【連載】インカレ直前特集『Prêts? Allez!』 第3回 伊藤由佳×山村彩和子

フェンシング

 昨年度公式戦無敗、五冠を成し遂げた女子エペ。今季は全日本学生王座決定戦(王座)では優勝するが、関東学生選手権(関カレ)では3位という結果に終わった。伊藤由佳(スポ4=栃木・宇都宮中央女)と山村彩和子(教4=岡山・玉野光南)は、女子エペで4年間切磋琢磨(せっさたくま)してきた仲。性格は正反対ながらも、互いに信頼し合い、きつい練習にも励んできた。二人にとって、今回の全日本学生選手権(インカレ)は最後の学生大会となる。ワセダの女子エペをけん引する先輩として。また、一人の選手として。大舞台を直前に控えたいま、二人の胸に秘めた思いに迫る。

※この取材は11月2日に行われたものです。

「新たに得るものがあった」(伊藤)

仲の良い二人。対談を実は3年前に一度やっています!

――春の関東学生リーグ戦(リーグ戦)が2位で、王座が優勝という結果でしたが、振り返っていかがでしょうか

山村 悪くはなかったです。春のリーグ戦は私がいなくて、フルーレの選手に2日目出てもらいました。内心王座はいけるのかな…と思っていたのですが、本当にいけて王座ではちゃんとリベンジできたので、良い結果になったかなと思います。

伊藤 久々に負けてしまったのですが、新たに得るものがあったと思います。逆に良かったかな、と思っています。

山村 私はいなかったので、ごめん、ありがとう…みたいな感じです(笑)。

――夏に強化練習を行ったと思うのですが、それはどのようなことを意識して取り組みましたか

山村 気合だったよね、もう完全に。

伊藤 最後勝つのは気持ちの部分もあるので、きついトレーニングの中で妥協せずに、どれだけ自分と向き合うかということを意識しました。

山村 あと、ここでもっと踏ん張りがきかなかったら最後の点絶対取れないかもしれない…みたいに思い込むようにして、よし頑張ろう!というような声を出すことも意識しました。

伊藤 フェンシング自体は普段から同じメンバーとずっと一緒にやっているし、体がきつい状態の中で良いプレーをできるように、惰性でやらないように、と考えていました。

――関カレでは団体3位でしたが、そちらは振り返っていかがでしょうか

伊藤 ごめんなさい(笑)。

山村 ごめんなさい(笑)。それまで昨年はちゃんとボードに相手の対策を書いて、団体の練習をして…という感じだったのですが、ことしは団体もなかったしゆるっと入ってしまった部分があるので、そういうところで甘かったなぁと思いました。今までやってきた良い習慣を続けなかったら、結果に見事に現れるんだなあと思いました。

伊藤 楽しむ余裕が全然なくて、ああ…何点も取られてるし、自分はここで取らなくちゃいけないのか…という変な焦りがありました。今までのように全然気にせず、良いんだ!まず1本ずつ取れれば良いや!と思えなくて、やばい…1点も取れない気がする…どうやって取ろう…と久々になってしまいました。インカレは楽しみたいと思っています。

――関カレの個人戦についても、振り返ってみていかがですか

山村 個人戦は(お互いに)当たっちゃったので(笑)、何とも言えない感じに終わりました。

伊藤 絶対来ないでね、って言われたのに見事に来ちゃって…ごめんね(笑)。意識しすぎちゃって…彩和子のことを(笑)。

山村 私は昨年2位だったのでシードで入っている場所が決まっていて、何か(伊藤選手が)入りそうな予感する…と思っていたら見事に入ってきて、早々に当たって由佳が勝ちました。

伊藤 申し訳なかった…。ごめんね(笑)。

山村 いやいや(笑)。

伊藤 歩夢(才藤、スポ2=埼玉栄)に負けたけどな(笑)。 ワセダ同士で潰し合いました。今度は入らないように気をつけます(笑)。

――今シーズン1番印象に残っているゲームは何ですか

伊藤 自分は1番直近の日大戦ですかね。真っ白とは少し違うのですが、あそこまで、あれ…?となってしまったのは久々だったので、悪い意味で印象に残っています。

山村 春は負けている状況でも勝てる!と思ってやっていたし焦らなかったのですが、秋の関カレの日大戦は、これは…もう負けるな…みたいな雰囲気がありました。動きもそのような感じだったので、諦めているわけではないのですが、本当にこれは相手の方が強いし、やられるな…と思いました。昨年はそんな風に思わなかったので、久々にそういう気分を味わえました(笑)。相手の徹底さに圧倒されて、考えていかないとダメだなあと思いました。

居心地の良い関係

関カレで突きを決める伊藤。ラストのインカレでは楽しみたいと語った

――それではプライベートなお話に移りたいと思います。まずはフェンシング部内の推しメンを教えてください

山村 みんなキャラは濃いですけどね…

伊藤 真英(小野、スポ2=埼玉栄)かなぁ…同じ種目(エペ)だし、学連でも一緒なので絡むことが多いかな?すごくいいやつですよ。

山村 なんで彼女できないんだろうって思います(笑)。

伊藤 とりあえず2年生以下はみんなかわいいです(笑)。

――同期の選手の雰囲気についてはいかがですか

山村 同期には自由人が多くて、良い意味でつかず離れずの関係ですね。ある程度の距離は保ちながらやっています。

伊藤 プライベートも大事にしつつ、わちゃわちゃするときは一緒に騒ぐっていう(笑)。

山村 程よい関係だと思います。群れない感じで。

――フェンシング部を色で表すと何色だと思いますか

伊藤 もうワセダのエンジしか思い浮かばない(笑)!

山村 暗い色ではないよね、明るい色だと思う。

伊藤 でもきれいな色っていうイメージでもないなぁ。

山村 青系のさわやかな色でもないよね。

伊藤 どちらかというと淀んでる色だと思う(笑)。

一同 うーん…、エンジでお願いします(笑)。

――後輩の才藤選手の活躍に刺激は受けますか

伊藤 受けます。すごく頑張ってるのが伝わってきますしね。歩夢に限った話ではないですけど、そういう子たちがもっと居心地が良いと思える環境を作ってあげたいです。でもそう思う反面、自分がもっと頑張らなきゃって感じます。

――エペという種目の魅力について語ってください

伊藤 とりあえず突いたら点になるところ(笑)。

山村 でも本当にそう。良くも悪くも1本がすべてですから。特にエペはフレーズが無いぶん、より1点の価値も大きいというか…たぶん一番悔しく感じることが多い種目じゃないかなと思います。実力差も出にくいです。女子だったら、絶対にこの人が勝つ!ということはないですし、(誰にでも)可能性はある。逆に結果を残しているような強い人でも負ける可能性はあるから、そうでない人にとっては頑張りようがありますよね。あとは見てる側はめっちゃ楽ですよね(笑)。ランプが点いたらよろこべばいいので(笑)。

――場合によっては逃げ回りますよね

伊藤 そうですね。時間を上手く使いながらという感じです。

――何かマイブームはありますか

伊藤 今は落ち着いてますけど、自転車に乗りたくて乗りたくてたまらないという時期がありましたね。

――なぜブームが去ってしまったのですか

伊藤 派手に転んでケガしちゃったんですよ。こっちに自転車持ってこようと思ってたんですけど、地元で親に止められました(笑)。「あんた危ないからやめなさい!」って。没収されてます(笑)。

山村 私はマニキュアをめっちゃ集めてます。

伊藤 女子だね(笑)。見習います!

――入部時と現在で、互いの印象に変化はありますか

一同 変わってないよね。

山村 入学前に試合で対戦したんです。その時に(伊藤選手のことを)めっちゃ良い子だ!絶対一緒にやっていける!と思ったら、本当に楽しいし、おもしろいし、明るいし、気が使えるし…。一緒に居やすいです。

伊藤 こんなに褒められたことないですよ(笑)。

山村 むしろ嫉妬するぐらいです。

伊藤 それはないわ(笑)。彩和子ってどんな状況や場面でもポジティブで人の良いところを見つけて引き出すのが上手なんですよ。私がイライラしているときも察して癒してくれます。私の方こそ居心地が良いです(笑)。

――山村選手は先日誕生日を迎えられたとのことですが、フェンシング部で何かお祝いはしましたか

山村 誕生日の時は試合だったので、きょう久しぶりに練習に来たんですよ。そうしたらついさっき顔にクリーム付けられて(笑)、息ができませんでした!

伊藤 ホイップクリームを紙皿に載っけたやつをね、バフッと(笑)。おめでとう(笑)。

「前回やった後悔を今回はしなくていいように」(山村)

山村は関カレの悔しさを力に変えインカレで発揮したい

――では最後にインカレについてお聞きします。インカレに向けて特に意識して練習していることはありますか

伊藤 今まで自分は試合のときに勝ちを見据えた点の取り方を考えていたのですが、そうではなくて相手のことを見ながらうまく自分との距離を作ることを意識して、その中でどうプレーしていくかを意識しています。例えば先手を取ってフェイントを出していこう、などと考えるようにしています。

山村 私は守り系であまり攻めるスタイルではありません。負けていていざというときに歩夢がポイントゲッターで取ってきてくれるのですが、調子が悪かったときにどっちかが取りに行かなきゃいけない場面があると思うので、普段のプレースタイルの中でどうやったら攻めにつなげられるかというのは考えながらやっています。今団体戦をする計画を立てていて、前回やった後悔を今回しはなくて良いようにと思っています。

――お二人は4年生で引退が近づいていると思うのですが、それに関して何か思うことはありますか

山村 ここまできたらもうあとは出し切るだけで、寂しいという気持ちはないです。

伊藤 強化練習が終わったときが寂しかったです。あっ、もう合宿とかしないんだ…と思いました。 でも最後なので変に冷静というか、取り敢えず後悔だけしないようにやろうと思っています。

山村 気持ちとして最後だから勝たなきゃ…などとは思っていないので、最後挑戦できたら良いかなあと思っています。

――最後にインカレの具体的な目標や意気込みをお聞かせください

山村 団体は優勝。個人は、ああ…負けちゃった…とならないようにしたいです。最後まで徹底したプレーができるように頑張りたいと思います。

伊藤 プレーが良ければ結果に繋がると思うので、こうすれば良かったなあ…ああすれば良かったなあ…と思うことがないようにしたいです。出し切って負けたならしょうがないですね。それが勝ちにつながったり、優勝につながったりしたら1番かなあと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 山下夢未、藤岡小雪)

インカレの意気込みは「克己 自分と仲間を信じて!」(山村選手)と「逆境を楽しむ!!」(伊藤選手)と書いてくださいました

◆山村彩和子(やまむら・さわこ)(※写真左)

1994(平6)年10月29日生まれ。163センチ。岡山・玉野光南高出身。教育学部4年。対談を行った数日前に誕生日を迎えた山村選手。対談直前には、チームメイトから顔にホイップクリームの載った紙皿を投げつけられたそうです(笑)。

◆伊藤由佳(いとう・ゆか)(※写真右)

1994(平6)年11月6日生まれ。162センチ。栃木・宇都宮中央女高出身。スポーツ科学部4年。一時期自転車にはまっていたという伊藤選手。地元に戻った際ロードバイクに乗り、こけてしまって以来、自転車は地元に置いてあるそうです。