念願の全勝優勝なるか――。毎年恒例の早慶対抗定期戦(早慶戦)。早大は昨年あと一歩のところで全勝優勝を逃した。ことしはホームの早大フェンシング場が会場。慣れ親しんだ地に両校の応援部も駆けつけ、白熱した戦いとなる。結果的には男子サーブルが惜敗し全勝とはならなかったものの、見事6年連続の総合優勝に輝いた。
ことしの関東学生選手権2位、全日本学生選手権3位の実力派チームとの一戦を前に緊張の表情を見せた男子エペ陣。会場全体がかたずをのんで見守る中、勝負が開始された。最初にピストに立ったのは津江碧(スポ3=山口・岩国工)。慎重に剣を交え、4-5で次の西森健太(教4=香川・三本松)につなぐ。西森はいつも通り相手の様子をうかがいながら試合を展開。粘り強い戦いを繰り広げると、その思いを受けた小野弘貴(社3=東京・早稲田)が躍動する。相打ちを含め8連続得点で15-13とし一気に逆転。このリードをつなげようと津江が声をかけ同じ意識を共有したチームはここから勢いづく。着々と点を積み重ね、早大が45本目の突きを決めた。「勝負は本当にやってみないと分からない」(西森)。絶対に負けられないという思いが早大の底力を引き出した。
得点し流れを引き寄せた小野
佐々木勇歩(スポ4=静岡・沼津東)の5連続ポイントの後、奥村祥大(教3=京都京大付)の10連続失点という波乱のスタートを切った男子サーブル。慶大に流れが傾く中、第3セットの甘粕貴大(社4=神奈川・サレジオ学院)が気迫のこもったプレーを見せ、15-13と窮地を救う。その勢いのままに早大優位で試合が進むが、最終回りで歯車が狂い始める。第7セットの山本隼大(スポ2=香川・三本松)が6連続失点をし、一時リードを許す。35-33と何とか立て直し次につなぐものの、甘粕も点差を詰められ悪い空気を振り払うことができない。40-38で迎えた最後回り。互いに1点を取り合い、あと4点を取れば早大の勝利という場面、佐々木が立て続けに失点をしてしまう。大いに盛り上がる慶大ベンチ。完全に流れを奪われた早大はなすすべなく、まさかの黒星を喫す。狂った歯車を最後まで元に戻すことはできなかった。
女子フルーレ、サーブルで活躍した尾上
早慶戦で実質引退だった4年生。この日は一歩下がった位置からチームを見守り、鼓舞していた。その先輩たちにはなむけをしようという思いからだろうか、尾上千尋(創理3=東京・田園調布雙葉)や小野のように来季を担う多くの3年生の活躍が目立った。次なるシーズンに向けて、去りゆく4年生の思いも胸に新たな早大フェンシング部が動き出す。
(記事 松本理沙、写真 川嶋悠里、三上雄大)
※フェンシングの団体戦は3人、または4人の選手が交代で出場し、1試合当たり3分という持ち時間内で争う。あるいは3分以内にどちらかが先に5得点先取すると、そこで次の選手に交替となる。最終的には9試合戦い、45点を先取、または持ち時間が終了した場合は得点が高い方が勝ちとなる。
※エペ:全身が有効面となる上に、両選手が同時突きをすると両者にポイントが与えられる。より慎重な攻め方が求められるため、時として両者が睨み合ったまま時間が過ぎることは稀な話ではない。
※サーブル:両腕も含む上半身への突きと切り(剣先ではなく剣の胴部分で相手の体に触れること)が得点となる。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は相手の攻撃を防御してから攻撃しなければならない。この攻撃権の奪い合いにより、両選手はピスト上を常に前後に往復し合うため、サーブルは3種目の中で最も全身運動が激しい種目だと言える。
結果
早大 総合優勝
▼男子
早大 優勝
▽フルーレ
早大〔谷口裕明(スポ4=香川・三本松)、仙葉恭輔(スポ3=秋田南)、松山大助(スポ2=東京・東亜学園)、三好修平(社2=愛媛・三島〕 優勝
○45-31慶大●
▽エペ
早大〔西森健太(教4=香川・三本松)、小野弘貴(社3=東京・早稲田)、津江碧(スポ3=山口・岩国工)、工藤功輝(社1=東京・早大学院)〕優勝
○45-34慶大●
▽サーブル
早大〔甘粕貴大(社4=神奈川・サレジオ学院)、佐々木勇歩(スポ4=静岡・沼津東)、奥村祥大(教3=京都京大付)、山本隼大(スポ2=香川・三本松)〕 準優勝
●41-45慶大○
▼女子
早大 優勝
▽フルーレ
早大〔渡辺咲(文4=大分・岩田)、尾上千尋(創理3=東京・田園調布雙葉)、永瀬夏帆(スポ2=宮城学院)、千葉絢音(スポ1=大阪・北野)〕 優勝
○45-19慶大●
▽エペ
早大〔山根司(スポ3=香川・三本松)、伊藤由佳(スポ2=栃木・宇都宮中央女)、山村彩和子(教2=岡山・玉野光南)、千葉〕 優勝
○45-25慶大●
▽サーブル
早大〔神田真希子(スポ4=千葉・東葛飾)、舟山佳穂(教4=山形・米沢興譲館)、尾上、永瀬〕 優勝
○45-25慶大●
コメント
西森健太(教4=香川・三本松)
――きょうの男子エペの試合を振り返って
きょうはみんな結構気持ちが入っていたので空回りしないようにというつもりで入りました。要所要所、取れるところで点を取れて最後までそのリードを守り切れたので、本当に相手が自分たちの勝ちパターンに入ってくれたかなと思います。
――今季最初で最後の慶大との対戦でしたが印象はいかがでしたか
はたから見ていると関カレ(関東学生選手権)で決勝に出たりして相当強いだろうなみたいな。でもやっぱり自分たちのリードする展開に持っていけば必ず自分たちの強いところが試合で出るんだなと思いました。もっと接戦になると思っていたのでこういう風な形で試合ができるっていうのも、勝負は本当にやってみないと分からないものだなと感じさせましたね。
――今試合の良かった点は
最初マイナスで2セットが終わったあとに小野ちゃん(弘貴、社3=東京・早稲田)がしっかり隙を見て点を取ってきてくれて、そのあとに離すことができてその点差が結局最後まで続いたという風な感じだったと思います。やっぱり最初から碧(津江、スポ3=山口・岩国工)が声を大きくして最初のリードをつなげていこうと言っていたので僕もそれに従って次に次にという感じでプレーしました。自分の試合だけじゃなく、そこで追いつかれてしまうのではなくて、次の人がやりやすい点差をキープしていく、広げていくという姿勢でやっていると自然と時間を使えて、やり取りの中で1点1点を積み重ねていくことができました。それは本当に理想的な形だったのかなと思います。
――フェンシング部としての4年間を振り返って
4年間はあっという間でした。けれど色んな人とチームが組めたなと思います。ことしのチームもそうですし、きょねん、おととし、そして僕が1年生のときは萩原先輩(宏樹、平24スポ卒=国学院栃木)たちというように色んな人たちと団体戦をしましたね。最初、大学に入ってみたときや2年生のときはこんなところでやれるのかなって思うほど、僕はワセダのエペっていうのに結構迫力を受けてしまっていて。碧みたいに最初から活躍したという選手ではなかったので、自分の学年が上になるにつれて責任とか立場とかが大きなものになっていくのをひしひしと感じながらやってきた4年間でした。でもやっぱり自分にとっての最後の年というのはこれまでと違う気持ちで。4年間の総まとめというか、絶対に自分が勝って終わりたいというのもありましたし、後輩たちに何かを残してやりたいという気持ちもあったので、本当に苦労した1年でした。小野ちゃんがしっかりと力を付けてきたりだとか、碧も今回の試合みたいにリーダーシップを出して最後回りとしてしっかり取れる選手になってきたので、自分が4年間所属したワセダで強い選手が育っていくというような色んなものも見れて4年間本当に充実していたなと思います。
――最後に後輩に向けてのメッセージをお願いします
僕が結構後輩気質だったので先輩として本当にしっかりやれたのかなと色んなことを振り返ったら思うのですが、ワセダの後輩は結局先輩にしっかりついてきてくれるので。自分が先輩たちについていっていたように、後輩は先輩の姿を見て何かしら成長していける環境だと自分が4年生になって思ったので、そういう伝統を引き継いで4年生はプレッシャーかかるけど、日常生活とか普段の練習とかでしっかり尊敬される人になって、それが競技にも影響するような人間になっていってほしいなと思います。