ことしの締めくくりとなる全日本選手権(全日本)もついに最終日。花形種目の男子フルーレ、女子フルーレでは並みいるつわものたちがしのぎを削る中、松山恭助(スポ1=東京・東亜学園)がベスト4に進出する。だが、準決勝で惜しくも敗れ日本一の座をつかむことはできなかった。
男子フルーレは1回戦からワセダ対決が相次ぎ、2回戦へ進出したのは計4人。竹田陸人(社1=法大二)を逆転勝ちで下した仙葉恭輔(スポ4=秋田南)は2回戦も勢いのままに、6点ビハインドから一気に追い上げ一本勝負に持ち込み、同郷出身である簾内長仁(中大)を制した。これで松山恭と共に3回戦へと進むことに。しかし、仙葉はメダリストの藤野大樹(森永製菓)と直接対決。相手の素早い攻めに押され、涙をのむ結果となった。早大で唯一ファイナルラウンドに残ったのは松山恭。点差をつけ順当に勝ち上がり、迎えた準決勝は仙葉を倒した藤野が相手だった。だが滑り出しから敵の攻撃に悩まされ最大6点差をつけられてしまう。「自分のよくやられるケースを考えずに相手の弱点ばかり考えてしまった」(松山恭)。試合途中にフットワークが重要だと気付いた松山恭は改善を図り、12-13の1点差にまで追い上げる。だが、反撃はここまで。藤野に15点目を決められた瞬間、座り込み落胆の表情を浮かべた。
惜敗し崩れ落ちた松山恭
最後の一突きが運命を分ける。それを痛感させる試合が女子フルーレには目立った。初戦を突破し挑んだ2回戦。尾上千尋(創理4=東京・田園調布雙葉)は宮脇花綸(慶大)と当たり敗戦するも、永瀬夏帆(スポ3=宮城学院)はロースコアの緊迫した試合を繰り広げる。1点を追いかける中で迎えた第3セット。5-7から一挙3連続ポイントでこの試合初めてリードする。このままタイムアップすれば勝利をつかめる。だが、そう簡単にはいかなかった。相手に1点を取られ、一本勝負で雌雄を決することに。永瀬はじりじりと相手陣内へと攻め込むが、そこで突きを食らいゲームオーバー。大きく天を仰いだ。対して、2回戦を難なく勝ち進んだ狩野愛巳(スポ1=宮城・仙台三)は3回戦で柳岡はるか(中大)と対戦。両者互角のシーソーゲームを展開し、最終セットへ。先に14点目を獲得し王手をかけたのは、狩野。しかし、そこでも魔物は潜んでいた。相手の気迫こもる攻撃に敗れ2失点を喫し、14-14の同点に。最後の1点も勢いに押されものにできず、試合終了と同時に狩野は崩れ落ちた。
3回戦敗退となった狩野(写真ː左)
今大会はこの日で幕を閉じ、ことし1年間の戦いが終わりを迎えた。ここで選手生活にピリオドを打つ4年生も多い。だが、終わりは始まりの合図だ。剣を置いた最終学年の思いは次の世代へと受け継がれ、さらなる歴史を築いていく。悔しい経験、うれしい記憶、全てを力に変えて、プレ・アレ――。新しい騎士団が始動する。
(記事 松本理沙、写真 三上雄大、松本理沙)
※フェンシングの団体戦は3人、または4人の選手が交代で出場し、1試合当たり3分という持ち時間内で争う。あるいは3分以内にどちらかが先に5得点先取すると、そこで次の選手に交替となる。最終的には9試合戦い、45点を先取、または持ち時間が終了した場合は得点が高い方が勝ちとなる。
※フルーレ:頭・両足・両腕を除いた胴体部への突きのみが得点となる。 両者がほぼ同時に突いた場合は、どちらの攻撃が有効だったかを主審が判定する。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は攻撃を防御してから攻撃しなければならない。
結果
▽男子フルーレ
松山恭助(スポ1=東京・東亜学園) 3位
1回戦:○15-3 中村泰樹(山口クラブ)
2回戦:○15-5 船本宗一郎(日大)
3回戦:○15-6 鈴村健太(大垣南高)
準々決勝:○15-6 伊藤真(日大)
準決勝:●13-15 藤野大樹(森永製菓)
仙葉恭輔(スポ4=秋田南) 3回戦敗退
1回戦:○15-11 竹田陸人(早大)
2回戦:○15-14 簾内長仁(中大)
3回戦:●6-15 藤野大樹(森永製菓)
松山大助(スポ3=東京・東亜学園) 2回戦敗退
1回戦:○15-8 佃史成(日大)
2回戦:●3-15 三宅諒(セイコー)
三好修平(社3=愛媛・三島) 2回戦敗退
1回戦:○ 15-10 山口理伎(早大)
2回戦:●12-15 東哲平(法大)
山口理伎(創理4=東京・早大学院) 1回戦敗退
1回戦:●10-15 三好修平(早大)
竹田陸人(社1=神奈川・法大二) 1回戦敗退
1回戦:●11-15 仙葉恭輔(早大)
▽女子フルーレ
狩野愛巳(スポ1=宮城・仙台三) 3回戦敗退
1回戦:○15-5 奈良井京香(島根県)
2回戦:○15-8 家永妃里(岐阜クラブ)
3回戦:●14-15 柳岡はるか(法大)
尾上千尋(創理4=東京・田園調布雙葉) 2回戦敗退
1回戦:○14-12 狩野央梨沙(利府西中)
2回戦:●4-15 宮脇花綸(慶大)
永瀬夏帆(スポ3=宮城学院) 2回戦敗退
1回戦:○11-9 遠藤里菜(高崎商大高)
2回戦:●8-9 辻すみれ(岐阜総合学園)
コメント
松山恭助(スポ1=東京・東亜学園)
――今大会はご自身にとってどのような大会でしたか
自分の中では欲しかったタイトルでした。いつも内容にこだわって試合をしていたのですが、今回はタイトルが欲しかったので、内容より結果にこだわってやっていました。結果的に負けてしまって残念なのですが、全日本選手権をメインターゲットとして練習していたかというそうではなくて、たくさん試合がある中で、やはり自分としてはメインが国対試合になってしまう部分がありました。そこからの調整ミスで今回体調を崩してしまってこういう結果につながったのかなと思っています。いずれにせよ、特にことしは十分チャンスがあったと思うので、勝たなければいけない試合だったなと思っています。でもここ3年間くらいベスト8からも遠ざかっていたので、メダル圏内に入れたのはすごくポジティブでもあると思います。
――準々決勝までは余裕の試合運びでしたが振り返っていかがですか
比較的体のだるさがあったのですが、そのせいか逆にやることが絞れていました。余計なことを考えずにこれとこれだけという感じでできる範囲が狭かったので、自信を持ってできたというのがそういう結果につながったと思います。あと、迷いがなかったですね。緊張すると力んだりして普段やっていないことも出てしまったりするんです。僕の場合だと緊張するとスピード頼りにしてしまうので自分のタイミングや距離を見失ってしまって試合に負けてしまうケースもあります。今回はそれがなかったので点差の開く試合展開にできたのかなと思います。あと、A代表などでぶいぶい言わせている選手と当たらなかったというのも要因としてあります。
――トーナメントの当たりから見て予選は調子が良かったのでしょうか
14番上がりでした。悪くもなく良いとも言えないランクでした。
――準決勝では森永製菓の藤野大樹選手と当たりましたが、どのような戦略で挑んだのでしょうか
準決勝は試合の間隔も準々決勝から開いてしまいましたし、初めてではないのですが久しぶりにポディウムという舞台でやるということで少し緊張してしまいました。試合前はムダに動いてしまうと息があがってしまうのでなるべく動かないようにストレッチだけして、あとは頭でセッテイングだけしていました。でも準決勝では薬を飲んだりして体の状態もまた変わってきて、準々決勝までと比べて頭もあまりさえてなかったかなという気がします。また、自分である程度戦術を立てたりだとかしていたのですが、自分がやられるポイントを考えてなかったです。自分のよくやられるケースを考えずに相手の弱点ばかり考えてしまったのが失敗点かなと思います。それは結果的にはフットワークだったのですが、特に藤野選手は前に出てくる選手なので足を使って手だけで剣を振ったりしてしまうとキレイに抜かれてしまいます。だから、そこはフットワークを使わなければいけないなと試合の中盤で気づいたので変えることができました。それでなんとか点差的にああいうところまで持ち込めたのかなと思います。
――敗因は相手が自分のやられるケースを攻めてくるという部分を考えていなかった点ということでしょうか
一番やられてはいけないことをやられてしまったという感じです。でもそれを中盤で直せたので、あのまま終わらずにできたのだと思います。
――それは良かった点と言えますか
そうですね。そこがことし成長できた部分かなと思います。いままではそのままやられていたのですが、ことしはそういうところが粘れるようになりました。やっぱりシニアの海外試合での経験が生きてきたと思います。
――3位という結果に関してはいかがですか
あの日のベストは尽くしたと自分では思っています。もちろん優勝を狙っていたのですごく残念な気持ちもあるのですが、結果的には初めてのメダル圏内ですし、それなりに良かったのかなと思います。最低限の結果は出せたので。
――来年度は団体枠確保、そしてリオ五輪代表戦線がますます過熱すると思いますが、目標と意気込みをお願いします
2020年のオリンピックでメダルを取るというのを目標としているのですが、リオに出られるかどうかが今後のフェンシング人生においても非常に重要なので、いまがすごく分岐点というか、踏ん張りどころです。なので、いまを全力で戦いたいなと思っています。リオも日本が出られるかどうかも現状では分からない状態でそれが決まるのが2月の上旬なので短い期間ではありますがあと2ヶ月をフェンシングに注いで集中して1日1日を大切にしたいと思います。