両種目共、ヤマ場を越えられず…団体戦は悔しい幕開けに

フェンシング

 トーナメント方式で試合が進む場合においては、「ヤマ場」というものが存在する。そこを乗り切れるかどうかが勝負の分かれ目となるが、今回女子フルーレは準々決勝、男子エペは初戦からヤマ場を迎えた。しかし結果はどちらも敗北。悔しいかたちで全日本選手権(全日本)団体の幕が開けることとなった。

☆熱戦を繰り広げるも、あと一歩届かず…(女子フルーレ団体)

 1、2回戦で順調に高校生を倒した早大は、準々決勝で全日本個人王者東晟良率いる和歌山北高と対戦。第1セットから、溝口礼菜(スポ1=千葉・柏陵)対東という両校のエース対決となる。個人戦では東に歯が立たなかった溝口であったが、今回は違った。試合開始直後に3連取を奪われたものの、そこから意地の5連取で点差をひっくり返す。強豪校相手にリードした状態で第1セットを終えるという、幸先のいいスタートを切った。そのまま第4セットまでは点差をつけた状態で試合を進めたが、第5セットで再び登場した東に、早大は猛追を受けることとなる。9連取を許し、4点のリードから5点ビハインドという状況に。続く第6セットで登尾早奈(スポ1=愛媛・三島)が、個人戦で敗北を喫した巾下栞奈(和歌山北高)相手に3点プラスで回すが、それでも逆転はかなわなかった。だが第8セットで溝口が奮闘。8点あった差を完全になくし、39−39の同点で最終セットを迎えることに成功した。最後回りを務めるのは登尾。試合直前に最後回りが決まったという登尾だったが、「心のどこかでビビってしまっていた」と自分の思うようなプレーができなかった。結果として東から5連取を決められ、早大女子フルーレ陣の全日本は幕引きとなった。

準々決勝で最後回りを務めた登尾

 関東学生選手権(関カレ)、全日本学生選手権(インカレ)、そして全日本と、早大は1年生のみのチーム編成で戦いを続けてきた。ベンチワークなど苦労する場面は多々あったと思うが、これまでもがいてきた経験は、今後の成長における財産となったに違いない。来年の関東学生リーグ戦からは、エース狩野愛巳(スポ3=宮城・仙台三)が復帰予定だ。この秋冬で成長を遂げた1年生たちと狩野が、1部復帰となるリーグ戦でどのような活躍を見せるのか。来春に期待したい。

☆昨年2位の早大、ことしは初戦で姿を消す…(男子エペ団体)

 次期主将の小野真英(スポ3=埼玉栄)、海外遠征から帰還した加納虹輝(スポ2=山口・岩国工)、全日本個人で銅メダルを獲得した安雅人(スポ2=茨城・水戸一)。関カレ以来となったフルメンバー3人で挑む全日本団体。昨年は2位に終わり、ことしこそ表彰台の頂点を目指したいところであった。しかし、結果は残念ながら2回戦敗退に終わった。

 初戦となる2回戦の相手は香川クラブ。昨年まで中大のエースとして活躍していた水口紘希など、実力者3人が集う強豪チームだ。「1試合目がヤマ場で、勝てたら決勝までいけただろう」(小野)と、初戦から厳しい試合になることは予想していた。だが想像以上に苦戦を強いられることになる。終始相手のペースで試合が進み、早大はやっと第3セットで初めてシングルで得点を決めるという状況に。その後第5セットで加納が追い上げを見せるが、「なかなか体が追い付けなかった」(加納)と、相手との差はまだ10点。続く安、小野もじわじわと点差を詰めていくが、前半大きく突き放された分を挽回するまでには至らなかった。

初戦敗退が決まった直後の男子エペ陣

 課題としている試合の入りの悪さが露呈するかたちとなった。インカレでは全ての試合で前半リードを許し、今回もそのような試合展開が敗北につながっている。昨年度好成績を残したが故に与えられたシード権が、逆に足かせとなっているのだ。「アップでファイティングしても、団体戦とは違う」(安)。今後さらなる高みを目指すためには、シード権を与えられた状態でどのように戦っていくのかが重要になってくるであろう。当時1、2年生だった下級生チームが全日本銀メダルに輝いてから一年。来年は遂に3、4年生の上級生チームとなる。酸いも甘いも経験したこの2017年を糧にし、彼らは来年度の飛躍を誓う。

(記事、写真 藤岡小雪)

※フェンシングの団体戦は3人、または4人の選手が交代で出場し、1試合当たり3分という持ち時間内で争う。あるいは3分以内にどちらかが先に5得点先取すると、そこで次の選手に交替となる。最終的には9試合戦い、45点を先取、または持ち時間が終了した場合は得点が高い方が勝ちとなる。

※エペ:全身が有効面となる上に、両選手が同時突きをすると両者にポイントが与えられる。より慎重な攻め方が求められるため、時として両者が睨み合ったまま時間が過ぎることは稀な話ではない。

※フルーレ:頭・両足・両腕を除いた胴体部への突きのみが得点となる。 両者がほぼ同時に突いた場合は、どちらの攻撃が有効だったかを主審が判定する。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は攻撃を防御してから攻撃しなければならない。

結果

▽男子エペ
早大〔小野真英(スポ3=埼玉栄)、加納虹輝(スポ2=山口・岩国工)、安雅人(スポ2=茨城・水戸一)、十河昌也(スポ2=香川・三本松)〕 2回戦敗退

2回戦:●33-45 香川クラブ

▽女子フルーレ
早大〔遠藤里菜(スポ1=群馬・高崎商大付)、千葉朱夏(スポ1=岩手・一関第一)、登尾早奈(スポ1=愛媛・三島)、溝口礼菜(スポ1=千葉・柏陵)〕 ベスト8

1回戦:○45-9 諫早商高

2回戦:○45-24 埼玉栄高

準々決勝:●39-45 和歌山北高

コメント

男子エペ陣試合後対談〔小野真英(スポ3=埼玉栄)、加納虹輝(スポ2=山口・岩国工)、安雅人(スポ2=茨城・水戸一)、十河昌也(スポ2=香川・三本松)〕

――今の率直なお気持ちは

小野 率直な気持ちとしては、もっと上にいけたなという感じですね。自分たちは1試合目で、ちょっとふわふわした感じで入ってしまいました。1試合目がヤマ場だったんですけど、そこを勝てたら決勝までいけただろうにな…と個人的には思っています。

加納 関カレ(関東学生選手権)も優勝して、最近団体戦の調子が良かったので、勝てるだろうと思ってしまっていたのが敗因だと思っていて、そこは反省しています。

 みんなが機能しなかったら、こんなもんだろうなあという感じです。

――それぞれ個人の調子としては、いい悪いはありましたか

加納 いいか悪いのかも分からなかったです。

小野 悪くもなく、良くもなかったかなと。

 全日本(全日本選手権)個人戦の流れがあったので、絶対悪くはないはずなんですけど…。結果的に負けてしまったので、悪かったのかな…という感じです。

――全日本学生選手権の時から試合の入りがあまりうまくいっていない印象があるのですが、試合をしている側としてもそれは感じますか

 感じます!

――どうしてうまくいかないのでしょうかね…

 自分たちがシードで、向こうは先に1試合やっているというのが…。アップでファイティングしても、団体戦とは違うじゃないですか。そこが不利といえば不利なのかな。

小野 1試合目で勝ったら次の試合でも流れをつくれるのですが、1試合目でこけるとつくれないので…。

――今後もシードで2回戦から登場というのはあると思うのですが、その時は今回の反省を踏まえてこうしていきたいなどはありますか

小野 気持ちの問題ですかね。最初から締めていかないと、こういう結果になっちゃうんだなと思ったので。全員でいいイメージを共有して、試合のプランを立てていこうかなという感じです。

――入りが悪くて、そこからなかなか早大に流れを引き寄せることができなかったと思うのですが、その要因は

小野 今回自分たちの苦手なところを最初に勝負して、そこをロースコアで抑えられれば後半気持ちに余裕ができるかなと思っていたんですけど、それが逆に裏目に出てしまいました。相手のペースのまま試合をしてしまって、作戦通りにいかなったという感じなのかな?

――どのような作戦を立てていたのですか

小野 苦手なところをどうやって当てるかについて主に考えていたんですけど、それがうまくいかなったのかな…。

――それぞれ個人の反省点を教えてください

加納 体力が無かったですね。疲れましたね。

――最後きつかったですか

加納 いや…前半からきつかったです。追い上げていた場面で、なかなか体が追い付けていなくて。

 すぐ弱気になってしまって。1点取っても、「まだ1点か…」という気持ちになってしまいました。

小野 ベンチの雰囲気もそんなに明るくなかったので、ベンチワークとかワンプレーごとの盛り上げ方が良くなかったのかなと思いますね。今回は全体的におとなしかったので、そこが反省すべき点ですかね。

――十河さんはベンチから見ていて、雰囲気が暗いなどと感じることはありましたか

十河 暗いという感じではなかったですね。ただ追い掛ける状況で、個人個人点が欲しいと焦っていたのかなと思います。

――来年以降もこのメンバーで試合に臨むと思いますが、今後の目標をそれぞれ教えてください

小野 ことしの団体戦で良かったところ、特に関カレが結構良かったので、関カレのイメージを大切にしてうまく来年につなげられればと思います。

加納 個人個人が強くなれば、団体戦でもいい流れができると思うので、まず個人個人の実力を上げていきたいです。

 今までは下級生チームで、「若いぞ!頑張ろう!」という感じでやってきたと思うんですけど、来年からは3、4年生の上級生チームになるので、落ち着いて試合を運べるようになりたいです。

十河 周りの実力が高くて、僕個人としては力不足なところが否めません。そこを今から練習していって、みんなと同じレベルまでしっかり上げて、チームで活躍できるようにというのが目標です。

登尾早奈(スポ1=愛媛・三島)

――今の率直な気持ちは

最後回りだったんですけど、途中までいい流れだったのに、自分が一瞬でその流れを切ってしまったので悔しいです。

――和歌山北高戦で最後回りをするというのはいつ決まったのですか

本当は溝口(礼菜、スポ1=千葉・柏陵)が最後回りだったんですけど、ミスで自分が最後回りになって。試合の直前に決まりました。

――決まった時はやはり驚きましたか

びっくりしました(笑)。自分か…みたいな感じで(笑)。

――最後回りを務めることが決まってからは、どのように試合を展開していこうと考えていましたか

自分の前の2試合で10点ぐらい差を広げて、その貯金を切り崩しながら逃げ切るという作戦でした。実際はそれが3周目でうまくいかなくて…。それでも同点で回してくれたけど、駄目だったという感じですね。

――てっきり東晟良選手(和歌山北高)までに点差を広げるための作戦だと思っていたのですが、そうではなかったのですね(笑)

そうじゃなかったんですよね…(笑)。でも間違えた瞬間に、そういう作戦になりました。

――結果として最終セットは同点で迎えることになったと思うのですが、欲を言えばもう少し差があったら…という感じだったと思います。差を広げるためにこうすべきだった、などはありますか

東晟良さんはやっぱり強くて。そこで向こうに流れがいってしまったり、ミスでもったいない失点もあったりしたので、それがなかったらもう少し点差が広がっていたと思います。でも今回ミスを他の選手がカバーできたので、そこは前の試合よりも成長できたかなと思います。

――実際最後回りを務めて、相手から点数を取るためにこうすれば…という反省点はありますか

全日本(全日本選手権)のチャンピオンになった選手だったので、心のどこかでビビってしまっている部分があって。もっと自分のやりたいことをできたら良かったかな、と思います。

――今大会全体を通して、成長した部分と見つかった課題をそれぞれ挙げてもらえますか

巾下さん(栞奈、和歌山北高)には全日本の個人戦で負けていて、今回は勝とうと思って負けた時の反省を生かしたプレーができたので、落ち着いて相手を見られるようになったなと思います。負けた試合は全く自分のプレーをさせてもらえなかったので、主導権を握ってプレーできるようになりたいと思いました。

――最後に来年への意気込みをお願いします

来年のリーグ戦(関東学生リーグ戦)は狩野愛巳(スポ3=宮城・仙台三)先輩も復帰されるので、優勝を目指せるように練習を頑張っていきたいと思います。