【連載】『平成30年度卒業記念特集』第16回 土田大輔/ボクシング

ボクシング

「強い男」を目指して

 早大ボクシング部の顔として主将を務め上げた土田大輔(教=富山・呉羽)。ハードな競技のため、すぐに辞めてしまう選手も少なくないボクシング。それでも厳しい練習を耐え続けることのできた理由は、「強くなりたい」という思い。今回は、「強い男」を目指した彼のボクシング人生を振り返る。

 父の影響により、中学1年生からジムでボクシングを始めた。ボクシングを始める前は、格闘技好きの父と一緒にテレビで見たり、父の使っていたサンドバッグを殴ったりしていた。ジムに入る前は、ただかっこいいと思っていたボクシング。始めてみると想像以上にきつかった。全国高等学校ボクシング選抜大会では3位を獲得した土田。北信越のブロックでは勝てるが、全国大会ではなかなか勝てなかったという。そんな中、よく試合を見に来ていたという高校の先生、副校長先生の出身校でもある早稲田大学に進学し、ボクシング部に入部した。入学当初は、自由に自分たちのやりたいことをやる形の部活であったボクシング部。土田は、大学生前半の自分を、「気持ちが入っていなかったから勝てなかった」と振り返る。そんな彼を変えたのは、たくさんの人の応援や期待に応えたい、結果を出して恩返しがしたい、という思い。さらに、ボクシング部の主将となったことは、土田が頑張ることができた1番の理由だ。土田は、それまで以上に熱心に練習に励んだ。そして、昨年7月に行われた関東大学トーナメント3部では、ボクシングの聖地、後楽園ホールにて見事優勝を果たした。1年生の時に、後楽園ホールで2度の敗戦を経験した土田。この優勝は、印象に残っている試合として彼が語ったものだ。

後楽園ホールで念願の勝利を手にした

 土田にとって主将とは、「早大ボクシング部として1番最初に注目される存在」であり、「勝たなければならない存在」であった。「土田大輔といえば早稲田」となれるよう、主将として部を引っ張った。高校までジムに通っていた彼にとって、部活動としての後輩は大学が初めて。後輩ができたことはうれしく、後輩と長風呂をしながら話すことが好きだった。男らしさを大切にする土田の姿は、後輩の目に男らしくかっこいい存在として映っていただろう。

 そんな土田の信念は、OBに教えてもらった『コラソン』という言葉。スペイン語で「心臓」や「ハート」の意で、「気持ち」を意味している。「しんどいなと思った時に、この言葉を思い出して頑張ってきた。応援してくれる人への気持ち。誰かのためを思ったら、気持ちでどうにかして勝つしかない。」と語る。ボクシングを通じて学んだことは、「人との繋がり」。「周りの応援、支えがあったからこそ頑張れたし、勝つことができた」と話すように、応援してくれる人の声は、土田の活力となっていた。

 主将として部を率いてきた土田。多くは語らないが、彼の言葉ひとつひとつからは、競技に対する熱意や男らしさ、思いやりが感じられた。強くかっこいい男を目指し突き進んできた10年。卒業後は、地元富山に帰る。これで土田はボクシング人生に終止符を打つことにはなるが、これからもさらに強い男になるため奮闘し続けるだろう。

(記事 芦澤りさ、写真 石井尚紀)