両種目ともヤマ場を越えられず…

フェンシング

 全日本選手権(全日本)は最終日を迎えた。男子エペはシード3人を含む4人が出場。メダルも期待されたが苦戦を強いられ、終わってみれば安雅人(スポ4=茨城・水戸一)のベスト8が最高と物足りない結果に。一方女子サーブルは、3人が2回戦に進出するもそこから勝ち上がることができず。両種目とも全日本の厳しさを痛感することとなった。

★高き2回戦の壁…3人がベスト32という結果に(女子サーブル個人)

 3年連続で全日本個人戦の出場を果たした齊藤里羅子(スポ4=山形東)。1回戦は安定してアタックを決め、勝利を収めると、2回戦では昨年の全日本チャンピオン・江村美咲(中大)と対戦。相手のペースに飲まれたくないところだったが、思うようにポイントを取れず、金星を挙げることはできなかった。黒田ほのか(スポ1=香川・三本松)は初戦で櫛橋茉由(京都クラブ)との対決に。格上の相手ではあったが、競った試合展開になる。13-14とマッチポイントこそ取られたが、そこから2連続で攻撃を決め、嬉しい全日本初勝利を挙げた。しかし、2回戦は思うように攻めることができず、悔し涙を飲む結果となった。
 2年ぶりの全日本となった木村結(スポ4=山口・柳井学園)は初戦。「前へ出るように意識して自信を持ってプレーした」(木村)と振り返るように、積極的に仕掛けたことが功を奏した。試合を通じて主導権を握り、2回戦に進出する。続く相手は昨年までエースとして早大を引っ張ってきた佐々木陽菜(平31スポ卒=現ANA)。お互いに手の内を知る対戦となったが、「自分のリズムで動けなかった」(木村)と相手のスピードに翻弄される形に。悔しいベスト32で全日本を終えた。
印象付ける結果を残すことはできなかったが、昨年の全日本出場者が2人だったこと、そして今年の結果を鑑みれば、選手の成長は明らかだ。次の大会は残り1か月をきった関東学生選手権(関カレ)。「努力して、しっかり試合に臨めるように」(木村)と選手は前を向いている。思う存分実力を発揮したい。

佐々木(左)との対戦に挑んだ木村(右)

★安のベスト8が最高と、まさかの結果に(男子エペ個人)

 全日本学生王座決定試合(王座)を制すなど、実力者ぞろいの早大男子エペ。昨年の全日本個人戦でベスト8に入った3人の中心に、上位進出が期待された。だが日本最高峰の大会は甘くなかった。加納虹輝(スポ4=山口・岩国工)と安は2回戦から登場。加納の初戦は、村上健太郎(法大)相手にシーソーゲームとなる。「負けてもおかしくはない試合だった」(加納)が、最後は何とかアタックを決め逃げ切った。2回戦のすぐ後に行われた3回戦。「体力があまりなくて、できることが少なくなってしまった」(加納)と、2回戦の疲労を取り切れないまま迎える形に。それでも落ち着いた試合運びで、セカンドセットまでは安定して試合を進める。だが、ファイナルセットは一転相手のペースに。逆転されると、終盤のフレッシュも決まらない。実力を出しきれなかった加納はまさかの3回戦で姿を消すことになった。
安は2回戦を順当に突破。だが3回戦は思い切りのいい相手の攻撃に対応しきれない。しかし、「相手の狙いが分かってきたことと、自分が取れているポイントを頭の中で整理できた」(安)と振り返るように、冷静に試合を分析。ファイナルセットはポイントを重ね、一気に勝利を手繰り寄せた。準々決勝は前の試合で加納を破った松本龍(王子総合)との対戦に。長いリーチとスピードを武器に、インターハイ準優勝の結果を残している難敵だ。試合は、「自分がシングルを取るべきところで取れなかった」(安)と中盤以降は相手のペースに。6連取を奪われるなど精度の高い突きに対応できず。日本一の挑戦は、ベスト8で幕を閉じた。
 思うように実力をだすことができず、悔しい結果になったが今後の課題は見えた。1か月後の関カレでは悔しさを糧に入賞を目指す。また団体は五冠を懸けて負けられない戦いを迎える。不本意な秋のシーズン開幕となったが、ここからの巻き返しに期待だ。

準々決勝終了後、悔しさをにじませる安(左から2番目)

(記事、写真 小原央)

※エペ:全身が有効面となる上に、両選手が同時突きをすると両者にポイントが与えられる。より慎重な攻め方が求められるため、時として両者が睨み合ったまま時間が過ぎることは稀な話ではない。

※サーブル:両腕も含む上半身への突きと切り(剣先ではなく剣の胴部分で相手の体に触れること)が得点となる。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は相手の攻撃を防御してから攻撃しなければならない。この攻撃権の奪い合いにより、両選手はピスト上を常に前後に往復し合うため、サーブルは3種目の中で最も全身運動が激しい種目だと言える。

結果

▽男子エペ

安雅人(スポ4=茨城・水戸一) 6位

2回戦:◯15-3 津江碧(平28スポ卒=現・山口クラブ)

3回戦:◯15-9 二ノ宮浩輔(同大)

準々決勝:●8-15 松本龍(王子総合)

加納虹輝(スポ4=山口・岩国工) 9位

2回戦:◯15-14 村山健太郎(法大)

3回戦:●11-14 松本龍(王子総合)

増田陽人(商2=岡山大安寺中教校) 17位

1回戦:◯15-7 金田和樹(東農大)

2回戦:●13-15 吉田育男(日体大)

金髙大乘(社1=香川・高松北) 27位

1回戦:◯15-4 井上誉聡(立命大)

2回戦:●13-15 伊藤心(自衛隊)

▽女子サーブル

木村結(社4=山口・柳井学園) 22位

1回戦:◯15-7 味岡祐奈(アクトス)

2回戦:●5-15 佐々木陽菜(平31スポ卒=現・ANA)

齊藤里羅子(スポ4=山形東) 28位

1回戦:◯15-11 笠沙彩(日大)

2回戦:●7-15 江村美咲(中大)

黒田ほのか(スポ1=香川・三本松) 32位

1回戦:◯15-14 櫛橋茉由(京都クラブ)

2回戦:●4-15 井塚千晶(日大)
佐野友香(スポ4=静岡・沼津西) 50位

1回戦:●8-15 浦野夏菜(警視庁)

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コメント

加納虹輝(スポ4=山口・岩国工)

――今日の結果をどのように捉えていますか

結果は悪かったですけど、調子をピークに持っていくのは2か月後のW杯なので、調整の1つと捉えてポジティブに考えています。

――スーパーシードでの出場でしたが、試合の入りはいかがでしたか。

――今日の結果をどのように捉えていますか

結構しっかりアップしたので、試合の入りは悪くなかったですね。

――2回戦は接戦になりましたが、勝ちきった要因は何だと考えていますか

負けてもおかしくはない試合だったんですけど、後半1点リードできたことかなと思います。

――村山健太郎(法大)選手とは昨年の全日本でも対戦しましたが、意識はありましたか

全日本以外の国内大会でもけっこう当たったことがあるので、「またか」という感じでした。

――3回戦の松本龍(王子総合)選手の対策はありましたか

特に対策はなくて。ただ、その前の試合が終わったあとすぐ始まったので、自分のできることが少なくなってしまって。実は今体力があまりなくて、できることが少なくなってしまったので、対策とかはなかったです。

――負けてしまった要因も体力的な部分になってくるのでしょうか

そうですね。僕が思っていた以上に体力がなかったので、そこは大きいかなと思います。

――今後の意気込みをお願いします

これからまたW杯が始まっていくので、そこで結果を残して五輪に出場することが目標です。

木村唯(スポ4=山口・柳井)

――2年ぶりの全日本選手権(全日本)でしたが、緊張はありませんでしたか

全日本に向けて緊張しないように練習を頑張ろうと思っていて、自分に自信を持てるくらいには練習を頑張れたので、緊張はしなかったです。

――トーナメントの2試合を振り返っていただけますか

1試合目の相手は何度か当たったことがあったのですが、今まで勝てたことがなくて。挑戦するではないけど立ち向かう気持ちで、前へ出るように意識して自信を持ってプレーしたら自然と結果も付いてきたので、1回戦目を勝てたときは少し安心しました。

――2回戦はいかがでしょうか

佐々木陽菜(平31スポ卒=現ANA)先輩も試合で当たることが多くて。佐々木先輩にも1回も試合で勝てたことがなかったのですが、たまに一緒に練習することがあって、どういうプレーをするかは分かっていたんですけど、それでも相手のペースに流されて、自分のリズムで動けなくて。最初から最後まで相手のペースで試合が進んでしまって、そこが敗因かなと思います。

――佐々木選手との試合でやりづらさはありませんでしたか

スピードが早くてフットワークがあって、動ける選手なので、普段の大学の大会ではそういう選手はいないので、そこは結構苦戦しました。

――今回の結果をどのように捉えていますか

大学で最後の全日本選手権で今までもベスト32止まりでそこを越えたいなというのが自分の中にあったんですけど、今回も同じ結果になってしまって、そこの壁を越えることができなくて、すごく悔しい気持ちでいっぱいです。

――今後の課題は何でしょうか

課題は負けた試合とか相手にすごくビビってしまって、自分のプレーができなくて。どんな相手が来ても強い気持ちを持って、自分のペースで試合展開ができたら、もうちょっと勝てるようになるのかなと思います。

――関東学生選手権(関カレ)に向けて意気込みをお願いします

最後の関カレなので、関カレまで少ししかないんですけど、誰よりも努力して、しっかり試合に臨めるように。今回の試合で見つかった課題をもとに練習を頑張っていきたいと思います。

安雅人(スポ4=茨木・水戸一)

――今の結果をどのように捉えていますか

最低限の結果は残せたかなとは思うんですけど、やっぱり準々決勝で当たった相手には負けちゃいけないと思っていたので、そこで気持ちの差じゃないですけど、負けてしまったのかなと思います。

――今日の3試合を振り返っていただけますか

ベスト32からのスタートで、いつも以上に入念にアップをして臨めたので、予選から入ってきた選手とはあまり大差なく戦えたかなと思います。

――3回戦のファイナルセットで得点を重ねることができた要因は

相手の狙いが分かってきたことと、自分が取れているポイントを頭の中で整理できたことが、最後のセットで連取できた要因かなと思います。

――準々決勝で対戦した松本龍(王子総合)選手の対策はありましたか

昨日まで合宿で一緒に練習していたので、その時も勝ったり負けたりだったんですけど、特にこれといった対策をしようというわけではなくて、いつも通りにやろうといった感じです。

――松本選手にやりづらさはありましたか

今日の彼はポイントの精度が良くて、絶対の僕の点だなというのもしっかりどこかしら突いてきていたので。僕もどこをついているのか分からないぐらいだったので、自分がシングルを取るべきところで取れなかったところが敗因かなと思います。

――今後の課題はありますか

試合のどこかで気持ちが切れちゃうところがあったので、1試合通して同じモチベーションで熱くなりすぎず、冷めすぎずやれるようなメンタルの持ち方をしていきたいなと思っています。

――関東学生選手権(関カレ)は出場されますか

はい、でます。

――関カレの意気込みをお願いします

個人は昨年は5位だったと思うので、それ以上の結果を、できれば優勝を目指したいと思います。団体は五冠がかかっているので、後期一発目で優勝して、インカレ(全日本学生選手権)、全日本とつなげられたらと思います。