【特集】早慶副将対談

ボクシング

 60回という節目となる早慶戦を控え、早慶ボクシング特集も第三弾となった。今回お話を伺ったのは各校の副将。各々にとって、ボクシングとは。そして早慶戦とは——。

※この取材は10月17日に行われたものです。

「お互いに面識がある」

笑顔で質問に答えてくれた田室

――対談の企画を聞いて、率直にどう思われましたか

梅津 楽しいと思いましたね。野球部とかもやっているじゃないですか。それを見ていいなと思っていたので、ボクシング部でもできていいなと素直に思いました。

木村 僕は話すのがあまり得意ではないので、勘弁してよという感じでした(笑)。みんな早慶戦に向けて盛り上がっているので断るわけにはいかないなと思いました。

一同 (笑)。

田室 早慶戦はいつも盛り上がっているのですが、ことしはそれ以上に熱い試合になるのではないかと思っています。

垂水 60回という記念大会なので、こういった対談という企画でより一層盛り上がるという意味では、非常に有意義な場だと思いました。

――お互いに面識はあるのでしょうか

垂水 早慶戦の全体でレセプションがあって、そこで選手同士の交流があるのでお互いに面識はあって話しますね。

田室 僕はレセプションで話したいのですが、なかなか話せたことはないですね(笑)。

――プライベートでの交流は

垂水 ないですね。

梅津 プライベートじゃないですけど、淡海(昇太主将、教4=神奈川・浅野)は、同じ神奈川なので国体だったり、会場で会ったり交流はあるのかなと思います。あとはそんなにないですね。

田室 そうですね。

――互いのボクシング部への印象は

垂水 結束力があるということと、慶應といったら慶應ボーイのそういうイメージがあったのですが、実際は泥臭いというイメージもありました。

田室 人数があって、結束力があり、まとまりが強いというイメージがありますね。

木村 ちょっと前までは、スポーツ推薦の選手が多く、エリート集団という印象があったのですが、今はそれに加えて去年の早慶戦なんて特にそうなのですが、部の結束が強くなっているなという印象があります。

梅津 早稲田のボクシング部さんは、初心者で始める人が気合があるなという印象です。推薦で入ってくる人たちはすごく強いのですが、それ以上に大学で始めたひとたちがどんどん伸びていっていると思います。育成がうまいのかなという印象です。

――大学全体のイメージとしてはいかがですか

木村 人数が多く、いろんな人が集まっていて慶應以上に多様性があるのかなというイメージを持っています。

垂水 お金持ちが多く、派手なイメージがあります。

田室 お金持ちで、慶應ボーイがモテるイメージがありますね。

梅津 逆にそのイメージを早稲田さんが無駄に作っているのではないかと思いますね(笑)。早稲田さんは、一口にいっても様々な学生がいると思うので分からないですね。

落ち着いてチームをまとめる存在の垂水

――ボクシングとの出会いや、始めたきっかけを教えてください

田室 僕は、高校生から少しやっていて、フィットネス感覚で広島のジムでやっていました。でも、大学で始めるのは少し怖かったです。練習に行ったときにスポーツ推薦の方も頑張っていたのですが、一般入試で入った初心者の方たちが素直に一生懸命頑張っていたのを見て、自分もやってみたいと思い、入学当初から部に入ることを決めました。

垂水 僕は入部したのが1年生の12月くらいで、他の同期と比べて遅かったのですが、高校まで野球をやってきてずっとチームスポーツに携わってきたので、まず個人スポーツとはどういうものなのかということに興味があり、格闘技が好きということもありました。また、サークルも何個かあったのですが、ちょっと違うなというのがあり、思い切って体育会のボクシング部に挑戦しようと思ったことが入部したきっかけでした。

梅津 僕はもともとデブだったので、痩せなきゃやばいなというのがあったんです(笑)。その時、ちょうどテレビで亀田興毅と内藤大助の試合を見て、21世紀なのになに殴り合っているんだ、少し面白そうだなと思ったのがきっかけで始めました。7年やるとは思ってなかったんですけど(笑)。

木村 僕も高校生から始めたのですが、実は(梅津と)慶應高校で1年生の頃同じクラスで、入って間もない頃にボクシングに興味があるというのを聞かされました。その時はあまり興味がなかったので流してサッカー部に入部しました(笑)。でも、入部してから一ヶ月後くらいに別の部活もやってみたいなと思った時にボクシング部に誘われていたのを思い出して、そこから体験にいったという感じですね。

梅津 こいつすごいいい奴ですね(笑)。なつかしい。あともう1人と3人でやりました。

――ズバリ、ボクシングの魅力とは

田室 達成感ですね。振り返るとやっていてよかったなと思いますね。

垂水 ボクシングを語れるようなあれじゃないんですけど、自分との闘いというか、試合は一人でリングで闘いますし、厳しい減量というのもパフォーマンスとはまた違った醍醐味でもありますし、自分との闘いだと思いますね。

木村 気持ちは強くなったと思いますし、ボクシングに限ったことではないかもしれないと思うんですが、練習を自分で考える場面が多いスポーツだと思うので、自分で考える力みたいなものは付くかもしれないです。

梅津 本当は仲間なのに殴り合わないといけないという部分で、優しさがないといけないスポーツかなということは個人的に思いますね。優しさを再発見できると思います。最終的には殴り合うわけじゃないですか、仲間ですけれども。礼儀を持って最初にはちゃんとグローブタッチをしますし、そういう意味では優しさを見つけられるスポーツなんじゃないかと思いますね。

――ボクシングをやっていてよかったなと思う瞬間はありますか

田室 最初の食いつきはいいと思います。ボクシングをやっていると言ったら。でも、10分20分したらなんなんだこいつという風になりますね(笑)。

垂水 食事に気をつけるので、体が健康になります。

梅津 自信にはなるんじゃないですか。喧嘩とかに巻き込まれる場面になったときに一応なんとかなるんじゃないかという気持ちで夜道とか歩けるし(笑)。

木村 同じですね、街中でヤンキーとかとすれ違ってもあまり怖くなくなって。前までは結構ビビってたんですが今はもう大丈夫だ、とかいうのはあるかもしれないです。

梅津 まるでもう、そういう場面に遭遇したかのような言い方だね、大丈夫?(笑)

木村 大丈夫です(笑)。

――逆に、ボクシングをやっていてつらかったことは

垂水 殴られて痛いです。野球からボクシングにいって、最初はすごく痛くてこれがボクシングなんだと痛感させられた思い出が入部当初にはあります。今ではすごく良い思い出なのですが、やっぱり痛いというのはありましたね。

田室 練習強度が高いなと思っています。無酸素に近い運動を長時間行うのでそれはつらいですね。

木村 殴られるのもつらいんですけど、自分はサッカーをやっていて、サッカーって走るイメージが強いと思うのですが、それと比べてもボクシングは思った以上に走るんだなと思いました。ロードとかきついです。

梅津 僕は、こいつ仲間なのになんで殴らなきゃならないんだと思ってその方が嫌ですね。終わった後、気まずいし(笑)。

――練習メニューの中で嫌いなメニューはありますか

木村 僕は走りですね。

――どのくらいの距離を走られるのですか

木村 距離じゃないのですが、タイム走でタイム切れなかったりするとつらいです。

田室 合宿とか、朝の5、6時からみんなで10キロ以上走らなければならないのでそれは大変です。

垂水 僕らは、練習が終わった後に、トレーナーが考えてくれた補強メニューをやるのですが、それがめちゃくちゃきつくて、練習終わった後にあれやるのかという感じですね(笑)。

特にきつい補強メニューはありますか――

垂水 器具を使わないメニューなのですが、腕立ては腕が立たないくらいまで追い込みますし、腹筋もみんなつるくらいまでやりますし。でもそれが早慶戦に生きてくれればいいなと思っていますが、それが一番きついですね。

梅津 僕らはつるくらいまではやってないですね(笑)。つらいメニューといえば、逆にわかってもらえると思うんだけど、シャドーがつらいですね。スパーリングだとか、派手な練習は楽しいのですが、鏡の前で基礎の確認とかシャドーボクシングは嫌いですね、相手がいないので。つまらないし、集中力が切れるし、走りや筋トレに比べて意味がわかりづらいというところがあります。

――部としては、どのくらいのペースで練習されているのですか

垂水 月曜日がオフで、週6回練習しています。

梅津 同じですね。

――何時間くらいの練習なのですか

田室 2から2時間ちょっとです。

梅津 僕らも、伸びて2時間半くらいですね。そんな長くやれるものじゃないので。

垂水 凝縮して、内容の濃い練習をしています。

梅津 野球とかアメフトと違って3分×3ラウンドなので、そのぐらいですね。

――お話変わるのですが、みなさんは好きなボクサー、憧れるボクサーはいますか

垂水 ベタなのですが、マイク・タイソンという選手の動画を何回も見ていてかっこいいなと思い、ボクシングを始めるキッカケとなったので好きなボクサーです。

田室 僕は、一個上の先輩に赤井さん(雄介、政経5=兵庫・六甲)という方がいるのですが、一般入試で入って未経験から始めたのですが、早慶戦でも勝ちましたし、入れ替え戦でも勝ったので、間近で見ていてすごいなと思っています。

梅津 あれは熱かったね、俺らの中でも赤井の衝撃って呼ばれています(笑)。予想されていた階級と違って、当日計量の時にざわつきました。伝説ですね。

木村 好きなボクサーはあまりいないのですが、コーチが勧めてくれて動画を見たサーシャ・バクティンっていう選手がいて、距離を取って戦う自分とタイプが似ている部分がすごくあったので、勧められた選手という意味でサーシャですかね。

田室 その選手、淡海も好きですね。

梅津 サーシャは速いよね。僕は、最近エロール・スペンス・ジュニアという選手がいて、ロンドンの代表でサウスポーのウェルター級なんですけど、熱いですね。最近ハマってます。

「悔いの残らないように頑張りたい」(垂水)

明るく、場を盛り上げていた梅津

――今季の早大、慶大それぞれの試合を振り返っていかがですか

垂水 そうですね、2部復帰を目指して頑張っていたのですが、ことしは2部に昇格することができなかったので、らいねんの目標になってくると思うのですが、目標が達成できなくて悔しかったです。

田室 僕も同じですね。ただ、後輩がすごく頑張っていて、強い選手がたくさんいるので次第に代替わりができているのかなと思います。

木村 個人的にはリーグ戦と絡むことができず悔しかったですし、チームとしても目標であったAクラス、3位以内にギリギリ届かなかったので悔しいという気持ちはあります。

梅津 個人としては、テーマであった集中するという部分では、最後の専大との試合ではできたと思いますね。チームとしては規律正しく、当たり前のことをして不祥事を起こさなかったのがよかったです。

――早慶戦を間近に控えていますが、調整の具合はいかがですか

垂水 バッチリ調整できています。

田室 そうですね、僕も何級でも出られるように頑張っています。

木村 いい試合ができるように、バッチリ仕上がっています。

梅津 ちょっと風邪が・・・。バッチリ仕上がっています!(笑)

――現在の部の雰囲気はいかがですか

田室 後輩たちの活気がすごくて、僕たちが気押されているくらいですね。まだ代替わりしてはいないのですが、そういう勢いになっています。

梅津 僕たちもそうですね、下から突き上げてくる感じです。

――早慶戦は、普段の試合とは雰囲気が違ったりもするのですか

垂水 年内最後の試合ですし、早慶両校盛り上がって、リーグ戦と同じくらいに位置付けられている試合だと思っています。

――歴代の早慶戦の中で、特に印象に残っている試合はありますか

垂水 去年の早慶戦なのですが、赤井さんと杉山選手(知義、慶大)の試合が印象に残っています。一つ前で言うと、慶大の三浦さん(三四郎)と伊藤未来也さん(平27スポ卒=東京・駿台学園)の試合も印象に残ってますね。

梅津 僕らが2年生の時の、淡海と折敷出(陸、慶大)の試合で、淡海が勝った試合なのですが、淡海は2年生のときリーグ戦で勝てていなかったんですよ。でも最後の試合でうちが負けちゃって、ああ最後までしっかり練習頑張っていたんだなと印象的ですね。

田室 淡海は、1、2年生のときはリーグ戦で勝てなかったのですが、ずっと練習を頑張っていて、3、4年生では活躍してくれましたね。

木村 僕は、1年生の頃の彼(梅津)の試合ですね。彼だけじゃなく田中(和樹、慶大)もなんですけど、同期の1年生がこんなに頑張っているんだと思って、そういう意味で刺激を受けましたね。

冷静に、自らの思いを語ってくれた木村

――早慶戦のなかで、注目してもらいたいポイントはどこですか

垂水 全てです。

田室 応援ですね、すごく観客も盛り上がります。

梅津 見どころは、これから社会に飛び出す4年生が見せる最後の殴り合いってところじゃないですか。そこが一番盛り上がると思います。

木村 過去の試合を見てきても、4年生がすごく頑張っていて印象的な試合見せるのは4年生が多いと思うのでそういう意味では頑張りたいなと思います。

――早慶戦で勝つためにはどのようなことが必要だとご自身ではお考えですか

田室 個人としては、ちゃんと練習に行くことですかね。夏休み中、フィリピンに一人旅とか行って練習に行かなくて、部員から「お前なんなんだ」と怒られたので(笑)。チームとしては、本当に後輩がしっかりしてくれているので最後4年生がしっかりしてまとめないといけないなと思っています。

垂水 僕は、個人としてもチームとしてもなんですけど、『慶大には絶対負けん』という気持ちですね。最後は気持ちの勝負になってくると思うので、そこが大事な部分になってくるのではないかと思っていますね。

木村 3分×3ラウンドの一番最後にモノをいうのは気持ちだと思いますし、応援とかの面でもチームを勝たせるという気持ちが大事で、なんだかんだ気持ちが一番大事なのかなと思います。

梅津 葛藤に打ち勝つことですかね。これはみんなわかると思うんですけど、4年生のこの時期、進路が決まったりしていてぶっちゃけボクシングを今やっている意味があるのかという葛藤がたまに僕はあります。

田室 ありますね(笑)。

梅津 やめちゃうのはもったいない、ここでやめるのはどうなのかと。でも社会に出ることに必要なイコールの問題ではないじゃないですか。この葛藤に打ち勝つのがキーだと思います。

――みなさんにとって、早慶戦とは

田室 人生そのものですね。

木村 人生のハイライト的な位置付けになり得るものだと思います。

垂水 確かにハイライト的な位置付けで、もうこうやってスポーツに打ち込んでやることもなかなかないかもしれないですし、木村くんが言ったように最後ここで締めるじゃないですけど持っているものを出し切ってよかったって思えるような舞台ですかね。そういう舞台にしたいですし、そういう舞台だと思っています。

梅津 ボクシング人生最後の試合ですし、7年間の集大成としか言いようがないですね。

――最後に、早慶戦への意気込みをお願いします

梅津 勝ちますは、なしな(笑)。

一同 (笑)。

垂水 自分にとっては、最初で最後の早慶戦なので、悔いの残らないように頑張りたいなと思います。

田室 そうですね、僕も4年間ボクシングをやってきて最後の試合になるので、悔いが残らないように全て出し切りたいと思います。

木村 実は僕、早慶戦に出たことがないのでことし出るとしたら初めて出ることになりますし、部内の競争をまず勝たないといけないので出られるか出られないかはまだ分からないのですが、日々の練習から頑張ってそこで成長した部分を早慶戦でぶつけたいと思います。

梅津 ディフェンスマスターを自負している僕にとっての最後のダッキング見ていて下さい!

――ありがとうございました!

仲の良さが見えた四人(左から木村、梅津、田室、垂水)

(取材・編集 寒竹咲月・新津利征)

◆田室慶多(たむろ・けいた)

1993(平5)年5月13日生まれ。広島・修道高校出身。人間科学部4年。冗談を交えながら、明るく質問に答えてくれた田室。全てを出し切る、と早慶戦への気合いは十分だ。

◆垂水裕嵩(たるみ・ひろたか)

1992(平4)年4月13日生まれ。愛媛・今治西高校出身。法学部4年。最後は、気持ちが大事だと語ってくれた垂水。熱い気持ちで、早大を勝利へと導く。

◆梅津志門(うめづ・しもん)

神奈川・慶應義塾高校出身。商学部4年。終始、場を和ませていた梅津。1年生の頃から早慶戦への出場を果たしている実力者が、早大の連覇をおびやかす。

◆木村優志(きむら・ゆうし)

神奈川・慶應義塾高校出身。理工学部4年。話すのが苦手だと言っていた木村だが、しっかりと質問に答えてくれた。早慶戦での活躍に注目だ。