【連載】『栄光はみどりの風に』 第1回 小長谷礼美×田中努×山田ゆり

航空

 悔しさの残った関東学生競技会(関東大会)からおよそ2か月。全日本学生選手権(全国大会)に挑むのは小長谷礼美(基理4=東京・渋谷教育渋谷)、田中努(先理4=広島・修道)、そして山田ゆり(文講3=千葉・日出学園)だ。全国大会、早慶対抗競技会(早慶戦)と続く長丁場の戦いを控える3人の胸中に迫った。

※この取材は2月26日に行われたものです。

成長を感じ全国大会、早慶戦へ

左から山田、小長谷、田中

――今季のチームの振り返りをお願いします

山田 今季は六大戦(東京六大学対抗競技会)においても関東大会においても、早大としてそんなに良い結果が残せなくて、でもその挫折というか何が足りないんだろうということをチームとして3、4年生で考えて実践してきました。それが全国大会前の合宿でもチームとしての成長を感じていて全国大会、早慶戦では勝てるようなチーム作りをしてきたと思うので、最後まで頑張るだけです。

小長谷 特に夏以降に関しては幹部が代交代をして3年生に部の運営の主導権が移ったりとか、1年生がだんだん部に慣れてきて動けるようになってきていて、チームとしてはそういう面では成長ができたと思っています。簡単に言うとチームが1月以降のこの3か月間はすごくまとまりができてきたと思っていて、それは最近の合宿を見ていてもみんな感じていることだと思っています。ただ、それと共にチームの全員の上級生がそれぞれのやるべきことをやった上でフライトに集中をできる環境が整ってきたということも言えると思うので、チームとしても選手の実力としてもまとめの時期にやっと入れたという感じです。

田中 チームとしては9月の六大戦では旧4年生がいなくなってからリーダーシップやフライト面で引っ張っていくことができていなくて、3年生を含めてふがいない思いをさせてしまったというのがありました。そこから代交代やクルーの成長などがあって今は特に4年生はフライトに集中できている時期なので、だんだん良い方向に各個人が手ごたえをつかんできていると思います。なので全国、早慶でその力をちゃんと発揮できるような環境をつくって臨むことができれば、おのずと結果はついてくると思っています。

――個人としてはいかがでしたか

山田 私個人としては、春先はあまりフライトが上手くいっていなくて滞空もできずに周回もできないという感じだったんですけど、夏の関宿合宿あたりで泊まって飛ぶ時間があって、そこで滞空する感覚をつかんで六大戦で1ポイントできたというのが自分としては成長を感じました。そこからまた色々な分析をしたり勉強を続けていって、だんだんと周回できるような実力がついてきて考えてフライトをすることができるようになってきたので、一年通しての成長は個人としては感じています。

小長谷 自分は特に六大戦以降あたりから今の3年生に色々運営の主導権の引継ぎをやってきていて、最初のころはみんなあまりついてこれてなくて結構つきっきりじゃないと部の運営が疎かになる状態だったので、自分のフライトにはそれまでは集中できていなかったです。ですが3年生が最近やっとみんなで協力してチームを運営していくという力がついてきていて、おかげで自分も年が明けてからは自分のフライトの密度が今までよりは格段に高くなって、かなり集中して飛ぶことができる時間が続きました。その結果自分でも最近自信を持ってフライトができるようになってきていて、至らないところもまだまだありますが全員の見本になるようなフライトを、という心構えで挑めるようにはなりました。

田中 個人の成長という面では気持ち、メンタル面が大きいと思っています。3年生の時から大会に出させてもらっているんですけど、やはり先輩の下で飛ぶのと4年生で後輩を引っ張って飛ぶのでは全然気持ちの面でうまくいきませんでした。六大戦ではメンタル的に落ち込んだりして、一週間ある大会なのでそこで崩れてしまうとなかなか取り返しがつかなくなってしまいます。ですが最近の合宿ではある程度以前よりはそういうものにも慣れてきて、プレッシャーだとか周囲の期待につぶされないような気持ちを持つことを常に考えています。関東でもプレッシャーに負けたというのがあったので全国、早慶と本番でどうなるかはわからないですが、最後の大会はちゃんと締めくくりたいと思っています。

――大会が近付いていますがチームの雰囲気はいかがですか

山田 先ほども小長谷先輩がおっしゃっていたんですけど、1月以降の合宿では雰囲気がだいぶ良くなってきていて、大会に向けてという面ではまとまりを感じるので全国大会、早慶戦と良い雰囲気でやっていけるのではないかと思っています。

小長谷 雰囲気はとても良いと思っていて特に下級生、1年生では元気のある子がとても多くて、全員が自分の役割を持って部を盛り上げていくということが1年生から4年生を通してとても上手な人が多いと思います。全員がフライトに貪欲だということもありますし、大会に勝つという意味ではみんなが向かっていける環境が今は整っていると思います。

田中 最近長期合宿があったというのも大きいと思うんですけど、やはりみんなが一緒にいる時間がすごい長くてそれを含めて下級生も成果が出始めていて、自分の目標に向かってフライトをしている子が多いです。全体としてはすごい明るい雰囲気で訓練ができているような印象があります。

――先日までの合宿で重点を置いて取り組んだことはありますか

山田 全国大会、早慶戦前最後の合宿ということでフライトに関してはまず粘る練習から始めました。飛んで(すぐに)降りないということを考えて粘った結果上手くいったフライトというのが結構あって、全国大会においては回ってくる発数というのが少ないので、まずは降りないということが大事だと思ってそこを意識して飛びました。

小長谷 私も山田とかぶるところがあり、大会を想定した考え方で飛んでいて飛んだら降りないということもそうなんですけど、大会で減点をされないような飛び方とチャンスを逃さない飛び方をかなり意識しました。選手が交代で飛んでいく中で、大会のように前のパイロットから引き継ぎを受けて情報をとにかくたくさん集めてから自分で選択をして飛ぶようにしました。その選択が良かったか悪かったかということを自分の中であとでよく吟味して、それが良かったこともあれば「こうすればよかった」という反省点もかなり多くあって、一つ一つ検証していくということが自分の成長にもつながったかなと思います。あと意識したのは空の情報をよく観察するということで、先ほど言ったようにフライトに集中する環境が今合宿では整ったので、それを生かして今までよりは格段に空を見て飛ぶ時間が長くなったので、それを意識して飛べました。

田中 今合宿は特に全国大会と早慶戦のルールを想定して飛びました。飛ぶことが多かったので、ちょっと上昇気流が出来始めで弱い時間帯でもなるべく降りないように粘って条件が良くなるのも待つことを意識して飛びました。

――全国大会の選手選考はどのように行われましたか

小長谷 選考は関東大会に出ている選手から選ぶというのが大前提で、選考の締め切りが1月の中旬だったので関東出た選手の中から特に1月の合宿の結果を見て選考したと思います。

――選手に選ばれた時はどのような心境でしたか

山田 私自身は1月の長期合宿であまり大きな成果が残せなくて、他の3年生も結構実力がついてきていたので「私で大丈夫かな」と思ったんですけど、関東大会の時から全国には出たいと思っていたので、みんなの代表として頑張ろうという気持ちで選手に選ばれたときに快く承諾しました。

小長谷 自分はこの三人の中では一人だけ関東の時は違うチームとして出ていて、そのチームは残念ながら関東で敗退をしてしまいました。特に自分は関東大会の時はほとんど勝負となる時には飛んでいなくて、それもあって大会が終わった後はかなり落ち込んでいる状態だったんですけど、1月の合宿に入る前には切り替えてこれからあと2か月間は全国に出るにしても出ないにしてもとにかく自分が成長していくだけという気持ちで挑んだ結果、今までよりは良いフライトができるようになってきました。結果、選手として選ばれたときはうれしいという気持ちよりも、圧倒的に出れない選手が多い中で「やらなくては」と今まで以上に気合の入った気持ちになってこの一か月間は過ごしてきました。

田中 「このチームで勝つぞ」という気持ちで決心を固めただけです。

――全国大会、早慶戦と2つの大会が連続することで調整の難しさはありますか

山田 全国大会と早慶戦の間は休みがなくて半日ちょっと家に帰れるくらいのものしかないので、全国大会で頑張りすぎて早慶戦に響くということがないように毎日全力でやるんですけど、ちゃんと栄養を摂ったりだとか自分の体のケアをして妻沼で二週間過ごせるような過ごし方をしたいと思っています。

小長谷 自分もこれから二週間毎日飛び続けるということを考えると、体力面や精神面は宿舎での過ごし方とか食事とかちゃんと睡眠がとれているかとか、あとは仲間とのコミュニケーションという面で補っていきたいと思います。調整というか基本的にルールが結構違いますが、周回するという意味ではあまり練習の仕方は変わらないと思っているので、全国大会でも早慶戦につなげていけるような飛び方をしたいと思います。

田中 一番きついのは1か月弱妻沼にいることになるので、第一に体調管理。早慶戦前にインフルエンザにかかっちゃったり風邪をひいちゃったりということをすると他の選手にも響きますし、それだけで飛ぶ順番とかも変わりますし風邪だけはひかないというのが第一です。第二はルールの違いと大会の形式の違いと言いますか、全国大会は選手が少人数で色んな機体と混じってやるのですが、早慶戦はもう総力戦で早慶の全部員が集まってガチンコバトルみたいな感じになるので、そこで気持ちの切り替えをしっかりすること。早慶戦の方が全国大会よりはおそらく時間もなくて余裕もなくてピリピリとした大会になると思うので、それに適応できるような姿勢で臨みたいと思います。

――田中さんは昨年も全国大会、早慶戦共に経験されていますが他の二人にアドバイスはありますか

田中 きょねんは宿舎で関西勢の方がすごいインフルエンザにかかっちゃって、慶大も1チームインフルエンザでつぶれてしまいました。そういうことがあったくらい風邪というのは怖いもので免疫が弱くなくてもすぐにかかっちゃうので、そこだけは気を付けてほしいなという感じです。メンタル面では他の人としゃべって絶対一人では考え込んだりしないことが重要だと思います。

――全国大会で重要になることは何でしょうか

山田 全国大会は機体数が多いということで、情報戦というのが大事だと思っています。クルーが、機体がどういう風に動いているかということをみんなで見てそれを選手に伝えるだとか、あとは選手自身のメンタルが良ければ良いフライトにつながると思っています。もし周回数で負けてしまっても、そこでみんなで落ち込むんじゃなくて次に生かすためにみんなで切り替えていけば、この三人だったら条件良い時間帯なら全員周回できる実力は持っていると思うので、そういう日を待って良い雰囲気を保てるようにすることが大事だと思います。

小長谷 私が必要だと思うことは三人が確実に得点することだと思っています。特に例年の全国大会を見ているとかなり制限が厳しい中で飛ぶことになって、そこでミスをするとあっという間に減点が課されてしまってそれでかなり点数が減るので、この三人の実力を最大限に生かして得点につなげるためにはまずは確実にミスをしないで飛ぶということが必要だと思います。山田も言った通りこの三人は他のチームに比べると実力差にあまり開きがないというのが良いことで、三人とも完成度が高い状態で大会に臨めると思います。あとはその実力を結果に反映させるために、確実に一歩一歩得点するということが必要だと思います。

田中 まず必要だと考えるのが減点をしないこと。毎年の結果を見てもそうなんですけど、小さな減点で順位が簡単に入れ替わってしまうということがあります。(大会が)1週間あって一日マックスで一人1000点入るんですけど、その1000点の内の例えば20点だとか50点だとかでもそれだけの差で最終的な結果を見ると順位が入れ替わってしまうということがよく起こるというのは四年間見てきてわかります。まず絶対に減点をしないこと。あともう一つ必要だと考えるのが、飛んだ時に三人とも持てる限りの力を出すということ。上手い人がそろっているチームで力を出せずに降りてしまったりすると、全国大会は飛ぶチャンスが非常に少ないのでそこで1人は得点ができないという状況に陥ってしまうということがあります。とにかくチャンスをうまく生かすことができれば確実に上位に食い込むことができると思いますし、逆に言えば過去の結果を見て強いチームだなと思っていてもやはりそういうチャンスを生かしきれなくて優勝できないというチームがあったので、必ず自分が飛べるタイミングで自分のベストを出すということが必要になってくると思います。

「最近まとまりが出てきた」(小長谷)

主将を務めていた小長谷。代交代を経て競技に集中する環境が整った

――オフの日は何をしていますか

山田 オフの日だったらバイトをしたりとか、次の週が合宿だったりするとその準備で人のフライトのGPSを見たり動画を見たり、ほとんど部活のことを考えてますね。

小長谷 つまらない答えになっちゃうんですけど部活がオフの日がこの一年間ほとんどなくて、本当に予定がない日がただ寝るだけとかになっちゃったり、長期合宿の後は何日間かオフがあることがあったんですけど、疲れを取って次の合宿の準備をしたりしていました。あとは学業の方が忙しかったので、そっちが追いつけるように勉強するとか研究室行くとかそういう感じでした。

田中 基本的には学校行ってという感じで、夜はバイトしてという感じです。あとは寝て、時間があれば次の合宿で必要なものだったりを考えて買い物したりして終わりです。

――合宿以外では具体的にどのような活動がありますか

山田 合宿だったら次の合宿の準備ということで、機材の点検だったり壊れてしまったものを修理したりということで平日の昼休みとか放課後に部室で集まって作業をしたり合宿の準備が多いですね。あとは全員で集まって月に1回ミーティングを行ったり、それ以外にも色々な係で集まってミーティングを行ったりしています。

――やはり合宿が多いと大変ですか

田中 1年生の初めの頃はどうしても慣れないので結構勉強も課題も終わらないとか、(合宿で)土日がつぶれるわけなんで平日ちょっと怠けがちだと土日にやることが多くなって、しかも合宿ということでリズムをつくるのが大変でした。けど何か月かやっていると慣れてきて自分なりにリズムをつくれるようになるので、長期合宿も苦じゃなく過ごせるようになりました。

小長谷 他の部活に比べると朝練習があって放課後練習があってと、とにかく日々の体力が削られるという形式ではないのでそういう意味ではまとまってこの日数は部活という風に充てられるというのは、私としてはそれがなければ学業とか色んなこととの両立は無理だった気がします。そういう意味では私は慣れちゃえばリズムが楽だと思っていますけど、時間的な拘束が長い分バイトをしたりとか他の時間を確保するというのが難しいなという感じです。

山田 まず合宿所に行くまでの時間だったりとかお金の面だったりとかで結構大変です。合宿中だと暑かったり寒かったりとかそういう環境の変化とかが大変だなと思っていて、(合宿が)隔週なので長期合宿がない時期であれば大体学業との両立はできるので、そういう面では他の部活とは違うかなと思います。

――学業との両立はいかがですか

田中 できてないです。(小声)

小長谷 両立は大変です。学科がレポートとか課題が多くてそれに割かれる時間で睡眠時間を削られたりとか、疲れた状態で合宿に臨んだりするとやはりそれだけで結果が残せなくなってしまうのできつかったです。

山田 私は楽単ばっかりマイルストーンを見て選んでやってたので、今のところは何とか大丈夫です。

――4年生のお二人は卒論は終わりましたか

小長谷・田中 終わりました。

――どのようなテーマでしょうか

田中 物理的なものになっちゃうんですけど、シミュレーション系の計算をしてその数値を合わせてという感じのことをして終わりました

小長谷 私も同じくシミュレーションなんですけど、あえてそういう一人でできることを選んだというのがあります。研究室に所属しているとどうしても部活が理由ですごい迷惑をかけてしまうことが多くて、やはりチームでやるプロジェクトとか実験はあえて避けて、大変になっても一人で何とかできるようなことを選んでやっていました。

――小長谷さんは機械科学・航空学科ですが、部活動で役に立つことはありましたか

小長谷 特に材料のこととか機械力学とかはかなり部活に役立ったと思います。直接的に役立ったことはどれくらいあるかわからないですけど、特に私たちが持っているウインチの改造の計画とかはそこで製図で頑張った知識がかなり生きていて、私としてはつながりがあって面白いです。

――田中さんは役に立つことはありましたか

田中 ほぼないですね(笑)。

――山田さんはどのような研究をしていますか

山田 文化構想の表象・メディア論系というところにいて、デジタルメディアアートというゼミに入っています。デジタル系のネットとかスマホとかが流行ってきてアート自体が絵とかそういうものからデジタル的な新しい…。なんて言うんだろう…。デジタルアートっていうんですけど。そういうのを研究したりみんなで色々つくったりするんですよ。VRとか、バーチャル体験をしたりするのをつくったりだとかしています。あとプログラミングでゼミ室を拠点としたゲームをつくるだとか、登場人物がゼミ生とかデジタル系のツールを使ってやってますけど、航空部にはまったく関係ないです(笑)。

チーム唯一の3年生である山田。競技面だけでなく運営面でも成長を感じていると話す

――学年のカラーはいかがですか

田中 割と我が強いとかプライドが高い人が多くて、まとまりが難しい代だったと思います。ただめちゃくちゃ仲が悪いとかはなくて、後輩の応援で木曽川まで車で行ったりとかというのもあったくらい普通に仲良いと思います。

小長谷 田中が言った通りなんですけどカラーは彼が言った通りでみんなベクトルが違いすぎて、3年生で代交代してまとめるのはきついなと私自身はあきらめました(笑)。ただみんなが同じ目標を持って活動したいなというのがあって、特にことしは就活が私たちの代はゴタゴタしていてそれで仕方ないんですけど(就活に)時間を取られてしまう同期が多くなってしまって、特に春から夏にかけては就活以外のメンバーで運営を回してたんですけど、それはかなり厳しかったです。今は全員そろって活動できてますけど、その過程で部活に対する意識の違いとかやりたいことの方向性が違うと言って離れてしまった同期もいたので、それはすごく悔しいです。それさえなければもっとみんなでまとまって雰囲気良くできたんじゃないかっていうのはあります。

山田 3年生は元気が良いというか、みんなフライトとかに対しても貪欲で部活に対してのまとまりはあるかなと思います。うちの代が8人いるんですけど、就活になってしまうので4月以降ちょっとどうなるかなというのは不安です。きょねんの4年生を見てると就活というものを境にしてちょっと雰囲気が悪くなってしまったかなっていうのがあって、私たちの代ではほぼ全員就活だからうまくみんなで頑張って両立しようねっていう話はしてるんですけど、実際どうなるのかはわからないのでそこが心配な点です。

――お互いの印象はいかがですか

田中 二人は真面目で僕よりもずっと航空部のことを考えていて、普通に尊敬しています。

小長谷 田中は特に運営を一緒にやってきたので、私がきつくてキラーパスを出してもそれを全部受け止めてくれました(笑)。フライトに関しては私よりは大会などで経験があるので、自分がフライトに悩んでいる時にポンと言う言葉が結構解決につながったりとか貴重な存在です。山田は後輩は後輩なんですけどフライトに対する気持ちをすごく尊敬しています。特に準備に関してとか飛んでいるときの気持ちが強くて、それは私には少し欠けるとことがあると思うのでその点は尊敬しています。

山田 田中先輩はチームの雰囲気を良くする…なんて言うんだろう…。

田中 潤滑油?

山田 航空部員がいる中に田中先輩を放り投げるとすごい面白い雰囲気になるみたいな感じの人です。そういうところで他の人に影響力があるので、面白いなって思って見ています。

一同 (笑)。

山田 小長谷先輩は主将として頑張っていて、私にない真面目さというか航空部では男子が多い中、他の男子とかをまとめてきてすごい芯が強いと尊敬しています。フライトも最近すごく調子が良くて、色々お話を聞いてみるといろいろ計算をしたりとか考えてたりとか、私は数学とかそういうのがちょっと苦手で、自分ももうちょっと小長谷先輩とかの話を聞いて自分も計算して飛ぶように意識をしていきたいです。小長谷先輩は頑張り屋さんです(笑)。

――後輩からの印象を聞いていかがですか

田中 悪印象じゃなければ嬉しいです(笑)。

小長谷 私も自分が頑張りながら後輩の成長を妨げたくないなと思っていたので、それならいいです。

――新体制の雰囲気はいかがですか

小長谷 最近やっとまとまりが出てきたかなと思います。ただ自分もきょねん(主将)をやっていて分かるんですけど、一番苦しい時期でした。代が変わって4年生は当たり前ですけど競技に集中するっていう環境ができて、4年生がだんだん運営から気持ちが離れていくのが目に見えてわかって、それも自分がやるしかないみたいな状況になって一人で走り回ってすごい大変でした。今3年生の明妻(祐也主将、教3=市千葉)がそうなっていてできる限りのサポートはしてるんですけど、全部はやってあげられないしそういう時期ではないので、そこは3年生が苦しいとは思うんですけどなんとかやるしかないと思います。ただそれが最近はだんだんと一人一人が考えて動いていて雰囲気が良いと思います。

田中 今は明妻がしっかりしてきて、それを含めて主務の土居原(悠史、人3=東京・高輪)であったり、訓練においては周りを仕切る役割である山田とか副将の浦西(雄哉、政経3=東京・海城)とか彼らが訓練中は僕らがグチグチ言わなくてもちゃんとやっています。まとまってきてすごく良い感じの雰囲気ではないかと感じています。

山田 代交代した後は主将である明妻が結構頑張っていて、それに甘えちゃってる部分があったんですけど、だんだん疲れが見えてきてそれで「これじゃダメだな」って思うようになりました。去年の小長谷先輩もそうだったんですけど、後輩の私から見ても他の人も頑張ってるんですけど、小長谷先輩だけが頑張ってるというか負担が明らかに違うと思っていて、それを見ていたので一人だけに負担をかけるというのは良くないと思って、みんなでなるべく分散させるように最近はしてきています。この前の合宿で主将の明妻と副将の浦西と主務の土居原がいないという時があって、私が訓練を仕切るという立場になったんですけど、4年生のサポートを受けながらだったんですけど何もなく訓練を終われたので、自分としても成長を感じました。

――自身の変化は感じますか

山田 私は新体制になって機材無線の主任をやっているんですけど、もっと係を今までよりも向上させたいという気持ちで取り組んでいて、そのためにも後輩とコミュニケーションをうまくとりたいなと意識して、他の係の1年生だったりとかもよくコミュニケーションを取るようにしています。上級生の中では言いたいことは言うというようにして、良い活動を目指していきたいと感じています。

小長谷 私は圧倒的な解放感に浸りながらフライトをこの何か月か楽しんいます。代交代って何段階かあって、まず学連という他大との調整を明妻に任せ、その後に3年生が私たちの部の運営をできるように引継ぎをして、それをだんだんと終えてきました。特に年が明けてからは今までは「やらなきゃいけないから」という気持ちで色々計画してやってきたことが自分の中の変化として感じたのは「これをやりたからこうする」という意思を持って計画したりとかできるようになりました。すごく密度が高い充実感をフライトももちろんですけど、運営に関しても自分は今は実質はやってないですけど違う視点から見れたりして、3年生の時よりはもう一段高いところから色々見れてるなという気はします。

田中 小長谷と同様で僕は訓練中に管制塔みたいな仕切る役職があるんですけど、そこの資格がないのであまり資格がある人に対して言ったりはしてきませんでした。ですが4年生になって代交代して、ある意味少し違う感じの立場になって引退と言ったら早いですけど、終わるまでに自分の考えとか「こうした方がいいんじゃないか」ということはどんどん伝えています。後輩には(部を)良くしていってほしいので、自分で考えて色々するというよりはアドバイスを思いついたらすぐ言ってという感じで、あまり責任感がないと言ってしまえばそれまでなんですけど、今は自分ができる限りのことで航空部にとってプラスになるであろうことをなるべく後輩たちに引き継いで、色々考えてほしいなという気持ちで見てますね。自分でやるというよりは応援してるといった感じの立場になってきているかなと思います。

「早慶戦は総力戦」(田中)

3年時から大会に出場してきた田中。関東大会では団体の全得点を挙げた

――普段の大会と早慶戦で違いはありますか

田中 まず全出ということで休むということは許されません。あと加えるとすると早慶戦は総力戦というようによく表現されるんですけど、飛ぶタイミングもほぼ同じで両方ともエース格が飛んで行ってなおかつ大きなタスクをするというのがあって、割とクルーがいっぱいいてずっと応援してくれるんですよね、他の大会と比べて。目に見えるところで『紺碧の空』を歌ってくれて送り出してくれる。雰囲気は全然違って(普段の)大会はすごい競技という感じがして黙々と行われる印象があるんですけど、早慶戦はもう下(の学年)からしたらお祭り騒ぎみたいな感じで上級生をとにかく応援してという感じなんで、かなりにぎやかな雰囲気の大会です。

小長谷 田中が言ったこと以外で付け加えると特に関東、全国に比べて早慶戦は自分たちで競技とか運営をほとんどやります。全国大会は特に飛ぶ環境とか競技ができる環境が整えられた中でただ選手は飛ぶだけというのがあるんですけど、早慶戦はそれ以前の準備からすべてやっていきます。私が思うのは飛ぶ以外のことでも「ワセダとしてどう在りたいか」とか「何のためにやっているんだろう」とか「慶大ってどうなのかな」とか競技や部活に対する視点が試されるものだと思っていて、それは私自身はすごい奥があって好きなので、そういう意味では関東とか全国とかと比べると考え方が全然違う大会だと思います。

山田 早慶戦は相手が慶大しかいないという点で、慶大のチームの雰囲気だったり人だったり良く知っている相手と戦うことになっていて、非常にレベルが高い大会になると思います。今まで私はずっとクルーだったんですけど、クルーとしてもすごい楽しいし選手としても楽しい大会になるんじゃないかと思っています。

――3連覇がかかる大会です

田中 きょねん2連覇した時点で来年3連覇すると史上初だとすごい言われてきて、自分たちもこれは絶対成し遂げなくちゃいけないなというのはずっと考えていたので、もう大会に臨む意識には絶対に外せないものとしてありますね。

小長谷 私は逆にあまり意識していなくて、もちろんきょねんの時点では来年自分たちの代で勝てば3連覇するというのは思ったんですけど、特にここ何か月間かやってきて、このチームでただことしの大会を勝つというそういう風に考えるようになりました。私としてはすごく考えやすいので、そういう風にあまり意識はせずにしています。

山田 一日一日慶大に勝てばおのずと大会勝利につながっていくと思うので、連覇ということはあまり私も意識していなくて、毎日勝つということをやっていこうと思っています。

――慶大の印象はいかがですか

田中 現4年生でいうと彼らは(慶應義塾高には)航空部があってもう妻沼が6年目になる選手が2名います。そのうちの1人がつい先日教育証明試験に通って、学生の内に教官になりました。ずっと上手いというのは2年生の頃から意識しているんですけど、こっちだって4年間やったというのはあるので気持ちで負けないというのが前提ですね、相手が上手いのは当たり前のことでわかっているので。

小長谷 私たちの代の(慶大の)高校生からやってきた二人というのは自分たち4年生に比べて格段に経験とか飛んでる時間は長いので、そこでの差はありますけど見てると意外と隙があったりします。それだけ上手くてもやはりスランプに陥っている時は陥っているし、メンタルがやられるとフライトに響いているところを見ると、自分たちのチームはああいう風にはならないようにしようときょねんの早慶戦を見ていて思いました。侮ってはいないんですけど、ただ私たちのこのチームで勝てるように攻める気持ちでやろうというのが今の気持ちです。

山田 私はずっと慶大は上手いなと思っていたんですけど、関東大会で1チーム落ちたのを見ていてその飛んでた人は高校から続けてた人でした。何年間やっていようが高校から続けてやっている人がいてもそういうことも起きるのを目の当たりにしました。慶大は選手数も多いですし早大とは練習の仕方というか選手の選び方も違うので実力差はあるのかなと思ったんですけど、意外と私たちも食らいついていけばそんなに実力差が離れているものでもないなと感じたので、そこはやはり気持ちでカバーしていけばいいのかなと思います。

――4年生にとっては引退前最後の大会になりますが

田中 最近思うのは4年間色々あったのでここで終わっちゃうのかという悲しい気持ちになっちゃうんですけど、最後の大会はやはり今までの先輩たちを見ていてもすごい気持ちがこもってきているなというのを感じています。引退とか考えずに大会だけに集中して、大会が終わってから引退のことを考えればいいかなと思っています。

小長谷 確かにはたから見れば4年生で全国、早慶戦で最後ということなんですけど、正直自分は六大戦とか関東とか大会中の勝負になる時に飛んでいないのでやっとチャンスが巡ってきたという気持ちです。ここからが始まりという気持ちに今はいるので、田中と一緒であまり引退のこととかはそういう気持ちになれてないです。

山田 3年生として4年生が最後有終の美を飾って早慶戦勝利して、最後にみんなで焼き肉を食べるんですけどその時に笑顔で食べれたらいいなと思っています。

――最後に改めて全国大会、早慶戦へ向けて意気込みをお願いします

田中 絶対優勝します。

小長谷 勝ちます。

山田 勝ちます!

――ありがとうございました!

(取材・編集 石川諒)

全国制覇、早慶戦勝利に期待です!

◆小長谷礼美(こながや・れみ)(※写真右)

1993(平5)年5月3日生まれ。東京・渋谷教育渋谷高出身。基幹理工学部4年。航空部史上初となる女子主将を務めた小長谷選手。冷静な口調からもチームのことを考える熱い気持ちが伝わってきました

◆田中努(たなか・つとむ)(※写真左)

1992(平5)年12月22日生まれ。広島・修道高出身。先進理工学部4年。自らを『潤滑油』と評した田中選手。経験豊富なチームの中心選手ですが、ムードメーカーも務めます

◆山田ゆり(やまだ・ゆり)(※写真中央)

1993(平5)年10月3日生まれ。千葉・日出学園高出身。文化構想学部3年。このチーム唯一の3年生ながら4年生との仲の良さがうかがえました。色紙に書いた『女帝』らしいフライトに注目です