才藤がうれし涙の初V、茂木が歓喜の銅メダル!

フェンシング

 松山恭助(スポ2=東京・東亜学園)の快挙で幕を開けた全日本学生選手権(インカレ)。大会2日目は男子サーブル個人と女子エペ個人が行われた。松山恭の活躍に刺激を受けたのは、才藤歩夢(スポ2=埼玉栄)と茂木雄大(スポ2=神奈川・法政二)の二人の同期だった。才藤は劣勢でも強さを見せ優勝、茂木は厳しい試合も続いたが3位に。インカレにて女子エペ個人で早大から優勝が出たのは11年ぶり。男子サーブル個人では早大は電子審判機が導入されて以降メダルを獲得したことはなく、この3位は史上初のメダルとも言える。歴史に名を刻む、2日連続のメダルラッシュだ。

★才藤が雪辱果たしV!「優勝するなんて全然思っていなかった」(女子エペ個人)

優勝を決め、ベンチに入っていた山村とハイタッチをする才藤

 才藤が初めて見せたうれし涙だった。団体戦での優勝経験はあるものの、大学の個人戦での優勝はなく最高結果が関東学生選手権(関カレ)での3位。ベスト8までは安定したプレーで勝ち進むが、準々決勝と準決勝は厳しい展開になった。準々決勝は中盤から追いかけるかたちに。最終セットに連取し12-12にすると、追い付いた勢いに乗り13点目を先に取ることに成功。「その1点はすごく大きかった」(才藤)。そのまま連取で勝利し、迎えた準決勝。相手は昨年度インカレ優勝者であり、才藤が昨年のインカレ、ことしの関カレの準決勝で敗れた黒木夢(日大)だ。前半は連続失点を許し、4-10と6点ビハインドを背負ってしまう。ここで「切り替えてしっかり守りで点を」と才藤は焦ることなく取り戻し、9-10で第1セットを終えた。その後は均衡状態が続くが、最後は2連取で見事決勝進出を決めた。決勝は終始、才藤ペースでゲームは進む。優勝を決め仲間とうれしそうにハイタッチをした。「正直決勝まで行くとも思ってなく、優勝するなんて全然思っていなかったのでうれしかったです」(才藤)。自分のやりたいフェンシングで手にした日本一。それは才藤の大学初タイトルであると同時に、女子エペ個人戦のインカレ優勝は11年ぶりという偉業であった。

 一方4年生の山村彩和子(教4=岡山・玉野光南)と伊藤由佳(スポ4=栃木・宇都宮中央女)は奇しくも関カレと同じく同士討ちに。試合はやはり接戦となるが、伊藤が僅かなリードを守り抜き勝利した。伊藤は3回戦、中盤の連続失点で一気に6点差が開いてしまう。最後は同時突きを含む4連続得点で粘るが、ベスト8には一歩及ばなかった。女子エペ団体は2連覇がかかる。チームの集大成で全てを出し切れるか。

★茂木が叫んだ!歴史に名を刻んだ3位(男子サーブル個人)

2回戦に勝利し、うれしそうにガッツポーズをする茂木

 男子サーブルは6人が出場し、シードも含め2回戦には安部凌(スポ5=島根・安来)、山本隼大(スポ4=香川・三本松)、茂木、高木良輔(スポ1=埼玉・立教新座)が登場。高木は劣勢から粘りを見せ9-9まで追い付くが反撃もそこまでとなった。安部は序盤、連取し大量得点を得る好調さを見せるが、そこから徐々に詰め寄られ逆転許し敗北。1回戦で接戦を制した山本は、2回戦はポイントをなかなか挙げられずに試合終了となった。

 プール戦を全勝で通過した茂木だったが、初戦となった2回戦の相手はナショナルチームに所属する実力者の星野剣斗(法大)。一時は3点差まで突き離すが、同点に追い付かれ8-8。しかし、ここで2連取を決めるとその後はリードを守り15-12で大きな一勝を挙げた。しかし上位への道はまだまだ険しさが続く。3回戦では序盤は追う展開に。しかしここから2度の連取で流れを引き寄せた。準々決勝はテンポの速いゲームとなる。互いに譲らない状態であったが、中盤の3連続得点で逆転し準決勝進出を決めた。準決勝は相手に合わせて戦術を変え、4-0と好調の出だしに。しかし「(相手に)見破られて、普段のプレーに戻った瞬間にもうずっと点を取られてしまいました」(茂木)と後半は苦戦しポイントを得られないまま敗北。「何か持って帰りたい」(茂木)。3位と4位の重みは違う、何としてもメダルへ。3位決定戦ではそんな強い気持ちで魅せた。3-4から怒涛(どとう)の8連取、15-8で勝利を決めると叫んだ。厳しい場面を切り抜けられたのは、強い気持ちとベンチに入っていた松山恭の流れや戦術についてアドバイスがあったからだ。「すごい自信になったし、勇気をもらえました」と茂木は戦友への感謝を口にする。この2年間、表彰台は近いようで遠かった。そしてやっとつかんだ銅メダル、それは今まで早大サーブルにはないものだった。茂木がこれまでにないくらいの達成感と喜びに満ち溢れた表情を見せる。この3位は早大の歴史に残る3位だ。

(記事、写真 加藤佑紀乃)

才藤(右)は『1』、茂木(左)は『3』の順位の数字をつくった

※エペ:全身が有効面となる上に、両選手が同時突きをすると両者にポイントが与えられる。より慎重な攻め方が求められるため、時として両者が睨み合ったまま時間が過ぎることは稀な話ではない。

※サーブル:両腕も含む上半身への突きと切り(剣先ではなく剣の胴部分で相手の体に触れること)が得点となる。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は相手の攻撃を防御してから攻撃しなければならない。この攻撃権の奪い合いにより、両選手はピスト上を常に前後に往復し合うため、サーブルは3種目の中で最も全身運動が激しい種目だと言える。

結果

▽男子サーブル個人

茂木雄大(スポ2=神奈川・法政二) 3位

2回戦:○15―12 星野剣斗(法大)

3回戦:〇15-12 島田翔大(愛工大)

準々決勝:〇15-13 長内勇樹(日体大)

準決勝:●8-15 大崎葵一(法大)

3位決定戦:〇15-8 渡邉裕斗(中大)



安部凌(スポ5=島根・安来)2回戦敗退

2回戦:●13-15 大村貴之(日大)



山本隼大(スポ4=香川・三本松)2回戦敗退

1回戦:〇15-12 門脇佑斗(朝日大)

2回戦:●7-15 町田拓哉(慶大)



高木良輔(スポ1=埼玉・立教新座)2回戦敗退

1回戦:○15-10 小村諒(慶大)

2回戦:●9-15 鶴田浩一郎(朝日大)



竹下昇輝(スポ3=静岡・袋井)1回戦敗退

1回戦:●7-15 松下大成(関学大)



武山達(創理2=東京・早大学院)予選敗退



▽女子エペ個人

才藤歩夢(スポ2=埼玉栄)優勝

2回戦:○15-6 高塚悠希子(学習院大) 

3回戦:〇15-9 高橋伊吹(中京大)

準々決勝:○15-12 西久保夏実(慶大)

準決勝:〇15-14 黒木夢(日大)

決勝:○15-10 鈴木穂波(日大)



伊藤由佳(スポ4=栃木・宇都宮中央女) ベスト16

2回戦:〇13-12 山村彩和子(早大)

3回戦:●8-11鈴木穂波(日大)



山村彩和子(教4=岡山・玉野光南) 2回戦敗退

1回戦:〇15-8 安田花苗(立命館大)

2回戦:●14-15 伊藤由佳(早大)



澤浦美玖(スポ1=群馬・沼田女) 1回戦敗退

1回戦:●9-15 難波柚(中京大)

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コメント

才藤歩夢(スポ2=埼玉栄)

――優勝おめでとうございます。今のお気持ちはいかがですか

まだ大学に入ってタイトルを取っていなかったので、すごくほっとしています。

――きょうは準々決勝あたりから競り合いが続きましたが、準々決勝を振り返っていかがですか

準々決勝は関カレ(関東学生選手権)でも一本勝負だった相手でした。関カレでは自分が勝っていたところから追い付かれたのですが、きょうは結構点差があって、そこからラッキーもあったりして追い付いたので、流れは自分にったのかなと思います。最後12-12から13点目を先に取れたので、その1点はすごく大きかったと思っています。それがあっての勝ちにつながったと思います。

――ベンチに入った山村彩和子選手(教4=岡山・玉野興南)とインターバルで話すことが多かったですが、何を話していましたか

今ここが良かったけど、ここがダメだったから次は気を付けてとか、こうされた時にそうしようなどのアドバイスをしてくださいました。

――準決勝は関カレで負けた相手であり、序盤は大量にリードされてしまいました

途中4-10とかで負けていて、本当にどうしようこれと思っていて(笑)。取られた時に結構単発でというか、焦って自分が入ってしまったのが多かったので、その時に切り替えてしっかり守りで点を取れました。そこで切り替えられたのは良かったかなと思います。

――決勝を振り返って

決勝は去年のインカレで当たった相手で、去年は15-4くらいだったのですが、決勝ということもあってそうはいかなかったです。最初から少しずつリードで来ていたのは良かったかなと思います。準決勝の時は自分が追わなきゃいけなかったので、結構きつかったんですけど余裕を持って試合ができたかなと思います。

――昨日、松山恭助選手(スポ2=東京・東亜学園)が優勝し、きょう茂木雄大選手(スポ2=神奈川・法政二)は先にベスト4を決めていましたが、刺激になりましたか

それは、だいぶ。結構みんなから言われました(笑)。茂木もベスト4まで早い段階で進んでいて、準決勝の時に(茂木選手が)3位決定戦をやっているくらいだったのですが、自分はちゃんと決勝に行こうと思ってやりました(笑)。

――きょうはリラックスされているように見えました

緊張は全くしていないです(笑)。焦っていることはあまりなかったですね。

――自分のやりたいことはできましたか

はい、いい感じに。

――最後はうれし泣きでした

今まで団体で優勝はあったのですが、個人ではあまりなかったです。ジュニアの試合ではあったのですが、大学の試合となると本当に個人は先月の関カレの3位が1番良かったくらいなんです。しかも、正直決勝まで行くとも思ってなく、優勝するなんて全然思っていなかったのでうれしかったです。

――団体戦も控えていますが、意気込みをお願いします

しっかり休養して、団体も優勝できるようにしたいです。そして2連覇もかかっているので、しっかり勝ちに行きたいと思います。

茂木雄大(スポ2=神奈川・法政二)

――3位となりましたが、今のお気持ちはいかがですか

本当にメダルを取れて良かったです。

――きょうは1試合目からきつい試合が続きました

予選の結果は良くて、1回戦の相手も2回戦の相手も予選では悪い成績だったのですが実力が本当にある選手でした。特に1回戦はナショナルチームに所属している選手で、対戦するのは総体の決勝以来で、大学の試合では初めてでした。

――1回戦に勝てたのは大きかったですか

自分の中で大きくかったです。相手が自分より格上ということを知っていて、することも相手も分かっている状態でした。それのさらに上をいかないと勝てないなというのはベンチに入っていた恭ちゃん(松山恭助、スポ2=東京・東亜学園)とかから言われていました。なのでもう死に物狂いで戦いました。

――劣勢の場面もあったと思いますが、そのあたりは気持ちで切り抜けましたか

気持ちと、自分がそういう時にで折れてしまうことが多いんです。そこで(専門とする)種目は違うのですが流れというは3種目とも一緒なので、恭ちゃんが流れや戦術についてアドバイスをしてくれました。それはすごい自信になったし、勇気をもらえました。すごく感謝しています。

――準決勝は惜しくも敗れてしまいましたが振り返っていかがですか

前半は相手が強く、すごくトリッキーなプレーをしてくる選手ということは分かっていたので、普段自分がいつもやっているプレーをすると負けると思い、自分も普段やらないプレーを前半はしていました。しかし見破られて、普段のプレーに戻った瞬間にもうずっと点を取られてしまいました。そこは戦術面でもっと考えてやらないとあのように点数が離れてしまい、団体戦でも響いてしまうと思うので、考えて一緒の判断でできるように練習していきたいと思います。

――3位決定戦ではメダルが欲しいという思いが大きかったですか

そうですね。本当に何か持って帰りたくて。男子サーブルでメダルを取ったことは近年ないと思うので、何か持って帰りたいと思って頑張りました。

――きのう松山恭助選手(スポ2=東京・東亜学園)が優勝したのは大きかったですか

そうですね。すごく刺激になって、やはり有言実行するやつなので。法政二高から早大に誘ってくれたのもあいつなので。あいつの存在はすごく大きかったです。

――団体も控えていますが、意気込みをお願いします

まずは一つずつ勝って、打倒法政でやっていきたいと思います。