白熱した闘い、逆転で制す

航空

 先日行われた全国大会(全日本学生グライダー競技選手権大会)に引き続き、今回はワセダと慶大の闘いが幕を開けた。全国の場でも、団体優勝を大会終盤まで争った両校。初日から慶大に大差をつけられ、始まった今大会は、エース風間勇輝(基理4=茨城・江戸川学園取手)を中心に着実に得点を重ねていく。抜きつ抜かれつの白熱した闘いは、最終日のワセダの逆転勝利に終わった。個人では、風間が最優秀選手賞、後藤峻(政経3=三重・津)が優秀選手賞に選ばれ、それぞれ輝かしい成績を収めた。

続々と周回を成功させるワセダの機体

 今大会、先手を打ったのは慶大だった。初日から1000点以上の差をつけられてしまったワセダ。互角の実力を持つ慶大を相手に、この点差はあまりにも大きく、絶望的かと思われた。全国大会で慶大に打ち勝ち、団体優勝を成し遂げたワセダは、今大会でも負けるわけにはいかない。

 この状況をいち早く打破したのは、やはりエースの風間であった。大会前半から連続で周回を成功させ、着実にポイントを獲得。さらに、二番手に控えた後藤も続々とポイントをあげ、初日に1000点以上もあった差を最終日までに16点差まで詰め、慶大を追いこむことに成功。どちらが勝ってもおかしくないこの状況に王手をかけたのは、ワセダであった。あせる慶大をよそに、ワセダは平静を保ち、次々と周回を積み重ねていく。「最後にこっちが勝てたのは、実力差というより気持ちの面」と語った風間は、慶大を冷静に分析しつつも、最後まで闘志を燃やし続けた。因縁のライバル慶大との闘いを制したワセダ。試合後、今まで培ってきたものを出し切ることができた喜びとともに、部員の表情もほころんだ。

試合後、部員全員笑顔でワセダピース

 実力差がなく、争う相手も慶大のみの今大会。ある意味では、全国各地からあらゆる学校が集う全国大会よりも盛り上がり、白熱した大会が繰り広げられる。集大成となる今大会を制した部員の満足気な表情は、これまでに積み重ねてきた努力や苦労を物語っていた。

 ここから次の大会まで長い訓練期間に入る。この間、新人の育成やライセンス取得などの基盤づくりが行われ、新チームでの活動が本格的に始動。風間に続くエース誕生への期待を胸に、チームの今後に注目していきたい。

(記事 須藤絵莉、写真 宮西祐香子)

結果

▽団体

早稲田(風間、梶山、安達、太田、後藤、平井) 8773点 優勝

▽個人

風間 最優秀選手賞

後藤 優秀選手賞

コメント

風間勇輝(基理4=茨城・江戸川学園取手)

――今大会をふり返っていかがでしたか

本当に疲れました。これほど実力差がない闘いは初めてだったんですけど、最後にこっちが勝てたのは、実力差というより気持ちの面だったのかな、と思います。こちらは冷静を保って闘いに臨めたのですが、あっち(慶大)の方は少し焦っている様子が見えたので。そこできょう差が開いたのかな、と思います。

――初日から大きな点差がありましたが、どのような気持ちで臨みましたか

正直初日はあそこまで点差が開くとは思っていなかったです。相手も相当実力がある人たちなので、この点差を追いつめるには、相当きつい点差なのではないかなと思いました。ただ、真ん中の日にワセダだけ点が取れた日があったのですが、その日は本当に今まで培ってきたものが出て、ちゃんと得点をあげられたのがよかったです。

――大逆転という結果はどのように思いますか

徐々に点差をつめていくと思っていたんですけど、先ほども言った真ん中の日に点をあげたことで逆転して、またその次に逆転されて、またその次に逆転する、というのを繰り返していて、きのうは何も点の動きが起こらなかったので、きょうは絶対逆転できるなと思って臨みました。

――今回の慶大の印象は

エースの萩原(大樹、慶大)は、本当にうまいです。自分よりもある条件の面では、うまい部分もあります。その他にも、二番手の層が慶大は本当にうまいです。うちは二番手以降で得点できなかった日もあるので、そこが慶大の強さです。

――チーム全体としての目標はありましたか

チーム全体としては、もちろん団体優勝です。

――この一年間の集大成の大会で、個人では最優秀選手賞に選ばれましたが、今のお気持ちをお聞かせください

個人最優秀は、できれば3年生に取らせてあげたかったなと思います。自分の役目は、時間がかかっても必ず周回して、低くても得点をあげる。その次に、条件が良いタイミングで二番手に回して、高い点数を二番手に取らせるというのが自分の役目でした。おとといはそれで、後藤(峻)ができて、一番高い点数を取れたんですが、もっと自分が早く回せたタイミングがあったと思うので、そこをちゃんと守っていけば二番手後藤にもっと得点をあげさせてあげられると思うので、本当はその二番手の3年生に取らせてあげたかったです。

梶山健光(基理4=東京・佼成学園)

――今の率直なお気持ちをお聞かせください

最高です!

――慶大にリードを許して迎えた最終日でしたが、どのような気持ちで臨みましたか

絶対に勝つぞという気持ちで臨みました。あと、心の底にあったのは、安全に降りてこなければいけないということです。きょねん、六大戦の時に、事故を起こしてしまったので、それだけは絶対にないようにと思いながら、そして、絶対に勝つぞという思いを熱く持ちながらやっていました。

――全国大会では、強い風の時の23機での周回が課題とおっしゃっていましたが、今大会その点についてはいかがでしたか

今大会でもそのような場面があったのですが、改善できず周回できませんでした。まだまだという感じです。

――早慶戦は1年の集大成としての試合だったと思います。この1年はどのような1年でしたか

良い1年ではなかったのですが、色々悩みながらやってきて、終わりが良かったのでそれでいいかなと思います。

安達拓人(先理3=神奈川・湘南)

――今のお気持ちをお聞かせください

部員全員が喜んでいるので、それを見ることができてホッとしています。

――慶大にリードを許して迎えた最終日でしたが、どのような気持ちで臨みましたか

天気の条件があまり上がらず、もしかしたら両チームとも0対0で終わってしまって、そのまま負けてしまう可能性もあるかなと思っていました。でも、心の底ではやはり、梶山さん、風間さんの4年生の1番手の方が絶対にやってくれるだろうなと信じていました。

――試合期間、チームの意識の統一などはどのようにしていますか

ミーティングは毎合宿いつも通りやっています。それよりは、今のこの代は、声を出せば皆元気になってまとまりやすいので、まずは声を出すということを意識していました。

――かけ声とかもあるのですか

朝、始める前に皆で円陣を組んで「行くぞー!」という形で声を出すのですが、そこはとびきり大きい声を出すようにしていました。

――主将としての、来シーズンの目標をお聞かせください

全大会で団体優勝することです。

後藤峻(政経3=三重・津)

――今大会を振り返っていかがですか

楽しかったです。土日に得点できる場面で得点できなくて。そこで反省した部分が大会中に改善されたので、成長できた大会だったかなという部分で、楽しかったです。

――きのうまでリードを許していましたが、きょうはどんな気持ちで臨みましたか

自分が決めてやろうと思って。絶対勝つんだという気持ちでした。

――この早慶戦の中で、得点のチャンスは生かせましたか」

先程も言いましたが、今大会初日で得点できるタイミングで慶大の一緒に飛んだ2機が得点をして、私が得点できなかったという場面がありました。そこでかなり大きな点差を初日につけられてしまって、そこから改善して、その次の日一番速い周回で1000点という点数を取れたことは、チャンスを生かしきれたのかなと思います。

――優秀選手賞を受賞されましたが、感想をお願いします

これはおまけみたいなものです。団体優勝できたことの方が一番嬉しいです。優秀選手賞を取れたのも、最優秀選手賞の風間さんが私にいいタイミングで繋いでくれたっていう結果であったというだけなので。来年に繋がる結果というのは嬉しいですけどね。

――次の大会まで期間が空きますが、どんな準備をしていきたいですか

3年生が4人もいて、らいねんは結構充実したチームが作れるので、下の育成を十分にやります。次の大会ではぶっちぎりで優勝したいと思います。

太田篤(基幹理工3=東京・本郷)

――今大会を振り返っていかがですか

まず勝てて良かったというのと、楽しめたなという気持ちです。私はいわゆる得点というものをできたことがなくて、今回で初めて得点できたので、やっぱり大会という過程の中で成長できたのかなと。あとは絶対に負けないぞという気持ちでした。

――きのうまでリードを許していましたが、きょうはどんな気持ちで臨みましたか

まずは絶対負けないという気持ちです。あとはやはり危険なことをしていることがあるので、最後まで安全にというか、最後まで考えて安全に気を配りながら、勝つことを考えてやろうという気持ちです。

――この早慶戦の中で、得点のチャンスは生かせましたか」

得点するチャンスというのは何回かあったんですけど、逃してしまっていて。自分の中に足りないものは何なのかということを、競技期間を経て学んで進化していくうちに、成長できたのかなと思います。

――今大会、初めて得点されたということですが

私はブランクがあったので、そこを取り返すという意味でも、ちょっと足りなかったというところもあるのですが、貢献できたのかなと思います。

――次の大会まで期間が空きますが、どんな準備をしていきたいですか

グライダーは個人スポーツではありますが、やはり戦うのは団体であって。個人1人が上手いだけでは勝てない、そういうスポーツですので、後輩の育成、並びに同期でのボトムアップという所を考えていきたいと思います。

平井紀江(法3=兵庫・星陵)

――今大会を振り返っていかがですか

勝てたことがすごく嬉しかったです。でも、私は飛ぶ機会が何回かあったんですけど、自分の中で納得できない結果というか、結局得点に何も結びつけられなかったので、そこが反省とか悔しさとかがいろいろあった大会になったと個人的には思っています。

――きのうまでリードを許していましたが、きょうはどんな気持ちで臨みましたか

ただ勝つことを信じて時間が経つのを地上で見守っていて。安全に戻って来るのを待っているような感じでした。

――この早慶戦の中で、得点のチャンスは生かせましたか」

先程言ったように何度か飛ぶチャンスはあって。私が飛んだのと同じタイミングで飛んだ機体が得点していたときに、私は得点することができなかったので、個人では0点のまま終わりました。ワセダに得点を入れることができませんでした。いっぱい課題が見つかって、今まで練習してきたことが、大会という場で緊張とか不安とかがいろいろあって全然生かし切れなかったという悔しさだけが残っているので、すごく反省点の多い大会だったと思います。

――今回初めてお一人で五角周回に挑戦されましたが、いかがでしたか

教官の方と一緒に乗って何回も行っている所だったんですけど、やはり1人でどういうルートを通ってどういうふうにポイントを回るかが飛んでいるとき自分の頭の中で全然整理できていなくて。1人で行くのはすごく怖いのもあるし、これまでの大会と違って結構大きいルートなので、足を伸ばすのが怖い、というような感じでした。

――次の大会まで期間が空きますが、どんな準備をしていきたいですか

個人的には、やはり五角周回の経験を積みたいです。全体を見たら、選手のトレーニングとかも必要だと思いますし、地上作業をしてくれる下級生に、地上のことは全部任せて私たちは安心して飛べるように、育成していきたいと思います。