強敵に善戦も涙

フェンシング

 連日熱戦が繰り広げられている全日本選手権(全日本)。男子エペでは津江碧主将(スポ4=山口・岩国工)が1回戦で苦しい戦いを強いられ、決死の反撃も届かず敗退。小野真英(スポ1=埼玉栄)は、自分の思うようなプレーをさせてもらえず、8―15で敗れピストにしゃがみこみ悔しさを滲ませた。小野弘貴(社4=東京・早稲田)は2回戦でアクシデントに耐え健闘するが惜敗。女子サーブルでは、新星・佐々木陽菜(社1=東京・大原学園)は3回戦で接戦にもつれ込むも制することができなかった。

 波乱のラストゲーム。この日2回戦で小野弘は強豪と対戦。序盤、時間を使った両者のにらみ合いが続く。そこで第2セット小野弘は勝負に出て、7連続得点でリードを広げた。しかし、第3セット攻め合いを制せず、失点が積み重なる。そんな中、相手の剣が当たり、右手首にケガを負ってしまう。「でもまあしょうがないな」と切り替えた小野弘は意地で3連続ポイントを奪取した。しかし、相手も粘りの反撃で14―14までもつれ込み、最後は一本勝負へ。プライオリティは相手となり、攻める以外の選択肢はなくなった。覚悟を決めた小野は相手の上半身を攻める。しかし剣に託した思いは届かず敗北。「自分の得意技は相手の下半身を攻撃することなのに、それができなかったのは最後に自分を信じきれなかったのかな」(小野弘)。目標とするベスト8進出はかなわなかった。しかしこの4年間を振り返り「本当に4年間を振り返って幸せだったし、感謝の気持ちでいっぱいです」と話す小野弘の目には涙が浮かんでいた。

学生最後の試合となった小野弘(左)

 女子サーブルでは、佐々木陽が1回戦、2回戦と自分のプレーを魅せて圧勝。その勢いのまま3回戦も突破したいところだったが、相手は手ごわかった。第1セットは、自分のペースに巻き込み5点のリードを保つ。しかし、後半立て続けに逆襲を仕掛ける相手に対応しきれず、焦りも。最後は一進一退の状況が続き、またもや一本勝負へ。同時攻撃が続き、得点はなかなか動かない。「相手が同じところしか狙っていなかったので避けたらいいかな」と考えた佐々木陽の読みを当てたのだろうか、相手の剣の先は避けたはずのところへ。試合終了と同時に涙を見せた佐々木陽。試合当日は、自身の誕生日の翌日。願っていた誕生日プレゼントは、らいねんにとっておくことになった。

悔しさをにじませる佐々木陽

 勝利の女神はほほえまなかった。引退となった津江主将と小野弘は感謝の思いを語り、これからを担う小野真、佐々木陽はこの悔しさを糧に前に進んで行くだろう。それぞれの思いを胸に静かに舞台は幕を閉じた。

(記事 加藤佑紀乃、写真 山田周史)

結果

▽男子エペ

小野弘貴(社4=東京・早稲田) 2回戦敗退

1回戦ː○15-7翁和吉(福岡フェンサーズ)

2回戦:●14―15平野良樹(新潟クラブ)



津江碧主将(スポ4=山口・岩国工) 1回戦敗退

1回戦:●7―15西本勇斗(専大)
 


小野真英(スポ1=埼玉栄) 1回戦敗退

1回戦:●8―15笠原崇弘(新潟クラブ)



▽女子サーブル

佐々木陽菜(スポ1=東京・大原学園)3回戦敗退

1回戦ː○15-5安田早希(岐阜各務野高)

2回戦ː○15―7奥田彩野(法大)

3回戦ː●14―15井上真美(警視庁)

コメント

津江碧主将(スポ4=山口・岩国工)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

きょう最後の公式戦ということでしたが、思い切りやれたかなと自分では思えない部分があって、あまり自分の中では思ったような試合ができなかったです。

――現役時代最後の試合というのは意識されましたか

学生最後の、現役最後の全日本選手権だなとは意識したのですが、この間の早慶戦(早慶対抗定期戦)が終わって気持ちが切れていた部分もどこかであったのかなと試合が終わった後に思いました。

――最近試合がたて続けに行われていますが、疲れなどもありましたか

疲れはあったかなっていうのは自分ではあまり分からないですけど、もしかしたらあったのかもしれないですね。

――きょうで引退となりますが、実感はありますか

正直、あまりなくて。あしたまで残れるだろうと自分の中では思っていたので、急に引退が来たなという感じですね。

――悔しさが残る部分は大きいですか

一回戦で当たった相手が高校の後輩だったのです。結構やり慣れている相手だったのですが、自分の思うようなプレーをさせてくれない試合展開で完全に参りました。

――この一年間主将としてやってきて、一番印象に残っていることは何ですか

新しいことなのですがこの間の早慶戦で全種目男子3種目、女子3種目、団体戦で勝ったことが僕のなかでは一番印象的ですね。

――やはり早慶戦は結構大きなものを占めていますか

早慶戦は一年の中でも最後の12月にある大会で、またワセダの学生として、ケイオーにはなんとしても勝たねばならんという気持ちが入っていたので、より思い入れが強いのかなと感じます。

――4年間共にしてきた同期はどのような存在ですか

彼ら同期がいなかったら自分もこうやって一緒に成長できなかったなと思います。なので本当に同期には感謝しています。

――最後に後輩に残したい言葉はありますか

僕たちの代では、インカレ(全日本学生選手権)も関カレ(関東学生選手権)も一回も優勝することができなかったので、後輩には優勝してもらいたいと思います。

小野弘貴(社4=東京・早稲田)

――最後の全日本選手権(全日本)、初日のきのうを振り返って

トーナメントの当たりは悪くなかったなと。いつも通りのフェンシングを心がけることができてきのうは良かったです。

――次にきょう行われた2回戦を振り返って

相手の平野選手(良樹、新潟クラブ)はナショナルチームでやっている選手で何度か対戦したことがあり守りのかたい堅い選手という印象がありました。ロースコアの展開になると予想していました。結果的に最初はロースコアで最終的にお互い点を取り合うという試合になりました。

――2セット目終了時には8-5とリードしていましたが逆転を許す展開になってしまいました

やはり対応ができなかった技があり、その技を対応しきれず、立て直す前に相手にリードされてしまいました。追いつくことはできたのですが対応するのに時間がかかってしまいました。

――途中手首を痛めるシーンがありましたが

相手の剣がたまたま手首に当たってしまいました。まあでもしょうがないなと。

――最後は14-14で一本勝負に

優先権が相手にあったので攻めるしかないなと。正直、相手の上半身に攻撃にいったことは後悔していないけど自分の得意技は相手の下半身を攻撃することなので、それをできなかったのは最後に自分を信じきれなかったのかなと。

――試合後はかなり悔しそうでした

やはり最後の試合で親も観に来てくれていて自分が選手としてお世話になった人たちに結果で恩返しを伝える機会だったので目標とするベスト8まで進めず悔しいというか悲しかったです。この試合に懸ける思いはありました。

――すべての試合が終わったいま、これまでの4年間を振り返って

本当に4年間を振り返って幸せだったし、恩返しの気持ちでいっぱいだと心から思います。これだけ中学校からフェンシングをやってきてこんなに一生懸命になれてそんな自分に伝統あるワセダのユニフォームを背負わせてくれて、両親であったりОBの先輩や切磋琢磨(せっさたくま)し合える他大学の人たちがいて、そんな環境でフェンシングが出来て幸せだったなと。あとは、大学2年生ぐらいまでは試合に勝ったら嬉しいし、負けたら悔しいって感じだったのですが、いまは自分に期待してくれている人たちの分まで頑張ろうと思えるんです。スポーツをやる人間として本当に幸せだったなと。ワセダに入って本当に良かったなと思います。

佐々木陽菜(社1=東京・大原学園)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

1回戦、2回戦は最初から自分のペースでできたので良かったのですが、3回戦は前から練習でずっとやっている人で、強いのでそんな簡単にはいかないというのはもとから分かっていました。でも、やる前から下がらないで前に前に行こうと決めていてそれを前半貫き通せたので、相手に点差をつけられました。後半になって相手も実力あるし、キャリアも自分よりある選手なので、いろいろ変えてくるかなというのを勝手に思ってしまって、いろいろ考えすぎて前半の勢いが後半の初めの方になくなって、そこでまた点数を取られたことで、ちょっと焦っちゃったかなと思います。

――1回戦、2回戦は調子が良かったですか

もともと1回戦の相手は高校生で、2回戦は大学1年生だったのですが、ふつうにやったら勝てるかなという心のゆとりがあったというのもあって、自分のミスで取られないように、一歩一歩油断しないで一本集中してやろうと思っていました。結果点差がついた形で試合を終えられたので、動いたという印象もないですけど、最初から最後まで自分のペースで試合運びできたかなと思いました。

――ビデオ判定もありましたが、影響はありましたか

それはそんなにないです(笑)。本当は2回戦からビデオ判定があったのですが、使う場面はなかったです。3回戦は点差がない状態で、微妙なジャッジがあったので、イチかバチかというか、譲れなかったので判定を請求しました。

――最後14―14になった場面ではどのようなお気持ちでしたか

相手とずっと点数にならないシュミルタネというのが続いて、相手が同じところしか狙っていなかったので避けたらいいかなと思いました。得点が14になる何本か前も2本くらい攻撃が決まっていたので、ここで使おうかなと避ける選択をしたのですが、たまたま避けた先に相手の剣があって、自分の身体が剣にのってしまったのが悔しかったです。

――試合が終わった直後も涙されていましたが、悔しい気持ちが大きいですか

はい。

――今季を全体的に振り返っていかがですか

年齢制限のないシニアの大会で、ベスト8に入り続けていて、国内ランキングも上げられていたので実力がついてきたかなとずっと思っていたのですが、やはり良い試合ができても勝って終われないというのはまだまだかなと思いました。

――今後の目標は

まず年明けにJOCジュニア・オリンピック・カップがあって、ジュニアとして出る最後の大会なので、そこで結果を出して優勝して終わりたいです。海外遠征もあるので、ちゃんと結果出したいなと思います。