで全国大会に続き慶大に敗れ、またも苦汁をなめさせられる結果に。それでも昨年末の関東学生競技会の苦い結果から立て直し、実力は学生グライダー界でトップクラスであることを証明した。確かにこの大会は、結果だけを見れば敗者だ。だが、勝利だけを見据えフライトに臨んだ選手たち。そして仲間を信じ、声を枯らしたクルー。「絶対に来年は勝ってほしい」(小長谷)。チーム一体となって戦い抜いたその姿勢は、必ず未来の糧になる。
(記事 石川諒、写真 石川諒・冨田千瑛)
大会閉会後の早慶両校の4年生
機体に集まる4年生たち
結果
▽団体
早稲田 2210点 2位
▽個人
櫻井隼仁 1000点 2位
浦西雄哉 866点 3位 ※上位入賞者のみ掲載
コメント
小長谷礼美(基理4=東京・渋谷教育渋谷)
――大会全体を振り返っていかかでしたか
私としては、慶應の実力は認めるとしても、このチームで負けたってことが納得いってないっていうのが正直で。天気を相手にするスポーツなんで、(条件が)あるときにやるべきことをやるっていう、しないと勝てないんですけど。正直言って私が今まで四年間やってきた中では一番いいチームだったと思うので、それで勝てなかったっていうのはすごく悔しいです。
――大会中のチームの雰囲気は
よかった。最終日につれてまとまりが良くなっていくのを感じて。特に2年生とか3年生の中でもリーダー核の人が出てみんなをまとめてくっていうのを見て、来年もこうしてくれればいいチームが出きるなって意味で安心しました。
――ご自身のフライトは
私は早慶戦のコースっていうのが実は一度も一人で回ったことがなくて、その状態で早慶戦に挑んで、しかも二番手だったんですけど。チャンスがあったとき、田中が疲れたときとか得点した時は控えの選手として出るという役割たったんですが。実質競技初日の時、田中がなかなか回ってこれなくてわたしが行って、すごく時間はかかったんですが、曇りの日で、はじめて自分で回れたっていうのがあって。私自身のフライトとしては、四年間で学んできたことが生かせたかなって思います。
――五角周回は難しいのですか
回りにくいのもそうなんですが、すごくコースが広くて、そのときの状況状況に合わせながらもどって上げたりとか、他の人のいるところに寄せてからまた戻るとか、すごい広いコースの中で判断がすごくたくさん求められる選択肢が多い。っていうのが早慶戦のタスクなんです。全国大会とか六大戦(東京六大学対抗競技会)に比べるとそういうところがすごく難しい。あとエリアも全然違うところを飛んでるので。一番離れてるとこでも15キロくらいしか変わらないけど、空の状況とかその15キロだけで全然違うので、そういう意味では早慶戦のタスクはレベルが高いです。
――ルール面でも少し苦しんだということですか
ルールはむしろ早慶戦のほうが全国とかよりやりやすくて。安全高度がほとんど存在しないので、そういう意味では飛びやすいというのは確かです。ただ難しいというだけで。
――結果を受けてのお気持ちを
悔しい。私とくに今日は飛んでなくて昨日もずっと田中が飛んでたんですけど。田中の実力だったらもっと早く回ってこれる日があったんですけど、うちにはもっとチャンスがあったんじゃないかと。ただ天候が悪いとは言え、うちのスポーツっていうのは天候が悪いなりの飛びかたも可能だし、その中でも得点しないといけないし。そういうトレーニングをもっと早くから固定化してやればよかったんじゃないかなと思います。結果はもっと残せたはずなのにっていうフラストレーションがあります。
――後輩へのメッセージを
結局全国大会も早慶戦も勝てなかったので、そういう意味では今の3年生は絶対来年勝ってほしい。私たちの戦った様子とか下級生は覚えててくれれば、それを越えるような戦いを彼らがしてくれればと思ってるし、私も卒部したら力になれるようには精一杯サポートできるようにはします。
田中努(先理4=広島・修道)
――今の率直なお気持ちをお聞かせください
悔しいです。
――今大会全体を振り返っていかがですか
一番に思い浮かんでしまうのが、自分のフライトのダメだった部分と相手に負けた部分です。最初の競技日で慶應23の1番手に粘り負けをして、その次の日にタイムでは勝ったんですけど、旋回点クリアミスということで0点になってしまいました。自分がそういう部分で得点を挙げることができていれば、逆転できたかもしれないですし、いまだに悔しい気持ちがあります。
――1番手ということで周囲からの期待も大きかったと思いますが
1番手として飛ぶことに対してプレッシャーはなかったです。全国大会(全日本学生選手権)を経て自信もついたので、とにかく自分が得点するぞという気持ちで飛びました。
――条件に恵まれない大会でしたが
天候の影響と言っても向こう(慶大)と同条件で飛ぶわけですから、その中で技量という面で勝たなければなりません。そういう意味では慶大に一歩及ばなかったという部分があります。
――勝敗を分けたのは何でしょうか
長期間に渡る戦いなので「あそこでああしてれば」というのはいくつもあるんですけど、やはり自分が最初の競技日に粘り負けせずに得点を挙げていれば、チームの流れも変わったかもしれないですし、周りも活気づいて良い流れで選手も飛べたと思います。色んな部分で積み重ねというのがあるんですけど、こうすれば良かったなというのがあります。
――自身最後のフライトの際はどのような心境でしたか
何がなんでも旋回点に行くという気持ちで飛んでたんですけど、ちょっと考えてしまったのがきょねんの慶大の1番手の選手のことです。最後まで一人で飛んで浮いていて、なぜかわからないですけどすごく格好良く見えて、自分もあのように最後まで飛んで勝負をあきらめずに臨んでいきたいなと思いました。なので誰よりも長く浮いて、誰よりも旋回点に行くということだけを考えて飛んでいました。
――今大会で引退となりますが航空部の4年間はいかがでしたか
楽しかったです。
――同期にかけたい言葉はありますか
1番手で飛んでたわけですけど素直にありがとうと言いたいです。「支えてくれてありがとう」と言いたいです。
――後輩に向けてメッセージをお願いします
来年は全国も早慶戦も、慶大を倒して優勝してほしいと思います。
坂田真衣子(基理4=愛知・時習館)
――今の率直なお気持ちをお聞かせください
今回はフライトの内容では勝っていたと思うので、それが得点につながらずに負けてしまったというのがすごく悔しいです。
――今大会全体を振り返っていかがですか
負けたのはすごく悔しかったんですけど、一番良かったと思うのは1年生から4年生まで全員が同じ気持ちで大会に臨めたことだと思います。
――自身のフライトはいかがでしたか
私は3番手だったので条件の良い時間帯というわけではなかったんですけど、その中でも4年間最後のフライトなので、何とか周回しようと思って飛び続けることができました。
――条件に恵まれない大会でしたが
慶大は1番手、2番手が強くて少数精鋭という感じなんですけど、早大は全員がある程度の実力を持っていて数で攻めるという戦い方をしていました。なので条件が良い日が続けば絶対に早大が有利だと思ってたんですけど、条件が渋い中でも1番手、2番手が頑張って周回してきて善戦することができたと思います。
――今大会で引退となりますが航空部での4年間はいかがでしたか
これからもグライダーは続けていこうと思っているんですけど、やはり部活でしかできないことがたくさんあったので、すごく良い経験ができたと思います。
――同期にかけたい言葉はありますか
4年間ありがとうと言いたいです。
――後輩に向けてメッセージをお願いします
今の代は仲が良いと思うので、個人個人が頑張ってうまくまとまれば、すごく大きな力になると思います。来年は優勝してほしいです。
櫻井隼仁(法4=埼玉・西武台)
――今大会全体を振り返っていかがですか
例年の早慶戦だと条件がすごい出るんですけど、今大会はずっと雨でまともに競技できる日が3日くらいしかありませんでした。それでチャンスが少ない中で僕は1番手で飛んだんですけど、そのチャンスを生かしきれなかったかなという感じです。初日も一瞬雲が割れて条件が出た時に、慶大の1番手はすぐに条件があるところに行ったんですけど、僕は判断ミスをして回れなくて、結局2番手に渡しました。その一周の差が最終日まで響いたと思います。
――自身のフライトは振り返っていかがでしたか
その回れなかった日の次の日に反省して回ったんですけど、そのフライトに関しては絶対に離されるわけにはいかなかったので、1番手でもありますし4年間やってきた意地がありました。1000点を取ろうという気持ちで飛んで、結果がついてきたので良かったです。
――条件に恵まれない大会でしたが
初日に差がついてしまったので、はやる気持ちはあったんですけど、部の中は明るい雰囲気でリラックスできていました。選手の中で準備をして、落ち着いてフライトはできたので良かったです。
――勝敗を分けたのは何でしょうか
初日にウイスキーパパの1番手の僕が回れなかったことだと思っています。800点差というのは一周差なんですけど、同じタイミングで回っていれば点差はほぼなくなるので、その日に800点とか取れていれば僅差ですけど早大が勝てていたと思います。
――今大会で引退となりますが航空部での4年間はいかがでしたか
活動が制限されていた時間が結構あって4年間フルに活動できたわけじゃないですけど、やはり同期や先輩、後輩に恵まれて早慶戦終わった今は、やっていて良かったなと思います。
――同期にかけたい言葉はありますか
僕は結構不真面目なんですけど、それでも支えてくれてありがとうと言いたいです。
――後輩に向けてメッセージをお願いします
今大会2番手の浦西(雄哉、政経3=東京・海城)が来年ウイスキーパパの1番手で乗ると思うので、絶対最優秀選手賞と団体優勝を取ってほしいと思います。あと、とにかく全力でやって悔いの残らないようにしてほしいです。
明妻祐也(教3=市立千葉)
――大会全体を振り返っていかかでしたか
大会前にも言ったんですけど、この大会のためにやってきたんで、正直言って負けてしまったことに関してはめちゃめちゃ悔しくて、自分たちにもっと出来たんじゃないかってことがもちろんあるわけで、4年生はそれに向かって4年間最善を尽くしてきたからこそ、こうやって本気で悔しがってるし。自分たちももちろんそうなんですけど、もうすこし出来たとは言わないけど、悔しかった大会だと思いました。それまでの大会ではけっこう負けてしまっていたけど、全国大会であれだけぶり返すことが出来て。早慶戦でも絶対勝ってやろうって思ってたけど、出来なかったことに関してはとても残念に思います。
――今回の大会でのご自身の役割について思うことは
主将としてのみんなを引っ張っていくっていうのはもちろんそうだと思うんですけど、自分としては自分自身が声出して引っ張っていくっていうのは今回出来なくて、出来なかったっていうか他にもっと出来る人がいて、そういう人に支えてもらったというか、一人じゃなくてみんなで盛り上げて戦うことが出来たなって。特に4年生と3年生、2年生もそうだけど、一人の役割としては、みんなを動かすことに専念した大会でした。それがいいわけじゃなくて、自分一人で計画立ててみんなを引っ張っていくっていうのもいいんだけど。それぞれ役割があって、選手を盛り立てて、出来たらよかったなって思います。
――最上級生になるにあたって意気込みを
残り一年切ったということで、「あ、このためにやってるんだ」って競技やりながらほんとにつくづく思って。ほんとに来年の今の瞬間で勝った負けたで相手を表して、やり切ったって思いが持てるように、そんな大会に来年出来るように全力で取り組んでいきます。
土居原悠史(人科3=東京・高輪)
――大会全体を振り返っていかかでしたか
雰囲気はけっこうよかったと思います。結果的にポイントできたのが二日目で、雨だったり色々あって得点できたのは二日間だけで、ずっとビハインドの状態で試合を進めなきゃいけなかったんですけど。それでも最後まで逆転するっていう気持ちはみんなあったと思うので、その点チームの雰囲気はよかったと思います。なんで、やっぱり気象とか色んな所で悔しい負け方をしたなっていう思いがあります。
――気象面での影響が大きかったということですか
そうですね、なかなか自分達の土俵で戦えなかったっていうイメージです。
――結果を受けての率直なお気持ち
率直な気持ちはとても悔しい。もう少し四年生の力になれればと思ってやってはいたんですけれども。結局得点に絡むようなフライトもしませんでしたし。頼りっきりになってしまったのがすごい悔しいなって思います。
――主務として審判もされてましたが、審判的な面から見た大会は
選手のみんなも凄く誠意をもってというか、慶應の選手もみんなフェアにやろうって意思はすごく感じたので。早慶戦という競技として、すごく進歩できた大会になったんじゃないかと思う反面。やっぱりもう少し早稲田に有利に進められたかなっていう。色々な葛藤みたいなのはあります。
――最上級生になるにあたっての意気込みを
もういちど慶應にリベンジしたい。この一言に尽きます。
浦西雄哉(政経3=東京・海城)
――大会全体を振り返っていかかでしたか
チームの雰囲気は全国が2位だったということもあってよかった、団体1位だった慶應を倒そうということでみんな同じ方向向いてたのでとてもよかったと思います。全体振り返ると早慶戦はいつもこの時期にやる理由はとても晴れ間が多くて、上昇気流もいっぱいあって試合になるからやるんですけど、普段よりはちょっと天気が悪いなって感じはしました。
――気象面での影響は大きかったのでしょうか
慶應は何十人部員がいようが、一人か二人しか育てないんですけど。どんどん絞っていくんで。早稲田は大会出れる人はまんべんなく育てるんで。長く上昇気流がないと、早稲田の強みが生かせないんで、天気が悪くなると難しい試合になる。
――結果を受けて
率直に言って、とても悔しいです。今日も僕が飛んだタイミングで四つある旋回点のうち3つクリアしてて、あと一個だけだったんですけど、高度が足りなくなってしまって。もしそれを回ってれば、今日周回者いなかったので1000点とれて逆転勝利で、早稲田の優勝で勝つことが出来たのですが。今日のフライトで結果が全部ひっくり返るってことで、結局そこで自分が全力を出せなかったってことがとても悔しかったです。
――得点に絡んでますがご自身のフライトを振り返って
私は二番手だったんですけれども、慶應の一番手は個人で最優秀だった人が当たって、その次の人が飛んでたんですけど、その人も三年生でその三年生には絶対負けないぞって気持ちで飛びました。結果としては、タイムとしてはいい結果が出たので、点数では早慶としては三番目で、欲を言えば今日決めれば最優秀が決めれたので、そういう意味ではすごく悔しいです。
――最上級生になるにあたって意気込みを
六大、関東、全国、早慶と四つあるんですけど、その四つで全部優勝狙っていく気持ちで頑張りたいと思います。