東日本大学選手権(東日本)5連覇を成し遂げてから1ヶ月。早大ソフトボール部史上初の全日本大学選手権(インカレ)連覇へ向上心は止まらない。再び日本一へ――。1年間先頭でチームを引っ張り続けてきた北村和也主将(人4=長野・佐久長聖)と粟田俊哉(スポ4=徳島・城東)にインカレを前にした今の思いを聞いた。
「当たり前のことを当たり前に」
――東日本5連覇おめでとうございます。大会を振り返っていかがですか
北村 まず先輩方が連覇でつないでくれたたすきを自分たちも次の代へつなぐことができて、すごくうれしいです。
粟田 4連覇と言う流れで来たんですけど、5連覇できてこの伝統をどんどんつなげていってほしいなと思います。
――全試合で逆転勝ちと驚異的な粘り強さが目立ちました
北村 自分たちが入学してからのワセダと言うのは、いつも初回に大量点を取って試合を決めるチームだったのですが、今のチームは序盤に点が取りたいんですけど取れなくて、それでも試合の終盤まで守備で粘って少ないチャンスをものにできる負けないチームになったと思います。
粟田 その代々の戦い方とは少し違った部分が出てしまったんですけど、こうなると全部逆転勝ちだったのでしんどいなと言うのが正直な感想でした。なのでやはりもう少し先行逃げ切りできるようにやっていきたいなと思います。
――打者はそれぞれの持つ役割を果たせていますね
北村 小技を使って塁に出る選手とつくったチャンスを得点につなげる選手に分かれているんですけど、その役割がおのおの果たせた時には点が取れているので、その役割と言うのはインカレになっても大事になってくると思います。
粟田 その役割分担と言うのをはっきりできるようになってきたので、あとはその役目をそれぞれがしっかり果たしてお互い支えあってやっていくことができれば、点は取れると思っています。
――東日本ではそれまでの打順の組み方から改めましたが
北村 まず全総予選までは4、8番にキーマンを置いてそこで点を取るという打順を組んでいた。でもチャンスが2回だけというのは少ないと思って、なおかつ打力のある選手がことしのチームは2人だけではないので、それを考えたうえで練習試合などで3、6、9番に打てる選手を置いたりして試行錯誤しました。チャンスをつくる選手と打てる選手のバランスを考えた結果、東日本のように3、4、5、7、9番に打てる選手を置いて打線がつながるように組みました。
――打順組み替えの成果はいかがでしたか
北村 チャンスを何度もつくれてはいるので、打順としては良いと思いますし、あとは誰がどの打順に入るのか意識の問題だと思います。なので打順の並びとしては今の方が良いですね。
粟田 もともと4、8番のダブルクリーンナップ制でやっていたのは毎回チャンスをつくるために代々やっていたものでした。でもそれだけではなくてチャンスを毎回つくってしっかり得点できるようにしたいと思って3つクリーンナップをつくって点を取るようにしようと言ってやってる中で、やはりさっきも言いましたが例年より打てる人が多いので、しっかり得点できるように走者を返せる人を増やして、小技で塁に出る人もしっかり決めて、チャンスで自信を持って代打に送れる人もいるので、毎回チャンスを作るためにも今の打順になりました。
――大嶋翼(スポ2=群馬・新島学園)選手や立木文成(政経4=長崎・佐世保西)選手など新戦力の台頭もありました
北村 立木は元々打撃センスがあって、ようやく成果が出てきたなという感じです。大嶋はチームで一番練習しているんじゃないかと思います。その努力が春の時点で結果となって表れて今となってはチームに欠かせない存在になりました。他にも代打で出る選手は何人もいますし代走であったり、大事な場面で途中から出せる選手がきょねんよりは多いですね。
――打線が成長した要因はありますか
粟田 まあ当たり前のことを当たり前に、自分たちがやろうとしていることをしっかりやっていこうと言うのを徹底した結果それぞれの意識も変わったと思いますし、やることがはっきりしたのかなと思います。
「北村を勝たしてやろう」
巧みな小技で相手を揺さぶる粟田
――ことしのチームの目標は全総、インカレでの優勝でしたが、全総にはあと一歩で届きませんでした。予選を振り返っていかがですか
北村 東京予選ではほとんどの試合にコールドスコアで勝ってきたのですが、1試合だけ2-0とロースコアの社会人との試合がありました。関東予選で負けてしまった要因として考えられるのはそこでうまく点が取れていなかった課題を関東予選までの期間で克服できていなかったことだと思います。関東予選に負けてしまったのは仕方のないことなので、負けを引きずらないで得た反省を生かして、極端に役割を分けたりそういう練習をしてきたので東日本で結果が出てくれたんだと思います。
――やはり社会人と戦うことの違いはありましたか
粟田 ありましたね。自分たちの流れでなかなかプレーできなかったです。大学生が相手だと相手も盛り上がってくれるので、その流れで自分たちも盛り上げてできてた部分もあったと思うんですけど、社会人との3試合を通して自分のたちの流れに持っていくことができなかったなと思います。全総の出場はならなかったのですが、大学生が相手でも毎試合自分たちの流れでプレーをできるようにやっていかないといけないな、と感じました。
――学生相手には秋季リーグ戦の日体大戦の1敗のみ。勝ち方を確立できているのではないでしょうか
粟田 秋からほとんどは東日本のチームと戦ってきて、やはり慣れというか相手の投手について分かっていた部分もありました。その中で東日本の初戦では知らない投手相手に苦戦しましたし、インカレの組み合わせを見ても西日本のチームばかりと当たりそうなので、西日本(大学選手権)ベスト4のチームのうち3チームと準決勝までにあたる可能性があると考えると慣れていない上に手ごわい相手になってくるので、自分たちとしてもしっかり対策を練って、今まで同様に勝てるイメージをつくって臨む必要があると考えています。
――初めて対戦する投手に対しての対策はありますか
北村 ビデオとかはあるんですけど、やはり映像で見たものと実際に打席に立った時とでは違ってくるので、初回でその投手の特徴をつかんで試合の中で対策を取っていけば得点できると考えています。
――主将、副将としての1年間、を振り返って今の時点ではいかがですか
北村 なかなか長かったなあという感じです。チーム全員が「チームを強くしたい」とか「勝ちたい」という思いがすごく強いチームで、いろいろ考えとかを自分に伝えてきてくれたので、それをまとめるというのも大変でしたが、助けてもらっているなという思いも受けながらやってきました。特に副将2人(粟田、古川恵士)に助けてもらってきたという感じがあって、最後インカレでは支えてきてもらった分プレーヤーとして結果を出して連覇をして後輩に3連覇の夢をつないであげたいと思います。
粟田 北村がそんなに引っ張っていく主将ではなくて、その中で自分と古川で勝手なことを言って自由にさせてもらっていろいろ厳しい言葉もかけたんですが、それでもずっと主将としてやってきてくれているので、その分はすごく感謝していますし、そういう関係性でやれたのは今となっては良かったのかなと思います。そして主将、副将としてやってきた中で、自分たちの目標は全総とインカレでの優勝で、でも全総は出場することすらできなかった。そこは自分たちの責任でみんなに申し訳ないなと感じているので、その分インカレ優勝への思いと言うのはさらに強くなってきましたし、そこだけは最低限達成して次の代にバトンタッチしたいです。
――以前北村さんは「副将と話し合って進んでいく」とおっしゃっていました。3人で進めてきたという感じですか
粟田 そうですね、北村を立てながら(笑)。ほとんどは北村でサポートといった感じです。
北村 3人でやってきたという感じですね。僕も結構ミスとか間違えたりすることも多かったのでその都度2人は修正したり導いてくれたので、3人でやってきたという感じですね。
――粟田さんから見た北村主将はいかがですか
粟田 本当に途中までは何でこいつにしたんやろて感じで(笑)。そういう部分も正直ありましたが、逆にそれが良かったのかなと思います。それで逆に「北村を勝たしてやろう」という雰囲気になってきたので。そういう主将もありなのかなと思います。こいつを最後までみんなで支えていければなと思います。
「最後までレベルアップしたい」
三塁手として守備でも貢献度は高い北村主将
――4年生は仲が良いですか
北村 この学年はなかなかキャラの濃い代だと思います(笑)。良いバランスですね。なれ合いとかではなく言いたいことみんな言ってくれるのですごく助かってます。
粟田 いつもベンチで僕らの学年は着替えているんですが、いつもあほなことやって毎日笑ってます(笑)。
――4年間を振り返っていかがですか
北村 最初の3年間と最後の1年間は全く立場が違うので。4年生で主将と言う立場に立たせてもらって、ようやくチームを作る大変さと言うものを知りました。チームを強くしたい気持ちが強かったので、下級生のころから幹部の人にいろいろ言いたいことも言ってきたのですが、いざチームを作るとなってみんなの話を聞かなければいけない立場になった時、そういう意見はありがたいのですが、まとめるのも大変でまた自分がこうしたいという意志も伝えて浸透させることも簡単ではなくて、筋が通っていなかったり納得できないことに関しては簡単には受け入れてくれないですし、本当に強い信念とかチームに対する思いがなかったら良いチームは作って行けないなと、最終学年になって感じました。
粟田 全国制覇を狙うようなチームでやってきたことがなかったので、ここに入って最初は「やって行けるのかな」という思いもありましたが、2年間試合に出ることができなくてきょねんも最後の最後でようやくスタメンの座を勝ち取って、ことしと言う流れで来たので全国大会で優勝できたという経験は自分の人生の中で一番大きかったです。色んな競技レベルの人がこの部活にいるので、そういった中で自分みたいな人にもそういう経験(全国制覇)をさせてあげたいなと思いますし、これからもどんな人が来てもこういうチームをつくれるようなワセダとしてやっていってほしいと4年間やってきて感じます。
――最も印象に残ったことや良かったは何ですか
北村 まあそれはきょねんのインカレ優勝は一番ですね。
粟田 うんそうやね。同じく。良かったことはそれ。で、きょねんインカレ優勝しましたが、2年前は東日本に優勝しておきながら初戦で大差で負けたというのがすごく印象深くて。その中できょねんは両方に優勝できたということでさらに印象深いものになりました。
――大嶋翼選手はチームのムードメーカー的存在ですね
北村 練習の時から歌ってますね。
粟田 そこは自由ですね。いつもそんな感じです。
北村 いいと思う。
粟田 この部に来た時からあんな感じでしたね。
北村 いろんな形でチームに活気を与えてくれています。
――遠征のバスの雰囲気はいかがですか
北村 最初はみんな騒いでいて、途中から全員寝だして、起きたらまた騒ぎます(笑)。
粟田 試合後のバスは汗のにおいが強い人がいて、そのせいで寝られないなんてこともありますが…(笑)。
――ワセダは基本的には学生主体で練習などを行っていますがその点は
北村 練習のほとんどは選手だけでやっているので、自分たちのやりたいことはできます。なので試合になって先生がベンチに入られると、今までは結構先生が独断で選手の起用とかをされていたのですが、東日本では結構自分たちの意見を聞いてくれて、交代のタイミングなど先生との意思疎通を通じて、考えが自分たちと一致していることが多かったので、先生がいらっしゃると本当に頼りになるというかやりやすさがあります。
粟田 自分は中学、高校と監督がいなく、もともとこの形でやってきたのでその延長線上でやらせてもらっています。何より、すばらしい偉大な先生がいらっしゃるのでいろいろ教えてもらいながらやっています。
北村 高校が軍隊みたいな野球部でやっていたので、まず自分の意見とかもっとこうした方がいいというような考えがなかなか通らなかったですし、自分の考えや主張がチームの運営に反映される体制ができているというのはワセダの魅力だと感じました。
――今現在のチーム状況はいかがですか
粟田 投手はやはり安定していて、打線はまだインカレへ向けて(調子を)上げていかなければいけないなと思います。
北村 最後までレベルアップ、(大阪に)行ってからもレベルアップ、決勝まで強くなっていきたいです。
――では最重要の課題は打撃ということですか
北村 そうですね。今までやってきた役割分担、個々人の攻撃の見直しの徹底ですね。必ずワセダを知っているチームは対策を取ってくるので、それをさらに上回っていくような攻撃をできるようにこちらも相手の対策を取っていきたいと思います。
――インカレ優勝のかぎを握るものは何だと思いますか
北村 4年生の活躍ですね。試合に出る4年生の活躍は必須です。
粟田 いろんなチーム相手に自分たちの雰囲気でプレーできるように、紺碧隊(ベンチ外の選手で結成された声援を送るチーム)が応援してくれたりしますし、自分たちのやりたいようにすることが必要ではないかと思います。
――個人としてのインカレでの目標をお願いします
北村 うーん…。
粟田 お前一番簡単やろ!悩むことではないやろ(笑)。
北村 打たなければいけない場面で打つことです。
粟田 そのチャンスメークをしっかりしたいです。
――インカレへ向けて意気込みを
北村 連覇します!
粟田 監督からも準備が大切だと1年間言われ続けてきたので、あと少しの期間ですが準備をしっかりして連覇できるようにやって行きたいと思います。
北村 インカレが終わるまで最後まで成長して、粘り強く一球一球、一つ一つのプレーをして連覇します!
――ありがとうございました!
(取材・編集 盛岡信太郎)
インカレでの連覇を誓った北村主将と粟田
◆北村和也(きたむら・かずや)
長野・佐久長聖高出身。人間科学部4年。内野手。主将という立場ながらも仲間からよくいじられるという北村選手。それでも「チームが一つになれるなら構わない」と前向きに答えてくれました。インカレではいじられながらもプレーでチームを勝利へ導く北村選手に注目です!
◆粟田俊哉(あわた・としや)
徳島・城東高出身。スポーツ科学部4年。内野手。同じく副将の古川恵士選手(人4=長崎・佐世保西)から「粟田は北村のためならどんな形でも出塁しようとする」といった評価を受けた粟田選手。インカレではその強い絆で何度もワセダにチャンスをもたらします!