全日本学生選手権(インカレ)を笑って締めくくることはできなかった。大会最終日に行われた男子エペと女子サーブルの団体。両種目ともインカレこそ優勝をと臨んだものの、準決勝で敗退し3位に終わった。
最後まで粘るも追いつけず納得いかない表情の津江
今季すべて日大に敗れ、準優勝に終わっている男子エペは、日大へのリベンジ、そして優勝をインカレに目指し臨む。準決勝の相手は専大。西森健太(教3=香川・三本松)の第3セットで苦しい戦いを強いられ、12-15となると、ここから両者の策略がぶつかり合う。鬼澤は1セット目に続き、にらみ合って1分が経過。その後、西森がじわじわとリードを広げられて、15-19で津江に回す。このセットで挽回したかったが、ここでも勝負してもらえない。またもや西森に託される。最後まで調子を上げることができなかった西森は、結局相手に9点のリードを許した。22-28で最終セットへ。津江が果敢に攻め込み、2点差まで追いついた35-37の場面。相手は津江が剣を持っている左手を突いた。相手のランプが光ったが、津江は剣に当ったのではないかと抗議。結局相手の得点となり、そこからペースをつかむことができなくなってしまう。40-45で、日大との決戦を前に敗れた。3位決定戦では調子が上がらない西森を外し、小野弘貴(社2=東京・早稲田)を起用。それが吉と出て、30-19で3位を勝ち取った。
一方の女子は、弘瀬智子(スポ5=高知・追手前)と真所美莉(スポ4=宮城・仙台南)が最終学年の意地を見せた。昨年決勝で敗れた朝日大との熱戦となった準決勝。舟山佳穂(教3=山形・米沢興譲館)が相手の勢いにのまれてリードされても、真所と弘瀬はそれ以上点差が開くことを許さない。一進一退の攻防が続く。38-40と2点のビハインドを抱えて、勝負は弘瀬に託される。3連続ポイントで43-43に追いつき、チームの雰囲気は最高潮に。残り2点――。先に44点に乗せたのは朝日大。「決めるしかない」(弘瀬)。しかし、最後の1点も取られてしまい、弘瀬は崩れ落ちた。マスクを外した弘瀬の目には涙が浮かぶ。有終の美を飾ることはできなかった。3位決定戦は冷静な試合運びで危うげなく44-36に持ち込む。最後の1点に「緊張した」と語る弘瀬は、その緊張からか3連続ポイントを許したが、最後はしっかり試合を締め、インカレ最後の試合を勝利で飾った。
最終セットで追いつくも勝ちきれず崩れ落ちた弘瀬
真所のフルーレ個人優勝や男子フルーレ悲願の団体優勝で沸いた今回のインカレ。最終日、優勝の期待がかかった2種目共に3位に終わり、悔しさが残った。学生の大会はこれで終了だが、次週には全日本選手権(団体)が待っている。インカレで出場権を獲得した種目はすべてフルメンバーで挑む。4年生にとってはワセダで戦う最後の大会。インカレでの悔しさをすべてぶつけ、最高のラストにしてほしい。
(記事 川嶋悠里、写真 廣瀬元宣、川嶋悠里)
※フェンシングの団体戦は3人、または4人の選手が交代で出場し、1試合当たり3分という持ち時間内で争う。あるいは3分以内にどちらかが先に5得点先取すると、そこで次の選手に交替となる。最終的には9試合戦い、45点を先取、または持ち時間が終了した場合は得点が高い方が勝ちとなる。
※エペ:全身が有効面となる上に、両選手が同時突きをすると両者にポイントが与えられる。より慎重な攻め方が求められるため、時として両者が睨み合ったまま時間が過ぎることは稀な話ではない。
※サーブル:両腕も含む上半身への突きと切り(剣先ではなく剣の胴部分で相手の体に触れること)が得点となる。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は相手の攻撃を防御してから攻撃しなければならない。この攻撃権の奪い合いにより、両選手はピスト上を常に前後に往復し合うため、サーブルは3種目の中で最も全身運動が激しい種目だと言える。
集合写真
結果
▽男子エペ
早大〔鬼澤大真(社4=茨城・常磐大高)、西森健太(教3=香川・三本松)、小野弘貴(社2=東京・早稲田)、津江碧(スポ2=山口・岩国工)〕 3位
2回戦:○45-32京産大
3回戦:○45-30明大
準決勝:●40-45専大
3位決定戦:○30-19中大
▽女子サーブル
早大〔弘瀬智子(スポ5=高知・追手前)、真所美莉(スポ4=宮城・仙台南)、神田真希子(スポ3=千葉・東葛飾)、舟山佳穂(スポ3=山形・米沢興譲館)、安富結(スポ3=香川・三本松)〕 3位
1回戦:○45-10学習院大
2回戦:○45-20東女体大
準々決勝:●43-45朝日大
3位決定戦:○45-39専大
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コメント
鬼澤大真(社4=茨城・常磐大高)
――5日間振り返って感想をお願いします
なんだかんだすごく濃厚な、いままで一番長く感じたし、短く感じた5日間でした。
――エペ団体の3位という結果はどのように受け止めていますか
悔しいですが、この時点で自分たちのチームは、そこまでの力しかなかったのだなと納得しています。無理やりですが。
――準決勝の専大戦は勝負をしないセットが多くありました。その相手の作戦というのは、どのように見ていましたか
自分たちもそういう作戦なので、お互いの作戦がぶつかる中で、向こうに歩があったのかなと思っています。だんだんと向こうのペースになっていったし、そういう意味では負けてしまったのかなと思いますね。
――3位決定戦(3決)で小野弘貴選手(社2=東京・早稲田)を使った理由は
西森(健太、教3=香川・三本松)が関カレ(関東学生選手権)のときほど調子が良さそうではなかったのと、来年のことも考えて(小野)弘貴を使ってみたいというのもあったので、思い切って出してみました。
――その小野選手、3決では活躍されていたと思います。どのように見ていますか
思い切ってやってくれたので、すごく弘貴の良さが出た試合かなと思います。弘貴を使って正解だったと思います。あと来年に向けて少し安心しました。
――最後は涙を流されていましたが
いろいろ思い出してしまって…。泣いてしまいました。
――いろいろというのは
長かったなと思いつつ、もうこの舞台に立つことはないんだなとしんみりしてしまったり、もうフェンシングも終わりか…とホッとしたり、いろいろな感情が入り乱れた感じです。
――では、インカレ全体を通して感慨深かったということですか
やはり精神的にも、なんだかんだ考えてしまうときもありましたし…。まあ、いまはホッとしたという感じですかね。結果もまあまあ…。満足とは言えないですが、やるだけのことはできたかなと思います。
――最後は全日本選手権(全日本)が残っています
気楽に、楽しく。よくフェンシングをやっていて、つらいときとか嫌になるときに、「何でフェンシングをやっているのかな」と思うときがあるんです。それはやはり自分が好きだからここまで続けているわけで。その好きでやっているフェンシングで苦しむことはすごくもったいないと思うんですよ。苦しむくらいならその苦しみも楽しまなきゃと思うようにしていて。最後はたぶんなんだかんだきついとは思いますが、最後のフェンシングを楽しもうかなと思います。
西森健太(教3=香川・三本松)
――きょうの団体戦はいかがでしたか
本当にやりきれない感じです。
――2、3回戦からあまり調子が上がっていない印象がありました
そうですね。自分の中でもそれはわかっていて。その中でも、2、3回戦はまだ踏ん張れた方だったのですが、やはり準決勝の相手はそういうわけにはいかなかったです。
――専大戦は、鬼澤選手や津江選手のセットが流れて、西森選手が3セット連続で勝負することになりました
流れたセットで点を取られなくて、僕のところでも我慢できればうちのペースに引き込めるところなので…。流れたのは相手がそこで勝負をしたくなかったからだから、そこは作戦だと思うので、逆にそこで自分たちが耐えなければいけなかったなと思います。
――津江選手のセットは最初から勝負しなかったですよね
あれは少し審判が止めるのも早くて、後々振り返るとこっちとしては、勝負したかったなと思います。
――では、3位決定戦に出場されなかった理由は
3決は、僕の調子も考えて、小野を使うと鬼澤さんに言われて。一応準備はしていたのですが。小野でしっかり勝つことができたので、それは本当に良かったと思います。
――来週は全日本があります。全日本に向けて、お願いします
本当に大真先輩と組める団体も最後なので、来年から新チームになることも視野に入れながら、自分たちのチームのやり方とかをもう一回見直して、来週にぶつけられたらいいと思います。あとは、個人個人がいまは疲れていると思うので、しっかり休養を取って、あと一試合だけ、一人一人がしっかり全力を出せるようなコンディションで臨めればいいと思います。
津江碧(スポ2=山口・岩国工)
――今大会を振り返っていかがですか
優勝をしたかったのですが、準決勝で専大には、春の(関東学生)リーグ戦では勝っていたんですよ。正直なところ、専大には勝てるだろうと自分たちも思っていて。でも、向こうもしっかり合わせてきていましたね。流れ的にはそんなに悪くなかったとは思うのですが、途中でちょっとした気の緩みがあったのかなと思います。最後に点差がついたところで自分が追い上げられなかったのが悔しいですね。2点差まで追いついていたじゃないですか。あそこで自分的には疲れていないと思ったのですが、相手も「あれ?」という感じだったので、そういうところで運がなかったかなと思います。
――その2点差まで詰めていた次の点で、相手が剣の持ち手を突いたのか、それとも手を突いたのかともめたところで、結局相手の攻撃が認められました。そこで流れが変わってしまった印象がありました
正直自分でもこれはいけると思っていたので、あそこでアクシデントのようなものがあったのが、自分の中で悔しいですね。
――個人戦では予選からあまり調子が良くなかったのですか
予選では全勝しなければいけないプールだったのかなと思います。4勝して気の緩みが出たというか。正直負けないだろうと思っていたので、そういう風に思ってしまった部分が、やはり最後負けて1敗になりました。それがトーナメントの組み合わせに響いて、3連覇をことし達成した宇山先輩(賢、同大)が1位で、自分は16位上がりというかたちになってしまいました。ベスト8には上がりたかったのですが、3回戦で当たってしまって。そこで勝てていたらあとはいくだけだなと思っていたのですが、やはり全日本チャンピオン、インカレ3連覇の相手には勝てなかったですね。
――個人戦から団体戦へはどのように切り替えたのでしょうか
個人戦は負けてしまったので、団体では勝つしかないなと思っていました。鬼澤先輩とも、学生の大会では最後の試合だったので、みんなで笑って終わりたいなというのはありましたね。
――来週の全日本に向けて
きょねんはインカレで、1回戦で負けてしまったので、全日本に出られていなくて。ことし初めて、全日本にワセダのチームで出られるので、楽しみもありますね。社会人とどこまでやれるのかというのもありますし、今回負けた分やり返しやろうという気持ちは強いですよ。
――では、意気込みをお願いします
もちろん、一個一個上を目指して優勝したいと思います。優勝を目指さないことには優勝できないですからね。
弘瀬智子(スポ5=高知・追手前)
――3位という結果はどのように受け止めていますか
優勝を狙っていたので、すごく悔しいです。本当に悔しいのですが、これがいまの私たちの実力なので、最後は全員でまとまって団体で勝てたので、良かったです。
――準決勝は点差がある中を追いついて、離されて、また追いついてという展開でした。どのような心境でたたかっていたのでしょうか
点差はあったのですが、絶対最後は勝てると信じてやっていたので、焦りなどはありませんでしたね。最後の最後、43-44のときは、もう本当にここで決めるしかないという気持ちでやったのですが、やはり相手の方が一枚上手だったので…。悔しいですね…。
――インカレ前に取材させていただいたときにビデオでの相手の分析をしたいと話していましたが、それはできましたか
一回やりましたね。でも、よく考えたら当たらないのではないかと。
――研究した大学と、ということですよね
はい。日大は決勝で当たると思って研究していたのですが、日大とは当たらず終わってしまいました。
――3位決定戦は弘瀬選手にとって、インカレ最後の試合でしたが、いかがでしたか
全体的に結構冷静だったと思います。点差もあったので。でも、やはり最後の44本取ったあとは少し緊張しましたね。「これで終わりなのか…」というのと「ここで決めないと終わらない」という。
――では、来週は全日本がありますが、出場されますか
出ます。フルメンバーで行きます。それが本当の最後ですね、試合としては。でも、これが学生の試合の終わりなので、結果はあまり満足のいくものではなかったですが、本当にこのメンバーでできて良かったなというのと、最後やり切ったかなと思います。
――それでは、来週が本当に最後ですね。意気込みをお願いします
きょねんは初戦で負けてしまったので、ことしはできればベスト4を目指して。いけるチームなので。トーナメントの当たり次第だとは思うのですが、良い感じの当たりだったら決勝を目指せると思うので、しっかり最後まで集中して、全員で勝ちに行きます。