男子は加納、安が惜しくも準決勝敗退。女子は佐々木がベスト16

フェンシング

 全日本選手権(全日本)は3日目を迎え、男子エペと女子サーブルの個人戦が行われた。男子エペには早大から4人が出場し、安雅人(スポ3=茨木・水戸一)と加納虹輝(スポ3=山口・岩国工)がベスト4、増田陽人(商1=岡山大安寺中教校)がベスト8入りを果たすものの、決勝進出はかなわなかった。女子サーブルは2人が出場。早大フェンサーとして挑む最後の全日本となった佐々木陽菜(社4=東京・大原学園)は、前年と同じベスト16で今大会を終えた。

★加納、安が4強入りも…(男子エペ個人)

 前年3位という結果に終わり、今年はそれ以上の結果を目指して大会に臨んだ安。1回戦から接戦を勝ち切り、勢いに乗って準々決勝に進む。ベスト4を懸けた試合では、第1セットは相手にリードを許すものの、「点を取られてもまたすぐ取り返せる」(安)と気持ちを入れ直し、第2セットは相手に食らいつき徐々にペースを作っていく。そして最終セットで3連続と4連続ポイントを挙げ、一気に相手を突き放すことに成功。終盤に相手の反撃に押される場面もあったが、15-12で勝ち切ることができた。迎えた準決勝、対戦相手はここまで隙のないフェンシングで勝ち上がってきた伊藤心(自衛隊体育学校)。「相手のミスを取って、リードを取る」(安)ことを意識し、時間をかけてポイントを重ねていく。しかし相手も崩れず、試合は膠着(こうちゃく)状態に。最終セットに入ってもどちらに流れがいくか分からない展開が続くが、試合時間残り4秒で相手にシングルでの得点を決められてしまう。これが手痛い1点となり、悔しい敗戦を喫してしまった。

準決勝終了後の安

 一方2年ぶりの全日本出場となった加納は、1回戦、2回戦と順当に勝ち上がる。3回戦では激しい攻防が繰り広げられる好ゲームになったが、最後に貴重な一本を奪い、白星を獲得する。続く準々決勝で当たったのは日本でも有数の実力者である宇山賢(三菱電機)。試合は慎重な試合運びが展開され、お互い相手の出方を待つ時間が続く。これが終盤まで続き、決着は1分の延長戦に持ち越された。1点が勝敗を大きく左右する延長戦だが、先に相手に一本を取られてしまう。しかし「取れるチャンスもたくさんあった」(加納)と、冷静に一本を奪い返すと、残り8秒でついに勝ち越しの突きが決まる。相手のフレッシュもしのぎ切り、勝利をもぎ取った。準決勝ではナショナルメンバーとして、共に世界で戦っている見延和靖(NEXUS)と対戦。試合は序盤から経験で勝る相手の揺さぶりに苦しめられる展開に。積極的に仕掛ける場面も多かったが、流れをつかむことはできず。2年越しのリベンジとはならなかった。

 初めて早大フェンサーとして全日本に挑んだ増田は、危なげなく2回戦を突破し、3回戦で自身が尊敬していると語る早大OBの坂俊甫(平21第一文卒=現三井物産)との対決が実現。立ち上がりは「自分の取れるシチュエーションで全く点数が入らない」(増田)と相手の動きに翻弄(ほんろう)される。しかし後半に入って「距離とタイミングだけを狙う」(増田)意識に切り替えると、最終セットで同時突きを含む8連続得点で、ゲームの流れを奪う。勢いそのままに勝利を手にした。続く準々決勝、対戦相手は3回戦で小野真英主将(スポ4=埼玉栄)を撃破した見延。格上の相手だったが、序盤から自分の実力を発揮し、互角の戦いを演じる。だが、「後半で体力がなくなった」(増田)と語るように4連続得点を食らうなど、思うようなプレーをすることができず。徐々に相手のプレーに飲まれてしまい、金星を挙げることはできなかった。

 実力者のそろう男子エペだが、決勝の切符をつかむ者はいなかった。しかし敗戦こそ喫したが、各々手ごたえと課題を見つけることができた収穫の多い大会となっただろう。そして次に行われる試合は、今年最後の試合である全日本の団体戦。今年の男子エペ団体は思ったような結果が出せていないが、各選手には勝てる力があるだけに、自分の力を出すことができれば、自ずと優勝は見えてくるはずだ。「小野さんと組める最後の大会なので絶対に優勝したい」(加納)との言葉通り、栄冠をつかみ、有終の美を飾れるか注目だ。

(記事 小原央、写真 藤岡小雪)

★佐々木はベスト16で全日本を終える(女子サーブル個人)

 早大から2人が出場した女子サーブル。全日本の団体戦の出場権が得られなかったため、これが今年最後の公式戦になった。このうち佐々木は1回戦を不戦勝で勝ち上がり、続く2回戦も気持ちの入ったプレーで、どちらに転ぶか分からなかった接戦を勝ち取る。ベスト8を懸け、挑んだ準々決勝。試合は前に出ていく積極的なプレーがはまり、佐々木のペースで試合が進んでいく。しかし8-4で折り返した後半から歯車が狂いだす。相手の反撃に対応できず、ずるずると点差を縮められてしまう。「相手と点が離れていても、余裕がなかった」(佐々木)と、追い込まれた心理状況が自分のプレーに影響をしてしまった。最後は13-13から2連続で得点を許し、敗戦。試合後は涙をこらえ、佐々木の全日本での挑戦は幕を閉じた。

2回戦で、接戦を制した佐々木

 今後もフェンシングを続けると話す佐々木。後輩には「常に自分のベストを尽くして、最大限努力をしてほしい」(佐々木)と語った。早大女子サーブルのエースとして、チームを引っ張ってきた佐々木がワセダに大きな功績を遺した。そして佐々木の背中を見てきた後輩が、来年から早大女子サーブルをけん引していく。佐々木の意思を果たすことはできるか。

(記事 小原央、写真 柴田侑佳)

 ※エペ:全身が有効面となる上に、両選手が同時突きをすると両者にポイントが与えられる。より慎重な攻め方が求められるため、時として両者が睨み合ったまま時間が過ぎることは稀な話ではない。

 ※サーブル:両腕も含む上半身への突きと切り(剣先ではなく剣の胴部分で相手の体に触れること)が得点となる。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は相手の攻撃を防御してから攻撃しなければならない。この攻撃権の奪い合いにより、両選手はピスト上を常に前後に往復し合うため、サーブルは3種目の中で最も全身運動が激しい種目だと言える。

結果

▽男子エペ

加納虹輝(スポ3=山口・岩国工) 3位

1回戦:◯15-6 井上誉聡(愛工大名電高)

2回戦:〇15-4 河西遼太(長野クラブ)

3回戦:◯15-14 村山健太郎(法大)

準々決勝:◯11-8 宇山賢(三菱電機)

準決勝:●11-15 見延和靖(NEXUS)

安雅人(スポ3=茨城・水戸一) 3位

1回戦:◯15-10 田尻航大(中大)

2回戦:〇15-13 萩原広樹(宇都宮FC)

3回戦:◯15-13 篠原瑞公(同大)

準々決勝:◯15-12 小田康平(朝日大)

準決勝:●11-12 伊藤心(自衛隊体育学校)

増田陽人(商1=岡山大安寺中教校) 6位

2回戦:◯15-8 佐々木瞭(新潟クラブ)

3回戦:〇14-11 坂俊甫(平21第一文卒=現三井物産)

準々決勝:●10-15 見延和靖(NEXUS)

小野真英主将(スポ4=埼玉栄) 14位

1回戦:◯15-14 佐々木優人(日体大)

2回戦:◯15-7 齋藤憲司(専大)

3回戦:●10-15 見延和靖(NEXUS)

▽女子サーブル

佐々木陽菜(社4=東京・大原学園) 11位

1回戦:◯不戦勝 石井遥(岡山クラブ)

2回戦:◯15-14 雨田由香(中大)

3回戦:●13-15 浦野夏菜(警視庁)

齊藤里羅子(スポ3=山形東) 43位

1回戦:●8-15 矢幡侑菜(朝日大)

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コメント

佐々木陽菜(社4=東京・大原学園)

――今回の目標は

最低ベスト8で、良くてメダルは欲しいなと思っていました。

――ベスト16に終わった今のお気持ちは

予選から内容自体はそんなに悪くないかなと思っていて。気持ち的にも声を出すことを意識して、強気でやるということを考えていました。けどやっぱり、最後点差が均衡している中で勝ちきれなかったのはすごく悔しいです。

――2試合目は最後にまくられて敗戦しましたが、反省点は

技術的にというより、気持ち的に最初から追い込まれていて。相手と点が離れていても、どうしても余裕がなかったです。どういった技で点を取れているか、というのを考えながら試合できなかったので、技術というより気持ちで負けたかなと思います。

――試合後は涙をこらえていましたが

勝ちきれなかった悔しさしかなかったです。

――4年生ですが、卒業後もフェンシングを続けますか

企業に所属してフェンシングを続ける環境を用意していただいたので、またそこでも頑張ります。

――最後の早大の後輩にメッセージを一言お願いします

フェンシングに打ち込めるのも今しかないと思うので、常に自分のベストを尽くして、最大限努力してほしいなと思います。悔いのないようにフェンシングをやりきることがその次のキャリアにもつながると思うので、フェンシングと、自分と向き合って、ステップアップしていってもらいたいです。

加納虹輝(スポ3=山口・岩国工)

――きょうの個人3位という結果はどのように受け止めていますか

今回は予選からそんなに調子いいなという感じではなかったので、そこから考えると内容的にもトータル的にも悪くはなかったかなと思います。

――準々決勝では時間内に決着がつかず、1分の延長戦となりました。その中で相手に一本先取されてしまいましたが、焦りなどはありましたか

特に焦りはありませんでした。まだ24秒あって、取れるチャンスもたくさんあったと思っていたので、気持ちとしては大丈夫でした。

――準決勝では日本代表として共に戦う見延選手との対戦でした。普段から交流はあるのでしょうか

もちろん、同じナショナルチームとして良くしていただいています。10個上の先輩なので。

――ではお互いに手の内を知り尽くした相手かと思いますが、対戦するにあたって作戦などはありましたか

特にはなかったです。普段本当に毎日一緒に練習しているので、これといって特別な対策とかはしていませんでした。

――2年前にもこの大会で対戦されていますが、当時と今を比較して成長を実感する部分はありますか

2年前は対戦してみてもまだまだ勝てないなと実感したんですけど、今回は勝つチャンスはまだまだあると思えた試合だったので、自分としては成長かなと思っています。

――最後になりますが、団体戦へ向けての意気込みをお願いします

団体戦は小野先輩と組める最後の大会なので絶対に優勝したいです。先輩の学生最後の大会を良い思い出で終わってほしいと思うので、全力を尽くしたいと思います。

安雅人(スポ3=茨城・水戸一)

――前年と同じ3位という結果になりましたが、今の気持ちはいかがですか

最初は当たりがしんどかったんですけど、他のヤマに比べたら割と楽なのかな、と思っていました。準決勝の相手に勝って決勝に残って、本物だと思われたかったので、すごく残念です。

――準々決勝の試合は、序盤は劣勢だったように見えました。何を考えながらプレーしていましたか

相手も大学生で、インカレの成績を考えれば自分の方が強いということは思っていたので、点を取られてもまたすぐ取り返せるぞと焦らずにやりました。

――準決勝の試合前には何を意識していましたか

とにかく自分より格上だと思っていて。相手を焦らすという意味では相手のミスをしっかり取って、リードしてゲームを展開していこうと思っていたので、序盤ははまって良かったのかな、と思っています。

――準決勝の試合は1点を争う試合になったと思います。振り返っていかがですか

向こうの方が1点を取る気持ちが強くて。自分の体が引いてしまった部分があって、相手にシングルを付かれてしまって。そういうところを次は改善していこうと思います。

――最後に団体戦の意気込みをお願いします

メンバー的には間違いなく強いと思うので。昨年はそう言いながら2回戦負けだったので、油断せずに1試合1試合勝っていって、それが結果的に優勝につながればいいかなと思います。

増田陽人(商1=岡山大安寺中教校)

――今大会の目標は

別会場(東京グローブ座)で試合をするっていうのが一番の目標で、ベスト8というのは自分の中では中目標ぐらいでした。

――ベスト8という結果については、うれしさと悔しさとではどちらの方が大きいですか

少しうれしさはあるんですけど、先輩が2人ともベスト4に残って3位になったのを見ると、悔しさがすごく込み上げてきてきました。

――初戦では、前半前に出て攻めていましたが、第2セットあたりから、あまり前に出ずに点を取るという戦い方に見えました。意識してのことだったのでしょうか

1セット目で前に出て、剣のタイミングが合わないなというのはすごく感じていていました。だから1回気分を変えて、守りを主体でやればもう少し違う流れになるのかなと思って守りに徹しました。

――3回戦目では早大OB坂選手との対戦でした。序盤リードを許しましたが、徐々に接戦にもつれ込み、勝利をもぎ取りました

いつもよく練習をさせてもらっているんですけど、序盤自分の取れるシチュエーションで全く点数が入らなくて。そこで簡単に出してしまったところで、点数を重ねられてしまいました。体力面では自分の方が上なんですけど、やはり坂先輩はキャリアも長いので、ゲームメークセンスというのは坂先輩の方があって。勝つ流れというのはすごく知っていたので、戸惑っていました。でも後半はいろいろなことを考えるのをやめて、距離とタイミングだけを狙って勝負しようと切り替えられたのが、勝因だったのかなと思います。

――続く準々決勝で、格上の見延選手と対戦しましたが、どのような心境で試合に臨みましたか

正直言うと、ボコボコにされるんじゃないかなと言う気持ちは最初ありました。でも意外と練習の時よりも試合と練習は違い、守りに行ったら守れるなと感じて、もしかしたら勝てるんじゃないかと言う気持ちに変わっていったんですけど…。

――2度逆転に成功する場面も見られましたが

相手は強い選手なので、体力を残しながら勝ち上がってきて。僕は全力でやってきたので、後半で体力不足で体力がなくなって、簡単に出してしまってリポストを食らってしまいました。

――そこが今回の敗因でしょうか

そうですね。最後、簡単に出し過ぎました。もっと粘って同じかたちでやればよかったかなと思います。

――全日本団体戦に向けて、一言お願いします

全日本団体は、優勝が目標です。けど準決勝で、自衛隊体育学校と当たって、そこがめちゃくちゃ強いんですよ。そこにしっかり勝てるように、これから調整と練習をしていきたいと思います。