9月17~19日にかけて、愛知県安城市を舞台に全日本大学選手権(インカレ)が開催される。4年生にとってはこの大会が大学4年間の集大成となる。今季の早大は、東京都大学連盟春季リーグ戦の結果は芳しくなかったものの、全日本総合選手権大会東京都予選会、東日本大学選手権(東日本インカレ)で優勝を果たすなど、試合を重ねるごとにチームの完成度は高まっている。初優勝となった2006年以来16年ぶりの全国制覇へ、準備は整った。
投手陣は、田中彩絵(スポ4=福岡・三瀦)、新宮怜美(スポ3=京都西山)のタイプの異なる二枚看板を擁し、抜群の安定感を誇る。田中は、昨年までは一塁手としての出場が多かったが、最終学年となった今年は、投手としてチームをけん引。田中は長身を生かした投球が持ち味で、変化球を有効に使いながら相手を幻惑する。対して新宮は、世代別の日本代表に選出されたこともある実績十分な投手で、力強い直球を武器とする。大学に入ってからはスピードだけでは勝負できないと感じ、変化球に重きを置いて練習しているという。「バットに触れさせたくない」と意気込むほどの負けん気を持つ新宮が、相手打線から三振の山を築くに違いない。さらに、ワンポイントでの起用が予想される左腕・鈴木茉菜(スポ4=東京・鷗友学園女)も控えている。田中、新宮とはまた違った投球術を持ち、ここぞという場面で相手打者を封じ込む投球に期待したい。
最後のインカレを投手として迎える田中。好投でチームを勝利へ導く
打線の中心となるのはやはり、中軸を担う高美優(スポ3=福岡中央)、渡邉佳子(スポ4=東京・学習院女)、井田菜摘副将(スポ4=群馬・高崎健康福祉大高崎)の3人だろう。高は、東日本インカレ準決勝の城西大戦で、決勝打となる2点適時三塁打を放つなど、チーム屈指の勝負強さが持ち味。反町結佳主将(スポ4=愛知・瑞陵)が「誰も比べものにならない」と評価する打撃センスが、この大舞台でも発揮されるか。渡邉は、『4番・捕手』として攻守にわたってチームを支える早大の屋台骨だ。長打力を兼ね備えており、勝利を決定づける一打に期待がかかる。井田は、左足のケガの影響が心配されたが、「今は絶好調」と語るように、インカレへ向けて準備は万全だ。この中軸3人の前に走者を出すためにも、1番小林千晃(スポ2=千葉経大付)、2番反町主将の働きが鍵となってくるだろう。下位打線も、一人一人がつないで点数をもぎ取るという攻撃ができれば、相手にとって脅威となるはずだ。
副将として並々ならぬ覚悟で臨む井田
トーナメントを勝ち抜くために最も重要となるのが初戦の中京大戦だ。中京大は2年前の全国大学選抜女子ソフトボール選手権大会(インカレ代替大会)でも初戦で対戦し、3ー4で黒星を喫した因縁の相手。「やっぱり初戦を勝ち切れれば波に乗っていける」(井田)、「初戦が大事になる」(高)と部員も口をそろえてキーポイントにあげる。手ごわい相手ではあるが、「リベンジができるのでうれしく、燃える相手が来てくれた」(田中)、「『よっしゃー』という感じで1回そこで気合いが入った」(新宮)と語るように、誰一人として弱気にはなっていない。1回戦を突破しても、強豪校との対戦が予想されるが、まずは目の前の相手に集中して、1つずつ積み上げていくことが必要になってくるだろう。
チームをまとめ上げる反町主将(左)と気迫のこもった投球に期待がかかる新宮
そして『早大らしさ』といえば、チームの一体感である。「今までの恩をプレーで返せるのが一番いい」(高)、「一番長く4年生とソフトボールをしたいと心から思っている」(新宮)、「早大でソフトボール部を選んで良かったなと思える理由の一つが4年生の先輩方」(河井なごみ、スポ2=埼玉・伊奈学園総合)など、下級生たちは4年生のためにやりたいと口をそろえる。一方で4年生は、「今までソフトボールをしてきた中で一番チームメートに恵まれているのが今の代だなと思う」(田中)、「いい仲間に巡り合えたこのチームでどこの大学にも勝って優勝したい」(渡邉)と語り、巡り合えた仲間への感謝と厚い信頼がうかがえた。反町主将も「後輩たちのためにも、私たち4年生はインカレを優勝したいなという思いが今一番あります」と力強く意気込んだ。このチームワークの良さを武器に、このメンバーで挑む最初で最後のインカレ。惜しくも3位に終わった男子部の思いも背負い、必ず頂点をつかみとる。
試合前に輪を作る早大ナイン。この団結力が一番の強みだ
(記事 齋藤汰朗 写真 田中駿祐、藤田珠江)