【連載】インカレ直前特集『捲土重来』 第5回 笠井新一朗副将×濱中勇輝×山根航×水本将文

男子ソフトボール

 インカレ(全日本大学選手権)で勝つためには、相手チームから得点を奪うべく打線の奮起が欠かせない。今回登場するのは打線爆発のカギを握る4年生野手、笠井新一朗副将(スポ4=徳島・城東)、濱中勇輝(人4=神奈川・桐光学園)、山根航(政経4=東京・国立)、水本将文(人4=長崎・佐世保西)の四人だ。これまでチームを支え続けてきた四人は、最後の大舞台を前に何を思うのか。

※この取材は8月10日に行われたものです。

インカレは4年生次第

水本は早大の切り込み隊長

――昨秋からここまでを振り返っていかがですか

水本 秋から新チームが始まってもうすぐ1年がたとうとしていて、秋から振り返ると本当にチームもまとまってきているかなと思います。なんですけれどやっぱりまだ日体大や国士舘大には及ばない部分がありますね。でもインカレは僕たち優勝を目指しているので、やっぱりチームで一致団結してこの二校、それからもちろん初戦の相手の関西大を倒して優勝したいと思っていて、あと2週間くらいになりましたが、これから自分自身を追い込む、それからチームを追い込んでやっていって、あとは笑顔でインカレを迎えるだけです。

――水本選手は秋ごろに体調を崩されていましたが

水本 あんまり言いたくないんですけれど(笑)、ちょっと手術をして関東学生選手権(関カレ)に出られなかったりってこともありましたね。今となっては笑い話ですけど。もう万全です。お酒も飲めます(笑)。

一同 (笑)。

――山根選手はここまでを振り返っていかがですか

山根 秋からチーム全体としては力が付いてきていると思うんですけれど、やっぱり春季リーグもここで勝てば優勝というところで勝てなかったり、全日本総合選手権東京都予選(全総予選)でも決勝まで行って日体大に負けたり、それでこの前の東日本大学選手権(東日本)でも日体大にやられてしまって…。勝てそうで勝てないというか、大事なところで勝てないというもどかしい状態が続いているのかなって思っています。もうあとインカレしかないので、そこで晴らしたいなと思います。個人としてはケガをしている期間も長くて、試合に出られたり出られなかったりという状態だったんですけれど、ここ最近はよくバッティングで使ってもらえているので、インカレではその期待に応えたいと思っています。バッティングの状態が良かったところにケガをしてしまって僕個人としてもすごくもどかしい期間でした。

――濱中選手はいかがですか

濱中 チームの事についてはだいたい山根が言ってくれたんですけれど、僕個人としては去年の5月ごろに体調を崩してしまって。

水本 俺ら体調崩しがちやな(笑)。

濱中 確かに(笑)。まあそれで2カ月くらいチームを離れてしまって全く力になれず先輩に迷惑を掛けたし、全く活躍もできず本当に申し訳ない気持ちで(昨年は)すごい悔しいインカレを終えてしまって。そこから新チームが始まったんですけれど、やはり先輩が抜けた穴がチームの雰囲気としても戦力としてもすごく大きくて、この中でどうやったら勝てるんだろうというところからのスタートでしたね。まずやるべきことをやろうとここまで一つ一つやってきて、今はなんとなくチームとして全体的な力が付いてきたという実感もあるんですけれどその一方で、やっぱり他のチームだって同じように成長してレベルアップしてきているってことを意識していますね。あと一歩というところで勝ち切れるようあと2週間しっかり準備して、インカレで大爆発できればいいなと思っています。あと個人としてはやっぱり最終学年になって、最近では試合でも少し使ってもらえるようになってきて成長を感じます。最後のインカレで活躍して笑顔で引退したいと思います。

――笠井選手はいかがですか

笠井 今のチームが始まったときに、当初寝坊や遅刻が多かったりして幹部になる代がこれでいいのかという状況でした。チーム全体にその不安はあったし、幹部選挙を経ていざ新チームが始動してもなお自覚の足りない行動が目立っていました。そんなところで後輩にもすごく迷惑を掛けた1年でした。試合だけ見てもさっきあった通りいいところまでは行くんですけれどタイトル取れないっていうようなもどかしい感じで、(昨年の)インカレからずっと悔しさを引きずっているような感じです。ことしは新しい1年生も迎えて、部員全員の総合力でインカレ優勝というタイトルをつかみにいけたらと思っていますし、今は全員でその目標に向かっていっていい雰囲気じゃないかなと思います。個人的には、昨年のインカレに出させていただいたんですけれど、それまでの2年連続で優勝していてその姿しか見てこなかった中で2回戦負けという結果になって、グラウンドに立ちながら何も貢献できなかったという非常に悔しい思いをしたので、ことしはぜひグラウンドに立ったうえで優勝を経験したいと思っていますし、僕自身のソフトボールもこれが最後になると思うので、最後に一花咲かせたいという思いもあります。

――最近では東日本がありましたが、振り返っていかがですか

濱中 まあ悔しかったよね。力負けしたというかね。

笠井 初戦から大差で勝ってきて、3試合で60得点できて、それも試合に出ているメンバーだけじゃなくていろんなメンバーを出しつつの得点なので、相手が格下だったことを除いても春から課題としていたチーム全体の底上げというのはできてきたなと思いますね。その中で今回ベンチにいる人とグラウンドに立つ人のそれぞれの立場をお互いが経験できてよりお互いを気遣えるようないいきっかけとなったと思います。でもやっぱり勝てないと意味がないので、最後の詰めの甘さというのがあの結果につながってしまったのかなというように思います。

濱中 正直エースの松木が打たれたなら仕方ないって割り切っている部分もあるんですが、やっぱり勝ちたかったです。特に自分が何も活躍できなかったのが悔しいところではありますけど、インカレに向けてもう一回チームを見直す良いきっかけかなと思います。あと2週間でやるべきところがそれぞれ見えたんじゃないかなと思います。優勝して変に浮かれてインカレに挑むより、気を引き締めていけるのである意味いい敗戦かもしれません。

山根 個人としては日体大戦が本番だと思っていたのですが、そこで全く打てなくて、また最後のバッターになってしまったというのもあって本当に悔しかったですね。きょうもインカレで最終回2死で2点負けてるみたいな場面で打順が待ってくる夢を見たんですよ。自分はなぜか結構そういう場面で打席が回ってくることも多いので、インカレではどんな苦しい場面で回ってきても絶対にそこで打ちたいと思っています。

水本 個人の反省としては打率としては決勝の日体大戦で5割と数字だけ見れば悪くないんですけれど内容的に、最初に見逃し三振をしてしまってその次の打席でもうまく調整しきれずに見逃し三振を繰り返してしまったことです。(ストライクゾーンが)広めの審判だったんですけれどそれをつかみきれなかった部分があって、相手投手だけでなく審判にも合わせた対応がすぐできないといけないなと思いました。実は僕去年のインカレでも見逃し三振を何回かしてしまっていて、その反省がまだまだできていないなと個人的に反省しています。チーム全体としては終盤の集中力がすごいなと感じて、終盤に諦めずにヒットが出て、これがワセダの底力というか味だなと思いました。結果としてはすごく悔しいんですけれど、一方でインカレに向けての手応えも感じられました。

――この1年間、ご自身はチームの中でどのような役割を果たしてきたと思いますか

水本 僕は3年時から試合に出させていただいていたので、ずっとPGとしてだったのですが、ことしはクリーンアップを打たせてもらって、やっぱり金子(祐也主将、スポ4=長崎・佐世保西)が4番で、もしも4番が打てなかったときの5番っていう役割は大事なのかなと思っています。やっぱり4番が打たなきゃ誰が打つみたいな雰囲気があるので、そこで打てなかったときに僕がきちんと打つことが5番としての務めであるし僕自身課題としている部分でもあります。プレッシャーもあるんですけれど、3年生のときみたいにプレッシャーに負けてしまうのではなく跳ね返せるよう平常心でいたいと思います。最近の試合ではそれができつつあるかなとも思いますし、それをしっかりインカレでも心掛けてチームに貢献したいです。

山根 自分は足の使える小技担当みたいなことをやったりやらされていたりして。

笠井 かたくなに小技って言おうとせんねんな。「俺はホームラン打ちます」って(笑)。

山根 そんな言い方してない(笑)。右バッターなのでしっかり長打を目指すようなときもあれば、キャラ的にというか小技系を求められることもあって自分の中でどっちつかずで。そんな感じで試合にも出たり出なかったりみたいなことが続いていて、すごく中途半端だったなと思います。まあここ最近はかなり明確というか、バントしろとかも祐也からは言われなくなって。チャンスで打席が回ってくることも多くて、その中でシングルでもいいからきちんと役目を果たして打点を重ねていけたらと思っています。そこでやっと答えが見つかったかなと思います。とにかくチャンスできちんと一本を打つこと、それが僕の役割で、インカレでもやらなきゃいけない事だと思っています。

濱中 僕はやっぱり代打でチームの流れを呼び込むことかなと思います、僕が打席に入るとなぜかベンチが盛り上がるっていうのを感じていて、原因は分からないんですけど(笑)。

水本 分かってるくせに(笑)。

濱中 まあ僕は試合の中の役割っていうよりチームの中での役割として完全にいじられ役なので。

水本 あ、認めた(笑)。

濱中 どんなときもチームを盛り上げることは、別に誰かから言われているわけではないですけれど僕に求められていることかなと思いますね。最近は後輩からでさえいじられるようになってきて、同期から執拗にいじられることもあって感づいてきてはいます(笑)。インカレでチームを盛り上げることっていうのは絶対に必要なことだと思うので、そういったところで自分の役割を果たせたらいいなと思っています。あとはやっぱり代打で一本打ちたいなって。僕も打つ方面とセーフティバントの方向とあるんですけれど、個人的には打つ方向で貢献したいなと思っています。肝心なところで一本を打つことを求められているのかなと思います。

笠井 ぼくは本当に小技系のバッターなので、バントはもちろん内野に転がして相手をかき乱したりっていうようなところですかね。高校までソフトボールをやっていて実は全然そんなタイプじゃなかったんですけど、ワセダ入ってすぐそんなキャラみたいなのができてしまって(笑)。でもまあそれが宿命だと思ってずっとそういうスタイルでやってきて、同じ小技系のバッター同士で高め合いながら技を磨いてきました。返すバッターというよりもその前のチャンスを作るような役割を果たせたらと思います。僕たちが地道に塁に出ているところで4番がポーンって打って早スポに取材してもらうみたいな。僕たちはあまり取材してもらえない宿命で…。

濱中 ここでクレームかよ(笑)。

笠井 いや、クレームじゃないです(笑)。

水本・山根・濱中 絶対クレーム(笑)。

笠井 読者の皆さんに、そういう部分にもぜひ注目してみてくださいってことですよ。あとは全体的に控えめな人が多い中、自分が起点となって濱中をいじって盛り上げていかないととも思っています。

――ことしは監督が変わりましたが、何か環境の変化などはありましたか

濱中 実質、体制はあんまり変わってないです。

笠井 そうですね、コーチが監督になっただけで実質束ねているのは総監督(吉村正総監督、昭44教卒=京都・平安)みたいな。僕たちの環境自体にあまり変化はないです。

濱中 そうですね。ただ今までのように教授をしながらというかたちではなくなって、拠点が100号館から高田馬場のティーボール協会になった分、練習に来て指導していただく機会は減ったかなというくらいです。

――普段は学生主体で練習など行っているのですね

山根 そうですね、その分主将、副将の負担が増えているのかなとは思います。

笠井 普段から今の監督や総監督に言われているのは「ワセダはキャプテンのチームだ、キャプテンの色でその年のチームカラーが決まる」ということで、僕たちも金子中心にそのつもりでやってきました。

――皆さんが吉村総監督から学んだことは

山根 主にバッテリーを中心に見てくださっているので。あと笠井みたいに小技系のバッターは技術的な部分を教わることもあります。

笠井 バントできなかったらすごく怒られて、みんなの練習から外れて延々とゲージの中でバント練習みたいなことはありました。一球一球のボールに集中しろということは毎年言われていますね。『一球学』ということで。それは立場やポジション関係なく全員に当てはまることとして。

濱中 技術的な部分よりもグラウンド外のことというか人間的な部分を教わることが多いかなと思います。目上の人との関わり方とかお金の使い方とか、グラウンド外でいただく指導も大きいかなと思います。

――皆さん4名とも外野手ですが、何か特別な点はありますか

濱中 仲は良いよね。なあ?

水本 そうなん?(笑)

笠井 まあポジションが同じ外野手な分一緒に練習する機会も多く話したりって部分は大きいです。

濱中 ノックとかずっと一緒にやってるしね。

――4年生8人の中で野手が多いですね

濱中 野手が多い…確かに。松木はバッティングもできるから半分野手みたいなもんやし。

笠井 松木はバッティングもできるから半分野手みたいなもんやし。

水本 俺ピッチングできるから半分バッテリーやけどな。

濱中 なにちょいちょい自慢挟んできてるの(笑)。

笠井 入った時は佐世保西の全国優勝メンバーが二人いて、それだけでこれからやっていけるかなというのはありました。それが4年間一緒にやってきて、同等にグラウンドに立てているっていうのはすごく自分が成長したところかなと思いますし、地元の人たちが応援してくれるところもあると思うので、そういうところも含めてインカレではちゃんと恩返ししたいと思います。

濱中 キャラじゃないって(笑)。ここにきて初めて言ったでしょ。

一同 (笑)。

山根 ただやっぱり最近はスタメンに4年生が多いので、金子が最近よく言っている「インカレは4年生次第だ」という言葉もすごく納得できるというか、その通りだなと思います。

濱中 4年生がチームの核になっているからぶれないっていうのは今の強みかなと思いますね。悔いは残らないでしょう。

日本一のキャプテンにしたい

山根はインカレ優勝の起爆剤となる可能性を秘めている

――せっかく4年生にお集まりいただいたということで、4年生の学年カラーは

濱中 のほほんとしてるよね。

笠井 最初1年生の頃はよく集まっていましたね。僕の家に許可していないのにわざわざ遊びに来たりして。年々それぞれが自立じゃないけど、やることが増えて集まること自体は少なくなってきたかもしれないですけど、集まったら盛り上がるので、濱中中心に。そういうところではそれぞれ役割果たせているかなと。チームカラー濱中ということで。

一同 (笑)。

濱中 金子じゃないんだ。申し訳ないね(笑)。

山根 3年生が人数多いし個性的な奴が多いから飲み込まれないようにしないと。くだらないことでもめちゃくちゃ盛り上がるので(笑)。

濱中 でも基本的にみんなしっかりしているので。だからお互いの仕事に関してはほとんど口出ししないし、それぞれを信頼してやっているという感じです。

水本 一人一人の個性は強くて、でもまとまると何でも腹割って話せる仲で。盛り上がるときはめちゃくちゃ盛り上がるし、僕としては一番やりやすい雰囲気になる同期ですね。

濱中 しょうもないけんかしても盛り上がるよね、俺らは。

笠井 え、そうなん?

水本 そうなん?

濱中 いつもこんな感じです(笑)。

――4年生で集まったりすることもあるのですか

一同 はい、きのうみんなでご飯食べに行きました。

濱中 1年生の時は4年生の先輩が怖かったから、その分集まって慰め合ったりしていたのかも。

笠井 え、そうなん?

水本 そうなん?

濱中 そうだって、絶対!(笑)

――金子主将はどのような存在ですか

笠井 すごく熱い男で、心の底からインカレ優勝したいという思いがにじみ出ていて。本当にあいつに引っ張られてきた1年だったなと感じています。祐也はずっと「後輩を勝たせてやりたい」と言っているんですけど、祐也を1年間見てきて、今は「祐也を日本一のキャプテンにしたい」という思いが個人的には強いです。

濱中 何だろうな、頑張り屋さんかな(笑)。2年生の時からずっと試合も出ていてチームの核というか。誰よりも良く考えてソフトボールしているかな。完全にこの1年は祐也に引っ張ってもらってきたと思います。2年前の主将みたいにカリスマ性があるとかではないんですけれど、自分の背中で語るタイプですね。あまりしゃべるのが得意じゃないので、俺らも支えないとって思わせる面もあります。でも圧倒的にプレーがすごいので、そこでキャプテンシーを発揮しているかなと思います。

水本 お母さんみたいやな(笑)。

山根 笠井が言ったように本当に熱いハートを持った男で、誰よりもチームの事とか、インカレで勝つための事とか真剣に考えていることが見ていて伝わってきます。チーム一人一人の事を考えてくれていますね。ここに来ると試合に出るメンバー、出ないメンバーといったように分かれてくるんですけど、金子は紺碧隊長の西川(航太、社2=東京・早実)とかともすごく話していて、そういうところをケアしている面も見ているので、誰よりもみんなのことを考えているなと思います。

水本 自分は高校の時からずっと祐也を見ているので、祐也のことは一番分かっているつもりなんですけど。高校のときは全然キャプテンには向いていない性格だったと思います。結構後輩からも恐れられていて、祐也が愛用していたバットを折った後輩が過呼吸になるくらい(笑)。でも主将になると決まった時には、高校の頃に足りていなかった部分が埋められて。みんなが言ったように熱いハートでみんなを引っ張ってくれて、歴代の主将にも劣らないような人物になったと思っています。

――皆さんがソフトボールを始められたのはいつですか

山根 大学に入ってからです。自分と濱中は高校まで野球をやっていて。何かを部活やりたかったんですけれど、その中でも勉強やアルバイトとちゃんと両立できる部活を探しているうちにソフト部を知って、たまたま入りました。入った当初は野球をやっていた経験を生かしてやれるんじゃないかって思っていたんですけど、実際は全然違って。似て非なるスポーツだなと感じましたし、難しくて慣れるのにも時間がかかりました。

濱中 僕も大学からですね。浪人中に大嶋さん(匠、平24スポ卒=現北海道日本ハムファイターズ)の話をニュースで聞いて、ワセダにソフト部があることは知っていて、人科に入って目の前にグラウンドがあったこともあって入部を決めました。最初に話したのが水本なんですよ。同じ学部の水本がブースにいて、体験に行ったときに水本はもう全体に交じって練習していてすごいなと思って、僕も入ろうと決めました。

水本 俺、濱中の入部にめっちゃ貢献してるやん(笑)。

濱中 入った当初は先輩が怖くて(笑)。でも振り返ってみれば四年間ワセダの体育会でずっとやってきてよかったなと思います。僕もいろんな実行委員とかの仕事もさせてもらって、ワセダの体育会の横のつながりもできたし、学連の役職で他のソフト部の人とも友達になったりして、まだ引退じゃないですけど本当にいろんな出会いがあって楽しい4年間だったと思います。中学、高校の日本史の先生がソフト部のOGで、そのつながりも大学入ってから知ったんですけど、ソフトボールおもしろいなぐらいで入部を決めたので、なんだかすごいところに来ちゃったなという感じでしたし、僕も野球から来たんで、最初は野球とソフトボールとの違いに思った以上に戸惑いましたね。やっぱり全く違うスポーツですね。打球は飛ぶので打撃は楽しいんですけれど、守備に苦しんだと言いますか今も苦しんでいます。

水本 ソフトボールは小2から初めて、中学にはソフト部がなかったんで仕方なく軟式野球をやって、高校の時に佐世保西高でまたソフトをはじめました。僕が入学する8年前くらいに全国制覇している高校だったんですけれど、ソフト部専用のグラウンドもあって、野球と迷ったんですけれど当時の監督からも推されて結局ソフト部に入りました。でここまでずっとやってきた感じです。

――なぜソフトボールの名門の佐世保西高を進学先にえらんだのですか

水本 中学校の3年生の時に推薦入試があって、中学生の時はそこそこ勉強もやってて評定もあったので、たまたま先生に佐世保西を受けてみないかという話をいただいて、受けたのがきっかけです。そのときソフトボール部が強い学校だということを知りました。

――一つ上の学年に溝口聖前主将(平28人卒=長崎・佐世保西)がいらっしゃったこともワセダに来たきっかけになりましたか

水本 そうですね。代々、佐世保西からワセダへの推薦枠があって、結構ソフトボール部で力のあった先輩が指定校推薦でワセダに行くという流れがあったので。僕は元々高校でソフト辞めようと思っていたくらいだったんですけれどたまたまインターハイ・国体と優勝して勉強する時間がなくなってしまって、どうしようって時に指定校推薦があると思いついて、その流れでソフトボール部に入りました。

――笠井選手はいかがですか

笠井 僕は中学校からです。本当は野球をしたいって思っていたんですけれど、野球部がなくてソフト部しかないっていう中学校だったのでソフト部に入りました。消去法で決めたって感じだったんですけれど、やってみたらすごい楽しくて。僕は体が小さかったんですけれどそれでもちゃんと活躍できて、そういう場があるんだなってすごく思いました。それでそのまま高校でも野球じゃなくてソフトボールを続けました。大学進学の時はサッカーサークルとか入ろうかと思っていたんですけれど、僕の3つ上のワセダのソフトボール部に高校の先輩がいて。知らないうちにその人に僕の連絡先が知れていて、説明会みたいなので学校来た日に電話かかってきて、囲われて「入るでしょ?」みたいな。それで半強制的に入ったというか。入部当初はこんな日本一みたいなレベルでできるかって思っていたんですけど。最初は全然レベルも違って、うまい人がどんどん練習して取り残されていくというサイクルがあって。2年生くらいまで全然試合にも出られない感じだったんですけど、その中でも小技系のバッターとして0からやろうと思ってやってきました。先輩にたくさん教えてもらいながらやって、だんだん試合にも出られるようになってきて。こんな風に成長できたのもソフトボール部の環境だったからこそかなと思います。入って本当に良かったと思います。

早大で得たものは大きいと話す笠井

――4年間ワセダのソフトボール部で過ごしてきて得たものは

笠井 吉村総監督が人間形成を掲げていて、社会人として人と関わるときの人間関係や目上の人との接し方なども学べたと思います。ソフトボール以外でも、4年間ほぼ毎日しんどい練習をずっと一緒にやってきた仲間と出会えたことが一番の財産かなと思います。いい先輩や同期に恵まれて、面白い後輩たちにも出会えて、そういうネットワークはここに入ったからこそできたのかなと思います。引退して、卒業してからもずっと大切にしていきたい仲間です。

濱中 僕は、大学四年間で日本一を目指して本気でソフトボールに向き合ってきた仲間が一番大切ですね。僕は高校時代に野球部に入れなくてなかなか青春してないなっていうのがあって、それで大学ではなにか部活がしたいって思っていました。ワセダでは思いっきり青春できたなっていうのと、本当にすごい先輩方や仲間にも出会えました。アメリカ遠征など他ではできないような経験もたくさんさせていただいて、ティーボールやボランティア活動なんかを通して普通だったら出会わないような人に出会うこともできて、ここでしかできない経験をたくさん積めたかなと思います。今のチームでも僕が新歓した後輩たちと一緒にソフトボールができて本当に楽しかったなというのもありますね。やっぱり仲間の存在が一番です。

山根 この四年間でソフトボールだけじゃなくいろんな経験をした中で視野が広がったというか、今までは本当に野球と勉強だけやってきたという感じだったんですけれど。大学4年間の経験を通して自分でいろいろ考えたりだとかするようになりました。あと、メンタル的な部分や精神力が鍛えられました。僕はずっと先生から試合の時に迫力がないみたいなことを言われたりしてきたんですけど、苦しいときの集中力だとか、ここで絶対打つっていう強い気持ちがかなり強く持てるようになって、それが結果にもつながってきているのかなと思います。

濱中 愛校心もじゃないの。

山根 まあ確かに自分は早大が第一志望じゃなかったんですけれど四年間部活をやって、入学した時よりはずっとそうですね。

笠井 この前『紺碧の空』流している時も一人で泣いとったもんな(笑)。

山根 こうやって事実に反することもあるんですけど。

水本 笠井とかぶるんですけど自分が四年間で得たことは、人間力じゃないですけどそのようなことを学んだかなと思います。それが一番大きいところで、あとは大学生という社会人に入る手前のところで一生付き合える仲間に出会えたことが何よりです。これからも勤務地が近かったら集まって飲もうとかもなると思うので。ずっと苦しいことも一緒にやってきて、部活以外の時間もほとんど一緒に過ごした仲間に出会えたというか、みんなとそんな関係になれたことが一番得たものです。

――ことしのチームならではの強みはありますか

水本 きょねんの強い先輩方が引退して打撃が少し落ちたかなというところもあるんですけれど、1年間いろいろ工夫しながらやってきて個よりも線といいますか、しっかり流れがある打線が出来上がりつつあるかなと思います。

濱中 一人一人役割がはっきりしているというか、試合中も練習や普段でももっと自分ができること、求められていることがあるのが大きいと思います。去年より一人一人の役割が明確かなと思います。後は、主将がぶれないでいつもチームを引っ張ってくれているので、それもこのチームの魅力の一つかなと。

――皆さんから見た下級生はどのような印象ですか

笠井 3年生はとにかく人数も多くていい意味でうるさいですね。キャラも濃くてよくしゃべって、よく盛り上がって。そういう3年生がチームを引っ張ってくれている部分もあって、すごく頼もしいです。2年生、1年生は例年より人数が少ないんですが、その分学年ごとにまとまっているなと思います。学年同士の横のつながりが固くて、それが4学年で一個にまとまるという点も僕たちのチームの良いところかなと思います。

優勝という結果で恩返しを

昨年の雪辱を果たしたいと意気込んだ濱中

――昨年初めてインカレでの敗北を経験されましたが、今あらためて振り返るといかがですか

笠井 僕が1、2年の頃には全国制覇して、その流れで1、2回戦は勝てるものだという風潮がチームにあって。そういうところで相手を知らな過ぎた、なめ過ぎたというところがあったのかなと思います。去年のチームは初めてスタメンでインカレに出場する選手が自分を含め多くて、インカレ優勝はしていてもグラウンドで実際にプレーして日本一、というのを知らないメンバーが多かったので、そこにギャップが生まれてしまったのかなというところもあります。ことしは王座奪還というような目標も掲げられますし、チャレンジャーとして一人一人が一つ一つの試合に集中して勝っていくという姿勢で臨むので、そういう油断はないようにしていけたらなということを去年のインカレから学べたと思います。

濱中 去年を振り返ると悔しい思いしかないです。自分が出られなくてもどかしいというのと、先輩方がうまくいかないまま終わっちゃったというのですごく悔しいしか残っていないです。おととしから昨年のインカレまで、先輩方が何を考えてチームを作ってきて、夏を迎えてどういう戦いをしていくというところをしっかりと学んできたところで、自分が1、2カ月離脱してしまってというところもすごく申し訳なかったです。そのまま夏を迎えてしまって全く貢献できずにインカレが終わってしまったということで、悔しさが2倍も3倍もあったというのが昨年のインカレです。同期もちょくちょく試合に出ていたというところもあって、すごくもどかしい思いはありました。

山根 一番近くで見てきた先輩方のチームが、あっさりああいうかたちで負けてしまったというのが結構ショックで。自分の中のイメージとして、インカレを通じてああいう苦しいゲームの中でも誰かがポンと打って逆転するというイメージがあったんですけど、去年はそうもいかなくて。負ける時ってこういうものなのかなと思った記憶があります。

水本 自分も去年から試合に出ていて。おととしのチームは優勝したんですけど、秋のリーグは4位とかで負けが多いチームだったので、『ワセダはインカレには強い』という印象があって、去年のインカレでも勝てるだろうというちょっとなめてかかっていたような気がして。2回戦で立命大に負けた時に、インカレはワセダが強いという考え方と負けた理由が結び付かなくて、悔しいというよりも「なんで負けたんやろ」という理由が全然分からない時期がありました。「このチームでも負けるんや」という感じでしたね。ことしは今まで勝ってきたチームを忘れて、チャレンジャーとして一試合ずつ大切に試合を勝ち進めて優勝するという考えに切り替えて、チーム全体で優勝を目指せればなと思います。

――皆さんにとって、インカレとはどのような大会ですか

水本 ことしの初戦が西日本大学選手権2位の関西大で、1回戦敗退もありうるような結構強いチームです。でも逆に、そこに勝てれば一気に波に乗って優勝できるというポジティブな考えを持てると思います。僕らもことしで最後のインカレなので、金メダルといいますか、優勝カップをみんなで手にしてうれし涙を流したいなと思います。

山根 水本が言った通り、初戦の関西大に勝てるかどうかというのが大事で。もちろんインカレ優勝したいですが、今は大会全体というよりは初戦のことばかりを考えているという状態です。相手にいいピッチャーがいて自分が前回対戦した時は打てなかったので、対戦した時のイメージを持って。インカレで打席が与えられれば自分が打ちたいというのはもちろんありますし、そこで関西大に勝てれば絶対に勢いに乗れると思うので、とにかく初戦に勝ちに行くことを考えています。その結果として優勝して、主将がよく言うように『新たな連覇の1年目』にしていきたいなと強く思っています。

濱中 やっぱり去年の悔しさを晴らしたいというか、雪辱を果たしたいというのが一番思っているところで。個人としても全く力になれなかったというのが一番悔しかったので、そこを初戦の関西大戦に向けてチーム全体をまとめることだったりとか、チーム一丸となってぶつかっていくためにどうすればいいかということを、あと2週間やっていきたいと思っています。関西大に勝てれば後はノリと勢いで勝てると考えているので、とにかく初戦突破を考えて、金子や松木を中心に4年生が一丸となってチームをまとめて、初戦を迎えられればいいなと思います。

笠井 関西大の後にも強い大学はたくさんありますが、一番のヤマ場は関西大だとチーム全体で捉えていて。そこに絶対勝って、そのままインカレで絶対優勝したいという思いがあります。個人的に、インカレ優勝した当日の夜にはインカレ祝勝会をやるんですけど、それがめちゃくちゃ楽しくて。自分が一番上の代になって、自分たちのチームで祝勝会をやって、一緒に頑張ってきた後輩や同期、関係者の人と喜びを分かち合いたいという思いが強いです。自分は一ソフトボール選手として臨む最後の大会でもあるので、負けて終わりたくないという気持ちもあります。とりあえず勝ちたいという気持ちで臨みたいです。

――関西大がどのようなチームなのかという情報は既に入っているのですか

濱中 ピッチャーがいいよね。

笠井 春先に練習試合をやった時も1点に抑えられて負けました。そのころに比べたらチームとしても成長していますが、相手も絶対に成長していると思うので、どれだけ差を埋められたかなというところです。右バッターでガンガン振ってくるような選手も相手には多いので、一発大きいのもあるというところで日体大、国士舘大とは違ったチームかなと思います。後は関西のチームは乗ってきたら止まらないようなチームなので、そこにどれだけ圧倒されないかというところも濱中を中心に対策していかないといけないですね。

濱中 負けない感じね。西に負けないノリをね。

水本 東のノリで行くのね。

笠井 東のノリ? 俺も分からんけど(笑)。

一同 (笑)。

――インカレでのご自身の役割は何でしょうか

笠井 打線だったら小技というところで。後は勝ち抜くためのハッピーさが必要だと思うので、宿舎などのグラウンド外のところで盛り上げるきっかけづくりというところを個人的にしていきたいと思います。そういうところを濱中と一緒に小ネタを挟みながら。本当にインカレはハッピーさが大事なので。アップの時に反応系をやるんですけど、毎年そういう時に後輩が出てきて一発ギャグをやってワーッとなって試合に入ります。今までの遠征ではできなかったので、最後なのでなんでもありということで、盛り上げることも大事だと思います。

水本 濱中がやるの?

濱中 いや、分からんよ(笑)。それは当日のお楽しみだよ。

山根 明かさない的なやつね。

笠井 それは楽しみにしておくわ(笑)。

濱中 僕が打席に立てば勝手にみんな盛り上がるので、そこを意識しながら肝心なところで一本打つというのが求められていると思います。後はチームの雰囲気の面で、苦しい時に声を出したり、盛り上がる時は勝手に盛り上がるのでそれをさらに盛り上げる声だとか。後はハッピーさというところで、笠井と一緒にチームを盛り上げていきたいなと。インカレはやっぱり笑って終わりたいので。四年間やってきてよかったなと思えるような大会にしたいので、やれることを一個ずつやり切りたいと思います。

山根 自分自身としてはとにかくバッティングかなと思います。塩沼(泰成、スポ3=福島・安積)も多分復帰してくれますし、松木が先発するかによって、自分が指名打者か代打かというのはその時になって分かりますが、チャンスでの一本というのは自分でも意識して取り組んでいます。また、自分が打席に入ると増形(俊輔、社3=千葉敬愛)を中心に勝手に盛り上がってくれるというのがあるので、自分から盛り上げるというのは基本的にないんですけど、勝手に周りがやってくれるのでそういう部分も自分の役割なのかなと勝手に思っています。

水本 自分はクリーンアップとしてチームの勝利に貢献できるように得点を挙げるということが一番の役割だと思います。後はハッピーさという面では自分はネタをやるような人間ではないのでこいつらに任せて、そっちはサポート役に回らせていただきます。

笠井 お前もやれや(笑)。

濱中 実はやりたがりっていうのは知っているからね。

山根 言っていることとやっていることが全然ね。

笠井 俺らが盛り上がってきたら乗ってくるんで。

――最後に、インカレに向けて意気込みをお願いします

水本 一日、一分一秒を大切に、練習以外の生活習慣も細かいところまで気を使って、体調だけは崩さないように(笑)。仲間を信じて、感謝の気持ちをしっかり示せるように頑張りたいと思います。

山根 ずっと野球やソフトボールを続けてきて13、4年くらいになるんですけど、本気で競技に打ち込めるのもあと20日もないと考えると、本当に一日一日を無駄にできないというのがあります。一つ一つの練習を大事に取り組んで、インカレで悔いのないようなプレーができるように準備をしていきたいです。

濱中 この仲間とソフトボールできるのもあと2週間しかないので、あと2週間とインカレを全て笑顔で終われるように、自分としても悔いのないように一日一日を過ごしていきたいです。後は、人間科学部の後輩たちと冬に4人で練習した日もあって。萩野谷(知大、人3=茨城・水戸一)、前多、(悠登、人2=東京・小山台)、実重(僚右、人2=島根・高卒認定)ですね。そういう思い入れの強い仲間たちなので、同期も含めてみんなで笑顔で終われるように一日一日を大切に過ごしていきたいというのと、優勝して終わりたいなと思います。

笠井 僕も10年間くらいソフトボールをしてきて、あとソフトボールできるのも2週間だけなので、ケガなく一日一日丁寧にプレーしていきたいなと思っています。その中で、プレーしてきた中で積み重ねた人間関係や仲間があるので、その人たちと一緒に優勝を味わえてこそ本当の喜びだと思っています。その人たちだったり、遠くから支えてくれた家族だったり、地元で応援してくれている元チームメートだったり…。

濱中 出た出た、恩返しキャラ。

水本 恩返しでしょ、どうせ。

笠井 そういう人たちにインカレ優勝という結果で、『恩返し』できるように戦っていきたいと思います。

一同 (笑)。

――ありがとうございました!

(取材・編集 中丸卓己、久野映)

◆笠井新一朗(かさい・しんいちろう)(※写真 右)

1994年(平6)6月3日生まれのA型。身長171.5センチ、体重64キロ。徳島・城東高出身。スポーツ科学部4年。外野手。濱中選手を積極的にいじりつつ、チームのことについて熱く語ってくださった笠井選手。副将としても金子主将を一番近くで支えてきました。最後の大舞台でどのようにチームをまとめてくれるのか、そしてどんな『濱中いじり』がさく裂するのか注目です!

◆濱中勇輝(はまなか・ゆうき)(※写真 下中央)

1993年(平5)5月1日生まれのO型。身長173センチ、体重62キロ。神奈川・桐光学園高出身。人間科学部4年。外野手。チームが盛り上がるためにはもはや欠かせない存在となった濱中選手。打席に立った時のチームの盛り上がりは、当会記者も何度も試合会場で体感しました。インカレでも、その洗練されたキャラで流れを呼び込んでくれるでしょう!

◆山根航(やまね・わたる)(※写真 中央)

1993年(平5)7月20日生まれのA型。身長167センチ、体重56キロ。東京・国立高出身。政治経済学部4年。外野手。四年間ワセダでソフトボールに打ち込んだことで、ワセダへの愛校心も芽生えてきたという山根選手。対談中は的確なつっこみでリズムを整えてくださいました。打線の中では指名打者、代打として、大一番での一打に期待がかかります!

◆水本将文(みずもと・まさふみ)(※写真 左)

1994年(平6)6月7日生まれのA型。身長172センチ、体重68キロ。長崎・佐世保西高出身。人間科学部4年。外野手。周囲の盛り上がりに乗っていくタイプだと自身を分析した水本選手。しかし周りからは「実はやりたがり」だと評されていました。最後のインカレでは水本選手自身から盛り上げてくれる姿が見たいですね!