【連載】『Last Summer~頂へ』【第3回】古川恵士×西村直晟

男子ソフトボール

 全日本大学選手権(インカレ)連覇達成のかぎを握るのはこの二人だ!東日本選手権(東日本)で優勝を引き寄せる好投を見せた西村直晟(スポ4=大阪・清風南海)と、怪我から復活し闘志を燃やす古川恵士(人4=長崎・佐世保西)。大学日本一の座をつかむにはこの二人の快投は欠かせない。最後となる大舞台を目前に控えるいま、二人は何を思うのか。栄光のマウンドに登るWエースを直撃した。

「まだまだ成長できる」

――東日本5連覇おめでとうございます。改めて大会を振り返ってどうですか

西村 無事に連覇を積み重ねられたというのが1番ですね。1つの目標を達成できました。でも東日本が最終目標ではなかったので、出た課題をこれからつぶしていけたらなと思います。

古川 大会前にけがで投げられないことはわかっていました。打者として出場して、チャンスで打てなかったんですが、チームが優勝できたことが何より良かったです。

――打線の好調が光りました

西村 先制点を許してしまったのが反省点です。終盤ここぞというところで打ってくれる打線の心強さを感じました。

――投打ともに粘りのあるチームに成長しているように見えますが、お二人から見たチームは

古川 正直粘り強さといった面では東日本を通して感じることができたんですが、ワセダというのはもっともっと打って勝てるチームだと思うんです。いつも先制点を取って楽に勝つという勝ち方をしてきたので、まだまだインカレまで成長できるのではないかと思います。

西村 古川も言ったように、東日本はいつもと違った試合展開だったと思います。良い試合ができたなという印象はあるんですが、もっと楽に勝ちたかったですね。

――北村主将が西村さんの投球について「ピンチの時に三振やフライで打ち取れて意図する投球ができている」と言っていましたが

西村 特に東日本はけがしていたということもあり、球数を少なくしようと心がけながら勝負していました。ピンチの時に三振を狙うようにしていたらリズムがつくれたので、そういう風に見て取れたんですかね。

――全日本総合選手権(全総)は惜しくも出場を逃してしまいましたが

西村 正直かなり悔しいです。古川が投げられない状況だったので自分がどうしても古川の分まで頑張らないといけないと思いました。勝てる試合を落としてしまって全総に行けなかったという悔しさがここに来てこみあがって来て、いま自分自身の調子が上がっているのだと思います。

――社会人と戦ったわけですが印象は

西村 社会人と戦うのはまず空気や雰囲気が違っていて、いつもの自分たちの力が出せませんでした。打つ方はもちろん、守備もいつもとリズムが違ってしまい、思うようなソフトボールができないまま終わってしまいました。

――インカレに向けいま取り組んでいることは

古川 個人的にはやっと怪我が治って投げられる状態になったので、インカレでマックスの投球ができるように投げ込みをしています。残りの1、2週間で球数増やしてやっていきたいです。

西村 トーナメント制で絶対負けられない戦いなんですが、疲労のことも考えながら無駄な球を減らすようにしたいです。短い守備の時間で勢いをつけられることを目標にやっています。

――大会後にはオフもあったそうですが

古川 3日間オフがあったんですが、最終日は部員全員で飯能に行ってバーベキューをしました。最初の2日は疲れてだらだらしていました(笑)。

西村 自分も同じ感じですね。

――バーベキューは誰かが企画するんですか

古川 4年生で「やるぞ!」という雰囲気になって、下級生は嫌だとは言わせずに来させました(笑)。来れる人は全員来させました。

――1年生もそろそろ溶け込んできましたか

古川 そうですね。全員で練習しているときにはお互い声をかけ合ってますね。いじられたりもしていますし、大分溶け込んでいると思います。

――特に面白いなと思う1年生は

古川・西村 山根(航、政経1=東京・国立)ですかね(笑)。

――どんな面が面白いのですか

西村 全て。

一同 (笑)

古川 とても真面目だからこそ、みんなでいじると面白いんです。

「雰囲気はとてもいい」

投打の軸として期待がかかる古川

――古川さんは、剥離骨折から打者として東日本で復帰しました。投手としては間に合いそうですか

古川 もう完璧です。間に合います!

――副将としての一年間でもありましたが

古川 最初、自分が副将というのは、似合わないと思っていました。実際なったときには何をしたらいいかあまりわからなかったんですが、投手としても打者としても、自分が軸にならなくてはという思いはありました。副将としてプレーでみんなを引っ張れるように意識していましたね。運営的な面では、粟田(俊哉、スポ4=徳島・城東)の方がしっかりしているので、頼っていた部分もありました(笑)。

――では部員をまとめてきた北村和也主将(人4=長野・佐久長聖)は、お二人から見てどんな方でしょうか

古川 先生にも言われていたんですけど、『ざる』でしたね(笑)何をするにしても、先生から怒られていて、さらに先生へのおどおどした態度を見て、僕や粟田も北村に怒るという(笑)なんか一年間ずっと文句言っていた気がします。

――逆に北村主将から部員への叱咤(しった)とかありませんでしたか

古川 なんせ性格が優しいもので(笑)。そういうことはなかったですね。

――西村さんはいかがですか

西村 まあとにかくよく伝わってくるのは勝ちたいという気持ちですね。いろんな人に文句を言われながらも、優しい性格なので不満も言わずに、今も必死に頑張っていると思います。今も発展途上というか、まだだいぶ下の方だと思うんですけど(笑)、頑張っていると思います。

――捕手は沓澤さん(翔、スポ3=大阪・関西大倉)に固定されていますお二人から見て沓澤さんはどんな印象ですか

古川 きょねん、平野先輩(修太、政経5=長崎・佐世保西)というチームの要になれる人が捕手をやっていたので、ことし正直沓澤には不安がありました。最初は沓澤も試合でも慌ててばかりで、ちょっと大丈夫かなという感じだったんですけど、一年間自分も沓澤にはきつく当たったりして、やっと通用するようになったんじゃないかなと思います。

西村 やっぱりこれまでは経験が少なかったので、試合中におどおどしたり、走者が出たときにはそちらばかり気にして投球に集中できてないときとかあったんですけど。でも徐々に慣れて、今ではある程度信頼できる捕手に成長していて、気持ちよく投げられるようになってきたと思います。まだ改善すべきところもありますが、もっと頑張れるというのが伝わってくるので、こっちも支えていきたいなと思いますね。

――いよいよ最後の大会を前に練習していて感慨深くなったりはしませんか

古川 あんまりならないですね(笑)

西村 まだならない(笑)

古川 最後の練習とかになったらそう感じるのかもしれないですけど、わかんないですね。

――同期への思いを教えてください

西村 自分たちは10人というなかなか人数の多い学年で、その分いろんな性格の人がいて、個性豊かというか、バラバラというか(笑)うそばかり言ってふざけている人もいたりして、まとまりにはかけるんですけど(笑)でもみんな必死になるときはちゃんと必死になって、そういうときはすごくいい集まりになると感じています。きょねんインカレ優勝したのだからことしも、という思いが全員にあると思います。それをみんなが認識できていることがこの学年の強みだと思うので、インカレに向けて、ここからもっと絆が強くなるのではないかなと思います。

古川 入部したときは仲が良くて、プライベートでももっとわいわいしてたんですけど、大人になるにつれそれぞれ別れていきましたね(笑)でもソフトボールになると、みんな仲良く一生懸命やれていると思うので、この代でインカレ優勝できればいいなと思います。

西村 雰囲気はとてもいいですよ。

古川 ただ、1人顔でかいやつがいて。未だに、顔でかいのに自分のことかっこいいと思っているので、その人がもっと自分を理解して、顔のでかさに気づいてもらえば、チームももっとやりやすくなるのかなと思います。

――誰のことでしょうか(笑)

西村・古川 北野(雄也、スポ4=大阪・清風南海)ですね(笑)

古川 見たらすぐにわかりますよ!

「投手力で勝つ」

ピンチで粘り強い投球が光る西村

――卒業後はソフトボールを続けますか

古川 僕は続ける予定です。

西村 今めちゃくちゃ迷ってます。

――4年間を通して成長した部分は

古川 まず、技術の面には、投手としても打者としても、あまり活躍できなかった高校の頃に比べて、きょねんのインカレ優勝なども経て大きく成長できたと思います。あと、入部当初は、先輩とけんかしたり、結構生意気だったんですけど(笑)、やっぱり副将という立場になって、自分のことばかりじゃなくて、チーム全体を見る視野を持てるようになったと思います。

――西村さんは

西村 僕は入部したころは、とにかく必死でした。勝ちたいという思いはあったんですが、それに見合う実力がなくて、ただ頑張るしかなかったんですが、今はいろんなもののために勝ちたいという思いや、引退までに自分が残さなくてはいけないものもありますし、そういうところまで考えられるようになったこと、考え方が最も成長した点かなと思います。

――そういった考え方の変化には先輩方の影響もありますか

西村 そうですね。全ての先輩方や、同期、後輩という一緒にやってきた人たちが今の自分をつくってくれたんじゃないかなと思います。本当にかけがえのない存在です。

――4年間で印象に残った試合や時期を教えてください

古川 一番印象に残っているのはきょねんのインカレの準決勝ですね。一番緊張して、一番びびりながら投げた試合です。そんな中でも、自分の投球ができたから、決勝でもしっかり投げることができたんだと思います。時期としては、この一年けがが多くて、春からろくに投げられていないので、つらかったですね。

西村 自分は二年生のときのインカレの一回戦負けした試合ですね。投手3人ともボコボコにされて、そろってあんなに打たれたのは最初で最後だと思うので、何もできなくて、まだこの程度なんだな、と思い知らされた試合です。でもこれがあって、今の3人があると思います。この後も、自分はなかなか調子が上がってこなくて、つらい時期が長かったんですけど、それを乗り越えたときにまたソフトボールが楽しくなりました。その喜びを味わえた時期、今もなんですが、それも印象に残っていますね。

――チームの目標であるインカレ連覇へ向けて

古川 きょねんは投手としてだけだったんですけど、ことしは打者としても重要なポジションにいると思うので、自分が活躍しなければ勝てないという思いで、臨みたいと思います。先生からも、まんじゅうをもらったりと期待を感じるので、それに応えられるよう、僕らが中心となって、優勝に向けてがんばります。

西村 きょねん勝てたのは野手のおかげの部分が大きかったのですが、ことしは、古川と自分の力を合わせて、投手力で勝って、もう一度先生を胴上げできたらと思います。一戦一戦勝つだけです!

――ありがとうございました!

(取材・編集 平岡櫻子、依田萌)

インカレでの十倍返しを誓った古川と西村

◆古川恵士(ふるかわ・さとし)

長崎・佐世保西高出身。人間科学部4年。投手。きょねんのインカレでは投手としてまさに大車輪の活躍を見せた。ことしは投手としてけがからの復活はもちろん、打線の要の一人としても期待がかかる。また、試合の差し入れには、よくたけのこの里をリクエストされる古川選手。「たけのこの里があるといつもよりがんばれる」そうです!

◆西村直晟(にしむら・なおあき)

大阪・清風南海高出身。スポーツ科学部4年。投手。今季、右のエースとして投手陣を引っ張ってきた西村選手。取材中、丁寧に言葉を選びながら答えてくださる姿が印象的でした。高校時代からバッテリーを組んでいる柏原祐太捕手(スポ3=大阪・清風南海)との不仲説については、実際は「ふざけているだけ」とのこと。今後もこの“仲悪いキャラ”でいくそうです。