伝統の一戦を完全優勝で締めくくる

フェンシング

 ことしで68回目となる早慶対抗定期戦(早慶戦)。両校のOB、応援部が集結し、早慶戦ならではの緊張感と大歓声に包まれたなかで、白熱した試合が展開された。各種目それぞれ厳しい場面もあったが、男女全6種目で勝利。昨年は達成しえなかった全勝優勝を成し遂げ、今季最後の団体戦を有終の美で飾った。

 先陣を切ったのは、先日行われた全日本選手権(全日本)で強豪相手に善戦した男子フルーレ。序盤は相手の果敢な攻めに苦戦し、なかなか得点を積み重ねることができず、7点を追う展開に。しかしそこで流れを食い止めたのは仙葉恭輔(スポ4=秋田南)だった。「良い流れをつくりたいという気持ちと、自分なりに作戦をもって臨んだのがうまくマッチした」(仙葉)と、8連続ポイントで逆転に成功する大活躍。さらに4点リードを残して次に回した。この勢いに乗りさらに点差を広げたいところだったが、粘りを見せる相手の反撃に苦しめられて思うように攻撃をさせてもらえない。それでも最後は慶大を振り切り勝利をつかみ取った。続く女子フルーレは狙いを定め相手の隙をつき、着実に点数重ねていく。さらに狩野愛巳(スポ1=宮城・仙台三)が連続ポイントで相手を突き放し、優位を保つ。結果、45-27で完全に封じこめた。

大活躍を見せた仙葉

 男子エペでの対決は早大にとって鬼門の一戦。慶大エペ陣は全日本2位の実力を持ち、早大はことしの春以降、慶大相手に苦杯をなめ続けている。試合序盤から接戦が続き、わずかなリードはあるものの、逆転されてもおかしくない状況が続く。そんななかで活躍したのはフルーレを本職とする仙葉だった。1点差リード回ってきた5セット目、同時突きを含む5連続ポイントでチームに流れを引き寄せた。「一人一人がしっかりとつないで最後までこのリードを守っていくということをチームの中で意識していました」(津江碧主将、スポ4=山口・岩国工)と語るように、その後は相手に動じることなく逃げ切りに成功。早慶戦のターニングポイントと言える試合で見事勝利をおさめた。

 先日の全日本で優勝し、今季前人未到の五冠を手にした女子エペは、これまで先頭に立ってチームを率いてきた山根司(スポ4=香川・三本松)のいない新体制で早慶戦に挑んだ。そんな船出ともいえる一戦は想像以上に険しいものとなった。前半は僅差を守り抜いてわずかにリードを保つが、後半に相手の怒涛(どとう)の反撃で逆転を許してしまう。会場は慶應義塾高等学校ということもあり、相手に1点入るたびに大歓声がおこり、いっそうアウェーの雰囲気に包まれた。そんな窮地を救ったのはベンチにいた山根司のアドバイスだった。いつもは最終周りの直前にやる円陣を、逆転を許した直後の8セット目の前に組むことにしたのだ。「気持ちをひとつにして合わせるつもりで円陣を組んだ」(山村彩和子、教3=岡山・玉野光南)とその気持ちが通じ、チームが一丸となって逆襲に成功。その勢いのまま勝利を手にした。

雄たけびをあげる津江主将

 昨年の早慶戦で、唯一慶大に負けてしまったのが男子サーブルであった。「全日本よりも早慶戦が大事」(安部凌、スポ4=島根・安来)と語るように、勝利への熱意を見せたこの試合。連続失点や同点に追いつかれた窮地でも確実に一本を取り、見事雪辱を果たした。最後には女子サーブル陣が登場した。全員が落ち着いた試合運びで、終始主導権は渡さず、45ー33で試合終了。全勝優勝が決まった瞬間、ベンチには歓喜の声があふれた。

 今季最後の団体戦を全勝優勝というこれ以上にない結果で締めくくった早大。苦しい状況も切り抜けてつかみ取った全勝には大きな意味があるだろう。今季残すところは全日本選手権の個人戦のみとなる。この体制で迎える最後の大会で、最高のプレーを。メンバー全員がそう願っているはずだ。

(記事 加藤佑紀乃、写真 佐藤諒、熊木玲佳)



※フェンシングの団体戦は3人、または4人の選手が交代で出場し、1試合当たり3分という持ち時間内で争う。あるいは3分以内にどちらかが先に5得点先取すると、そこで次の選手に交替となる。最終的には9試合戦い、45点を先取、または持ち時間が終了した場合は得点が高い方が勝ちとなる。
※フルーレ:頭・両足・両腕を除いた胴体部への突きのみが得点となる。 両者がほぼ同時に突いた場合は、どちらの攻撃が有効だったかを主審が判定する。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は攻撃を防御してから攻撃しなければならない。
※エペ:全身が有効面となる上に、両選手が同時突きをすると両者にポイントが与えられる。より慎重な攻め方が求められるため、時として両者が睨み合ったまま時間が過ぎることは稀な話ではない。
※サーブル:両腕も含む上半身への突きと切り(剣先ではなく剣の胴部分で相手の体に触れること)が得点となる。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は相手の攻撃を防御してから攻撃しなければならない。この攻撃権の奪い合いにより、両選手はピスト上を常に前後に往復し合うため、サーブルは3種目の中で最も全身運動が激しい種目だと言える。

集合写真

結果

▽男子フルーレ 優勝 早大〔仙葉恭輔(スポ4=秋田南)、松山大助(スポ3=東京・東亜学園)、竹田陸人(社1=神奈川・法政二)、松山恭助(スポ1=東京・東亜学園)〕

○45-39 慶大●



▽女子フルーレ 優勝 早大〔尾上千尋(創理4=東京・田園調布雙葉)、永瀬夏帆(スポ3=宮城学院)、狩野愛巳(スポ1=宮城・仙台三)、佐々木陽菜(社1=東京・大原学園)〕

○45-27慶大●



▽男子エペ 優勝 早大〔津江碧主将(スポ4=山口・岩国工)、小野弘貴(社4=東京・早稲田)、仙葉恭輔(スポ4=秋田南),小野真英(スポ1=埼玉栄)〕

○45-39慶大●



▽女子エペ 優勝

早大〔山根司(スポ4=香川・三本松)、伊藤由佳(スポ3=栃木・宇都宮中央女)、山村彩和子(教3=岡山・玉野光南)、才藤歩夢(スポ1=埼玉栄)〕

○45-39慶大●



▽男子サーブル 優勝 早大〔安部凌(スポ4=島根・安来)、山本隼大(スポ3=香川・三本松)、竹下昇輝(スポ2=静岡・袋井)、茂木雄大(スポ1=神奈川・法政二)〕

○45-36慶大●



▽女子サーブル 優勝 早大〔尾上千尋(創理4=東京・田園調布雙葉)、永瀬夏帆(スポ3=宮城学院)、佐々木陽菜(社1=東京・大原学園)、狩野愛巳(スポ1=宮城・仙台三)、〕

○45-33慶大●

コメント

仙葉恭輔(スポ4=秋田南)

――仙葉選手にとって最後の早慶対抗定期戦(早慶戦)となりましたがどのような思いで挑みましたか

 いままで先輩たちが積み重ねてきた伝統の一戦で、僕たちも連勝記録を止めるまいと一生懸命練習に取り組みました。

――完全優勝ということでしたが

 それはすごくうれしいですね。きょねんは男子サーブルが負けてしまったので、そういう意味でもすごくうれしい結果でした。

――男子フルーレの滑り出しは大きくリードを許すという予想外の展開だったように感じましたが

 慶大はインカレ(全日本学生選手権)でも当たっていて、そのときも一番最初に同じ選手とやって3-5で負けたのでそういう展開になるのかなとは思っていました。正直あそこまで取れないとは思っていなかったのですが、雰囲気もありますし向こうがホームということで負けてしまった部分があったのかなと感じました。

――4セット目で大逆転しましたが

 最初の試合で悪い流れをつくってしまったので良い流れをつくりたいという気持ちと、自分なりに作戦をもって臨んだのがうまくマッチしてああいう形になったのかなという感じです。

――そこからは良い流れになったのではないでしょうか

 そうですね。やっぱり1回持っていかれた流れをこっちに持ってこられれば勢いもつくし、向こうも勢いがなくなってきて、こちらが試合を優位に進めることができると思います。そういう意味ではあそこで点数的にも取り切れたのはすごく良かったし、流れも持ってこられたのですごく良いセットだったかなと思います。

――続いて男子エペの試合を振り返ります。仙葉選手は相手のエースである武田仁選手に対して非常に良い試合をしていましたが、何か戦う上で注意していた部分はあったのですか

 実はリーグ戦(関東学生リーグ戦)のときに1回戦っていて、そのときはボコボコにされたので、正直あまりやりたくなかったんです。僕は1試合だけ出て交代すると思っていたのですが、急きょ出場することになってどうしようかなと思ったのですが、やるしかないと思って臨みました。実力のある選手で同じ土俵で勝負すると勝てないので変則というか外して勝負していた部分はあります。相手からするとすごくやりづらかったのかなと思います。

――仙葉選手にとっては大学生活最後の団体戦となりましたが、団体でのこの4年間を振り返っていかがでしたか

 部活に所属してフェンシングをするというのが大学に入るまでなかったので団体戦というのを初めて大学1年生のときに経験して、そのときに上級生の先輩ってすごいな、頼りになるなと感じました。実力的な面でも精神的な部分でも支えてくれるチームの柱だったなと言葉ではなく実感して僕もそういう風になりたいなとずっと思っていました。僕の1個上の先輩に谷口先輩(裕明、平27スポ卒=香川・三本松)がいて、2個上には両雄(北川隆之介、平26スポ卒=埼玉栄・鬼澤大真、平26社卒=茨城・常磐大高)というような先輩がいて、その三人のレベルまではいけなかったかもしれないですが、僕なりに一生懸命やってきてそれなりに成績も残せたので、満足はしていないですが悔いはないかなと思います。一生懸命頑張れた4年間だったと思います。

――後輩へのメッセージはありますか

 早慶戦で男子フルーレは45-39で勝ったのですが、例えば立場が逆で39-45で負けてしまったらやっぱり悔しいじゃないですか。最後に勝たなければ意味がないし、結果が出なければしょうがないと僕は思っているので、後輩には結果が出るように普段の練習から考えてやってほしいですね。結果にこだわってやってほしいかなと思います。練習は練習なので試合で勝てる練習をしてほしいです。やっぱり普段から同じ部員でやっていると慣れとかも出てきてルーティーンのような練習になってしまうこともあるので、常に向上心を持って試合を意識して練習してほしいなと思います。そうすれば絶対に強くなると思うし、みんなポテンシャルはあると思うので、ここからどんどん伸びていけるのではないかなと思います。頑張ってください!

尾上千尋(創理4=東京・田園調布雙葉)

――きょうは早慶対抗定期戦ということで独特な雰囲気の中での試合となりました

フルーレは正直言って自分はあんまり調子が良くなかったんですけど、団体戦だったので、団体戦としては上手くつなげていけたかなと思いました。

――緊張はされましたか

緊張はしますね。毎年緊張しています(笑)。

――声援は聞こえましたか

聞こえますね。意外とベンチの声が聞こえなかったりとかそういうのもあったりしました。ピスト上って孤立してる感じがあるので、それは感じました。

――全勝優勝を果たしました

ほっとしてます。どの種目も力が拮抗していたと思うので、全勝できたっていうのは素晴らしい結果だと思います。

――きょうの自身のプレーの評価を具体的にお教えください

さっきも言った通りフルーレは正直あんまり調子は良くなくて、あんまりポイントが入らないというのはあったんですけど、団体戦なので「自分で取りにいきたい」と取りにいって試合の流れが崩れるよりも、つなぐことを意識してできたのはよかったと思います。サーブルはきょうは結構良かったと思います。

――どのような点が良かったですか

迷わずに思い切ってアタックにいけたのが良かったと思います。

――団体戦はきょうで最後となります

4年間やってきて、基本的に団体に出られるようになったのは2年生からだったんですけど、そのときからずっと一緒に出ている後輩とかとできるのも最後ということなので、思い切ってやって楽しんで悔いのないようにやろうと思ってやりました。結果もついてきましたし、良い締めくくりにはなったかなと思っています。

――最後に、次戦へ向けて意気込みをお願いします

全日本選手権が最後の試合になるのですが、レベルの高い大会なので、楽しんでやりたいと思います。

津江碧主将(スポ4=山口・岩国工)

――全日本選手権団体(全日本)2位という強豪相手でしたがどのような意気込みで試合に挑みましたか

ことしは春のリーグ戦(関東学生リーグ戦)では惜しくもという感じで負けてしまっていて。昨年の早慶戦では勝てたものの、新体制となった春以降は勝てていませんでした。なので今回はどうなるか分かりませんでしたが、メンバーを変えて挑んだことが功を奏して、しっかりと勝利することができて良かったです。

――勝利という結果について率直な感想をお聞かせください

素直に全日本で準優勝した相手に勝つことができて嬉しいです。

――試合展開的には接戦の中でも少し優勢の状態で試合が進んでいきました

どこで逆転されてもおかしくないという状況だったので、一人一人がしっかりとつないで最後までこのリードを守っていくということをチームの中で意識していました。

――最終回り、小野弘貴選手(社4=東京・早稲田)が5点差までリードを広げました

5点差ということは最後回りは必ず僕が締めなければいけないので。反対に言えば、逆転されてしまったら僕の責任なので緊張の方が大きかったです。

――早大として挑む最後の団体戦でしたが、振り返っていかがでしたか

この4年間早稲田大学でフェンシングをしてきて、こうして現役最後の試合で勝利をすることができて本当に良かったです。

――主将としてチームを一年間引っ張ってきましたが

苦しい時期もあったのですが、こうして最後に笑顔で全勝優勝というかたちで終えることができたことにとても満足しています。

――全日本選手権個人があるということで抱負をお願いします

この勢いのまま全日本でもしっかりと勝っていき、大学2年生ときの3位入賞以上の成績を残すことができるように頑張りたいと思います。

山村彩和子(教3=岡山・玉野光南)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

ことし全勝優勝していたのと、早慶戦というのは一番OBの方が見に来られて、緊張感のある試合になるところで、ギリギリとはいえちゃんと勝てたというのは収穫かなと思います。

――負けられないというプレッシャーはありましたか

いままでと比べて早慶戦って全然違う雰囲気でやって、それも今回(会場が)慶應っていうことで、アウェーのなかでやるという全く違う緊張感はありました。

――序盤は接戦が続きましたが

向こうが完全に守りに徹していて、自分たちが攻めるという展開になっていて、それは想定していたのですが、ノンコンバッティビティといって無意欲試合にはならないようにというのを意識できたので、そんなに焦りというものはなかったかもしれないです。

――ご自身のとき同点に追いつかれ、その後の周りのときに逆転に成功しましたが、そこでは自分が取り返すという気持ちがあったのですか

相手の相性からみて、自分が同点に追いつかれた相手は最後周りで強い相手だったので気にしませんでした。最後は取り返すぞというつもりはなかったのですが、結果的にいままでの相手との対戦を生かして点数は重ねられたかなと思います。

――今回は最後周りではなく、8セット目に入る前に円陣を組まれていましたが

ちょっと流れが悪かったので、(円陣を)組んでおいたほうがいいんじゃないと、4年の司先輩(山根、スポ4=香川・三本松)に言ってくださったので組みました。それは組んで良かったです。

――何と声を掛け合いましたか

気持ちをひとつにして合わせるというかんじで円陣を組んだので、声を掛け合うというよりは気持ちをひとつにまとめるというかんじでした。

――全日本選手権からあまり日が経っていないなかで疲れなどはありましたか

体調をちょっと崩しちゃったりとかいろいろあったので、無事に勝てたと思います。新チームで司先輩が最後周りじゃなくて、1年生にやってもらうことになったので、そういうので慌ただしいなかでなんとか勝てて良かったかなというかんじです。

――来週、全日本選手権の個人戦が控えていますが

本当に試合が続いているので、怪我をしないことを優先させたいです。また勝ちにこだわるなかで来年に繋がる動きをして、次の秋からのリーグ戦に繋がるように課題を見つけていけたらなと思います。

安部凌(スポ4=島根・安来)

――早慶戦優勝おめでとうございます

ありがとうございます。全日本選手権(全日本)後にも行ったのですが全日本よりも早慶戦が大事なので勝てて良かったです。

――順調に試合を進めましたが中盤には追いつかれて全日本のような展開になりました

あそこは地力の差が出ていたのかなと。相手のレベルも高いので。しかし、あのまま崩れなくてその後逆転が出来たっていうのは全日本の反省が生かされていたかなと思います。

――試合中腰を痛めてる場面が見られましたが

痛かったです。試合中はアドレナリンが出ているのでまだ大丈夫なのですが休憩中などはとても痛かったです。早急に病院に行きたいです(笑)。

――今日は遠征で不在になることが多い茂木雄大(スポ1=神奈川・法政二)選手も試合に出ました

チームが安定しました。絶対に点を取ってきてくれるので総合力があがります。皆の雰囲気をいい報告に持っていくオーラがあるのでありがたいです。

――今シーズンの団体戦は終了しました。来季はに向けて

全日本で見つかった課題を克服したいです。具体的にはエンジンのかかりが遅いので、その課題に取り組み春のリーグ戦までに何とかしたいです。

佐々木陽菜(社1=東京・大原学園)

――一回り目はいいスタートを切れましたね

アップの時から集中して身体を動かしていたので、準備万端で試合に臨めたことが試合でのいい動きにつながったのかなと思います。

――二、三回りでは相手に点を取られることが増えました

いろいろ技を試してみようと思ったのですが、それが中途半端になってしまってうまくいかなかったことで隙を突かれたかなと思います。取り急いで大きく入ってしまったところを相手にカウンターで取られることが多かったです。

――サーブルを本業としているのは1年生である佐々木選手だけでしたが、チームを引っ張ろうという意識はありましたか

自分のできることをやろうと思っていて、あとは楽しくできればいいかなと。

――全日本選手権の個人戦に向けて意気込みをお聞かせください

きょねんベスト8に入っているのでことしはそれ以上を目指して、自分のやれることをしっかり考えて、集中して試合に挑みたいと思います。