男子フルーレ、やり切れなさが残る終幕に

フェンシング

 全日本選手権(全日本)2日目、男子フルーレ団体にワセダが出場した。開催地は三好修平主将(社4=愛媛・三島)の地元、愛媛県。主将のラストゲームであり、なおかつ今季負け続けてきた法大にリベンジをという思いもあったワセダ。1回戦ではほぼ危なげなく圧勝するが、2回戦では試合を左右する場面でポイントを挙げられずに敗北。法大と再戦もできずに姿を消すという、あまりにも悔しい幕切れとなった。

 初戦は埼玉栄高と対戦。相手を圧倒する試合運びを見せていたが、竹田陸人(社2=神奈川・法政二)がところどころで連続失点を喫してしまう。結果としては45-20という大差をつけての勝利となったが、スコアには現れづらい小さな焦り。この時から早大には一片の陰りがあったのかもしれない。続く2回戦の相手は和歌山クラブ。「元日本代表の選手など、強豪選手が多くいる」(松山恭助、スポ2=東京・東亜学園)と話すよう、簡単に倒せる相手ではなかった。しかし、状況は想像以上に難航を極める。突きが入らず、点差はじりじりと離れていく。第5セット終了時で18-25と7点差まで開いていた。しかし第6セット松山恭が5連取するなどまくり上げて2点差。首の皮をつなぎ、続く第7セット三好は気迫のこもった2連取で同点にした。しかし、後半に勢いを盛り返され33-35。ただ、まだ逆転は可能な範囲だった。迎えた第8セット、バトンを受け継いだのは竹田。攻撃を決め切ることができずにあっという間に6点差まで広げてしまう。最終セットで巻き返せず37-45。セットごとの総計をみるとプラスで回せたのは松山恭のわずかに2回。「本当に最悪で最低で…。今までで一番ひどい試合だと思います」。自身が出場した3セットでマイナス9と点差を詰めることができなかった竹田は約10秒間の沈黙ののちに、言葉を振り絞るようにしてこう答えた。

2回戦、思うように突きが入らず竹田は天を仰いだ

 思えばいつだって2位止まり。春の関東学生リーグ戦と全日本学生王座決定戦は主力の松山恭を欠きながらも、全員がつないで2位。「幸先は好調とは言えないですが、僕らはちょっと光が見えた」(竹田)。そして迎えた勝負の秋、関東学生選手権(関カレ)の決勝では序盤は法大に対してリードを得る。しかし、第6セットで竹田が追い上げを受け惜敗。雪辱を誓った全日本学生選手権(インカレ)では、チームの歯車がうまくかみ合わなかった。そして今回の敗北。「僕がいなかったら関カレも、インカレも、今回も全然変わっていたと思う」と竹田は自分の甘さを責めた。4大会で2位という結果はいいと捉えられるかもしれないが、ずっと頂点までの厚いカベを感じ続けることと等しい。届きそうで届かない、苦しいシーズンでもあった。

エース松山恭はチームの危機を救い続けた

 来年は4年生の三好が抜け、竹田は留学へと旅立つ。しかし松山大助(スポ4=東京・東亜学園)が留学から戻ってくるなど、メンバーはまた変わってくる。ワセダのチーム力を発揮し、強いワセダを証明できるか。「大好きだからこそ、証明したいですね」。松山恭のこの言葉がチームの思いを表している。

(記事 加藤佑紀乃、写真 本田京太郎)

※フェンシングの団体戦は3人、または4人の選手が交代で出場し、1試合当たり3分という持ち時間内で争う。あるいは3分以内にどちらかが先に5得点先取すると、そこで次の選手に交替となる。最終的には9試合戦い、45点を先取、または持ち時間が終了した場合は得点が高い方が勝ちとなる。

※フルーレ:頭・両足・両腕を除いた胴体部への突きのみが得点となる。 両者がほぼ同時に突いた場合は、どちらの攻撃が有効だったかを主審が判定する。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は攻撃を防御してから攻撃しなければならない。

結果

▽男子フルーレ団体
早大〔三好修平主将(社4=愛媛・三島)、北原達也(スポ3=長野・伊那北)、竹田陸人(社2=神奈川・法政二)、松山恭助(スポ2=東京・東亜学園)〕 2回戦敗退
 1回戦:○45-20埼玉栄高
 2回戦:●37-45和歌山クラブ

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コメント

竹田陸人(社2=神奈川・法政二)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

ご覧の通りですよね。本当に最悪で最低で…。今までで一番ひどい試合だと思います。

――1回戦もあまり良くはなかったですか

そうですね。出だしから散々でした。

――2回戦は振り返るとつらいですか

分析というほどでもなくて、根本的に全部負けていたし全てにおいて僕が甘かったという…。リーグ戦(関東学生リーグ戦)、関カレ(関東学生選手権)、インカレ(全日本学生選手権)ときて、全日本(全日本選手権)で、関カレの時に法大戦で僕が失態を犯して負けてしまったというのもあって、もうチームには一回迷惑をかけているじゃないですか。関カレの時のように絶対に迷惑はかけないし、自分のフェンシングを団体でしたいと思って練習してきて、今回こういう結果で自分が甘いというか、自分の甘さで他のメンバー二人が負けてしまうかたちになって、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。本当に甘いです、自分が。

――うまくいかなかった要因はありますか

いい時ってすごい自分が何でもできるような気がしてフェンシングをやっているんですよ。ここは絶対突けると思ってやっているし、すごい調子のいい時は不可能なことはないんじゃないかと思うかんじでやっているんです。調子が悪い時、とりわけ今回はやりたいことにこだわりすぎて、自分が自分勝手になりすぎて相手を見れていなかったりとか、そもそもポイントが突けていなかったりとか本当に根本的な問題で、本当に練習不足だと感じています。

――このメンバーで団体を組んだ1年が終わりましたが、振り返っていかがですか

リーグ戦では松山(恭助、スポ2=東京・東亜学園)がいないという中で2位となり、幸先は好調とは言えないですが、僕らはちょっと光が見えたというか、これに松山が入るんだからという気持ちでした。そして関カレで僕がああいうかたちで失態して、インカレもパッとしなくて、全日本も全然駄目で…。全て…。僕で試合を壊しちゃっているような、壊しているんですけど。僕がいなかったら関カレも、インカレも、今回も全然変わっていたと思うし、本当に情けない気持ちでいっぱいです。本当に。

――振り返るとやり切れなさの方が残りますか

もう、そうですね。フェンシング、本当に難しいです。

――フェンシングを嫌いになりそうですか

分からないです。頑張ります。

――来年は留学に行かれるということですが、目標はありますか

何でイタリアに行くかというと、高校3年生の時に留学してみたいと思ったのと、海外でフェンシングすごいしてみたいと思ってイタリアを選びました。松山もさっき僕に言ってくれたのですが、このままイタリアに行っても何も変わらないということで、自分も本当にそうだと思っています。3月に出発するのですが、3月まであと2か月くらいあるので自分が何をしたらいいのか、本当に考えて、何が答えに出るか今は分からないですが、その答えを出してしっかりイタリアでそれを改善でも挑戦でもして、イタリアでちょっと自分を見つめ直していきたいです。

松山恭助(スポ2=東京・東亜学園)

――本日の試合を全体的に振り返ってみていかがですか

これまでの団体戦でずっと負け続けてきた法大とベスト8決めで対戦するかも、というトーナメントでした。なので、何が何でも今回は法大と試合をして、リベンジをしたいとみんな思っていました。しかし、結果はそこまで勝ち進めず、悔しいと同時に残念ですね。2試合を振り返ってみて、個人としては自分の実力を100パーセント出し切ることはできなかったかもしれませんが、現段階での限界までは出せたのかなと思っています。でも、自分もそうですが他の二人も、いつもの力、もしくはそれ以上の力をこの試合で出せていたら勝てたのかもしれません。そう思ってしまうと残念ですね。

――特に2試合目について、振り返ってみていかがですか

和歌山クラブには元日本代表の選手など、強豪選手が多くいて強いチームなのは確かでした。自分も対戦経験のある選手ばかりだったので、事前にイメージトレーニングをして、どうやってポイントを稼ごうかなというところは考えていました。なので、個人としては1試合1試合を1つの勝負だと思って、作戦通りに試合ができましたね。無駄な失点をしてしまったなと思う部分もあったのですが、多少なりとも自分で立てた作戦がハマっていた気がします。

――立てていた作戦というのを具体的に教えてください

僕の中で、和歌山クラブの選手はプレーがねちっこくて、しぶといイメージがありました。それが分かっていたので、距離感を意識した作戦を組みましたね。なるべく近づかないようにしていました。もう一つ意識したことがあって、コースです。特にきわどいギリギリのコースを狙っていましたね…。相手は大柄で右利きの選手ばかりで、お腹のあたりが大きく開くのですが、そこばかり攻めると阻止されます。なので、肩の際どいコースを狙って打つようにしていました。そういったプレーにはリスクが伴うのですが、それでも勝負をしていかないと点数は取れないと思ってので際どいコースを狙うようにしていましたね。

――このメンバーでの試合はこれで最後となりました。いままでを振り返ってみていかがですか

そう考えるとなおさら勝ちたかったなと思いますね。主将の地元ということで勝たせてあげたかったです。改めて、振り返ってみるときょうは悔しいの一言に尽きますね。

――松山恭選手自身、早大への思い入れというのは強いですか

自分は小学、中学とワセダクラブというところに所属していて、練習の場所が大学でした。フェンシング部の監督さんがコーチをしていて、OBの方や現役の選手の方々と共にそこで練習をしてきました。そういう面もあって、早大には縁を感じています。自分を成長させてくれた場所でもあるので、早大への愛というのは人一倍強いですね。小さい頃から、早大に入学したいと思っていましたし、進学するなら絶対に早大とずっと決めて入学しました。これまで大学にはすごくお世話になりました、本当に。今度は僕が、自分にフェンシングを教えてくださったOBの方たちのように、早大フェンシング部は強いということを証明しないといけないと思っています。そうすることが今の自分の宿命。そして、大好きだからこそ、証明したいですね。

――早大に恩返しがしたいということでプレーをされていたのでしょうか

団体戦に関しては早大のために戦っているという思いがすごく強くて、強い早大を見たくて会場にいらっしゃっている方もいると思うので、そういった方々のために、きょうの試合は勝ちたかったですね。

――この1年間を振り返ってみていかがですか

ことしに関しては試合がものすごく多くて、ようやく終わったなという気持ちがあります。あと、来年に向けて頑張ろうという気持ちもありますね。全体的に振り返ってみると、最低限の結果は残せたんじゃないかなと思います。世界ジュニアの個人戦で3位に、団体戦で優勝できたのが大きいですね。いろいろ振り返ってみると苦しい時期もあったのですが多くの刺激を受けた1年間でもありました。リオデジャネイロ五輪も練習パートナーとして現地観戦してきました。その時に、日本の敗戦も見ているので。とにかく、この1年間は自分のフェンシング人生の中で最も濃い1年間だったのかなと思いますね。

――来季の目標を教えてください

海外試合に関してはシニアのカテゴリーで、大きな結果を残せていないので、まずは来年の世界選手権で表彰台にのぼりたいですね。大学の団体戦に関してはことしが全て2位だった分、来季はより熟成したチームでこれ以上の成績を残したいと思っています。