今年で創部77年を迎えたフェンシング部。6月18日、早大の大隈ガーデンハウスにて祝賀会が行われ、稲光会(OB・OGの集い)会員、現役部員など総勢180名の関係者が祝杯をあげた。
早大フェンシング部は、剣道部を母体として1946年に誕生。第二次世界大戦後、軍国主義につながるとして禁じられていた剣道の代わりにフェンシングが取り入れられたのがことの始まりだ。1953年に男子エペが関東学生リーグ選手権(リーグ戦)、王座決定戦(王座)、全日本選手権優勝の3冠を達成すると、1955年から男子フルーレがリーグ戦と王座で3連覇、さらに男子サーブルも1956年から同大会で2連覇するなど、創部まもない頃から強豪として名をとどろかせた。1996年に女子エペがリーグ戦、王座で優勝してからは女子も注目されるように。今もその強さは健在で、毎年多くの有力選手が早大フェンシング部の門をたたき、輝かしい功績を収め続けている。
総勢180名の関係者が集った
ここで、日本フェンシング協会会長の千田健一氏の祝辞を一部紹介したい。
「創部から現在にいたるまで、学生フェンシング界のトップリーダーとして活躍され、日本フェンシング界の頂点に立つ選手も多数輩出されております。(中略)まさに早稲田大学の戦績が、わが国の競技成績を物語っていると言っても過言ではないのかなというふうに思います。私自身、学生時代に関東リーグにおいて同じ一部校の好敵手として、早稲田大学の先輩、同級生、後輩たちの活躍に多いに刺激され、努力を重ね、今の自分があると思っております。当時、お互いに一部校というプライドを持って、そして学生界のトップリーダーとして熱い戦いをずっと続けてきたという記憶が、今でも鮮明に残っています。そして私の早稲田生の一番の記憶は、ピスト上においても勝負だけにこだわらない、常に紳士な態度で騎士道精神にのっとった試合を行っていたという点にあります。その姿勢はピスト外においても変わることなく、学生スポーツの在り方を率先し、フェンシングを通じた人格の形成を大切にするという伝統を見事に受け継ぎ、実践していたということかと思います。とかく現在、選手たちは勝負だけにこだわるという風潮がやや気になるところです。やはり、相手を敬う精神、騎士道精神がおざなりになっている場面をよく目にします。だからこそ、これからの日本フェンシング界は、早稲田大学が受け継いできた伝統を手本として、世界の強豪国としてフェンシング競技の発展にまい進してほしいと、会長としてそう願うばかりです」
この言葉からわかるように、早大フェンシング部は競技面のみならず人間性までも高い評価を受けてきた歴史がある。これは2年間取材を続けてきた記者としても大いに共感できる部分だ。勝っても負けてもチームの雰囲気はどこよりも明るく、部員1人1人からあふれるオーラには目を見張るものがある。実力はトップレベルでありながら、それにおごることなく誰に対してもフラットに接する姿勢は、競技者としての真の強さを物語っているだろう。
松山恭助(令2スポ卒=現JTB)や加納虹輝(令2スポ卒=現JAL)など、フェンシング界の最前線で活躍する選手を数多く輩出してきた早大。これからも誇りある伝統を胸に戦う選手たちに陰ながらエールを送りたい。
祝辞を述べる日本フェンシング協会会長の千田健一氏
左から藤澤将匡主将(スポ4=宮城・仙台城南)、ダグラス・ビューワニック副将(スポ4=埼玉・星槎国際)
(記事、写真 槌田花)