熱戦の2日目。男女合わせて6人がベスト16進出を決めた

バドミントン

 全日本学生選手権(インカレ)のシングルスが始まった。ベスト16に進出したのは小野寺雅之(スポ3=埼玉栄)、大林拓真(スポ1=埼玉栄)、緑川大輝(スポ1=埼玉栄)、吾妻咲弥(スポ3=福島・富岡)、鈴木ゆうき(社2=宮城・聖ウルスラ学院英智)、吉田瑠実(スポ1=埼玉栄)の6人。勝ち進んだ者、惜しくも敗れてしまった者、それぞれに思うところはあるだろう。「しっかり戦いきった」(渡辺)。その言葉通り、相手に全力で挑み、全てを出し切った結果だ。あすは男女シングルス、ダブルスの4・5回戦が行われる。疲労も蓄積されるが、あすも自分の力を出し切ってほしい。

(記事 山本小晴)

★「気持ちの勝負」。4年の意地を見せた

第1ゲームを先取した渡辺

 ダブルスは悔しい結果に終わってしまった渡辺俊和主将(スポ4=埼玉栄)。シングルス2回戦に登場し、第1ゲームを奪われるが、冷静な試合運びでその後のゲームを奪い、3回戦へと駒を進めた。安定感のあるラリーで着実に点数を重ね、ゲームを先取。しかし、腰を痛めるというアクシデントに見舞われ、第2ゲームは思うようにプレーができない。11-21で勝負の行方はファイナルゲームに。序盤もやはり腰の痛みの影響で渡辺の粘りが見られず、イレブンを先取される。「気持ちの勝負でした」と試合後に語ったように、声を出し、自らを奮い立たせてコートに立った。11-17の場面、スマッシュを決めるが、惜しいミスが続きマッチポイントを握られる。しかし、ベンチ、観客席からの声援を受け、その思いに応えようとシャトルに食らいつく。滑り込んでレシーブするなど、気迫を見せ3点を返したが、ネットにかかりゲームセット。試合終了後は観客席からねぎらいの拍手が送られた。最後のインカレは団体戦の中止、ダブルスの初戦敗退、渡辺は悔しさをにじませた。しかし、シングルスで全てを出し切り、「充実した4年間」と大学生活を振り返ることができたのは渡辺の今までの努力の結果だろう。

(記事、写真 山本小晴)

★充実した試合内容で最後のインカレを終える

「がっつき」のプレーで2回戦を戦った

 どの選手からも『応援団長』と呼ばれる男。ペアの浅原大輔副将(スポ4=宮城・聖ウルスラ学院英知)曰く、「面白い、心配性、真面目」な選手だ。吉村徳仁(スポ4=富山・高岡第一)はその言葉通り、応援する元気な姿だけではなく、真面目で繊細な面も時折のぞかせる。「がっつき」と集中、落ち着きとの両立――。きょうはまさにそれが現れていただろう。
 ダブルスからの連戦となったきょうは、コートに入った時から集中がいつもと違っていた。先日行われたインカレ決定戦にて出場権を勝ち取った吉村は1回戦から登場。初戦は落ち着いて着実に点数を重ね、ストレート勝ちを収めた。このままストレート負けかと思われたが、迎えた2回戦。1ゲーム目は序盤に大幅にリードを奪うも、その後相手の6連続得点により19−19に追いつかれると、そのまま19本でゲームを譲ってしまう。しかし、身長が高くショットが鋭い山田(日体大)に対してラリーを続けコート全体を使って展開。劣勢から「がっついて」、第2ゲームを手にした。だが、第3ゲームでは終始相手に圧倒されてしまい、大差をつけられ13本で試合終了。2回戦敗退となった。
 最後の1プレーが終わった後、天井を見上げ、そして挨拶をした吉村。仲間に声をかけられた後、線審の席についた。そのあとはチームメイトを全力で応援。今年の早大バドミントン部のキーワードである『チーム早稲田』を提唱していたのも吉村だ。誰よりも人をアツく応援し、人のことを心配し、真面目に考え練習してきた選手だったのだろう。間違いなく、今年のチームを作り上げてきたうちの一人だ。

(記事、写真 石名遥)

★怒濤の追い上げを見せるもあと2点届かず…

第2ゲーム終盤では追い上げを見せた

 インカレの個人戦に初出場を果たした松本茜(社4=福岡・九州国際大付)。1回戦は緊張から動きが硬くなっていたが、試合が進むにつれて本来のプレーを発揮し、ストレート勝ちを収める。続く2回戦では西日本学生選手権シングルスで優勝した落司(龍谷大)との対戦。勝負は第2ゲーム終盤だった。第1ゲームを奪ったものの8点ビハインドで迎えた相手のゲームポイント。ここから怒濤(どとう)の追い上げを見せる。しぶとくラリーを続け、甘くなった返球を見逃さずにプッシュを押し込み、7ポイント連取。あと1点でジュースに持ち込めるところだったが、「欲が出ちゃったのかなと思います」という言葉があったように、決め急いでスマッシュをネットにかけてしまう。続くゲームも相手に先行されるかたちで展開され、パワーのあるスマッシュに苦戦し18-21。松本の挑戦はここでついえた。
 副将になってからのこの1年は自主性が求められる早稲田のバドミントン部をまとめるのに多くの苦労を味わった。全てはインカレでアベック優勝を達成するために。それはかなわなかったが、「4年生としてチーム全体を見渡してきた経験は、自分を成長させてくれた」と語ったように、これからの糧になるに違いない。

(記事 山本小晴、写真 石名遥)

★本業ではないシングルスは「すべてがしんどかった」

疲労の中シングルスを戦った

 普段はダブルスプレーヤーの友金だが、2回目となるインカレの個人戦ではシングルスのみの出場となった。
1回戦でストレート勝ちを収め順調に2回戦に進み、後半にサーブからの攻撃で6連続ポイントを奪うなど勢いに乗り第1セットを13本で押さえる。しかし体力的にもきつかったのかその後は体が思うように動かず、またダブルスの癖も相まって相手主導の展開に。「全てしんどかった」との言葉通り、かなり苦しそうな表情を見せ、逆転負けで今大会を終えた。
 今大会は団体のダブルスにかけていたという友金。台風の影響で団体戦がなくなり、インカレの総括としては不完全燃焼に終わってしまった印象だ。インカレも終わりに差し掛かり、代替わりの足音が近づいている。4年生が引退し人数が少なくなる中で一人一人の役割が大きくなってくるが、団体戦での単複兼任の可能性も高く、部にとって友金はキーポイントとなる存在であろう。

(記事、写真 石名遥)

結果

▼男子シングルス

▽1回戦
吉村徳仁◯2-0(21-17、21-19)
小野寺雅之◯2-0(21-14、22-20)
友金利玖斗◯2-0(21-18、21-19)

▽2回戦
渡辺俊和○2−1(17−21、21−7、21−7)
吉村徳仁●1−2(19−21、21−19、13−21)
小野寺雅之○2−1(20−22、21−12、21−13)
大林拓真○2−0(21−12、21−9)
友金利玖斗●1-2(21-13、19-21、16-21)
緑川大輝○1-2(18−21、21−16、21−11)

▽3回戦
渡辺俊和●1−2(21−15、21−11、21−15)
小野寺雅之○2−0(25−23、21−15)
大林拓真○2−1(19−21、21−12、21−15)
緑川大輝○2−1(18−21、21−17、21−16)

▼女子シングルス
▽1回戦
松本茜○2−1(21−19、21−12)
平野紗妃●0−2(16−21、14−21)

▽2回戦
松本茜●1−2(11−21、21−16、18−21)
吾妻咲弥○2−0(21−19、21−14)
鈴木ゆうき○2−0(21−14、21−17)
吉田瑠実○2−0(21−12、21−8)

▽3回戦

吾妻咲弥○2−0(21−12、21−13)
鈴木ゆうき○2−0(21−15、21−9)
吉田瑠実○2−0(21−11、21−8)

コメント

渡辺俊和主将(スポ4=埼玉栄)

――まず、昨日のダブルスは残念な結果に終わってしまいましたが

本当に悔しい結果になったというのが正直な感想です。

――シングルスの結果はどのように受け止めていますか

最後の相手は去年も総合(全日本総合選手権)に出ていて、西のチャンピオンで、強いというのは分かっていたので向かっていくだけでした。1セット目は取れたんですけど、2セット目にぎっくり腰か分からないけど腰を痛めてしまって。そこからはもう気持ちの勝負でした。痛みもあって自分がラリーを嫌がって外に出してしまいました。決めたくなっちゃったのかなと思います。

――初戦で1ゲーム目を落とした原因は

相手がスマッシュとカットをめちゃくちゃ打ってくるので、それの準備が遅かったと思います。ロブを上げるのは良かったけど、その後の準備ができていなくて決められたのが敗因だと思います。

――第2ゲームからは相手が疲れを見せていました

高さとかを変えて、相手にスマッシュが打ちづらいというか、打たされているという感覚のクリアーとかロブを打っていました。そこで準備して拾っていたら相手もはぁはぁしていて、これはいけるなという感じでした。

――渡辺選手はあまり息が上がっていないように見えましたが

上がっていますよ。自分がよく言われるのはポーカーフェイス、疲れていないように見える、ですね。内心は疲れていると思います。でもばれないようにするのも戦術かなと思います。

――3回戦の第2ゲームで点が取れなかったのは腰の痛みが原因ですか

初めて腰を痛めてしまって、こんなに痛いんだと思いました。2セット目は休憩のために使うという感じで。朋弥(鈴木、商4=宮城・聖ウルスラ学院英智)に薬を持ってきてもらって、それが効くまでの時間を稼ごうと思っていました。

――ファイナルゲームでもその影響でなかなか点差を縮められませんでしたが、その時の心境は

腰が痛くなったのが初めてで、どうやったら良いのかがわからなかったです。でも結局は気持ちだったのかなと思います。けがを理由に負けたっていうのはすごく嫌なので、自分がけがをしても勝つのが強い選手だと思うので、その中でも考えてうまくプレーをして、なおかつ勝てる選手になりたいと思いました。

――中盤から終盤にかけて持ち直したように見えましたがその理由は

4年間やって、最後だし、最後に出し切ろうと思いました。上で応援もめちゃくちゃしてくれていて。しかも、他大の子とか、栄(埼玉栄高校)の子とかそうじゃない子も「頑張れー!」って応援してくれて、期待に応えようと思いました。全てを出し切りました。

――この試合では全ての力を出し切れましたか

もう出し切れたと思います。けがをしている中でも他は全部出し切れたと思います。

――渡辺選手にとっての大学生の公式戦は終わりを迎えますが振り返っていかがでしたか

率直なものとしては、やっぱり団体戦やりたかったというのがすごく心に残っています。去年早慶戦が終わってから自分たちがアベック優勝をするために練習してきたので、それがなくなったっていうのはどうやっても忘れることができないです。4年間全部を振り返ると充実した4年間だったと思います。

――団体戦はなくなってしまいましたが、今、チームを見てどう思いますか

チームとして見ても、しっかり個人戦に切り替えられていると思います。4年生は全部負けてしまったんですけど、しっかり戦いきったというか、全力を出して負けたと思います。下級生がまだ残っているので、4年生は試合はないんですけど、後輩たちがしっかり良い試合ができるように応援したいと思います。

――後輩のみなさんに何か一言残すとしたら

後輩たちは個性豊かなので、みんなの良さを生かしつつ、組織じゃないですけど、チームとしても高めあって、アベック優勝してほしいと思います。

友金利玖斗(スポ2=兵庫・神戸村野工)

――普段はダブルスですが、今回シングルスに出てみた感想は

練習しておけばよかったなと思います(笑)。体力的にも精神的にも、全てしんどかったです。シングルをやりたくないという一心でやっていました(笑)。

――シングルスに出ると、自身はダブルスプレーヤーだなと思いますか

はい、思います。ダブルスは前に突っ込んで返されたとしても後ろがいますが、シングルは一人しかいないので「ああ、おらへん」と思います。寂しかったです。

――今回の敗因を挙げるとしたら

練習不足です。これからはシングルスに出ることは考えていなくて、ダブルス1本でいこうと思っています。出ることになったら出るときになんとかします。

――2度目のインカレはどうでしたか

去年は1年生でしたし、先輩と組んでダブルスも出ていたので、結構ダブルスにかけていました。今回も団体でダブルスに出る予定だったので、ダブルスの練習ばかりしていました。なのでシングルにかけていた思いはあまりなかったですね。

――来年からは上級生になります

人数は少ないですがレベルは上だと思うので、そのなかで怪我をしないようにしっかり戦っていけたらと思います。

松本茜女子副将(社4=福岡・九州国際大付)

―― 個人戦は初めての出場でしたがいかがでしたか

団体戦がなくなっちゃって、4日目のはずのシングルスが初戦になってしまって。個人戦は初めてだったけど、団体戦は何回か出たことあったし、どの大会でも大きく変わることもなくて、インカレだから、という変な緊張はなかったです。

――審判の判定などジャッジの部分で苦戦されていましたが、1回戦を振り返って

1回戦はすごく緊張していました。自分の中で焦っている部分があって、そういうのがジャッジミスとかアタックのサイドアウトにつながったのかなと思います。

――2回戦のインターバル中にラウンド側やフォア側について話している様子でしたが、注意している部分はありましたか

結構相手がラウンドの後ろを結構狙ってきたので、そこを逆に待って、しっかりと打てるようにっていうのは1回戦から意識していました。

――2ゲーム目は相手に点差を付けられてしまいましたが、その原因は

中盤くらいで自分の中で慌てちゃって、力が入ってしまいました。サイドに出しちゃったりとか、甘い球上げて打たれちゃったりとか。スマッシュが強い相手だったので、ラリーするのが怖かったのかなという部分はあります。

――そこから追い上げを見せましたが、気持ちの切り替えはどのようにされましたか

相手が多分サーブミスしたあたりからちょっと流れがきたと思っていて。特に考えすぎるとだめだと思ったので、1本1本と思っていました。最後は相手も甘い球を打ってくれて、欲が出ちゃったのかなと思います。

――ファイナルゲームでもあと少し、というところでしたが、振り返っていかがですか

追いつけなかった原因としては自分の中で焦ってしまって、しっかり打ってくる相手だったのに低いロブを出してしまったり、クリアーを低めに出してしまったり、相手に合わせてしまって速いテンポでやって打ち込まれてしまったところだと思います。自分の中で落ち着けなかったのはあと2点追いつけなかった原因なのかなと思います。

――大学生の公式戦が終わってしまいましたが、4年間を振り返って

量としてはバドミントン人生の中で一番しなかった大学生活だったけど、チームのことを考えたり、監督がいない中で自分と向き合ったりして、質としては濃い4年間だったと思います。

――高校までのトップダウン形式と大学での自分で考えてやるのだとどちらが良かったというのはありますか

今で監督がいてやってきた分、自由にやるのが個人的には合っていると思います。でもそれは、高校までのがあったからできるわけで、高校までの監督さんがいて練習できたっていう土台があった上でやれたのは自由でのびのびできたと思います。

――副将として1年やって、今のチームを見ていかがですか

今年がアベック優勝のチャンスがあると思っていて、東日本(東日本学生選手権)とか秋リーグ(関東大学秋季リーグ戦)がおわってからダブルスもいろいろ組み替えてみて、毎日練習前に思い悩むことがすごく多かったです。一番上にたってからは悩むことも多かったし、最後は自分の練習に集中できないくらい悩んだんですけど、副将として、4年生としてチーム全体を見渡してきた経験は、自分を成長させてくれたと思います。今まで自分が頑張らないと、となっていた中で、周りのことも見渡せるようになったのは成長できたんだと思います。