男女で明暗分かれた『4位』

フェンシング

 5日間にわたって行われた全日本学生選手権(インカレ)も最終日を迎えた。女子サーブル団体は2年生を主体としたメンバーで4位に入り、成長への手応えをつかんだ。一方男子エペ団体は、ヤマ場の法大戦に敗れ3位決定戦に挑んだが、格下相手にまさかの敗戦。メダルを手にすることすらかなわなかった。

☆チーム全体の力が向上し、ベスト4入りを果たす(女子サーブル団体)

 チームの総合力が向上していると思うか。この問いに、木村結(社2=山口・柳井学園)、齊藤里羅子(スポ2=山形東)、佐野友香(スポ2=静岡・沼津西)の3人は総じて首を縦に振った。春の関東学生リーグ戦(リーグ戦)ではエースの佐々木陽菜(社3=東京・大原学園)がいる中で1部昇格を果たせなかったが、インカレでは佐々木不在で4位。個々の力のレベルアップとチームの団結力が生んだ結果であろう。

 ヤマ場としていた専大戦に勝利できたことは大きい。関東学生選手権(関カレ)後専大に練習試合に赴いたことが、「相手の癖も分かって、こっちも情報のある中で組み立ててやっていけた」(齊藤)と実戦でも生き、第7セットまでは格上相手に善戦した。しかしその後追い上げを許し、一本勝負にまで持ち込まれてしまう。あとがなくなった早大であったが、「剣を捉えてから行く自分の得意技が決まった」(木村)と、この勝負を制することに成功。ヤマ場を見事乗り越えた。

専大戦で一本勝負を決める木村

 準々決勝では序盤リードしたものの敗れ、3位決定戦では最終セットで木村が相手から10点奪うという大活躍を見せたものの、あと5点足りなかった。「専大に気持ちのピークが持っていかれた」(佐野)とこの2試合で反省すべき点はあるが、それでもインカレ4位という結果を残せたのは、佐々木がいなくともチームの歯車がかみ合ってきている証拠と言えるだろう。全日本選手権の団体では、リーグ戦ぶりに佐々木が帰還する。チーム全体の力が底上げされた中で迎える佐々木の合流が、どのような化学反応を起こすのか。今から楽しみでならない。

(記事、写真 藤岡小雪)

☆まさか…格下に敗れメダル逃す(男子エペ団体)

 関カレで優勝した早大だが、この日は加納虹輝(スポ2=山口・岩国工)が不在のためフルーレ専門の松山恭助(スポ3=東京・東亜学園)を3番手として迎え入れた。初戦から競り合う苦しい展開が続くものの、なんとか準決勝まで勝ち進む。しかし準決勝で法大に敗れ、3位決定戦で格下であるはずの関学大に9点差をつけられ敗北。「勝てる試合を落としてしまった」と小野真英(スポ3=埼玉栄)は肩を落とした。

 「勝てる試合」というのはやはり3位決定戦だろう。対戦相手となった関学大は、準々決勝では慶大に一本勝負で逆転勝利し、準決勝でも今大会王者の中大に善戦。勢いそのままに早大に挑んできた。第1セットで1-5と出遅れると、その後もずるずると後退してしまう。やり慣れていない相手に苦戦を強いられ、一度も追い付くことができないままゲームセット。格上に勝利し歓喜に沸く関学大を背に、早大は悔しさを隠し切れなかった。

3位決定戦敗れ、悔しさをにじませる小野(左)と松山恭(右)

 今回の敗因は最初で流れを作れなかったことだ。「最初のリードを最後まで守っていこうと考えていたが、そのリードを作ることができずに後半まで来てしまった」(小野)と語るよう、全ての試合において序盤でリードを許し追う展開に。2回戦、準々決勝では逆転できたものの、準決勝、3位決定戦では、早大ペースで試合を優位に進めることができなかったことが後々響いた。今大会では目標としていた優勝はおろかメダルにも届かなかったが、リベンジの舞台はまだ残されている。12月中旬に行われる全日本選手権だ。今季の締めくくりともなる大会で、もう一度チャンピオンに返り咲きたい。

(記事、写真 加藤佑紀乃)

インカレ終了後の集合写真

※フェンシングの団体戦は3人、または4人の選手が交代で出場し、1試合当たり3分という持ち時間内で争う。あるいは3分以内にどちらかが先に5得点先取すると、そこで次の選手に交替となる。最終的には9試合戦い、45点を先取、または持ち時間が終了した場合は得点が高い方が勝ちとなる。

※エペ:全身が有効面となる上に、両選手が同時突きをすると両者にポイントが与えられる。より慎重な攻め方が求められるため、時として両者が睨み合ったまま時間が過ぎることは稀な話ではない。

※サーブル:両腕も含む上半身への突きと切り(剣先ではなく剣の胴部分で相手の体に触れること)が得点となる。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は相手の攻撃を防御してから攻撃しなければならない。この攻撃権の奪い合いにより、両選手はピスト上を常に前後に往復し合うため、サーブルは3種目の中で最も全身運動が激しい種目だと言える。

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結果

▽男子エペ
早大〔小野真英(スポ3=埼玉栄)、松山恭助(スポ3=東京・東亜学園)、安雅人(スポ2=茨城・水戸一)、十河昌也(スポ2=香川・三本松)〕 4位
1回戦:○45−37拓大
準々決勝:○45-36日大
準決勝:●39-45法大
3位決定戦:●36-45関学大

▽女子サーブル
早大〔木村結(社2=山口・柳井学園)、齊藤里羅子(スポ2=山形東)、佐野友香(スポ2=静岡・沼津西)、仙葉楓佳(社1=秋田・聖霊女短大付)〕 4位
1回戦:◯45−32中京大
準々決勝:○45−44専大
準決勝:●37-45朝日大
3位決定戦:●40-45東女体大

コメント

小野真英(スポ3=埼玉栄)

――ベスト4という結果はやはり悔しいのではないでしょうか

そうですね。勝てる試合を落としてしまったという感じですね。

――初戦から接戦となりましたが

個人戦で指を痛めてしまって、自分が出なくても他の3人の実力を見たらそんなに苦労しないかなと思っていたのですが、まさかあそこまで競るとは思っていなくて。流れもあまり上手くのれていなかったので、ここで自分が流れを作れたかなとは思いました。8セット目が終わった時点で33ー34とちょっとヒヤヒヤはしましたが、勝てて良かったと思います。

――日大戦も余裕を持って勝てたというわけではないですか

最初の入りが悪くて追っている展開が多くて。雅人(安、スポ2=茨城・水戸一)が流れを作って、恭ちゃん(松山恭助、スポ3=東京・東亜学園)がその流れに勢いを付けて自分のところまで回してくれました。自分のところでも最初は点数をよく取れていたと思うんですけど、ちょっと思考が停止してしまってそこで連続でポイントを奪われてしまったという感じですね。でも、勝てて良かったと思います。

――次の法大戦では36-37で最終セットを迎えましたが、あの場面を振り返っていかがですか

あの場面は自分が取りに行かなきゃいけない場面でした。最後の豪(中村、法大)との試合はどちらかというと向こうに来させた方が自分は得意だったので、来てくれるかなと思っていたのですが全く出てこなくて。時間を終わらせようという仕草があったので、それにのってしまったというか。点を取らなければ勝てないので、点を取らざるを得ない状況だったんですけど、もう少しゆっくりした展開でも良かったかなと思っています。

――3位決定戦は関学大との試合になりましたが、やりにくさはありましたか

そうですね。最初の入りでしっかり入っていこうと言っていたのですが、雅人の集中力がちょっと持っていなかったらしくて、ふわっと入ってしまって1-5と負けてきてやはり追う展開となって。関西の選手とはあまりやりなれていないので、そこでイレギュラーなポイントも与えてしまって、だんだん向こうのペースにはまっていってしまいました。

――全体的に今回はもう少し入りがうまくいっていたらまた変わっていたかなと

そうですね。ちょっとみんながふわっとしすぎていましたね。

――今回のメンバーで戦うとなった時、どのようなプランを立てていましたか

最初は自分と雅人が両方ともアンカーができるので、そこで相手に合わせて考えようかなと思っていました。ただ拓大の試合を見ていると不安があって。なるべく最初の入りをしっかり入れれば、恭ちゃんはフルーレで強くて嫌なイメージを与えられていたので、そこで最初のリードを最後も守っていこうという感じでした。でもそこでつくれずに後半まで来てしまった試合が多かったので、うまくプラン的には行かなかったかなと思います。

――勝てた試合も内容的にはまだまだだと

はい。

――ケガの状態は

脚は全然大丈夫です。指も軽い捻挫と言われたので心配はないんですけど、どうしてもプレーが切れた時に気になってはいましたね。

――団体戦では早慶戦と全日本選手権(全日本)がありますが、意気込みをお願いします

早慶戦は全種目優勝できるとは思いますし、ミスがなければ勝てると思うのでしっかり勝って、全日本団体戦はメンバーがそろうので一つでも上を目指して頑張っていきたいと思います。

木村結(社2=山口・柳井学園)

――団体戦の目標はどのように設定していましたか

今まで全然勝ったことがなかったので、最低の目標は1回戦に勝って全日本選手権につなげて、陽菜先輩(佐々木陽菜、社3=東京・大原学園)と一緒にフルメンバーで戦うことでした。

――4位という結果についてはどう思っていますか

正直ベスト4に入れるとは思っていなくて。専大は自分たちより格上の相手だったので、そこを勝てたのは成長だなあと思いました。

――専大戦は最後一本勝負になりましたが、あの時はどのような心境でしたか

その前に相手に点を取られていて、流れは相手に来ていると思っていましたし、そこは気持ちで負けないように意識しました。剣を捉えてから行く自分の得意技で決めたかったのですが、それをやったら決まってホッとしました。

――3位決定戦では最後に追い上げを見せました

相手は自分のライバルで、結構点差が開いていてきついなとは思ったんですけど、最後まで諦めずに頑張ろうと思ってやったら10点取れました。負けたけど良い経験にはなったかなと思います。

――チーム全体の力が向上しているように思うのですが、その要因を挙げるとしたら何がありますか

去年までは、課題などを話し合って決めずにただ練習しているだけでした。ことしに入ってからは、毎日課題を決めて直したいところを明確にして練習していました。動きも一人一人みんな良くなっているし、去年よりも試合の経験数も多いので、チーム力や個々の技術も上がってきていると思います。

――最後に早慶対抗定期戦(早慶戦)への意気込みをお願いします

早慶戦は絶対負けられません。慶大は気持ちが強いので、動きだけでなく気持ちでも負けないように、チーム一丸となって頑張っていきたいと思います。

斎藤里羅子(スポ2=山形東)

――団体戦の目標はどう設定していましたか

ヤマ場となるのが2回戦の専大戦だと思っていたので、まずそこに照準を合わせていました。もちろん目標は優勝ですけど、とりあえずそこをまず勝とうという感じでやっていました。

――4位となりましたが、この結果をどう受け止めていますか

点差が開いていたのを最後木村結(社2=山口・柳井学園)が詰めてくれたというのもあるんですけど、最終的な結果は全部惜しいものだったので、もう少しで勝てるんだなと。陽菜先輩(佐々木陽菜、スポ3=東京・大原学園)がいない中でのチームで、自分たちの力が出せたと思います。でももうちょっとで勝てた試合が多かったので、すごく悔しいなと。

――チーム全体の力が上がっていますよね

そうですね、上がっていると思います。みんな一人一人役割を果たして、ベンチの声も出ていたし、チームワークが出てきたなと思います。

――成長した要因は思い浮かびますか

私個人だと、夏の合宿が大きかったかなと思います。木村と佐野(友香、スポ2=静岡・沼津西)がコスタリカ遠征に行っていて、女子サーブルからは私だけの参加でした。そこで竹下昇輝先輩(スポ4=静岡・袋井)とか武山達先輩(創理3=東京・早大学院)にレッスンを取ってもらいました。そこでの経験が大きいかなと思いますね。チームとしては、関カレ(関東学生選手権)でチーム力が上がってまとまってきて、陽菜先輩がいない中での団体戦での戦い方が自分たちの中で見えてきました。関カレの反省を踏まえてインカレ(全日本学生選手権)につなげられたのが良かったのかなと思います。

――関カレからインカレの間で団体戦の練習はできていましたか

専大に練習しに行ったんです。こんなすぐに当たるとは思わなかったんですけど(笑)。結果的に情報収集としてすごく良かったと思います。そこで相手の癖とかも分かって、こっちも情報のある中で組み立ててやっていけました。最後3試合までに勝っているか同じぐらいの点差で持っていって、最後自分と同じぐらいの人と対戦する時に踏ん張ってつなげる、という風にやっていこうと考えていました。そういうところがうまくはまりました。でも今回は結にすごく頼ってしまって。負けていても、結に(点を)取ってもらって勝って次に回すというのが多かったです。そこを私が点を取られないようにして、次につなげられるような試合をしていきたいなと思いました。

――最後に早慶対抗定期戦(早慶戦)への意気込みをお願いします

早慶戦はまだ陽菜先輩が出られるかどうか分からないんですけど、今回のチームワークを生かして、一丸となって頑張っていきます。

佐野友香(スポ2=静岡・沼津西)

――団体戦の目標はどう設定していましたか

第一に全日本(全日本選手権)への権利を得ることと、専大はお互い団体戦の練習をし合っていたので、専大を倒してなるべく良い結果をきょう来られていない陽菜先輩(佐々木陽菜、スポ3=東京・大原学園)に報告できるように、と思っていました。

――結果的に4位となりましたが

専大がヤマ場だと思っていたので、勝てたのはすごく良かったなと思います。だけど専大に気持ちのピークが持っていかれちゃったというか。専大戦では自分たちの力以上のものが出たなと思っているんですけど、その後の試合で緊張してしまったので、東女体大には勝てたんじゃないかなあと。もうちょいいけたかなと思います。

――ベンチにOGの方や竹下昇輝主将(スポ4=静岡・袋井)がいらっしゃいましたが、試合中にどのようなアドバイスを受けましたか

自分が緊張していたりとか弱気な気持ちになっていたりする時に、気持ちの面でも叱咤激励(しったげきれい)してくださいます。焦っている時にベンチの応援で冷静になれたり、今自分がしなきゃいけないことが分かったりできました。

――チーム全体の力が向上しているように感じたのですが、何か要因などはありますか

学年が上がっていくにつれて練習量が多くなったことに加えて、前に比べてみんなで話し合うことが多くなりました。試合前にアドバイスし合うとか。ベンチの盛り上げ方も前に比べたらだいぶ良くなったと思うし、お互い焦っている時に何を言えば良いのかというのもだんだん分かってきたので、個々の力はもちろん、団体としての力がついたんじゃないかなあと思います。

――今回のメインメンバーは皆2年生ということで、そこでやりやすさを感じることはありましたか

そうですね。大黒柱としてはいつも陽菜先輩がいらっしゃるんですけど、その時は誰かが補欠に回るので、その中でレギュラー取りたいなという気持ちでやっています。あと同期だからこそ強気で言えるというか、アドバイスもしやすいかなというのはありますね。

――夏にコスタリカ遠征に行ったそうですが、そこで個人として得たものはありましたか

私自身は初めての海外遠征でした。海外の方と試合をするのは初めてだったんですけど、国によって特色があるなと思いました。日本だったら形がきれいなのですが、アメリカは気合いというか勢いがすごいので、ちょっとでも気を抜いているとシングルランプでしか点を取れません。なので、アタックの立ち合いのところでまず一歩目を強く出るということを学びました。

――最後に早慶対抗定期戦(早慶戦)への意気込みをお願いします

去年自分は出られていなくて、同期の活躍を見ているだけなのはすごく悔しいので、自分も出場して全種目で勝っていきたいと思います。