競り合いを制し伝統の早慶戦9連覇達成!

フェンシング

 ことしで70回の節目を迎えた伝統の早慶対抗定期戦(早慶戦)。両校のOB、応援部の声援が飛び交う中、白熱した試合が繰り広げられた。ことしは男子フルーレと女子エペで慶大に敗れ、昨年同様最終種目まで総合優勝の行方が分からないしびれる試合展開に。しかし、負ければ引き分け以下が決定する、絶対に落とせない5戦目の男子サーブルで、後半の慶大の猛追をかわして見事勝利。そして最終6戦目の女子サーブルでも勝利を収め、総合9連覇を果たした。

 きょうの試合の流れを左右する初戦の男子フルーレは、序盤から苦戦を強いられた。トップバッターの松山大助(スポ5=東京・東亜学園)は、1点を勝ち越して次につなぐ。ところが、2セット目に慶大に2点のリードを許すと、「流れを持っていかれてしまった」(北原達也、スポ4=長野・伊賀北)とその後はじわじわと点差を広げられてしまう。第6セットでは「(試合を)荒らしてくれれば」(北原)と、普段はエペを専門とする加納虹輝(スポ2=山口・岩国工)をリザーブで投入したが、序盤から続いた悪い流れを断ち切ることはできなかった。最終的には17点差をつけられ、28-45で初戦を落としてしまった。続く女子フルーレは、全日本学生選手権で3位に入った勢いそのままに、終始試合の主導権を相手に譲らず、45-14で快勝した。

 3戦目の男子エペでは、前半から競った展開になったものの、エースの加納が最終9セット目に8連取。最後は慶大を大きく突き放し、45-33で勝利を手にした。続く女子エペは、ことし主要大会で思うような結果が残せていない。きょう勝つことによって、今度の全日本選手権団体に向けて弾みをつけたいところだった。ところが、第1セット目からエース才藤歩夢(スポ3=埼玉栄)が1点を勝ち越されてしまうまさかの展開。第5セットで一時1点差まで詰め寄るものの、あと一押しができない。そして、第2セット以降、なかなか慶大に追い付きそうで追い付けない場面が続いた。しかし、8セット目で駒場みなみ(スポ1=富山西)が奮闘して32-32の同点とし、ようやく慶大の背中をとらえることに成功した。最後回りは才藤。先取点を取りたいところだったが、逆に相手に2連取を許す苦しい展開に。才藤は果敢に攻めるものの、同時突きが重なってしまう。残り時間が迫る中でフレッシュを試みるが、最終ポイントも相手に奪われ、42-45で惜しくも敗戦となった。

試合後の才藤

 2勝2敗で迎えた5戦目は男子サーブル。男女総合優勝のためには絶対落とせない試合であったが、序盤から「予想以上にすごくいい流れだった」(竹下昇輝主将、スポ4=静岡・袋井)と危なげなく試合を進めた。ただ、第7セットから慶大も意地を見せ始め、一時2点差まで詰め寄られてしまう。だが、早大も最後まで粘り、45-42で接戦を制した。最終6試合目の女子サーブルは、試合終盤慶大に追い上げられる場面はあったものの、一度も先行を許さずに45-36で見事勝利をつかみ取った。

これが団体戦最後の試合となった竹下

 この早慶戦が団体戦としては引退試合となる予定の竹下主将は、「悩んで悩んで、結構苦しい4年間だった」と自身の4年間を振り返る。その上で、「楽しんでフェンシングをしてほしい」と後輩たちへの言葉を述べた。「期待しかしていない」と竹下主将が語る後輩たちは、その先輩の思いを受け止め、さらに強くなった『チームワセダ』を見せてくれるに違いない。

(記事 内野楓、写真 藤岡小雪)

結果

総合優勝 早大

▽男子フルーレ団体
早大〔松山大助(スポ5=東京・東亜学園)、北原達也(スポ4=長野・伊那北)、加納虹輝(スポ2=山口・岩国工)、奥武大輔(スポ1=大分豊府)〕

●28—45慶大

▽女子フルーレ団体
早大〔仙葉楓佳(社1=秋田・聖霊女短大付)、千葉朱夏(スポ1=岩手・一関第一)、登尾早奈(スポ1=愛媛・三島)、溝口礼菜(スポ1=千葉・柏陵)〕

○45−14慶大

▽男子エペ
早大〔小野真英(スポ3=埼玉栄)、加納虹輝(スポ2=山口・岩国工)、安雅人(スポ2=茨城・水戸一)、十河昌也(スポ2=香川・三本松)〕

○45−33慶大
▽女子エペ団体
早大〔才藤歩夢(スポ3=埼玉栄)、駒場みなみ(スポ1=富山西)、村上夏希(スポ1=三重・津東)、澤浦美玖(スポ2=群馬・沼田女)〕

●42−45慶大

▽男子サーブル団体
早大〔竹下昇輝主将(スポ4=静岡・袋井)、武山達(創理3=東京・早大学院)、高木良輔(スポ2=埼玉・立教新座)、小山桂史(スポ1=東京・クラーク)〕

○45—41慶大

▽女子サーブル
早大〔佐々木陽菜(社3=東京・大原学園)、木村結(社2=山口・柳井学園)、齊藤里羅子(スポ2=山形東)、佐野友香(スポ2=静岡・沼津西)〕

◯45−36慶大

コメント

竹下昇輝(スポ4=静岡・袋井)

――きょうの試合を振り返って

一応引退試合が早慶戦(早慶対抗定期戦)だったので、そこで総合優勝できたことは4年間の集大成としていい結果だったかなと思います。

――後半は追い上げられる展開となりましたが

前半は(自分たちが)予想以上にすごくいい流れで。でも慶大はここ数年選手層も厚く、楽に勝たせてくれない。うちが1つでもミスをしたら簡単にまくられてしまうような本当に強い相手なので、競るだろうなということは予想していました。後半の追い上げは慶応の意地だったのかなと思います。

――全日本学生選手権(インカレ)の際には団体戦は早慶戦が最後とおっしゃっていましたが、全日本選手権(全日本)には出場されますか

全日本の個人戦には出る予定なんですけど、卒論の提出日と重なってしまっていて、ちょっと厳しいかなという感じですね。全日本の団体戦も、迷っているんですけど、一応例年通り新チームでいこうかなと今のところは思っています。

――4年間を振り返って

一言では言い表せないですね…いろんなことがあったので…。カベに打ち当たることが多い、最後の最後まで(カベを)乗り越えられなかった歯がゆい4年間だったかなと思います。ただ4年生のリーグ戦、関カレ(関東学生選手権)、インカレ、きょうの早慶戦と、引退が近づくにつれて気負うものがなくなってきたというか、あまり自分の中でプレッシャーに感じることが少なくなってきて、のびのび(試合が)できるようになったかなと思います。きょうは最後だなと思って楽しくやろうとそれだけを意識して、本当に楽しく試合ができたので、引退試合としては良かったですね。本当に終わり良ければすべて良しで、最後の最後で楽しくフェンシングできたというのは、僕の中では良かったです。

――早大に入って良かったですか

良かったですね。フェンシングだけじゃなくて、主将もやらせていただいたことで、人間的にも成長できましたし。僕は他の部員とは違う経路を歩んできていて。というのも元々、剣道とフェンシングを両立してやっていて。部活としてフェンシングをやるのは早大に入ってからが初めてで、その中で主将もやらせていただいて。やっぱりその主将の経験が大きかったかなと。人の上に立って、視野を広げて色々考えて、決断するところから指示するところまでやるという経験はなかなかできないと思うので。早大フェンシング部は、僕を人間として一回りも二回りも成長させてくれたので、とても感謝しています。

――後輩たちへメッセージをお願いします

たくさんありすぎてなかなか出てこないですけど…楽しくやってほしいというのがありますね。僕はずっと悩んで悩んで、結構苦しい4年間だったので。その中でなかなか人に相談できなかったりとか、自分の中で答えがでなかったりしてきたので…。コーチがいない環境の中で、自分達が考えて結果を出さないと、早大のフェンシング部は個人的にもチームとしても強くならない。個人個人が考えて能力をあげていくことは、強くなるためには求められる力なので。(でも)そこで悩みすぎず、自分の思った通りにまずは行動してみることが大事かなと思いますね。ことし強い1年生が入ってきて、来年留学から2人帰ってくるので、来年以降本当に強いチームが出来上がると思います。4年生としては期待しかしていないので、結果よりも後輩たちが楽しんでフェンシングができることを祈っています。

北原達也(スポ4=長野・伊那北)

――きょうはどのようなプランで試合に臨みましたか

早大はエペに恭ちゃん(松山恭助、スポ3=東京・東亜学園)が出るなど他種目の選手がメンバー入りすることが時々あって、加納(虹輝、スポ2=山口・岩国工)もフルーレができるので、(試合を)荒らしてくれればという思いがあって加納を(メンバーに)入れました。でも実際は最初から流れを持っていかれてしまったので、そのまま取り返すタイミングもなくてダラダラと負けてしまいました。

――早い段階で松山恭選手がいないというのは決まっていたのですか

そうですね。決まっていたので、どうするかというのは恭ちゃん、大助先輩(松山大助、スポ5=東京・東亜学園)、自分で話しました。加納は去年のリーグ戦(関東学生リーグ戦)でも使っていたので、その時と同じように使おうということになったのですが、流れが悪くて…。自分は真ん中で(加納と)代わったんですけど、この間のインカレ(全日本学生選手権)のこともあったので、自分で責任を持って試合しようと考えて最後は代わって自分が試合をしました。僕が代わるか奥武(大輔、スポ1=大分豊府)が代わるか大助先輩が代わるかは、最初の試合を見て決めようと前から話していました。

――流れを早大に引き寄せられなかった要因はご自身でどう考えていますか

連続で点数を取っていくというのがあまりなくて。点数を取ったとしても次は取られてで、追い付けない状況が続きました。途中で3点ぐらい一気に取ってベンチが盛り上がって勢い付くタイミングがあれば、勢いを取り戻せたかなと思います。でもなかなか差を詰めることができなかったというのが敗因ですね。

――インカレの時点ではどこで区切りを付けるのか悩んでいるとおっしゃっていましたが

全日本(全日本選手権)までフェンシングを続けて、引退したいなと思っています。

――では全日本への意気込みをお願いします

その時は恭ちゃんもいるのですが、恭ちゃんがいるからといって頼りすぎるのではなくて、残りの3人も最後の恭ちゃんにプラスで回して、1個1個油断せずに確実に勝っていきたいです。今回みたいにダラダラと試合をしてしまうのではなくて、離されたとしてもしがみついていけるように試合展開を作りたいと思います。