悔しさ残るも、今後に期待がかかる結果に

フェンシング

 6日間にわたって行われた関東学生リーグ戦(リーグ戦)も最終日を迎えた。ラスト2日間で行われたのは男子エペと女子サーブル。男子エペは全日本学生王座決定戦(王座)出場を目指したが、フルメンバーで試合に臨めなかったことも影響し、1部4位でリーグ戦を終えた。一方1部返り咲きに挑んだ女子サーブルは、力のある1年生が加入した中大を負かすことができず、1部との入替戦に進むことはかなわなかった。最終的に男女どの種目でも王座出場権を逃すという悔しい結果を残し、早大フェンシング部の春季が終了した。

★度重なる逆境の中、団結力を見せ健闘(男子エペ)

 万全の状態ではない。それでも諦めなかった。「来年は全部取りに行く勢いで」。小野真英(スポ3=埼玉栄)は、昨年の全日本選手権(全日本)での試合後こう語った。その言葉通りことしの男子エペ陣は、リーグ戦、王座、関東学生選手権(関カレ)、全日本学生選手権(インカレ)、全日本での5冠を狙えるほど実力者がそろっていた。しかしその初戦となる今回のリーグ戦では、エース加納虹輝(スポ2=山口・岩国工)がコロンビアで開催される国際大会出場のため不在。代わりにフルーレを専門とする松山恭助(スポ3=東京・東亜学園)が、仲間に加わった。初日を1勝2敗で終え、2日目の中大戦。最終セット中盤の時点で42-31と、大幅にリードを広げていた。だがここでアクシデントが起こってしまう。最後回りを務めていた小野が、43点目を取った際に転倒。古傷の膝を痛めてしまう。小野はなんとか痛みをこらえラスト2点をもぎ取るも、それ以上の試合参加は困難だった。かくして早大は勝てば王座出場が決まる最終日大戦に、安雅人(スポ2=茨城・水戸一)、松山恭、十河昌也(スポ2=香川・三本松)の3人で挑まなければならなくなった。迎えた日大戦。序盤からリードを許してしまい、第3セット終了時点で2点ビハインド。しかし第4セットで十河が粘りを見せ、同点に追い付く。だがそこからまたじりじりと離され、33-40で最後回りを務める安の出番が来た。「もう追い上げるしかなかったので、ひたすら点を取ろうという気持ちだけでやった」(安)。1回り目、2回り目では緊張も垣間見えた安であったが、執念の追い上げを見せ3点差まで日大に詰め寄る。しかし、あと一歩及ばなかった。

日大に惜敗し、悔しさに打ちひしがれる安

 加納、小野という主力選手を欠き、悔しい結果に終わった男子エペ。だがこの苦しい経験は、必ずや安、十河の成長の第一歩となるはずだ。秋には加納や小野も復帰する。「関カレ、インカレ、全日本と優勝して、王座に出られなかったことをチャラにしたい」(安)。リーグ戦での雪辱を果たすため、男子エペ陣は秋季に向けて前を見据えている。

(記事、写真 藤岡小雪)

★届かなかったあと2点、1部昇格の望み消える(女子サーブル)

 昨年2部降格となった早大は、1部昇格を果たすために2部で優勝することを目標に掲げていた。青学大戦、学習院大戦では相手を圧倒するが、一転中大戦は接戦となった。それもそのはず、ことし中大にはナショナルチームに所属する江村美咲(1年)、向江彩伽(1年)が加入。2部といえども、ハイレベルで厳しい戦いになることは予想されていた。序盤に相手にペースをつかまれ、みるみるうちに差が広がっていく。第4セット終了時で点差は11。ここまで広がると追い上げることはやはり至難の業である。しかし、そこで順番が回ってきた佐々木陽菜(社3=東京・大原学園)は弱気になることはなかった。「点差とかは全然見ないで、ただただ自分が点を取ろう」。ひたすら前に攻め相手を自分のペースに巻き込んでいく。このセットだけで15得点を挙げる猛攻で25-23。使命感の強さが大逆転劇を生んだ。そして、その姿はあとを受けた木村結(社2=山口・柳井学園)、齊藤里羅子(スポ2=山形東)ら後輩を刺激する。二人は実力のある相手に食らい付き、粘って2点ビハインドで最終セットにつないだ。アンカーの佐々木は臆せず、足を動かし続け43-43の同点まで追い付く。しかし、そこからあと二本が取れない。佐々木の目には涙があふれた。

プレーでチームを引っ張る佐々木

 最終戦の日女体大戦では勝利を収めたものの、1部昇格の夢ははかなく消えた。それでもチームとして粘りを見せたことは次につながる材料になる。「秋こそは」(佐々木)。リベンジを強く、ここに誓った。

(記事 加藤佑紀乃、写真 大浦帆乃佳)

全試合終了後、選手たちは和やかな表情を見せた

※フェンシングの団体戦は3人、または4人の選手が交代で出場し、1試合当たり3分という持ち時間内で争う。あるいは3分以内にどちらかが先に5得点先取すると、そこで次の選手に交替となる。最終的には9試合戦い、45点を先取、または持ち時間が終了した場合は得点が高い方が勝ちとなる。

※エペ:全身が有効面となる上に、両選手が同時突きをすると両者にポイントが与えられる。より慎重な攻め方が求められるため、時として両者が睨み合ったまま時間が過ぎることは稀な話ではない。

※サーブル:両腕も含む上半身への突きと切り(剣先ではなく剣の胴部分で相手の体に触れること)が得点となる。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は相手の攻撃を防御してから攻撃しなければならない。この攻撃権の奪い合いにより、両選手はピスト上を常に前後に往復し合うため、サーブルは3種目の中で最も全身運動が激しい種目だと言える。

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結果

▽男子エペ
早大〔小野真英(スポ3=埼玉栄)、松山恭助(スポ3=東京・東亜学園)、十河昌也(スポ2=香川・三本松)、安雅人(スポ2=茨城・水戸一)〕 1部4位
 1試合目:●41-45法大
 2試合目:○45-34慶大
 3試合目:●43-45専大
 4試合目:◯45-33中大
 5試合目:●41-45日大

▽女子サーブル
早大〔佐々木陽菜(社3=東京・大原学園)、木村結(社2=山口・柳井学園)、齊藤里羅子(スポ2=山形東)、佐野友香(スポ2=静岡・沼津西)、仙葉楓佳(社1=秋田・聖霊女短大付)〕 2部2位
 1試合目:◯45−8青学大
 2試合目:◯45−12学習院大
 3試合目:●43−45中大
 4試合目:◯45−30日女体大

コメント

中村立雄監督

――どの種目でも全日本学生王座決定戦(王座)への出場権を獲得できませんでしたが、今どのように感じていらっしゃいますか

本当は2種目行ける力があったと思います。ただアクシデントがあったり、実際勝てる試合を落としてしまったりしたのが大きかった。その原因としては、若いチームであるということ。結果は残念ですが1年生が多いチームなので、今のうちに勝負の厳しさというものを経験しておくと、秋のシーズンに活きるのではないかと思います。

――王座に全種目出られないのは何年ぶりかご存知でしょうか

僕が監督になってからは初めてです。少なくとも僕が監督になる直前の2011年には行っていると思うので、それ以前は…ちょっと分からないですね。だいぶ前でしょうね。

――小野真英選手(スポ3=埼玉栄)はどこを痛めてしまったのでしょうか

1回世界ジュニア選手権に出場して、その後膝を痛めたんですよ。それで手術して、きょねんの前半シーズンは試合に出られなかったんです。手術して治してトレーニングをして秋から出て、だんだん調子が出てきた全日本(全日本選手権)では決勝で法大と争うまで回復しました。メンバー的に男子のエペは加納虹輝(スポ2=山口・岩国工)がおらずベストではなかったですが、ことしこそは力を出してというところではありました。ですが、小野くんが古傷をまた痛めてしまうということになってしまいました。変な転び方をしたから嫌だなあとは思ったのですが、それでもあの状態で頑張って勝ちに結びつけたのはすごいと思います。本人としては、まだ出たいとか膝を壊してもという気持ちがあったのでしょうが、まあまだ秋があるから。ダメージを与え続けるよりはまた回復して戻ってもらいたいな、と思っています。

――小野選手の現在のご調子は

お母さんがみえていたので、今は一緒に病院に行っています。

――秋に向けて回復できそうですか

今まだ様子が分からないんですよね。理学療法士の方が診たところによると、1回痛めたところの靭帯が伸びきっているらしいです。まあ無理はさせないほうが良いでしょうと。まだ痛みが続いている状態ですから。ただ前ほどひどくはないかと思います。早く回復してもらいたいですね。

――最後に秋に向けて、具体的にどのようなことを強化していきたいと思っていらっしゃるかお聞かせください

早大は体幹の強化というのを何年も前からやっていて、その効果を実際に得てますので、まずそこを鍛えていきたいと思います。フェンシングの技術そのものはみんなもう小さい時からやっていますからね。さらにその精度を増していくだとか、スピードを増していく、力強さを増していく。これはもう個人のレベルで必要なのですが、その土台になるのは体幹で、強い弱いで随分違ってきます。9月の合宿でそこを鍛えて、関カレ(関東学生選手権)、インカレ(全日本学生選手権)、全日本の全部で優勝を狙いたいと思っています。

佐々木陽菜(社3=東京・大原学園)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

やはり来年も二部で試合をするということへの悔しさはすごくあるんですが、1年生の仙葉楓佳(社1=秋田・聖霊女短大付)も交えての初めて今シーズンの団体戦で、チームとしてはいい試合内容だったんじゃないかなとすごく思っています。

――ピストに立っている選手にベンチから声掛けをよくされていましたが、意識されていましたか

ベンチで盛り上げて試合をやっている人を安心させて、気を付けてほしいところは意識付けしてほしいというつもりでずっと声を出すようにしていました。

――きょうは4試合で連戦となりましたが疲れはありましたか

最後の日女体大戦はちょっとさすがに前の試合の中大戦で接戦だったので、足がつらかったですが、負けるわけにはいかなかったので試合前にみんなで最後は気を引き締めていこうと話して何とか踏ん張りました。

――中大戦の第5セットでは15ポイントを取り逆転に成功しました。自分が取らなきゃいけないという気持ちはありましたか

そうですね。点差とかは全然見ないで、ただただ自分が点を取ろうというふうに思いました。そうしたらいつの間にか逆転していました。

――最後まで接戦になりましたが、強気で攻めていましたね

相手は強くて、もともと実力のある子たちだったのですが、まず気持ちで引いちゃダメだし、私の時に結構競って回ってきたので、引かないで45本最後まで自分が取り切ろうということは思い続けました。

――後輩たちが粘ってつなげてくれたのは大きかったですか

そうですね。みんな一人一人自分のやるべきことはできたんじゃないかなと思います。

――次の団体戦は秋になると思いますが、意気込みをお願いします

秋こそは。二部なのですが、関カレ(関東学生選手権)、インカレ(全日本学生選手権)で結果を出したらもうチャラになるかなとちょっと思っているので、そこで結果出せるように、みんなとまた頑張っていきたいと思います。

安雅人(スポ2=茨城・水戸一)

――4位という結果について、どう思っていらっしゃいますか

本当は王座(全日本王座決定戦)に行ける1番、2番を狙っていたのですが、結果的に4位になってしまいました。でも加納(虹輝、スポ2=山口・岩国工)もいなかったですし、入替戦ももしかしたらあるというところで、4位で入替戦に回らずに終われたのは、良くはないですけど一安心というか、次につながればと思っています。

――リーグ戦でのご自身の良かった点と反省点を挙げていただけますか

加納がいない分、自分が点を取らなければいけないところでうまく取れたところもあれば、逆に最後の日大戦は自分が最後回りをやるということで気負い過ぎてしまいました。最初の1回り目2回り目がうまくいかなったので、そこはあまり良くなかったかなあと思っています。

――日大戦のラストはかなり追い上げていたと思うのですが、そこの気持ちの切り替えはどうなさっていましたか

大学に入って最後回りをするのが初めてということもあり、1回り目2回り目はやらなきゃいけないという使命感に駆られていました。ただ最後はもう追い上げるしかなかったので、ひたすら点を取ろうという気持ちだけでやったら、うまくはまって点が取れました。

――リーグ戦に加納選手が出られない代わりに松山恭助(スポ3=東京・東亜学園)選手が出るというのはいつ決まったことなのですか

1週間ぐらい前ですね。

――結構最近なんですね。決まってから何か対策などはなされましたか

恭助先輩はフルーレでも強いですし、きょねんの早慶戦(早慶定期戦)の時も相手のエースから点を取ってきてくれたので、とても安心感がありました。こちらとしても、あまりためらうことなく出せたかなあと思います。

――最後に秋に向けての意気込みをお願いします

リーグ戦は4位という結果に終わりましたが、秋には自分も、(小野)真英先輩も加納もいます。優勝を狙うというより絶対優勝できるメンバーだと思います。関カレ、インカレで優勝して、全日本でも優勝できたら、王座に出られなかったことをチャラにできるのかなあと思うので、頑張りたいと思います。