プライドを懸けた早慶戦で総合優勝!

フェンシング

 伝統の一戦である早慶対抗定期戦(早慶戦)。両校の応援部による熱い応援の中、男女全種目で誇りをかけた戦いが繰り広げられた。女子は全勝優勝、男子はサーブルで敗戦したが、早大は総合優勝を果たした。

 男子フルーレが45―17と快勝し、流れに乗り勝利を目指す男子エペ陣。その立ち上がりは不安定だった。スターターを託された津江碧(スポ2=山口・岩国工)は、いつもの力を発揮できず、3―5と慶大にリードを許す。続く西森健太(教3=香川・三本松)もこれを挽回できず、鬼澤大真(社4=茨城・常磐大高)が11―11の同点に追いつくもなかなか調子が上がらない。迎えた4セット。この状況を打開すべく、小野弘貴(社2=東京・早稲田)を投入する。小野は「絶対に踏みとどまろう」という強い思いで、終盤7連続ポイントを獲得。20―15と慶大を突き放す。ここから早大勢が本来の実力を見せ始める。さらに小野は7セット目で相手に1点も与えず5連続得点。勝利を引き寄せる活躍を見せる。最終的には、45―32で慶大を破った。その後行われた男子サーブルは1セット目にリードするも、逆転され32―45で悔しい敗戦を喫した。

チームを盛り立てた小野

 接戦から劇的な逆転勝ちを収めた女子エペ。試合は冒頭、両校一歩も譲らない展開となった。日吉で行われた今大会、ホーム慶大の応援団は100人を優に超えるほどの大所帯。この応援に負けまいと、意地を見せる早大女子エペ陣だったが、次第に差を付けられてしまう。8セット目を迎えた時点で早大は25―29の4点ビハインドを負った。山村彩和子(教1=岡山・玉野光南)は「自分が少しでも点差を縮められれば、先輩(山根司、スポ2=香川・三本松)があとはなんとかしてくれる」と次に控えている山根を信じ、思い切って相手に立ち向かう。この山村のプレーに、早大応援団もアウェイということを忘れるほどの盛り上がりを見せる。応援の力も加わり、6連取で31―31の同点に。最終セットの山根も怒涛(どとう)の攻撃で12得点を挙げる快進撃を見せ、43―39で勝ち抜いた。女子フルーレとサーブルは4、5年生が抜けたメンバーで挑んだが確実な試合運びで勝利を手にする。

試合を制し、後輩たちと笑顔でハイタッチをかわす山根

 今回で66回目を迎えた早慶戦。いつもの大会とは異なる空気が流れる会場で、選手たちは誇りを懸けて戦った。負けられない相手との対戦に、チームとして楽しむことを忘れずに挑んだ早大勢。強い絆を見せた。団体としてのことしの大会は、これで全て終了。新チームは動き始め、さらなる絆を築き上げる。来年も早大フェンシング部の活躍に期待したい。

(記事 松本理沙、写真 田々楽智咲、三上雄大)

※フェンシングの団体戦は3人、または4人の選手が交代で出場し、1試合当たり3分という持ち時間内で争う。あるいは3分以内にどちらかが先に5得点先取すると、そこで次の選手に交替となる。最終的には9試合戦い、45点を先取、または持ち時間が終了した場合は得点が高い方が勝ちとなる。

※フルーレ:頭・両足・両腕を除いた胴体部への突きのみが得点となる。 両者がほぼ同時に突いた場合は、どちらの攻撃が有効だったかを主審が判定する。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は攻撃を防御してから攻撃しなければならない。

※エペ:全身が有効面となる上に、両選手が同時突きをすると両者にポイントが与えられる。より慎重な攻め方が求められるため、時として両者が睨み合ったまま時間が過ぎることは稀な話ではない。

※サーブル:両腕も含む上半身への突きと切り(剣先ではなく剣の胴部分で相手の体に触れること)が得点となる。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は相手の攻撃を防御してから攻撃しなければならない。この攻撃権の奪い合いにより、両選手はピスト上を常に前後に往復し合うため、サーブルは3種目の中で最も全身運動が激しい種目だと言える。

集合写真

結果

早大 総合優勝

▼男子

早大 優勝

▽フルーレ

早大〔鬼澤大真(社4=茨城・常磐大高)、北川隆之介(スポ4=埼玉栄)、谷口裕明(スポ3=香川・三本松)、仙葉恭輔(スポ2=秋田南)〕 優勝

○45-17慶大●

▽エペ

早大〔鬼澤、西森健太(教3=香川・三本松)、小野弘貴(社2=東京・早稲田)、津江碧(スポ2=山口・岩国工)〕優勝

○45-32慶大●

▽サーブル

早大〔北川、阿部凌(スポ2=島根・安来)、奥村祥大(教2=京都京大付)、山本隼大(スポ1=香川・三本松)〕 準優勝

●32-45慶大○

▼女子

早大 優勝

▽フルーレ

早大〔安冨結(スポ3=香川・三本松)、渡辺咲(文3=大分・岩田)、尾上千尋(創理2=東京・田園調布雙葉)〕 優勝

○37-25慶大●

▽エペ

早大〔山根司(スポ2=香川・三本松)、伊藤由佳(スポ1=栃木・宇都宮中央女)、山村彩和子(教1=岡山・玉野光南)〕 優勝

○43-39慶大●

▽サーブル

早大〔神田真希子(スポ3=千葉・東葛飾)、舟山佳穂(教3=山形・米沢興譲館)、安冨〕 優勝

○45-16慶大●

コメント

小野弘貴(社2=東京・早稲田)

――きょうの大会全体を振り返っていかがですか

全体として勝ててほっとしています。

――エペ団体で、小野選手は、交代して出場し、同点だったスコアを5点差に引き離しました。このセットにどのようなお気持ちで挑みましたか

正直あの場面が一番試合の中での山場だと思っていたので、絶対に踏みとどまろうと思っていました。

――そのあとのセットでは5連続ポイントを決めましたが、いかがでしたか

終盤だったので、思い切ってやって、後ろの大真先輩(鬼澤、社4=茨城・常磐大高)と津江(碧、スポ2=山口・岩国工)につなげたいなと思っていました。

――今シーズン全体を振り返っていかがですか

色々な団体戦やジュニアなどの世代の試合に出させていただいて、自分がレベルアップしているなという実感がありました。なので、来年は今シーズンの経験を生かし、団体では自分が出ることになるので頑張りたいと思います。

山根司(スポ2=香川・三本松)

――きょうの試合を振り返って

勝てて良かったです。

――序盤は厳しい展開になりましたね

接戦になると思っていて、1巡目はそこまで離されなくて安心していました。2巡目で1人分以上と予想外に離されてしまって、そこの部分でとても焦りました。

――大きく離されて迎えた3巡目では見事な逆転劇を見せました

(山村)彩和子(教1=岡山・玉野光南)があの点差から同点まで追いついたおかげでした。あれがなかったら、勝てていたかさえもわからなかったので…。いつもの展開から言えば、きょうの展開は負ける展開だったので、そこを勝ちに持っていけて、最後は耐えて良かったと思います。

――同点で迎えて最終ゲームの心境はいかがでしたか

勝ち負けにこだわっているつもりはないですけど、早慶戦という伝統のある大会なので、どうしても負けられないという気持ちがありました。しかし、そういった中でも楽しんでやろうという気持ちを忘れないでやれたことでプレッシャーに感じないでできました。そして何より、彩和子と伊藤(由佳、スポ1=栃木・宇都宮中央女)が作ってくれた点をどうにか勝利につなげたいという思いでしたね。

――たくさんの応援団の後押しもありましたね

すごい歓声だと思ったのですが、やはりみんなの応援は力になりました。

――今季の団体を振り返って

いろいろな試合で悔しい思いをしてきましたが、下級生中心のチームですけど、だからと言って勝てないわけではないという実感もありました。だからこそ次の試合ではさらに上に進もうという気持ちでした。その気持ちのおかげで、ここはダメだと思ったところを言えたり、変えられたりすることができて、少しずつですが成長できたと思います。

――来季に向けて課題と抱負は

まずはケガをしないことですね。抱負は、常にてっぺんを目指して頑張ります!

――JOCジュニア・オリンピック・カップの目標を教えてください

捻挫をしてしまったのでとりあえずはそこを治したいです(笑)。ジュニアの大会に出るのはこれが最後になるので、これまでの大学での練習で培ったことを生かして、結果は気にせずに楽しんで試合に挑みたいです。

山村彩和子(教1=岡山・玉野光南)

――試合全体を振り返ってみていかがでしたか

早慶戦は去年たまたま受験の日にやっていたのを見たのですが、実際ことし早慶戦に出てみて、応援団もいるのですごく盛り上がるし、両校白熱した試合になったので楽しかったです。

――応援部と仲間の迫力ある応援はやはり力になりましたか

応援団の方がまとめてくださるので、応援もまとまって聞こえて本当に力になりました。

――3回戦で6連続ポイントを取り、同点に追いつきましたがいかがでしたか

その前に2セットやっていたので、自分のダメなところがわかっていたし、他の人も自分の前にその選手と当たっているので、どういう試合の仕方かはわかっていたので、最初に2点取られてしまったのですが、そこから変えてみて距離を取ってみたらうまくいきました。

――そのとき、焦りなどはありましたか

いままでの試合だともう少し早い段階で負けているときに追いつかないといけないと思って点差が開くのですが、今回は最後から2番目の8番目の試合で4点差だったので、自分が少しでも縮められれば、先輩があとは何とかしてくれるという気持でいったら、たまたま同点まで追いつきました。

――ことし1年団体戦を振り返ってみていかがでしたか

若いチームのわりにまあまあの成績は出たのですが、負ける時の敗因が同じで、そこを変えることができませんでした。だからその敗因をいかして、同じことを2回繰り返さないようにもっと皆で団結力を高めていければ、来年はもっと勝てるのではないかと思います。

――その敗因とは

最初流れが良くて勝っていても、途中で追いつかれたときに、まだ試合がたくさんあるのに、そこで追いつこうと取り急いでしまって余計に点を取られ、差が開いたままで追いつけなくなっていました。だから、一試合流れが悪くなる試合があっても、誰かが無理矢理取り返すのではなく、少しずつやっていけたらいいなと思っています。

――来シーズンへの意気込みをお聞かせください

団体戦で優勝が一度もできなかったので、優勝を飾っていけたらいいなと思います。