連日激闘が繰り広げられている全日本学生選手権(インカレ)。3日目のこの日は男子エペ個人戦と女子サーブル個人戦が行われた。男子エペでは小野弘貴(社4=東京・早稲田)が津江碧主将(スポ4=山口・岩国工)との直接対決を制し、その後も勝ち進むが、準決勝で完敗し3位に。またルーキー小野真英(スポ1=埼玉栄)は、強豪相手に善戦しベスト16と奮闘した。
男子エペ2回戦、関東学生選手権(関カレ)王者・小野弘と津江主将とのワセダ対決。ベンチには誰もいない、応援もない、いつもと少し変わった空間で戦いは幕を開けた。この二人の直接対決は、高校3年時のインターハイの試合以来であり、その舞台が大学最後のインカレとなった。4年間お互いに切磋琢磨(せっさたくま)してきた仲間との試合を津江主将は「お互い手の内をほぼ知り尽くしているような試合展開でした」と振り返る。序盤から付かず離れずの接戦にもつれ込むが、3セット目、小野弘が7連続ポイントで主導権を握り、15-11で試合を制した。「勝ったからには津江の思いも背負って上のほうまで行かなければ」(小野弘)とその気持ちを胸に、3回戦、準々決勝を順当に勝ち抜きベスト4入りを果たす。続く準決勝で対するのは、関カレの準決勝と同じ相手、水口紘希(中大)。試合は2セット目に動いた。わずかな隙をつかれ、大量失点。そのまま相手のペースにのまれ、点差を縮めることができず3-15で完敗する。その後の3位決定戦では、確実に勝利を収めるも、3位となる。しかし目の前に来ていた決勝の舞台にあと一歩届かず、3位という結果にうれしさの中にも悔しさをにじませた。
津江主将(手前)と小野弘(奥)のワセダ対決
男子エペ将来のエース・小野真は、3回戦で強豪と激突。一時は4連続ポイントで逆転するも、ひっくり返され競り合いになり、13-15で惜しくも敗れる。勝負が決まった瞬間、崩れ落ち悔しそうな表情を浮かべた。しかし強敵相手と対等に渡り合ったことは、今後に向けての大きな収穫となった。女子サーブルの尾上千尋(創理4=東京・田園調布雙葉)は序盤、相手に大量のリードを許し第1セット終了時点で1-8。その後の追い上げもむなしく2回戦敗退となった。
2回戦敗退となった尾上
みな少なからず悔しさを抱える結果となったものの、課題が明確となり、次戦へつながる内容となった。課題を補えば長所も伸びるはずだ。今シーズン、残す個人戦は全日本選手権のみ。エンジ剣士の奮起に期待したい。
(記事 加藤佑紀乃、写真 松本理沙)
コメント
津江碧主将(スポ4=山口・岩国工)
――個人戦を終えて感想をお願いします
きのう予選だったのですがそこでへばってしまいました。いつもなら落とさないところを落としてしまって自分で自分の首を絞めてしまいましたね。思うようなプレーができなくてもったいない試合をしてしまったなと思います。それがトーナメントに響いて小野ちゃん(小野弘貴、社4=東京・早稲田)と早い段階で当たってしまったので思うような結果を残せませんでした。
――学生大会最後の個人戦となりましたが、どのような意気込みで挑みましたか
きょうは最後のインカレ(全日本学生選手権)でトーナメントの当たりは分かっていたので、何が何でも勝つしかないと思っていました。ですが、関カレ(関東学生選手権)に優勝した小野ちゃんの方が一枚上手だったなと思います。完全に参りました。
――トーナメントの当たりは前日の予選が終わった時点で出ていたのでしょうか
そうですね。予選が終わったあとにトーナメントの貼り出しだけはありました。正直予選が全然良くなくて…。2勝3敗でトーナメントにすら上がれないのではないかというくらいひどかったので、自分ではトーナメント表を見に行けませんでした。シニアのW杯でフランスに行ったときに予選落ちしたのですが、それ以来の予選落ちがあるなと思って、それぐらいダメージを受けていました。結局小野ちゃんが「あしたお前とだよ」って伝えてくれて。僕が1回戦で勝って次に当たるということだったのですが、大学に入って小野ちゃんとは試合で1回も当たったことがなかったので、「ここで当たるのか」というのが正直な気持ちでしたね。
――それはうれしい気持ちと嫌な気持ち、どちらでしたか
全然うれしくはなかったです。うれしいと思うのは決勝で当たったときだと思うので。僕のせいで早いうちに小野ちゃんと当たってしまって、向こうも良い思いはしなかったかなと思います。もしかしたら、よしよしと思っていたかもしれませんが(笑)。
――1回戦を振り返って
1回戦は予選プールが一緒の子で、そのときは3ー5で負けていました。それを踏まえて対策を練って試合に入れたので、ベンチに入ってくれた司からもアドバイスをもらいつつ、こうした方がいいと考えながらプレーすることができましたね。結構良い流れで試合運びができたと思います。
――良い流れのまま小野弘選手との2回戦へと挑むことになりましたが、振り返っていかがですか
普段練習している相手が試合会場で相手ピストに立っているというのは変な感じでした。お互い手の内をほぼ知り尽くしているような試合展開でしたね。でも、小野ちゃんは僕のことを得意としてると思うんですよ。試合では、練習でも取られる部分で点を取られてしまいました。癖を分かっているというか、自分が狙っている部分がばれているかなと思ったので、逆をつきたかったのですが、そこも割と取れなかったです。試合内容は最初展開的に持っていかれたのですが、途中でなんとか立て直すことができました。3セット目は逆転した状態でいけたのでこの状態のまま持っていければなと思ったのですが、小野ちゃんもそう簡単にはさせてくれなかったですね。
――一枚上手だったということでしたが
そうですね。そこに関しては完全に参りました。
――小野弘選手とはインターハイぶりの対戦だったようですが
高校生ぶりということだったのですが、今まで公式戦では1回も負けたことがありませんでした。
――高校時代は何度か戦ったことがあったのでしょうか
高校では実は結構対戦していました。
――そして大学では1回も当たらなかったということですか
そうですね。1回も当たったことがなくて、ついに最後で当たったかという感じでしたね。
――個人戦が終了しましたが、次は団体戦が控えています。意気込みをお願いします
1回戦で関西学院大と当たって、次は関カレで優勝したら専大と当たると思うのですが、チームメンバーでしっかり団体戦での話し合いができているので、あとは実行するのみだと思います。勝って一つ一つ上を目指すしかないです。
小野弘貴(社4=東京・早稲田)
――きょうの試合を全体的に振り返っていかがですか
嬉しいような悔しいような。やっぱり本当に優勝を狙っていて、優勝が見えてきた位置で、最後準決勝でボコボコにやられてしまって、悔しかったです。
――今回のトーナメントの当たりはいかがでしたか
全然だめです(笑)。最悪です、また。いつもどおり悪いです(笑)。
――津江碧主将(スポ4=山口・岩国工)との直接対決はいかがでしたか
津江と試合で対戦するのが、高校の最後のインターハイぶりでした。大学4年間はずっと練習は一緒にしてきたんですけど、当たったことはなくて、大学入って初めて当たるのが大学最後のインカレかと、ちょっと縁があるなと思いましたし、普段一緒にやってきて、一番近くでお互い一生懸命やってきた仲だからこそ、絶対負けたくなかったし、勝ったからには津江の思いも背負って上のほうまでいかなきゃいけないなと思っていました。内容に関しては、やはりお互い(戦い方を)わかっているので、すごいやりづらいというか、じりじりした戦いになるんだろうなと思っていました。
――高校のインターハイで対戦した時のことを覚えていますか
覚えています。
――どのようなかんじでしたか
ベスト8かけでボコボコにされましたね。津江は高校の頃が特に強くて、僕たちの代で断トツで強くて、輝いていました(笑)。
――インカレで対戦したのを覚えていて、早大に入学して再会したのですか
インターハイだけではなくて、高校1年と2年のJOCジュニアオリンピックカップというここ(駒沢体育館)でやる試合も、どっちも津江に負けていて、高3のインターハイでも負けて、高校3年間で出たエペの試合、だいたい津江に負けたんですね。まあでもお互いにわかってましたし、僕はフェンシング続けるつもりはなかったので、顧問がインターハイ終わった後に「津江くんは早大でフェンシングやるらしいよ」と言っていたのですが、自分は全然関係ないと思っていて、そうなんですか~がんばってねみたいな(笑)。でも紆余曲折の末、部活に入って「あ、津江くん」「小野くんだよね」みたいなかんじでした、最初は。
――準決勝では、関カレの準決勝で当たった相手と同じでしたが
関カレの準決勝では勝っていたんですけど、強い選手ということは知っていました。別に油断したつもりはないんですけど、関カレのときに通用した技というのを完全に対策されてきていて、対策されているのが分かった後にどうしようかなと思って、遠い距離で見合っているときに、手とか足とかをどんどん突かれてしまって、自分の考えやプランがまとまる前にすごい点差が離れてしまいました。そこからはシングルポイントを狙ってリスクを負っていくしかなかったので、結果的には展開負けですね。最初やられて、こっちがリスク負うしかなくなって、まあそれでも届かなくてというかんじです。展開で負けました。
――相手に苦手意識を持っていましたか
(相手が)剣の持ち手が長いフレンチという剣を持っていて、自分はあまり好きじゃないんですが、関カレでは勝っていたので苦手なイメージはなかったです。
――3位決定戦に回った時の気持ちはどうでしたか
やはりちょっと気持ちの部分で萎えてしまっていたところもあって、気持ちが最後まで入りきらないままふわっと終わってしまったなというかんじですね。
――最後のインカレ、まだ団体戦も控えていますがどのように戦っていきたいですか
優勝します。それだけだ!