【連載】インカレ直前特集『誇り』第2回・男子部 松木俊皓×豊田誉彦×吉田尚央

男子ソフトボール

まさかの2回戦で散った東日本大学選手権(東日本)から3週間。間もなく開幕する全日本学生選手権(インカレ)での3連覇だけは絶対に譲れない。ワールドシリーズに出場し2位の成績を収めたアメリカ遠征を終え、この1年間の集大成となる大一番を前にチームの士気は高まっている。そこで松木俊皓(スポ2=宮崎・日向)、豊田誉彦(スポ1=兵庫・滝川学園)、吉田尚央(人1=長崎・佐世保西)の3投手にお話をうかがった。チームを支える若き投手陣の素顔に迫る。

※この取材は8月23日に行われたものです。

「見つけた課題」

照れながらも質問に答える豊田

――東日本を振り返って

松木 自分たちピッチャーが抑えなくてはいけないところで抑えられていないというか、ピンチのときにピンチのまま打たれてしまって。そこをしっかり抑えられれば自分たちのチャンスが来ると思うので、そこが課題だと思いました。

吉田 この前の東日本は全然投げていなくて、負けた次の試合で本当は投げる予定でした。でも結果として前の試合で負けてしまって投げられていないので。負けそうな試合でも次の試合のことを考えて温存ということを主将など4年生の先輩は考えて投げさせなかったということだと思うんですけど、それはつまり1試合しか投げられないと考えられていたから投げなかったのかなと思います。実際ピッチャーが三人いるので1試合しかほとんど投げないのですが。だから一人で2試合放れるようになるのが、あまり時間はないんですけど、インカレまでの課題かなと思います。

豊田 結局負けた試合も先発させてもらったんですけど、先発させてもらうということは「お前なら抑えられるだろう」と主将を中心に先輩たちが考えたから任されたと思うんですが、その中で序盤に点を取られて負けてしまったので、与えられたチャンスを生かしてしっかりと抑えることが自分のインカレでの目標です。

――アメリカ遠征はいかがでしたか

松木 外国人のパワー、大きさを感じました。もっと頭を使っていれば勝てたのかなと思います。

――「頭を使う」というのは配球についてのことですか

松木 配球もそうですし、基本的に外国人は振ってくるのでそれに対し自分がどうかわすか、チェンジアップだったりかわし方がアメリカ遠征で学んだことですね。2位でしたがそこをもっとやれば1位になれたと思います。

――吉田選手はいかがですか

吉田 7月の終わりにワセダとしてではなく19歳以下の日本代表としてカナダに行かせていただいて、その大会で少しですが投げさせてもらった時の経験があってから、このアメリカ遠征というかたちになりました。外国人の方の日本人との大きな違いは松木さんが言われたようにパワーだと思っていました。組み立てとしてはコースだけしっかり投げれば打たれないとわかっていて、それなのに負けてしまった試合ではコースにちゃんと投げられていなかったというのがあります。日本人と外国人の抑え方は全くもって違うので、そういうところの対応力としてピッチングスタイルを変えるということができなかったのかなと思っています。ピッチャーとしてはいつも三人で投げているんですけど、アメリカでは(ワセダが)2つのチームに分かれてしまったのでピッチャーが二人しかいなくて、1日2試合の日には絶対自分が2試合近く投げるという形になってしまって、そういうところでしっかり試合を作ることができるようになったかなと思いました。

――豊田選手はいかがですか

豊田 二人がおっしゃったように(外国人の)一番の日本人との違いはパワーだというのが印象的でした。その中で自分なりに頑張ったんですけどバットに当てられるとそのパワーで芯を外していても外野まで持っていかれる。普段の日本人相手なら内野ゴロとかになったりするんですけど、それが全部外野まで飛んでいって、結局はヒットになってそれが重なって点を取られるというのが自分の中で残っています。そこで空振りを取れるようにするのが自分のいまの目標です。空振りが取れなかったからこそ点を取られたと思います。

――アメリカでの観光などの思い出はありますか

松木 何したっけ、観光。

吉田 大学行きました。

松木 大学も5分くらいしか見られなかったんですけど。シカゴ大学のソフトボール場を見ました。すごく環境が良かったです。芝も良いし土も良いし。施設で言えばシカゴ大学のソフトボール場はすごかったですね。あとはサンフランシスコは寒かったです。

――野球観戦もされたと聞きましたが

松木 しました。カブスとどこだっけ。

吉田 ブルワーズですね。

松木 和田投手(毅、平15人卒=現米大リーグ・シカゴ=カブス)が投げていました。

吉田 自分は日本でプロ野球を見に行ったことがなくて、初めて野球を見に行ったのがこのメジャーの試合で。日本との違いはよくわからないんですけど、確実に違うなと思ったのがスタジアムの外のビルの屋上にスタンドができていたんです。

松木 カフェみたいになっているんです。あと選手とファンとの距離が近いです。日本のように観客を守るフェンスがないんです。ブルペンで和田投手が投げているのを見たんですけど、それにファンが普通に話しかけていて日本とは違って海外は自由なんだなって思いました。

――豊田選手は何か印象的なことはありましたか

豊田 自分はバスの運転手さんです。とてもプラス思考な方で、自分たちが試合に勝ったらすごく喜んでくれるんですけど、負けても「いやいや、すごく良かったよ。自分もとても楽しませてもらったよ」って言ってくれたんです。本当に良い方だったなと印象的でした。

――アメリカでの食事はいかがでしたか

松木 毎日朝はパンでした。米はなかったですね。

吉田 あと甘さしかないです。

松木 自分は朝自分で作れるワッフルを食べていました。生地を取って焼くだけなんですけど(笑)。

――印象的な食べ物はありましたか

吉田 ピザが大きかったですね。

松木 シカゴはピザが有名らしいんです。普通に日本のLLとかありました。それをみんなで食べるんです。生地は薄いんですけど、具が多くて厚みがすごかったです。俺はけっこう美味しかったけど。

吉田 全然食べられなかったです。豊田もすごくペース遅かったです(笑)。あとは飲み物が。

松木 飲み物は本当にでかい(笑)。

吉田 Mが日本のLLくらいでした。ジョッキで水も出てきました(笑)。

――東日本からアメリカ遠征までハードスケジュールだったと思いますが

松木 時差ボケがあって眠いというのはありましたね。とりあえずアメリカに着いたら(現地の)10時までは寝ないように言われました。そこからだんだん慣らしていきました。翌日の練習は少し眠かったですが何とかなりました。

吉田 日本に帰ってきてからも10時間くらい寝たら治りました。

松木 逆に日本に帰ってきて生活がすごく規則正しくなりました(笑)。7時から8時くらいには目が覚めました。

吉田 めっちゃ早起きです(笑)。自分も5時起きとかですね。

――きのうはオフでしたか

松木 いえ、練習しました。時差ボケが最大の敵だと言われて。一日寝るくらいなら練習しようって。軽めですけど。

――アメリカ遠征の疲れは残っていませんか

吉田 それほど残っていないですね。観光はオフだったので。大会が終わって2日間オフで、移動も含めて3日間はオフでしたね。

「真のエースに」

U-19日本代表に選ばれた吉田

――吉田選手は19歳以下日本代表に選出されカナダ遠征もありました。何か収穫はありましたか

吉田 カナダに行かせていただいてピッチャーは5人いたんですけど、そのうち実業団で活躍されている岡崎健斗さん(デンソー)がエースとして参加されていて、ほとんどの試合を投げていました。なので、あまり自分は投げていないのですが、見ていて19歳以下ですが世界のレベルを知ることもできました。今回のアメリカ遠征より19歳以下の大会の方がピッチャーのレベルとしては上だったので、アメリカ遠征では自分がトップレベルになれるように頑張ろうと思っていました。カナダ遠征では外国人と初めての対戦で、パワーで圧倒されることが多かったので、どうすれば抑えられるのかということをピッチングコーチの方と話して1球1球調整していって考えていました。そこでなんとなくつかめたことがアメリカ遠征では役に立ったかなと思います。

――松木選手は昨年の秋リーグからエースとして投げてこられましたが、この1年で何か学んだことはありますか

松木 きょねん4年生だったのエースピッチャーと比べると自分は全然まだまだです。エースにはなりきれていない部分があるので。このインカレで自分の力を最大限に出して、エースになれるように優勝して、いまの4年生を胴上げして最後に笑えれば良いかなと思います。ピッチングで学んだことはバッターとの間合いですかね。リーグ戦上位のチームとインカレの準決勝、決勝では当たると思うので、リーグ戦などでそういうバッターのことを知れました。そこで知ったことをインカレで使えればなと思います。このインカレでエースになります!

――豊田選手は東日本での先発がありましたが課題と収穫はありましたか

豊田 自分が思い切り投げて打たれた球だったらまだ良いんですけど、丁寧に投げ過ぎて(ストライクを)入れにいって打たれて点を取られたことが東日本での思い残しなので、思い切り投げてコースに投げられることが必要だとこの東日本で学びました。

「勝てるピッチングを」

ジェスチャーを交えて話す松木

――投手陣の皆さんは仲が良いですか

松木 良いんじゃない?

吉田 良いと思います。

松木 年が近いので自分たちの高校の話もできるし。高校の時もけっこう試合やってましたし、みんな近い存在ですね。自分がインターハイ行った時に吉田が優勝ピッチャーでした。

吉田 豊田を倒して。

豊田 そう。倒された。

松木 でも豊田は完全試合したんですよ。

――では高校時代からお互いのことは知っていたのですね

松木 話したことはないけど知っていましたね。

――ピッチングへのこだわりはありますか

松木 自分はただただバッターと勝負するということです。でも周りも見えるようになりました。

吉田 それは自分も思いますよ。だいぶ松木さん変わりました。言うようになりました。

松木 いままで黙々と投げる感じだったんですけど、東日本とかアメリカ遠征に行ってから1回落ち着いて後ろを向いて守備とかに声をかけたりしています。一人じゃない、バックもいるんだって。ちょっと臭いですけど(笑)。みんなもいるしと思って投げるようになりました。

――吉田選手、豊田選手はいかがですか

豊田 自分はよく打たれるので、よく打たれた中で守備が良いプレーをしてくれたらチーム全体も盛り上がりますけど、自分はそれ以上に喜ぶというのがあります。

吉田 自分はあまりきつい顔をしたくないというのがあります。きつい顔をしそうになったらいつもリラックスできるようにしていたんです。そのために舌を出していたんですけど、それをこの前先生に怒られてしまって。まだ新しい方法は思いついていませんが、リラックスする方法を見つけることが試合で意識していることですね。

――インカレでの目標をお願いします

松木 エースのピッチングをします。

豊田 点を取られないようにします。

吉田 投げたら点を取られるのは仕方ないですけど、勝てるピッチングをします。

――ありがとうございました!

(取材・編集 土屋佳織、藤川友実子)

「これしか考えられない」と吉村正監督(昭44教卒=京都・平安)の言葉を書いていただきました

◆松木俊皓(スポ2=宮崎・日向)(まつき・としひろ)(※写真中央)

1994(平6)年8月25日生まれ。171センチ72キロ。宮崎・日向高出身。スポーツ科学部2年。投手。取材中、後輩の豊田選手に「面白く話して」と無茶ぶりをしたり、アメリカ遠征での飛行機内で隣の人にちょっかいを出したりといたずら好きの一面を見せてくれた松木選手。そのキャラクターが後輩投手たちとの仲の良さの秘訣かもしれません。

◆豊田誉彦(とよた・もとよし)(※写真左)

1995(平7)年5月27日生まれ。166センチ55キロ。兵庫・滝川学園高出身。スポーツ科学部1年。投手。アメリカへ向かう長時間の飛行機ではひたすら寝て過ごしたという豊田選手。実は松木選手や吉田選手に寝ているところを写真に撮られていたそうですが「全然気がつかなかった(笑)」とのこと。マイペースで人の良い性格が見て取れました。

◆吉田尚央(よしだ・なおちか)(※写真右)

1995(平7)年7月16日生まれ。180センチ76キロ。長崎・佐世保西高出身。人間科学部1年。投手。最後にインカレでの目標を聞かれ、一言で目標を語った松木選手と豊田選手の流れを受け、「一言とか苦手なんだよな(笑)。」と苦笑しながらも答えてくれた吉田投手。どの質問にも丁寧に応じてくださる姿が印象的でした。