慶大に敗れ、2連覇ならず

航空

 第42回早慶対抗グライダー競技会(早慶戦)が3月12~18日にわたって埼玉県熊谷市の妻沼滑空場で開催された。きょねんは大差で優勝した早大だったが、ことしは接戦の末に1673点差で敗れた。およそ一週間前まで行われていた第53回全日本学生グライダー競技選手権(全国大会)でも慶大に敗れ、惜しくも2位だった早大航空部。この早慶戦は1年間の集大成という位置づけであることに加え、全国大会のリベンジを果たす絶好の機会でもあったために惜しい結果になった。

着陸するWP機

 条件に恵まれる日が多かった大会期間、両校ともに周回を成功させる選手が多く、実力を存分に発揮できる場となった。初日から僅差で慶大を追いかける苦しい展開の早大。優秀選手に選ばれた風間勇輝(基理3=茨城・江戸川学園取手)を筆頭に得点を獲得し続けるものの、相手慶大も隙を見せない。7日間を通してほぼ互角の戦いになったゆえに得点差を埋めることができず、準優勝という悔しい結果で幕を閉じた。

紺碧の空で選手を送り出す部員たち

 「駆け引きする力とか技量以外のところでも弱いところがあった」(望月匠、スポ4=東京・国際基督教大高)と、技量以外での敗因も指摘したようにグライダーという競技の奥深さを感じられた今大会。最上級生の4年生は後輩に望みを託し、ここで引退となる。新たな戦いに向けて早大航空部は、ライセンス取得者を増やし選手層を厚くすると同時に、下級生の育成を重点的に行いエース級の選手を増やす予定だ。次の目標となる東京六大学対抗グライダー競技会では、体制新たに大空を駆け抜ける勇ましい選手たちを見上げることができるだろう。

(記事 扇山友彰、写真 盛岡信太郎、川嶋悠里)

結果

▽団体

準優勝 早大 11397点

優秀選手賞 風間勇輝

敢闘賞 望月匠

コメント

小柳良太(教4=茨城・土浦二)、望月匠(スポ4=東京・国際基督教大高)

――試合を振り返って

小柳 ことし1年の目標であった早慶戦に負けてしまって、非常に悔しい気持ちとクルーを支えてきてくれた人たちに結果を残すことができなかったことは非常に残念です。同時に僕が4年間やってきた結果がこれだと思うんで、一歩足りなかった実力というのは真摯に受け止めたいと思います。あと、これからのことを考えたいというか、次に続く後輩たちが無事成長できるかOBとして見守る気持ちにいまはシフトしています。

望月 終わった感想としてはやはり悔しいというそれだけです。小柳も言っているように4年間この大会で勝つことを目標として、勝つためにずっとトレーニングなども行ってきたので、この大会で負けてしまったという事は悔しいし、後輩にも申し訳ないと思います。やはり早慶戦にはこだわりがあったのでそれだけ悔しいですね。あとは早慶戦はこれから先もずっと続いていくと思うので、自分はOBになってしまうのですがOBとしてそれをどう支えられるかと思っているので来年は是非OBとして支えたいと思います。

――望月さんは敢闘賞を受賞しましたね

望月 目標が団体優勝で個人の優勝とかは全く狙っていなくて、チームとして優勝するという事しか考えていなかったので。

――敗因は

小柳 やはり早慶戦はスピード勝負です。スピードが最も勝敗に影響する。今年のルール上の有効周回数が5周でその5周をいかに早く埋めることができるかという勝負だったのですが、私たちはもともと5人しか選手がいなくてその5人がそれぞれ飛んだタイムは1回しかカウントされないので、飛び直せばいいのですが飛び直せば元のタイムはゼロになります。そのような戦いの中で慶大は飛ばす人数がもともと7人いて、5周以上回るような日であればどんどんタイムトライアルを重ねられるチームを作ってきたのでそこが一番の敗因です。エース同士の戦いでは負けていなかったと思うので全体として5人全員のレベルが同じところまで達せられなかったことが速度が出なかった原因だと思います。 望月 同じことだとは思うのですがやはり慶大と比べたら技量が低いです。あとはどちらかのチームに隙があった時とかに、底をついて減点を取ったり減点を取られないようにしたりそういう駆け引きする力とか技量以外のところでも弱いところがあったんじゃないかと思います。

――きょうは風が強かったですがその影響は

小柳 競技期間全体を通して言えば、毎年雨でできなくなったりグライダーが上がらなかったりする場合もあるのですが、ことしは全日しっかりできて点数もちゃんと入りやすいような形で競技できたので天候については非常に良かったと思っています。お互い本当に実力を出し合うことができた大会だと思っています。あと先程の話を被ると思いますが、僕らは実力差では負けていたと思います。そんな中でも出る選手5人それぞれはすべての実力を出し切った結果だと思います。そのうえでもちろん勝ちを狙いに行っていたわけですが、お互いのチームにミスがあって、やはり実力で負けている私たちがミスをしてはいけなかった、と思っています。

――冬の期間の練習はいかがでしたか

小柳 早慶戦前の練習は1月年明けてからは3日から合宿をしましたし、そのあとテスト期間中でも土日に選手は飛びに来て、テストが終われば合宿を組んで、とことしに入ってからはほぼグライダー漬けの練習を時間としても大きくとって、最後の詰めの練習をできたことはよかったと思います。正直3年生はその練習によって相当な成長があったのでそれは来年につながる良い土台作りができたと思っているので、負けましたが無駄ではなかったと思っています。

望月 板倉飛行場というところで、きょうみたいなワイヤーで離陸するものでなく飛行機を引っ張って離陸するものがあって、長い時間飛べるしいろいろな上昇気流をつかむ練習をしたり、地形を見つつ考えて上昇気流をつかむ練習ができ、力をつけることができました。実際それを使って今回の試合でも上昇気流をつかめたりしたので良かったです。

――4年間で最後の試合となりましたが、いま思うことはありますか

小柳 4年間つらいことも楽しいこともいろんなことがこの妻沼飛行場であったので、まずはこの4年間指導してくれたり一緒にやってきたり、本当お世話になったすべての人に感謝を言いたいと思います。今終わってみて思うのはそれですかね。

望月 自分が4年間やってきて思うのは楽しいことつらいことあったけど、やめないで最後までやってきて本当に良かったな、という事です。今回負けて今はすごく残念で悔しいと思うのですが、航空部という一つのことにすごく力を注いで4年間一生懸命頑張ってこれたので結果がきょう負けたけどやってきたことは無駄にならないと思います。

――後輩へ向けて

小柳 早慶戦までついてきてくれてありがとう、ということと最後1年間はこのメンバーでやってきて結束の強さとか一つの目標に向かってみんなでやるぞ、と頑張って来れたことを非常に誇りに思っています。これからも早稲田大学航空部はそういう組織であってほしいと思っているので、ことしの経験を活かしてそれぞれ来年ぜひ楽しい、実りある航空部生活を送ってほしいと思います。きょう僕らは負けましたが僕らのような、やりきったという気持ちをもって卒部してもらえれば非常に僕らも幸せなことだと思います。

望月 私からはさっきも言ったのですがやはりやめないで最後まで続けてほしいと思っています。最後までやって、子の早慶戦で勝って卒部するというのがベストなので、とにかく最後まであきらめずに頑張って勝って卒部してもらいたいな、と思います。

梶山健光(基理3=東京・佼成学園)

――今回の大会をふり返って

スポーツマンシップとヤーマンシップという言葉がありまして、もともとスポーツマンシップというものを追求していましたが今回は加えてヤーマンシップについても考えさせられる大会でした。まだ答えは出ていないので今後も追求して行きたいと思います。

――今大会のコンディションはどうでしたか

条件、気象は非常に恵まれていました。きょねんは強風が吹き荒れて難しいコンディションだったのですけれど、風も弱く夏のようなコンディションでした。きょねんはもっと難しかったです。

――今回の敗因はなんでしょうか

正直私は負けたと思っていません。確かに大会の得点では負けたのですが、早慶戦で重要視される安全面であったり大会以外の生活の規律、部員同士のチームワークの面では慶大に勝ってると思いますので、そういう意味では今回は負けていないと私は思っています。

――合宿もありましたが冬季の練習はどうでしたか

冬季の間はグライダーの練習と言うよりは部の規律を守ることで、非常にこの部がよくなったと思います。1月から規律を守っていくという目標のもと練習や日々の生活をしたことで部がとても成長したと思います。グライドに関してもこういった意識から成長できていたのではないかと思います。

――ライセンス取得者や現在の部の状況、今後の展望はどうでしょうか

これから新体制が始まるのでまたどうなるのかわからないのです。新しくライセンスの受験する部員たちを一発で合格させたいなと思っています。選手層が薄かったので厚くして慶大に勝てるように次に臨みたいと思います。

――六大学戦に向けて意気込みをお願いします

個人優勝したいという望みもあるのですが、一番は団体優勝ですね。いまの状態を続けていって団体優勝までもっていこうと思います。

風間勇輝(基理3=茨城・江戸川学園取手)、古田洋一郎(基理3=東京・麻布学園)

――今大会を振り返っていかがですか

風間 決められてコースを回ることを周回というのですが、2日目にケイオーの伊藤選手が周回をして、自分も周回するべきだったんですけど、できなかったので、それが一番悔やまれることでした。それ以外は楽しめてフライトできたので、すごく楽しめた大会でした。

古田 わたしはいままでクルーとして選手を地上から応援する立場だったところから、今大会は初めて選手として空を飛ぶ身になって、選手ってこういうものなのかと緊張した面がありました。最初に得点した時はもたついたフライトだったのですが、毎日毎日反省しながら、その日一番良い成績を残せて、最終的には良い結果を残せたので、早慶戦という団体戦においては負けてしまったのですが、来年につながる結果は残せたので、そういう意味では価値のある大会だったと思います。

――早慶戦は航空部としてはどのような位置づけだったのでしょうか

風間 最終目標ですね。これに勝つために1年間やってきて、1年間の集大成。4年生は4年間の集大成ですね。自分たち3年生も4年生を勝たせるために3年間の集大成をぶつけるつもりでがんばりました。

古田 航空部って体育会でもすごく特殊な部活だと思うんですけど、3月の最後の最後までこのように大会があって、3月の頭に全国大会があり、3月の最後に早慶戦があるので、この大会が1年間の集大成となる大会で、全国より早慶戦に勝つこと、ワセダとケイオーがこのグライダースポーツのトップを争う両校なので、早慶戦に勝つことがイコール全国1位、首位を決する大会だとわたしたちは考えています。この戦いに向けて準備してきたというところがあったので、その分悔しかったですね。

――冬の練習の手ごたえはありましたか

古田 関東大会の時はわたしと主将の梶山の2名についてはまだ免許を取得する段階で、出場選手の資格を満たしていなかったのですが、今回満たして初めて大会に望むということで、もともといる3人の選手と同じレベルまで伸ばしていけるかことで、割と重点的にフライトの機会を回してもらえたので、感謝しています。そのおかげで今回2人とも得点することができて、ワセダの勝利に向けて貢献ができて良かったと思います。悔いは多少残っているのですが、冬の期間はすごく練習になったなという期間でした。

風間 自分は、ここ以外に板倉という滑空場で、飛行機に引っ張ってもらうところで訓練していて、それがすごく効いています。そっちで、高度3000メートルとか上がる練習をしたり、空気を掴む練習をしたりして、世界が変わりました。

――次の目標になる大会は

風間・古田 六大戦ですね。9月です。

――4年生が引退されて、最高学年となります。個人やチームの目標を聞かせてください

風間 いま2年生がきのうライセンスを取って、あと候補生が3、4人いるので、彼らを全員選手にして8人で臨みたいと思います。まず、自分たち3年生は最初に飛んで最初に得点をして、1番になって他大を突き放して、団体突っ切って、個人でも団体でも優勝したいと思います。

古田 来年度の早慶戦で必ず勝てるように、自分たちの技量アップはもちろんのこと、選手がたくさんいないと勝てないチームスポーツなので、下級生にも頑張ってもらいたいということで、選手の育成の面を重点的にがんばっていかないと3年生だけでは勝てないので。育成を重点的にやっていかなければいけないと考えています。